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[FANBOX質問箱] 絵師大陸 中国

前回の記事でなんとなく募集してみた「ご質問」ですが、以下のようなご質問を頂戴しました。


私はtwitterやpinterestでイラストを見るのが好きなのですが「この絵いいなー誰が書いてるんだろ」とのぞいてみると大陸の絵描きさんだったということが多々あります。なんかアカデミックなところで描いてそうだなとか色使いに特徴があるなとか素人ながら感じるところがあるのですが、中国や韓国のような大陸の絵描きさんと日本の絵描きさんの違いをredjuice先生の視点から聞きたいです。


沢山来るかな、と身構えてもいたんですが実質こちらの1件だけでした。ありがとうございます。1件だけで、個人的に興味深い内容でもあったので、気持ち長めに書かせていただきました。


大陸絵師、つまり中国の絵描きさんの勢い、すごいですよね。特にスマートフォンゲーム業界においての中国の存在感は、最早アジアを席巻しつつあると言っても過言では無いでしょう。日本人としては、脅威すら感じるほどです。


では、近年(いつ?)急速に勢力を拡大した中国人アーティスト、その力の源泉はどこから湧いて来るのでしょうか?


正直なところ、「よくわからない」と言わざるを得ない部分が多いのですが、個人的にも中国やアジア系アーティストの動向はずっと注目している事なので、私個人の視点から、どういうふうに見ているかを述べていきたいと思います。

中国のSNS、スマホ文化

「よくわからない」と言った理由の一つにもなっているのですが、中国における最大のSNS、weibo(微博)にアクセスしていないため、中国人アーティストの本質的な部分を理解できていません。weiboアカウントの取得は日本からでも可能なので、リサーチしようと思えば可能かもしれませんが・・・何せ中国語ぜんぜんわからんしtwitterで十分すぎるほど時間奪われてるので、weibo見て回る余裕が無いんですね。しかし既に、そういったこと言ってられない状況かもしれません。日本からweiboを使って中国に情報発信する必要性を感じはじめています。(今のところ具体的な予定はありませんが・・・)


weiboは、中国のインターネット利用者人口、約10億人約半数が利用しているとされる巨大なプラットフォームです。中国の方がtwitterを使っている場合、中国国外への情報発信や情報収集のために運用されていることがほとんどで、あくまでもweibo中心なんですね。何しろ、中国ではtwitterへのアクセスが制限されていて、twitterにアクセスするためにはVPNを利用しなければなりません。twitterだけではなく、Google、YoutubeもVPNなしでは利用できません。中国政府おそろしや。また近年、pixivの利用もできなくなっているようです。一時、ランキングを席巻していた中国イラストレーターがpixivにあまり見られなくなった原因の一つだと思います。

twitter post: 909766150560505856

ちなみに、中国渡航時に日本から持ち込んだ私のスマホからtwitterやGoogleへのアクセスは可能でしたが、このへんの仕組みはよくわからないし面倒なので割愛。


おそらく、日本人がtwitterやインスタを利用している以上に、中国人はweibo使っています。twiiterが日本におけるイラスト発表の中心的プラットフォーム(次いでpixiv)として機能しているように、中国においても、weiboがイラストや新作PRなどの情報発信の中心を担っていると考えられます。中国にもpixivのようなイラスト中心SNSはあるのですが、どの程度利用者がいるのかよく調べていません。


weiboという巨大な閉じた社会でほぼ完結しているため、日本からはその動向がわかりづらい、というのはミステリアスですね。ちゃんと調べればミステリーでも何でもないとは思うんですが。


また、Alipay, WeChat(微信)が決済手段として広く利用されています。中国における小売決済のほとんどはAlipay、WeChat のスマホアプリで済み、現金を使っている人はほとんどいません。私が广州、上海を訪れたときも、Alipay のアプリで全てのお買い物、交通機関へのアクセスが完結していました(近年、中国国外の銀行口座やクレジットカードでも登録できるようになったので大変便利です)。なんと、同人イベントの個人サークルの支払いも、全てアプリ決済でした。中国社会全体がインターネット、スマホに強く依存しています。

