この記事では、シナリオ『魂の境界』の重要登場人物である蔵橋孝一と朝平宗作について、そして他の登場人物達について記します。話の本筋に関わる細かな情報についてはシナリオ本に記しているため、気になる方はそちらも併せてご覧ください。
現役の刑事、30歳。
主人公とは警察時代からの同期であり、かつては凶悪事件に対して主人公とニコイチを組み、共に数々の難事件を解決してきた。
正義感が強く仕事一筋であるために、それ以外のことはからっきしである。主人公のことを全面的に信頼しており、考えるよりも足を動かすタイプの蔵橋は、主人公が刑事を辞めた今でも推理面において頼りにすることが多い。
「主人公の頼れる相棒・絶対の味方・捜査補助担当」といった要素を意識しキャラクターをデザインした。
背景が不透明な怪しい登場人物が多い中で、蔵橋孝一は、主人公にとってもPLにとっても心から信頼のおける登場人物となるようにした。そして蔵橋孝一は肉体派であり、猟奇連続殺人事件が発生する最中においても簡単に死ぬことはないであろうという一種の安心感を読者に与える役割もある。(しかし√Aでは死亡)
また、捜査パートにおいては、あくまで主人公が推理をリードするように、蔵橋孝一はサポート役として徹するようにしている。
蔵橋孝一は、物語においては大きく二つの役割がある。
一つは、正義感のある刑事としての役割である。主人公とは別方向で事件を裏で調査し、やがては警察組織の腐敗を暴こうとする。主人公は連続猟奇殺人事件の本筋を調査していく一方で、主人公とは別方面から、事件に纏わる不正を正そうと行動するのが蔵橋孝一の役割である。
もう一つの役割は、主人公の相棒、精神的支柱としての役割である。危険な現場で共に身体を張ったことがあり、長い付き合いである主人公のことを、蔵橋は信頼しており、また、警察を辞めた今も主人公のことをそれとなく気に掛けている。肉体だけでなく精神的にもタフである蔵橋は、自らの信念の為には不屈の精神で立ち向かうが、主人公の心が壊れかけていた場面において、主人公に激励を飛ばすことになる。
以下の文章は、制作資料から一部を抜粋したものです。
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年齢:30 歳前後
髪型:刑事にしてはやや長めで、手入れなどは一切していないためボサっとしている。色は茶系統。
身長:178cm 程度。筋肉がしっかりついているが、ムキムキという訳ではない。
容姿:身だしなみや立ち振る舞いに気をつければそれなりにモテるのだろうが、全く気にしていない。無精ヒゲが生えている。
雰囲気:くたびれた雰囲気があり、他のことはからっきしだが、仕事一筋で事件をしぶとく調査する人物である。また、面倒見はよく、情も深い。どこか親しみを持てるように。キザな雰囲気は一切無く、眼光が鋭いとかそういうのもない。過度な格好良さは NG。
性格:
【台詞例】
「よお、××、最近はどうだ?」
「真生会と一連の連続猟奇殺人事件……一体どういう繋がりがあるのかはまだ分からないが、調べてみる価値はありそうだな」
「悪い、俺はちょっと気になることがあるんでな。そっちはそっちで調査を続けてくれ」
探偵である主人公の元同僚である蔵橋孝一という人物は、がさつで、いつもくたびれたような感じでいるが、仕事一筋で事件をしぶとく調査する。また、彼は正義感が強く、面倒見も良いため、何かと主人公や藤宮咲良、高島果穂のことを気に掛けたりもする。藤宮咲良や高島果穂とも何度も関わるが、彼女たちには手を焼かされており、すぐに主人公に対応役を投げることとなる。
また、何かしらの裏がありそうな登場人物が多い作中で、主人公視点でも読者視点でも安心して頼ることの出来る数少ない人物である。
主人公にはリスクを負わせまいと、警察の上層部が隠している秘密を単身で暴こうとするため、√A では凄惨な死を遂げることとなる。√ B においても、物語中盤から生死不明の状態(PL目線では、死んでいるのだろうと思ってしまう)が続き、PLにダメージを与える。√B の終盤で、彼が生きていることが判明し物語に希望を持たせることとなる。
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「主人公と元同僚であり、頼れる刑事である。ただ格好良いのではなく、渋さのある格好良さがある。露骨なイケメンキャラではないので、見た目を格好良くし過ぎないように注意してほしい」
