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王【前編】

「さて、ウィリアム。息子のことを説明してもらおうか」 玉座からマキシム王が言う。 50を超え、髪に白いものが交じり始めたものの、185cmを超える長身に肩幅の広い堂々たる体軀は威厳にあふれている。 息子の王子と違い、ガッシリした顎、太く通った鼻筋、くっきりとした目、凛々しい眉、堅そうな髪に髭、と王に相応しい力強さに満ちた風貌だ。 だが、目の前で跪くウィリアムの、人間離れした逞しい恵体の前ではどうしても華奢に見える。 数か月の外遊から戻り、なぜかウィリアムを脇に従えさせ留守の間の報告をした王子の異様な様子は、すぐに察せられた。 爛々と、何かに夢中になっているような、だが上の空の目。 チラチラと横に控えるウィリアムを見上げ、もぞもぞと尻を動かす。 「いい、わかった」 早口で捲し立てる報告を中断させ、王はウィリアムに1人で部屋に来るよう命じたのだ。 「説明、とは…」 玉座の前で跪くウィリアムが落ち着いた声で返す。 その声に動揺は全く見られない。 「お前、あいつを手込めにしただろう」 落ちる沈黙。 広い王間には2人しかいない。 「……申し訳ありません」 聞くものによっては無感情にすら聞こえる謝罪。 フーッ、と王がザリザリと完璧に整えられた堅そうな短い髭を撫で、溜息をつく。 「まあどうぜあいつが命じたのだろう」 王の寛大な言葉にも、ウィリアムは黙したままだ。 いくら事実であろうと王族の者に責を帰すことなど言えようもない。王もそれはわかっていた。 「だが、命令とはいえ王子を配下の男が辱めるなど言語道断」 当たり前だ。 こんな事実が明らかになればどうやったって王子の威光は落ちる。 だから王もこうして、誰もいない、完全密閉の、どんな砲撃にも耐えうる厚い大理石で作られた王間で、話しているのだ。 「どのような罰でもお受けします」 ウィリアムの言葉に、王がハッ、と息をつく。 ウィリアムに実効性のある罰を与えるのは難しい。 本人及び大貴族である家族に経済的な制裁を与えるのは、それ相応の理由が開示されて行わなければ耳目を引くだけである。 かと言ってウィリアム本人を肉体的に罰するのも困難だ。 選ばれた血筋の、文字通り鋼の肉体と精神。 武器を持ってしてもその常人場なれした肉体を傷つけるのは困難だし、痛みを抑え込む精神力も併せ持っている。 近衛兵として当然の資質だ。 また誰がその役割を担うかという問題もある。 王は溜息をつくと座ったまま伝令管を取り、命じた。 「私だ。今日から…そうだな、数日は休養にあてる。誰も部屋には来るな」 真意のわからぬ王の命令にウィリアムは顔を上げた。 伝令管の先の臣下も困惑したらしいが、 「食事は必要な時に呼ぶ。公務は王子に任せろ。昨日まで数か月やって来たんだ、できるだろう」 そう言って一方的に終わらせた。 つ、と王が座ったままウィリアムを見下ろした。 顔を上げてしまっていたウィリアムと視線が合い、ウィリアムはサッ、と頭を下げた。 瞬間、肌が粟立つような妙な感覚がした。 金色の王の目を、もろに見たからだろうか。 「よい、顔をあげろ」 王が立ち上がりながら言う。 バサッ、と分厚いビロードの深紅のマントを外し、玉座にかける。 「ウィリアム」 「はっ!」 王の言葉にウィリアムは立ちあがり直立不動となる。 王は分厚いガウンやクラヴァットも脱ぎ捨て、上質な白い絹のシャツ1枚になる。 王がウィリアムを見上げる。 2人の身長差は30cmを超える。 「お前への折檻は私が行う」 王の言葉に、染みついた従順さが「はっ!」とすぐさま返事をさせたが、王の真意は読めなかった。 折檻……王自身に王笏等で嬲られるのだろうか。 しかしそんな程度では…。 不動で立ち尽くしていると王が凛々しく太い眉を上げ、「お前も鎧を取れ、それから下に降りろ」と命ぜられた。 言われるままに薄い鎧を脱ぎ捨て、下着1枚になり極限まで鍛え抜かれたはち切れんばかりの筋肉隆々の体を晒す。 トン、と王に軽く脇腹に拳を当てられた。 訝しげに見ていると、フン、と鼻を鳴らし先に広間に降りていく。 ……王は我々の屈強さを理解しているのだろうか。 ズシッ、ズシッ、と王の後に続きながら普段考えもしないことを考える。 大貴族の跡継ぎとして、ひたすら王家への忠誠、名声のためだけに生きてきた。 王子のような例外を覗いて、王家の人間が近衛兵たちに関わることは、隊長を除いてない。 ……王の罰には、苦しむ素振りを見せた方が良いのだろうか。 正解のわからぬ命題を抱えていると、王がくるりと振り返った。 ウィリアムも足を止める。 「さて……」 そう言って王が体をほぐすように首を回し、肩を回す。 軽装だが、両腕には王の証である金の腕輪だけが前腕に残されていた。 「お前には、これから私の満足するまで、一戦交えてもらおう」 王の言葉にウィリアムは隠しようもなく困惑した。 一戦交える。 ウィリアムは王より30cm以上高く、体重は3倍ではきかないだろう。 筋肉量など比べるのも恐ろしい程の差。 王も逞しい体付きをしているが、50歳を過ぎているし、まともに戦える相手ではない。 ウィリアムが本気で殴れば、一撃で絶命するだろう。 「……一戦交える、というのは…」 不敬を承知で、確認をしてしまう。 王が頷く。 「殴り合いだ。私もたまには体を動かさねば鈍る」 答えを得ても困惑が解消されることはない。 「私が殿下に、……危害を加えるなど…」 言葉を選ぶウィリアムに王がフン、と笑う。 「こんな老人では勝負にならないと?」 王の言葉にウィリアムはすぐに頭を振る。 「そんなことは…」 「じゃあ私の腹を殴ってみろ」 そう言ってポンと己の腹を叩く。 体脂肪の見当たらない引き締まった平らな腹であることが、シャツ越しでもよくわかる。 しかしウィリアムの豪腕に耐えうるようには到底見えようもない。 動けぬウィリアムに王が眉をひそめ、「命令だぞ。早くしろ」と顎をしゃくる。 「……では」 ゆっくりと距離を詰め、王の前に仁王立ちになる。 ウィリアムの猛々しく筋肉の盛り上がる巨体に王の体はすっぽりと覆われるようだった。 幅も厚みもまるで勝負にならない。 ウィリアムに肉迫されると、相当の重圧を感じるはずだが(樽のような大胸筋が眼前に迫るのだ)、王は態度を変えない。 「どうした、早くしろ」 両手を腰に当ててそう言う。 ウィリアムはこれまでにない緊張に襲われていた。 自分の筋力は並みの人間とは比べ物にならない。 手加減しても、常人にはスーパーヘヴィー級の一撃にも勝る。 かと言って、触れるようなそれでは王を侮辱したことになるだろう。 フーッ、と息をつく。 衝撃を与えるが、骨や筋肉にはダメージを与えない威力。 ウィリアムのパワーのキャパシティからすると薄紙数枚の調整。 「……失礼します」 そう言うとウィリアムはドンッ!と軽く引いた拳を王の腹にぶつけた。 ゴッ。 「おい、真面目にやれ」 ウィリアムは咄嗟に声が出なかった。 手加減は充分すぎるほどした。 だから王が普通にウィリアムの拳を受け止め、平然と言葉を返すのも当然と言えば当然である。 だが、なんだ?この感触は。まるで……。 「聞いているのか?」 下から眉を上げてウィリアムを見る王の迫力に思わず、ハッ!と反射的に鋭く返事をしたそのまま、手加減が曖昧になってしまった一撃をぶち込んでしまう。 ゴッ。 「なッ…!」 「……おい」 ウィリアムは不服そうな王の言葉より、手加減が残るとは言え先程とは比べ物にならない威力(それこそ、以前オナホにしたヴォルフが相手なら内臓が破裂し、肋骨が数本へし折られるような)で叩き込んだ拳が、再び1mmも王の腹にめり込まず、表面に触れるに留まっていることに驚愕を隠せず、思わず声を漏らした。 微動だにしない王とウィリアムの猛烈な拳に挟まれ、逃げ場を失ったシャツが裂け始めていた。 どういうことだ……。 物理法則が乱れたような状況にウィリアムの思考が行き詰まる。 ウィリアムは約300kg、2m越えの筋肉男だ。 その一撃を、80kg程度の50代の男が直立不動で、一歩も引かずに蚊でも止まったかのように受け止めている。 人の体とは思えぬ、とんでもない密度で詰まった感触、奥行き数十メートルは続く大理石の塊のような、圧倒的な存在感。 「……私を無視するとはいい度胸だな」 王の言葉にハッとする。 ウィリアムより数十㎝低いにもかかわらず、威厳という言葉に留まらない、強烈な圧を感じる。 ……その体が巨大化していくような。 「も、申し訳ありません…」 ウィリアムの言葉に王は、 「次が最後のチャンスだ」 と言った。膨れ上がるオーラ。 「本気で殴れ。いいな」 王の言葉に唾を飲む。 命令を聞かなければ自分は…。 圧に潰されそうになっている自分に気づき、フーッ、と息を吐き丹田に力を込める。 命令、これは命令なのだ。 グッ、と腰を落とし、腰だめにグゥッ!!と拳を握り込む。 