中国ゲーム市場

現在の中国ゲーム業界は、目を見張るほどに急速に拡大した市場規模を持ちます。

(参考)https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20210107053/


具体的な数字は上記URLや検索で参照していただくとして、2020年時のデータで日本と比べると2倍以上の市場規模を誇り、モバイルゲームでは世界一、PCやコンソール含めても世界2位(1位北米、3位日本)のゲーム大国となっています。日本が世界一のゲーム大国であった時代はとうに過ぎ去りました。それでも日本にはPlayStation, Nintendoがある!と言っていられるのも今のうちかもしれません。


市場規模が大きいということは、それだけイラストレーターの活躍の場所、プロを目指す若者が多い(最重要)ということです。熾烈な競争世界が形成されていることが容易に想像できます。もちろん、我々日本人も蚊帳の外ではなく、その渦中にいると考えなければいけません。


日本においても、話題になっている中国産ゲームは枚挙に暇がないですね。少女前線、アークナイツ、アズールレーン、崩壊3rd、陰陽師、原神、白夜極光・・・私が原作サイドで関わってるBEATLESSのスマホゲームも、中国bilibiliによる配信、リリースとなります。(日本は未定)


日本のゲームはメーカー内製が多い、という違いもあると思いますが、中国での市場規模拡大、イラストレーター争奪戦とも言える需要の高まりによって、中国企業からの依頼は今では国内よりも多い程です。多くは受注していませんが、私の元にも複数の中国大手配信プラットフォームやパブリッシャーからのコンタクトがありました。また、日本国内メーカーと比べ、平均的にかなり高めと言える金額を最初から提示してきます(具体的な相場感は争いの元になるので秘密ですが)。

中国人の画力の源泉

中国人芸術本当上手。我仰天 流落嫉妬的涙。


自分が美術系学校出身でないこともあり、正直アカデミックな部分、アーティストを養成する機関についてはよくわかっていません。


デッサン、パース、色彩、芸術などの知識はイラストレーションにとって非常に重要ですが、日本のゲーム系イラストレーターの美術系学校出身率はあまり高くないと思います。美術の専門知識が無くても独学で何とかなってしまう、というのが実情です。気軽な部分でもありますが、私自身含め、日本人アーティストの弱い部分でもあると考えています。


対して、中国のゲームアートにおいては、比較的芸術性の高いスキルが求められている気がします。あくまで客観的な所感であり、現場のアートディレクター、アーティストの意見を直接聞いたわけではないのですが・・・中国特有の、繊細で歴史を感じさせるディテールや色彩を盛り込んだ衣装や背景デザインを見た時は、いつも唸らされますね・・・本質的な部分での芸術的な遺伝子、想像力、美への執着を感じます。中国四千年の歴史は伊達ではありません。また、急速な近代化やSNS普及の背景もあり、新しいテクノロジーや流行への感度、分析力も相当に高いと感じます。


あとは、単純に人口ですね。14億人。母数の桁が違うわけで・・・。中国が「途上国」と言われていたのを経験しているのは、我々昭和~平成初期世代が最後です。今や世界をリードする経済大国であり、GDP(世界2位)においても、研究開発(自然科学系学術論文数1位)においても、中国は世界トップ水準を誇ります。大学の教育レベルは欧米がリードしていますが、日本は中国に比べて後塵を拝しています。文明度でのハンディが無くなった以上、圧倒的人口がそのまま競争力に反映されています。質で肩を並べられた上に、10倍の量を生み出すマンパワーがあるのです。過去においては、アニメやゲームは日本が発信し、中国はそれを消費するか模倣する側でした。しかし、気づけばすでに一部では立場が逆転しているのです。発祥は日本だから・・・と胡座をかいている余裕はどこにもありませんね。