といったことを、打ち合わせでリチャードⅧ世先生に伝えました。
そして出来上がったラフが下のものとなります。
蔵橋のビジュアルは個人的にもかなり気に入っていて、自分が想像していたよりもずっと良い味を出しているなとラフを受け取った時に思いました。
打ち合わせの時には、「ギャルゲーで例えると、主人公より格好良すぎるキザなイケメンキャラだと、ヒロインを取られる感が出てくる可能性がある。男性PLにとっても親しみのある感じにしてほしい」と何度か伝えた記憶があります。結果として、男性PLにも女性PLにも受け入れられるキャラクターになったかなと思っています。
服装は、刑事としてド定番のトレンチコート。あんぱんと牛乳を手にしながら張り込みしている姿が似合うような、昔ながらの刑事をイメージしています。仕事中はほとんどずっと着込んでいるし、ちゃんとクリーニング出しているか怪しいし、タバコは吸うしで大分匂っていそう。
実は顔は良く、身だしなみをちゃんとすればなかなかのイケメンになるのですが、そういったことには一切関心がないので……という設定。
「実は黒幕なんじゃね?」と疑われたテストセッションもあったため、裏がない人物であることをできるだけわかりやすく演出するように意識。蔵橋に対して猜疑心を抱いていしまうと、主人公・PLにとっての精神的支柱であるという物語上の役割を果たせなくなる恐れがあったので。
また、正義に拘り過ぎる・絶対視する人物にすると、神村夕音や朝平宗作を一方的に否定する人物になりかねなかったため、正義の心は持ちながらも、一方的に相手を悪と断罪しないようなキャラクター性を意識しました。
神村夕音や朝平宗作のような人物を、どう考え、受け止めればよいのか。それは、『魂の境界』における重要なテーマの一つであったため、主人公・PLが感じる「迷い」を重視するためにも、蔵橋孝一には、正義を重んじつつも中立的な立場になるように気を付けました。
※キャラクター人気投票を開催した時に、余興で蔵橋孝一の枠を設けたのですが、神村夕音を抜かして3位になったのは正直びっくりしました。『魂の境界』は私の作品群の中では珍しく女性層の方にも比較的受け入れられた印象があったため、女性人気があるのかもとか思ってます。
葛西中央病院に勤める精神科医、35歳。
多くの人の死に触れてしまい心を蝕まれた主人公が、治療のために訪れた病院で朝平と出会った。それ以来主人公と朝平は交流を持ち、三年が経った。
朝平は多くの患者から人望のある腕の立つ精神科医であったが、しかし彼の裏の顔は、真導明常という名を持つ連続猟奇殺人鬼であった。
まだごく普通の医者であった頃に、彼は藤宮咲良に内在する「死」を認識する。その時、彼がそれまで抱いていた価値観は上塗りされ、死に救いを見出すようになってしまう。
そして「死」を完全なものとするために、彼は真導明常として、多くの人間を殺害するようになる。
「主人公に寄り添おうと努める者・『死』を崇拝する者・孤独故に理解者を求める者」といった要素を意識しキャラクターをデザインした。
一連の猟奇殺人事件の黒幕であり、歪な思想を持ちつつもその心根は元来は優しいものであった。それは彼の普段の表の顔に表れている。彼は、朝平宗作として、真導明常としての二つの顔を持っているが、どちらが現在の彼の本質を表わしているかとなれば、それは後者となる。
しかし、朝平宗作としての側面が全くの偽りかと言えば、それは異なる。善人として振る舞う朝平宗作もまた彼の一部分であった。
彼は本心を他のものに明かすことは決してなかったが、同じ苦しみを分かち合えると考えている人物に対しては、嘘偽りのない態度を取る。作中で彼が本心を明かしていたのは、神村夕音と主人公の二人のみである。
また、主人公に向けるそれ程ではないが、神村夕音に対しても彼は信頼の念を抱いていた。また、神村夕音に対してのみ、彼は自らが計画する最終目的を話していた。
彼はこの世界に絶望し「死」を強く望んでいた。その思想は誰からも理解されることはないと分かっていながらも、だからこそ、同じ痛みを知っている者と孤独を分かち合おうとした。
なお、√Aでは、暴漢に襲われた神村夕音を助け出したのは朝平宗作である。しかし事は済んだ後のことで、朝平はその場にいた二人の男を殺害している。朝平が望んだ形ではなかったが、その出来事によって神村夕音の心は「死」を完全に受け入れるようになり、彼女は朝平に積極的に協力するようになった。
また、√Aにおいて牢に囚われていた主人公を助け出したのも朝平である。警察と繋がりのある彼は、主人公を解放するために口利きしていた。(しかし、精神を錯乱していた主人公は途中で逃げ出してしまう)
