XaiJu
しる
しる

fanbox


Project HDR -イントロダクション-

ご支援ありがとうございます!

また更新間隔が大きく空いてしまいました。すみません…


今回は、現在取り組んでいるProject HDRという企画について広く知って頂くため、全体公開として投稿させていただきます。


ここ最近は、先日発表となったアニメ「AYAKA」や、年末のギャラリー、それに伴う新企画「Project HDR powerd by EIZO CG2700X」を手掛けております。他にもいくつかお仕事が進行中で、夏コミ以降もけっこう忙しくしております…

(frame embed)


今回は、「Project HDR powerd by EIZO CG2700X」についての中間報告になります。

Twitterで画像をいくつか投稿したり、作業配信を行ったりしていましたが、具体的にどういう事をやっているのか、という説明をしていませんでした。

とりあえず、現状わかっていること、取り組んでいることを記録しておきます。

HDRとは

HDRは、High Dynamic Range の略で、広いダイナミックレンジを持った写真や映像のフォーマットを指します。

(frame embed)



普段私達がブラウザやTwitterアプリ上で見ているJPEGやPNG画像、Youtubeで見ることのできる映像は、HDRに対してSDR(Standard Dynamic Range)と呼称されます。これは、RGBA各色あたり8bit 256色(Aはアルファ値)、合計24ビットもしくは32ビットのカラーフォーマットです。色空間で言うところのsRGBやAdobeRGBは、SDRのデータフォーマットでPC上で表示されます。(※sRGBとAdobeRGBは色空間の定義ですので、必ずしもSDRとイコールではありません)


長らくデジタル画像、映像の標準的なフォーマットとして普及しているSDRですが、意外と各色256色という色の範囲は制約が大きく、様々な弱点があります。


一つは、高輝度領域の表現。一定以上の明るさが全て RGB(255,255,255) の白となり、それ以上の明るさを表現するためには、フレアやグローといったエフェクトに頼らなければいけません。RGB(511,0,0) という鮮烈な赤を表現することもできません。


また、階調の表現に乏しいという弱点もあります。256階調という数字は意外と少なく、グラデーションを描画したときにトーンジャンプを起こしやすく、小数点以下の数値を持っていないため補正にも弱いです。暗い領域で顕著に現れます。


これに対し、HDRは各色10ビット~32ビットの情報量(映像出力信号は10もしくは12bit, 映像編集ソフト内部処理では16~32bit)を持ち、16ビットの半精度浮動小数点(OpenEXR)の場合、正の最大値が65504にも及びます(マイナスの数値もある)。人の知覚域ではグラデーションのトーンジャンプが起こらない事はもちろん、補正に対しても余裕のある階調を保つことができます。


最大輝度に対しても非常に幅広い表現力を持っています。

これは表示するデバイスや色空間によっても様々なのですが、例として標準的なPCモニタの最大輝度は100~300nit(ニト、cd/m^2)、実際のイラスト制作環境では100~150nit程度、標準的な4K液晶テレビで300nit程度に留まるのに対し、HDR規格のモニタやテレビでは500nit~1000nitの輝度を扱うことができます。これは単純にSDRを明るく映すためではなく、SDRの明るさはそのままに、さらに上限をオーバーする明るさを表示するための性能です。1000nitというのはあくまで機器上の制約によるものなので、それ以上の輝度を想定したデータを作ることも可能です。それらを実現するための広い色空間を持った映像、画像フォーマットがHDRと呼ばれています。


実際にHDR映像を見る手段としては、IMAXレーザー、HDRテレビによるHDR放送の受信(NHK BS 4K/8Kなど)、HDRテレビによる内蔵アプリ(Google TV)でのAmazon Prime HDR映像の視聴(ロード・オブ・ザ・リング王の帰還など)があります。百聞は一見にしかず。HDRテレビを持っていない方も、IMAXなどのHDR映像体験をしてみると、世界が変わると思います。フレアやグロー効果無しで、世界が輝いて見えます!


一方、HDRで静止画を見る方法は、(動画フォーマット以外)ほとんど普及していません。写真撮影におけるRawやDNG、3DCGや映像編集で用いられるopenEXR、TIFFなどがHDR画像のフォーマットとして用いられていますが、データ量が非常に大きく、インターネット配信には向いていません。また、色空間やガンマの定義が画像データに含まれないこともあり、表示を統一できず、Raw写真はAdobe LightRoomなどを用いた現像というプロセスが必要です。ブラウザ表示用途にもJpeg HDRなど様々なフォーマットが提唱されていますが、全く普及していません。ブラウザ上でHDRイラスト、写真を発表する手段はほぼ皆無と言っていいです。


HDRイラストを実現するための制作環境



PhotoshopやCLIP STUDIO PAINTなどのペイントソフトでは、現状HDRを取り扱うことができません。Photoshopは 32bit/ch の色情報を扱うことはできますが、画面上でHDR表示することができません。


現状、最も実用的なHDRビジュアルの制作ソフトウェアとして挙げられるのが、Blackmagic Design Davinci Resolve 18です。その中でも、有料版のStudioにHDRの編集機能があります。HDRに限らず、映像制作の現場、特にカラーコレクション、カラーマネジメントではスタンダードとなっているソフトウェアです。

embed: www.blackmagicdesign.com

もちろん、画面表示するためのHDR専用のモニタが必要です。


今回は、EIZOさんのご協力により、9月に発表となった新製品の ColorEdge CG2700X を貸与頂き、活用させていただいています。

(frame embed)


WindowsPCやMacもOSレベルでHDR表示に部分的に対応していますが、PC上でHDRを正しくカラーマネジメントするためには、HDRの映像信号をモニタに出力する専用のボードが必要になります。今回は、Blackmagic Design DeckLink Mini Monitor 4Kというボードを使用しています。(制作環境や出力フォーマットにより様々な選択肢があります)

embed: www.blackmagicdesign.com

また、Davinci上で4K HDRの合成を行うため、非常に大きなビデオメモリ(VRAM)を持ったグラフィックボードが必要になります。制作開始時点で最大級のVRAM(24GB)を持つ、Geforce RTX 3090Ti を導入することになりました。(これ以上のVRAMを持つ RTX A6000といったウルトラハイエンドモデルもあるのですが…さすがに価格がヤバい

ただし、無制限にコンポジットの素材を積み上げていくと使用VRAMが24GBに到達してしまいソフトが落ちることもよくあるので、かなりギリギリです。


また、最終出力機器として、HDRテレビ BRAVIA X90J 55V型 (個人所有)を使用します。こちらは、実際に皆さんに見て頂く企画を準備中ですが…まだまだ技術的にクリアしなければいけない課題がいくつかあり、目下検証中です。(現状だと、今使っているPC、制作環境をそのまま持ち込む必要がある)

(frame embed)


貯金が減る減る…


次回は、イラストのメイキングや用語、AIの活用、実際のHDR制作ワークフローについて解説する予定です。次回以降は支援者限定コンテンツとなりますので、ご了承下さい。

Project HDR -イントロダクション- Project HDR -イントロダクション- Project HDR -イントロダクション- Project HDR -イントロダクション-

Comments

動画でのHDRは知っていましたが、イラストや静止画では考えた事はありませんでした。 イラストでもあの鮮明さが使えるようになれば、表現の奥行きが増しそうで楽しみです。 記事を書いていただき、ありがとうございます!

マイアミ


More Creators