イラストだけでなく、造形、フィギュアの世界でもそう感じることが多くなりました。中国オリジナルのIP(知的財産)が増えたことで、日本のフィギュアメーカーの下請けファブから脱却し、原型デザインから製造まで中国国内で完結する市場を形成しています。


中国人の学生が日本人より勤勉である、という傾向はあると思います。

中国の大学生は、日本の大学生のようにアルバイトをすることはほとんどなく、学業に集中する背景があるようです。また、日本語や英語に堪能な方が多く、グローバル志向が高い気がします。


中国人の学問への取り組みや美学は、儒家思想、道教といった思想も影響していると考えています。論語を学ばなきゃ・・・


中国では「寝そべり族」と呼ばれる、過度な競争に疲れて草食系ライフを良しとする若者が増えているらしいですね。そこそこの学があり、生きていくのに困らないだけの金銭的余裕があり、適度に暇で、絵やゲームや漫画が好き…という若者が中国には溢れているかもしれません。色々と持て余した若者がたくさんいる、というのは、絵描きを育てる苗床として十分な可能性を秘めていると考えることもできますね。自分の成り立ちも、ある意味そんな感じだったので・・・とは言っても、絵師界で成り上がるための競争も地獄なので草食ってる奴から死にます。


深センをはじめとした都市部の急速な近代化、高所得化、ネットワーク、ソフト、PCなどのハードの普及なども大きく連動していると考えられますが、社会経済は専門外だし、調べてるとキリ無くなるので深く踏み込むのはやめときます。

中国の同人イベント

アーティストがプロとして活躍できる市場の大きさと同時に、アマチュア、またはプロがライフワークとして同人誌作成、ファン活動ができるイベントの規模、成熟度も非常に重要な文化的要素だと考えています。


中国では性的表現が大きく規制されているため、日本とは多少状況が異なると思いますが、中国でも同人は非常に活発です。女性向け同人誌は比較的NL (Nomal Love) が多めだったと思いますが、BLファンも少なくないです。なんで女子はあんなにBLが好きなんでしょうね・・・

twitter post: 1207926687830138880

コロナ渦となる直前、中国最大のコミコン、中国コミケとも言われる上海COMICUPに招待していただきました。見出しの写真はその時上海で撮影したものです。企業ブースの豪華絢爛さとともに、同人のサークルスペースの規模にも驚かされました(2020のCP28で3000サークル)。日本の同人と違うのは、コスチューム販売系サークルの多さ、コスプレの多さ(一般参加者の三分の一ぐらいはコスプレしてた気がします。冬だったせいかドルフロ系厚着多め)、印刷の多様性でしょうか。総じて、装丁に凝った同人誌が多かったように思います。また、サークルの看板として布系タペストリーを掲出しているサークルが多く、その印刷品質も紙に劣らず非常に高い。コミケではいつも大判ポスターの掲示が大変(丸めた紙ポスターを伸ばす)ですが、布ならそういった杞憂は無いため、日本でも流行らないかなあ、と思いました。長机2~4枚ぶち抜き壁サークルとかもあったので、日本のコミケが(サークルの多さを考えると仕方ないですが)2スペース合体が限度なのに比べて自由度の高さを感じました。


実は、個人を相手に本をオフセット印刷してくれるサービス、日本では当たり前のように普及していますが、世界的に見るとそれほど一般的ではありません。フランスや韓国、マレーシアで同人誌を作成する場合、印刷所探しが簡単ではないと聞きました。印刷代も高く、同人誌の販売価格も日本よりかなり高めです。私が海外のイベントに同人誌を持ち込んだ時も、日本での価格をそのまま持っていくと安すぎて他の参加者に影響する懸念があったため、現地価格に合わせた経験があります。その点、中国には同人印刷の大きな需要が発生しているので、続々と対応業者も現れているようです。同人誌の販売価格も比較的お手頃だったと思います。


フランスで開催されている欧州最大規模コミコン「JAPAN EXPO」にも行きましたが、アメコミや日本の漫画、アニメコンテンツを消費することが目的という側面が強く感じられ、同人誌を作ってる方は稀でした。様々な文化的要因が考えられますが、これは調査不足もあるので考察は割愛。


