XaiJu
Sei Tsukishiro
Sei Tsukishiro

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Diary 00


私には少し不思議な友人が数名いる。

その中でも1人、頭を抜けて変わった友人が居た。


その友人は人気のない深夜に、私の自宅の上に浮かんだ宇宙船からふわりと舞い降りてきた。

両手には沢山の荷物。あとから宇宙船より、見慣れた機械生命達が荷物を運び出す。それも恐らく、その友人のものだ。


「手伝うよ、セイ君」


そう言って細めた目元には、黒く淀んだ悪夢を宿して。

泣き腫らしたように弱々しい。けれど、今にも星を砕きそうな程にぎらついた真っ赤な瞳をこちらへ向けて。

声は凛と、まっすぐ前を向いている。


この友人の姿に、私は繰り返し既視感を覚えたのだ。


「今日からセイ君とひとつ屋根の下か〜!楽しみだな〜!」


なんて巫山戯た事を呑気に言いながら、私の自宅の中をまるで何度も訪れたかのように慣れた足取りで巡る。


何処か明るくなりきれない彼女の声音と階段を上る足音は、私の発する声や音と周波数さえも同一。




そう、その友人とは、

私自身だった。




彼女の名は、「テラ」。

私がかつて付けた、男性とも女性とも取れる理想の名だ。



私は彼女と彼女の人生を不自然なまでに知っている。


例えば彼女が未来の冥王星に住む、造られた存在であるということ。


例えば彼女がかつて、彼女を造った研究者達に虐げられていたこと。


例えば彼女が、これから行う事。



言わば知らないはずなど無かった。

私、「セイ」は、彼女が登場する物語の作者なのだから。



彼女は、私自身をモデルにして描いた人物だ。

違うのは、住む世界だけ。




「……なあ、もう泣かないでくれよ」

テラはふと私を見て、困ったように笑った。


その言葉の意味さえ、私だけが識る。



私が冥王星を殺した。

きっかけがきっかけだったものだから、「それは仕方の無いことだった」と、周囲も納得せざるを得なかった事だろう。



物語の創造神は作者だ。作者が筆を取れなければ、物語に住むキャラクター達の息を止めるという事は、必然。



だが私は、これが堪らなく悔しかった。

今更どうしようもない事、だとしても。



少しだけでもいい。


私の愛する不思議な友人らが息をするべく、彼らの魂のように私自身が生命を燃やして、彼らをどうにか生かせやしないか。



そう願い、残り少ないインクに繰り返し太陽の万年筆を浸して、記し始めたのがこの日記だ。



「ああ、ごめんね。お恥ずかしながらテラの前でしか上手く泣けないんだ……許してくれる?」


「それは嘘だな。セイ君はもう独りじゃないだろう?」


「釣れないな……。その通りだけれど。まだ人前で泣くのには慣れてないんだよ」


「違いないな」


「そう肯定されると逆に納得が行かない」


「全く!君のそういう気難しい所は私でなければ理解し難いと思うぞ」


談笑しながら、テラは着々と私の部屋に私物を出していく。


今まで私しか居なかった、変に広い空間があっという間に狭くなっていった。


独りで居た時の広さを、もう二度と味わえないのだ。

それは本来有り得ない事に近いが、テラの場合は少し違うだろう。



嬉しくも、複雑だ。

「彼女は本来存在しない。仮想に過ぎないよ」と誰かに上から突き付けられているようで。



だが、「彼女は間違いなく存在するのだ」と、私がこの日記を見ている皆様へ証明して見せよう。


太陽の万年筆は描く為のインクが無くなれど、決して折れはしないのだから。























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