以下の文章は、制作資料から一部を抜粋したものです。
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年齢:35 歳程度
髪型:黒髪。もみあげの部分が少し長めのイメージ。襟足は長くないイメージ。どこか優しげな風貌をした男だが、女々しい印象は与えたくない。(「優男」という印象も与えたくない)
身長:179-180cm 程度。蔵橋より少しだけ背が高く、すらっとしている。
蔵橋と違って細身の体格だが、頼りない感じのイメージはない。
容姿:容姿自体は整っているが、全く嫌味のない感じというか、「イケメンキャラ」というのを感じさせないように。白衣を着ている。
雰囲気:落ち着いており、それでいてどこか優しげな(穏やかな感じ)感じがある。ただし、優しさが全面に出ている「優男」という感じはないので注意。35 際程度であるが、見た目は若く、蔵橋とさほど変わらないように見える。というか蔵橋は少しおっさんぽいので、彼よりももしかしたら若く見えるかもしれない。
※事件の黒幕でもあるので、優しい雰囲気が全面に出ているとミスマッチを起こす。
性格:落ち着いており、患者である主人公に対してよく気遣ってくれる。
【台詞例】
「前にも話したけど、それは『共感覚』のようなものなんだと思う。人の死がある場所で、何かを嗅覚や視覚、聴覚で感じ取って……、その認識が、黒い蝶という形で表れるんだ」
「そうなるまでに、君はずっと死に近いところにいた……ということだろうね」
「でもまあ、それによる実害も、精神的悪影響も見られないみたいだから、その幻覚に対してはあまり心配する必要もないよ」
「それじゃあ、また何かあったらいつでも来てくれ。お大事に」
「やあ、××くん。……昨日はなんだか大変なことになっていたみたいだね。あの藤宮という女の子、事件に巻き込まれて病院に運ばれたんだって? 叶内先生に聞いたよ」
「今、君は、また何かの事件に関わっているのかい……?」
「そうか……。まあ、あまり無理はしないでくれよ。助けが必要になった時はいつでも僕の所に来てくれ」
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「一連の事件の黒幕であるが、どこか優しげな雰囲気があり、それは本心から来ているものである。歪な思想を持ってはいるが、主人公のことを心から気に掛けている」
といったことを、打ち合わせで何度もリチャードⅧ世先生に伝えた記憶があります。黒幕ではあるが、根からの悪人ではないことを強く意識しました。
そして出来上がったラフが下のものとなります。
目の下に隈があり、どこか影を感じさせる面立ちをしながらも、優しげな雰囲気を出していただきました。
初期案では白衣の下にスーツを着ており、ちゃんとしているというか、大きな病院での腕の立つ医師といった印象を感じたため、もう少し崩しつつ親しみを持てるように黒のインナーへと変更。「黒」は藤宮と同じく「死」を意識しました。
勘の良い人なら、朝平が黒幕であることをビジュアルだけで勘付く可能性はありましたが、多少ネタバレとなってしまっても、「見た目の説得力」は重要だと私は考えているため、丁度良い塩梅になったかなと思っています。
朝平は初期構想では影がもっと薄く、主人公との関わりもそれほどない人物でした。ただ、それだとどうしても読者の印象が薄くなってしまうのと、彼の行動の動機がより受け入れづらくなると思ったため、主人公にとってより近しい人物へと変更しました。
これは続編においてもそうですが、『魂の境界』における重要なテーマの一つに「主人公の苦悩」があります。自らの生き方に苦悩する登場人物達と関わりながら、主人公にもまた苦悩してほしいと考えていたため、朝平が主人公にとって近しい人物へとなることはほとんど必然でした。
ところで、「『死』の顕現に成功したら朝平はどうするつもりだったのか」と質問を受けたことがあります。
結論から言えば、「死」に触れた朝平はその直後に死亡します。√Aの「彼女を殺さないEND」は、主人公以外の全ての人間が死に絶えますが、朝平もまた例外ではありません。
ただ、朝平の目的は「死」の顕現にあって、その結果自らが死んでしまったとしてもそれを受け入れるため(死ぬことを確信していた訳ではないですが)、どのような結末となっても彼はそれで満足しました。
