「……魔王様」
「フレイヤ……」
オーディンの指がそっと彼女の髪をすくい上げ、頬にかかる一筋をなぞった。
フレイヤは目を閉じ、静かにその胸へ身を預ける。
厚い胸板に伝わる鼓動が、優しい魔力の波のように彼女を包む。
「……こうしていると、すべてが夢のようです」
「ふふ、こうして夜を過ごすのは、いつものことだろう?」
灯りの揺れる寝室に、静けさと温もりだけが満ちていく。
「……ええ。けれど、今夜もやはり――幸福です」
オーディンは微笑み、そっと唇を重ねた。
互いの呼吸が溶け合い、時間が静かに止まる。
そして――二人の寄り添う影は、朝の光が差すまで重なり続けていた。