私自身も、コミケなどのイベント参加を目標として様々な取り組みを続けてきた結果が今につながっているので、同人イベントの盛り上がりは重要だと考えています。

韓国など、中国以外のアジア勢

特にご質問にもあった、韓国のアーティストは以前から特に注目しています。中でもディスティニーチャイルド、ブレイドアンドソウル等で有名なキム・ヒョンテ先生には、私もキャリア初期から多大な影響を受けています。ご本人と、ヒョンテ先生の奥さんでこれまた超絶神絵師KKUEM先生にも日本でお会いする機会がありました。私もBEATLESSのキャラ、紅霞(私のtwitterのヘッダにあるキャラ)で参戦させて頂いた、ディスティニーチャイルドのグラフィックには目を見張るものがあります。UIの完成度も非常に高く、スマホゲームのグラフィックの可能性を見せてくれます。


韓国のゲームと言えば、以前はスマホゲームよりもPCのネットゲームが台頭していました。リネージュ、ラグナロクオンライン、マビノギなど、スマホゲームが普及する前の2010年頃は、PCで韓国産ネットゲームに興じていた方も多いかと思います。


大きなネットゲーム市場が確立されたことで、中国よりも早くから商業イラストレーターの活躍する基盤ができていました。リネージュなどに代表されるリアル系ファンタジー、キム・ヒョンテ先生に代表される、立体感のあるセミリアル系に強みがあると思います。日本の漫画やゲームからの影響は強く受けていますが、欧米や中華系のアートスタイルも程よくミックスされた、日本人とは違った感性で描かれるイラストはとても魅力的ですね。現在の中国のゲームアートも、韓国アーティストからの影響は大きいと思います。


シンガポール、マレーシアのアニメイベントに招待されたときに交流した、マレーシア在住のkiDChan先生のアートも大好きです。


誰がどこの国出身か、というのは実はそれほど把握していませんが、アジア系アーティストの作品は沢山ブックマークさせていただいています。台湾、シンガポールも活況で、多くの優れたアーティストが生まれています。

(Twitter)


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[FANBOX質問箱] 絵師大陸 中国

Comments

私も描く書く側の人間ですが中国の躍進がスゴいとして、彼らは逆に今の日本をどう見ているのか気になりました。ステータスの問題だと思うのですが、映画ならハリウッドというステータスがあり、そこでの成功が世界的メジャーという権威があるように思います。もし、イラストや漫画、他オタクコンテンツにおいても日本での成功がある種のハリウッド的権威として彼らの目標となっているのなら、イラスト漫画アニメ立体造形の自己実現の最終目的地としてのポジションを日本人クリエイターが最低限守らねばと思う次第です。既知の通り中国では中国共産党の影響力が強く、過激な表現や反体制に繋がるコンテンツの検閲は日常的に頻繁に行われています。全てが自由化されておらず、管理された表現の自由という縛りがあることは、それが彼らの日本指向を誘引して、現在その竜の脚の一部が日本でも見えてきたという状況なのかなと素人ながら思う次第です。自由民主主義の中国であったならば完全に日本の存在価値は今よりかなり低かったのではと推察します。  最近G.N.PROJECTという大陸の1/12美少女可動フィギュアを集めているのですが、プロポーションや造形クオリティが素晴らしく、日本メーカー負けたなと思ってます。何より顔が素晴らしく、小さいサイズにもかかわらず眼球が独立可動するのです。値段も安く、付属品の多さを考えると破格値です。レイシアのフィギュアを2つとも持っていますが、redjuice先生の思うところである眼球のクリア別パーツによる独立表現が中国のメーカーなら安価にできてしまうなと痛感しました。いつかG.N. PROJECTのようなクオリティでレイシアの可動フィギュアが欲しいです。長文失礼いたしました。

MASAHOM

初期は日本の影響を受けたであろうイラストが国によって表現が変わってくるところが面白いなと思いました。ありがとうございました!


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