高島果穂と朝平宗作、近しい人物を再び失ってしまった主人公が、その先で目にする光景とは……それは続編の『魂の境界 春告鳥の祝福』で明かされます。
最初に捕まる犯人。
KP・PLから一番ヘイトを買ってる気がします。色んな方のふせったーであまりにもボロクソ言われてて「嫌われ過ぎでは?」と思いましたが、まあ妥当かもしれない。一応彼にも、辛い過去とか事情があったのですが……まあ……。
√Aであからさまに真犯人ぽく振る舞う人物。彼の存在はミスリードであり、√Bで真犯人が別にいることが分かります。最初のルートでミスリードをして受け手の意識を別の人物にずらすのは定番ですね。
目的そのものは人のためを思ってやっていたことですが…如何せん彼もまたどこかで道を踏み外してしまいました。クトゥルフで描かれる典型的な狂信者ではなく、あくまでも冷静に目的のために行動していましたが、「死」の存在を知ってしまい根底にある価値観が普通の人間とは異なっています。
笹塚は、少し嫌味なところがある人物ですが、その在り方はごく普通の人間そのものでした。藤宮咲良の内にある「死」を認識してしまったら、普通の人間であればどのような反応をしてしまうのかを示しています。
また、彼が発狂していた時の姿は、√Aで狂った主人公が咲良を殺害しようとしていた時の姿そのものです。主人公もまた、一歩間違えたら笹塚のような結末を迎えてしまっていました。
天野の次に嫌われているんじゃないかと思う、嫌なおっさん。RPするKPは楽しいかもしれない。
彼は真生会とは関わりがないのですが、彼に命令を下す立場にいる者が真生会の人間であったため、結果として主人公や蔵橋と敵対します。
でも√Aでの取調室での振舞いは、半分以上が素なのでやはり嫌な奴かもしれない。
最初の犠牲者枠。
見方によっては、ポエミーな小説を書いていたちょっと痛い子かもしれない。
第二の犠牲者枠。
初期案では普通に主人公と話す子でしたが、PLの思い入れが予期せず入ってしまったらいけないと思ったので、かなり距離を取るようにしました。
それと「遠坂」にすると冬木市にいるどこぞのツンデレ魔術師となってしまうため、「阪」に。
ただの深見葵の友人として登場しますが、地味に主人公と話す機会が多かった人物。初期構想では、√Bの序盤で、井の頭公園で新たな犠牲者となる案がありました。
小説を書くのが趣味で、続編では大学生として登場するらしい。
主人公に学校の案内をしただけの人。学校に関する重要な情報のほとんどは高島が持っていくこともあり、序盤の序盤だけしか役割がない。
腕は立つがいちいち嫌味を言わないと気が済まない医者。
キャラ的には死にやすい雰囲気を纏っているため、初期構想では死亡リストに加えるか一瞬迷いました。
あまり活躍させる気は当初なかったのですが、筆を進めるうちにいつの間にか出しゃば…活躍を見せるようになりました。
続編でもどうやら出しゃば…活躍するらしいです。
名前が登場するだけで、具体的にはどのような人物であったかは全く描写していません。咲良も彼とはほとんど言葉を交わすことがなかったため(そして当時の記憶が抜け落ちているため)、奥涯の具体的な人物像は明かされないままとなっています。
「奥涯」の名は、『沙耶の唄』に登場する教授から取っています。また、彼が暮らしていた屋敷の描写も、『沙耶の唄』の教授の別荘をオマージュしています。
咲良から「死」が消失するシーンですが、構想当初は注射を打ち込むのではなく、「銀の鍵」を用いる案がありました。ただそれだとあまりにファンタジーで、『魂の境界』というリアルな雰囲気のある世界観を壊しかねないと考え、没にしました。
ただのモブです。モブのくせに妙においしいポジションを持って行ったりします。
「葉山との待遇差ひどくね?」と自分でも思っていますが、全国の葉山さんにも竹田さんにも全然恨みとかはありません許して……。むしろ近しい人にその苗字の方がこれまでいなかったので採用できたのかなと。
これは『魂の境界』シリーズとはほぼ関係のない、全くの余談となりますが、鮫嶋壮史郎は、1999年を時代設定としているとあるシナリオで登場します。
そのシナリオでは主人公は20代半ばの若い刑事であり、鮫嶋はその部署の上司にあたる人物となります。
「つまり・・・鮫嶋は続編シナリオで死なない・・・ってこと!?」
そもそも続編シナリオに彼は出てこないです。グッバイ鮫嶋。
※その「とあるシナリオ」は、魂の境界の世界から地続きとなっている世界のお話ですが、『魂の境界』シリーズとは関係のない別作品です。
では、今回の記事はここまで。