XaiJu
鯰田NMZ
鯰田NMZ

fanbox


仮想放浪記【壱】

ラッシャイ。俺は鯰田。げんこつ山のたぬきだ。俺は毎日頭に変な機械をつけ仮想世界にダイブして、この善性でギリギリ崩れていないだけの地盤に広がるインターネットスラムを肌で感じている。今日はフォロワーのお前に俺がそんな世界で体験した出来事を教えてやることにした。


なおこの雑記には人から聞いた話も俺が実際に体験した話も多少なり脚色して話す。

多種多様って奴だ

俺は元々アンダーグラウンドな雰囲気をなんとなく好んでいて、時代を感じる古めかしい灯りのついた、電球が一部破損しているような看板立ち並ぶ裏通り…要は居酒屋や風俗などのある歓楽街を歩くことが楽しく感じるガキだった。当時は酒を飲まなかったから居酒屋には寄らないものの、たまに風俗には入って遊ぶこともあった。


現実でそんなことができたのはお前らも知っている流行病が来るまでだ。今となっては多少マシな世界に戻ってきたが、その爪痕は残っている。様々な店が閉まり新しい店にはなっていない。通りの人の動きも少なくなったように感じる。


それに俺自身も外に出るのが億劫になった。他にもいろいろな要因があって4年前の12月に仮想へ来たわけだが、この世界にも裏の顔はあるということでそこを目的に徘徊したくなった。まぁ裏というにはあまりにアクセスしやすいが。ともかくインターネットスラムだ。


Publicというカテゴリでは様々な人間がいる。まだどこにも所属していない初心者から界隈からつまはじきにされて行き場のないモンスターまで何でもござれだ。だがこれは一般的なワールドの話だ。浅瀬で遊んでいるUserが立ち入らない場所はいくつかある。


今回話す該当のワールドは海外のUserが多く、3年ほど前は今よりも性的な表現を目的とした者が多く立ち入る場所だった。慣れたUserならどことは言わんが見当はつくだろう。この世界はそういった事については隠れてやれのスタンスだ。だからといってそれを公に言うバカはいないし善性でギリギリ成り立っているように感じる。


そして俺はそういった世界にワクワクして入ってみた。一体どんなものなのか、まだまだ知らないことばかりのニュービーだったからな。ただ本格的に絡まれても困るため狸の姿でうろつくことにした。



エレベーターから始まるワールドにはいくつかの階層があり、一部区域は入場制限も設けられているようだ。先に進むと多くの英語圏Userが居た。肌露出の多いバニー姿のUserがポールダンスを踊り、周囲はそれを見守っている。中にはドル札を投げる者も。


告知された催しでもなんでもなく、ただその世界で踊って魅せるだけのPublicならではのアクティブタイムイベントだ。それを横目に奥に進むと公衆トイレがあった。仮想世界で用を足すものは……まぁいないこともないんだが大半はしない。だからこれはワールドの雰囲気や"そういう場所"であることの味付けみたいなもんだろう。


手洗い場にはミラーがある。そこに座って駄弁るUserたちもいるようだ。仮想世界の会話は場所を選ばない。どれも英語で何を話しているのかはわからないからポールダンスの場所まで戻ることにした。するとその途中で巨躯の獣人に出くわした。


獣人は俺の姿を見るやいなや子どもを見るかのように膝をついて姿勢を低くし、こう呟いた。


「キミ………オス…ゥ……?」


たどたどしい日本語から発された言葉に一瞬思考がフリーズし、意味を理解するのに数秒の時間を要した。そう、現実ではありえないことだがここはスラム。俺の姿が何であろうが穴があればいい連中や獣ならOKみたいなUserが居るということを頭ではわかっていても理解までは至ってなかった。


俺はその趣味嗜好に対して差別をするつもりはないが自分自身とマッチしない癖を急にぶつけられたことや目の前の巨躯に対してドッと汗が吹き出し、英語は話せないためとにかく頭を上下に振り続け「すまねえ!」の意思を示しつつ後退。


距離を取ると獣人は「オゥ………」と残念そうに声を漏らしていたが俺は構わずホームへ帰還した。ナメた覚悟で自分の知らない世界に足を踏み入れるとこういう想定外の出来事が起こることがある。お前も気を付けて放浪することだ。

仮想放浪記【壱】 仮想放浪記【壱】

More Creators