並外れた分厚い広背筋と極太の腕の筋肉が盛り上がる。 メギッ!!!ビギッ!!!と音を立てるほどのバルク。 「……行きます」 ウィリアムの肉体は、久しぶりに出す本気に、知らず高揚していた。 太い血管がメリメリと浮き上がり、アドレナリンに全身の筋肉がメリメリと盛り上がる。 大砲が発射される前のような、異様な緊張感。 「ハァッ!!!!」 あまりの速度に、ズバンッ!!!と空気が引き裂く壮絶な音と共に射出されたウィリアムの巨大な拳は、青銅の城門を一撃で崩壊させるような凄まじい威力だった。 踏み込みの強さにウィリアムの足元の床が砕ける。 ゴウッ!!!と風圧で王の服が千切れる。 だが。 ゴッ。 先程と全く変わらない、味気ない衝突音。 全ての威力が一瞬で霧散する。 王の腹筋は、信じられないことにウィリアムの拳の侵入を1mmも許していなかった。 1mmもだ。先の2発にまるで差を感じないような。 威力に破れた服の下から、年齢にしてはみっしりと筋肉の盛り上がった腹筋が除いている。 だが、そもそも人体が耐えられるパワーではないはずなのだ。 爆撃のような一撃が放たれた直後とは思えない、時間が止まったようなピンと張った静寂の中で、唯一、これまでと違う変化があった。 メキャッ…。 「……………」 ウィリアムの拳が、軋んでいた。罅が入っているかもしれない。 ウィリアムは動揺した。 生まれながらにして並外れた強靱な肉体を誇ってきたウィリアムが、ダメージを負ったことなど記憶にないほど昔のことだ。 それが痛みなのかどうかも確信が持てない。 「……これが本気か?」 何も変わらぬ王の豊かなバリトンの声にウィリアムの体は本能的に震え上がった。 「嘆かわしい…精鋭の近衛兵でこの程度とは…」 淡々と続けられる王の言葉に脚が震えそうになる。 なんだこれは……恐怖……? 知らない感情にウィリアムの内面はせめぎ合っていた。 王がウィリアムを見上げる。 ゾクッ、とうなじがざわめく。 普段と全く変わらないその目。 「手本を見せてやろう」 王が軽く拳を握る。 「腹に力を込めろ」 動揺が収まらないまま、王の命令に慌てて腹筋に力を込めようとし、いや、と、王の体軀、自分の半分もない腕の太さを改めて見下ろし、態度を決められないでいるうちに、王の拳がウィリアムの腹にぶち込まれた。 それはなんてことのない軽いジャブに見えた。 しかし……。 ドゴォッッッ!!!!!!!!!!! 「ガッハッ……!!!!」 大砲すら通さぬウィリアムの分厚い腹筋が一瞬でぶち抜かれ、臓物を潰されていた。 体のくの字に折られ、300kgの体軀が一瞬浮き上がる。 「柔いな…」 王があっさりと拳を引き抜くと、ウィリアムは両腕で腹を抱えたまま跪き、迫り上がる吐瀉物を必死に堪えていた。 なんだ今のは…!?!? 生きてきて、感じたことのない威力。 数百kgある岩の塊をぶち込まれたような、物理法則を超越したような王の拳。 ウィリアムが、素手の殴り合いで膝をつかされたのは初めてだった。 額に脂汗を浮かべ王を見上げる。 王が無造作に髪ごとウィリアムの髪をガシッと掴んだ。 「グウッ!?」 頭皮を引き剥がされるような痛みを感じた瞬間、跪いていたウィリアムの膝が浮いた。 メギッ!!!!ビギッ!!!!! 300kgあるウィリアムの体を、片腕で軽々と吊し上げる王の、見た目にそぐわぬ理解を超えた怪力にウィリアムは目を剥く。 そんなウィリアムに視線を合わせたまま、王が息も切らさずに言う。 「ウィリアム、なぜ、単体で一軍団を壊滅させうるほど程の近衛兵たちが、我々王家に大人しく従っていると思う」 場違いな唐突な問いに、理解が追いつかない。 「はっ……それは我々の王家の忠誠が…」 ウィリアムの回答に王がフンッ、と鼻を鳴らしウィリアムを解放する。 ドサッ、と落とされたウィリアムが肘をつき、痛みを堪え、王を見上げる。 「人間も所詮動物。忠誠などいざというときにはなんの役にも立たん」 思慮深い王の口から出る言葉とは思えず、ウィリアムは思わず目を見開いた。 と、王の手首を彩る金の腕輪が、メキッ!!!ギヂッ!!!!と異音をたて、今にも弾けんばかりに震動しているのが目についた。 遅れて王も目を落とし、限界か、と呟く。 そのまま視線を這い蹲るウィリアムに戻した。 「動物が服従する条件はただ1つ。己では到底かなわぬ、圧倒的な力を誇る雄の存在だ」 そう言いながら、王が腕輪を外す。 「見せてやろう」 王が初めて笑った。 その目の奥の光にウィリアムが総毛立つ。 その瞬間だった。

Comments

もう王という概念だけで興奮できるようになりました……(???)

hage

300kg超えたウィリアムくんが、王様に蹂躙される……! は、はやく……!

まーく

トミーロッドまーーーじで最高ですよね。トリコなんかマジで一瞬で圧倒できる筋肉量… あの興奮が目標です。

hage

あぁ~良かったです!! そうなんですよ、コメント書いたときから構想はあって…。 後編も楽しんでもらえるよう頑張ります!!

hage

おれほんとこういうの好きです、、トリコのトミーロッドに性ヘキを破壊されたので❣️❣️ 暴君みたいに振る舞ってたウィリアムだけどそれを圧倒的に従える王がいましたね!!めちゃくちゃ楽しみなエピソードになりそうです

な、なんというお預け!なんという生殺し!これはもう既に期待感で堪りません!ついに大台を超えてきたと思った300kg級のウィリアムがまさかのやられ側になるとは!でも確かにフラグはコメントでありましたねw そして王……絶対的力の象徴という存在があの化け物筋肉モンスターのウィリアムを既に赤子扱いしているシチュエーションにとても興奮します!あれ程の力と肉体を持った若い雄は無意識の内にでも仕えている主をみくびっていた事を、思い上がっていた事をこれから体でわからせられるんですね……!堪りません!筋肉量=強さの世界で、一体この筋肉王はどれ程の爆肉を秘めているのか……。力を無理矢理抑え込むような道具を使っていても抑えきれないような表現も堪らないです! 己では到底敵わぬ圧倒的な力を誇る雄の存在、という説明に続くのが、見せてやろうという言葉……見せるだけで「わからせきってしまう」事を確信しているその余裕、もう続きが見たくてたまらないです!

デン


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