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[Go, Occult Research Club!]イケ!オカケン第四話:Stage.1「白い亡霊と蒼い閃光」

夜のワルハラ峠。
月明かりが薄く照らす道は、静寂に包まれている。
オカ研のメンバーは、不気味な沈黙の中で慎重に調査を開始していた。

島田「ここが……ワルハラ峠か。」

島田は地図を確認しながら、険しいカーブが連なる峠道を見つめる。
その眼差しの先には、今にも何かが現れそうな禍々しい空気が漂っていた。

樹里「噂通り、ひと気がないね……」

樹里は周囲を警戒するように見回しながら言う。
蒸し暑い夜のせいか、汗ばむシャツの胸元を開き、風を入れようとする。
たわわな胸元が無防備に露わになり、思わず島田は視線を逸らした。

島田「し、白銀先輩、次はどこを調べれば……?」

焦りながらも話題を切り替えようとする島田に、白銀先輩は涼しげな瞳で答える。

白銀「次は、この峠で“白い亡霊”が現れたというカーブを調べるわ。痕跡が残っている可能性が高いから」

島田「亡霊……」

島田がゴクリと唾を飲み込んだ瞬間、峠の奥から不気味なエンジン音が響いた。
エンジン音は重低音で、まるで怨念のように唸りを上げながら近づいてくる――。

「来た!!」 白銀先輩が冷静に言葉を発し、すぐに道路の方へ目を向けると、闇の中から白煙を上げながら現れた一台の白いボディの車——RX-7が、尋常ではないスピードでカーブを切り抜ける。ヘッドライトはついていないが、月光の下でその車体が滑るように駆け抜けていった。

「な、なんだ!? あれは!?」 島田は驚きの声をあげ、目を見開いた。

「まさか、あれが噂の走り屋幽霊?」 白銀先輩が冷静に言葉を紡ぐ。

その直後、RX-7を追うように、青いGT-Rが猛スピードで現れる。

「うわ、すげぇ……速すぎる!」 島田はそのスピードに驚き、思わず叫ぶ。

「信じられない……あの白い車、まるで空を飛ぶように走ってた。」 樹里が双眼鏡を覗き込みながらつぶやく。

「そうね……あれは、ただの走り屋ではない。」 白銀先輩は何かを感じ取った様子で言った。

「椋島蓮華(ムクシマ レンゲ)」は、天童寺大学に通う女子大生であり、密かに裏の峠道で『二代目ワルハラの青い閃光』としてその名を知られる走り屋だ。スタイルのいい美人で、普段は冷静沈着。しかし勝負となると決して引かない強い意志を燃やし、どんな相手にも妥協を許さない――そんな姿勢が、彼女を峠の闇に引き 寄せた。

今夜、彼女が挑んでいたのは、因縁の相手だった。

蓮華「負けない! 絶対に!」

ハンドルを握る手に力を込めながら、蓮華はGT-Rのアクセルを深く踏み込んだ。轟くエンジン音が、ワルハラ峠の闇を引き裂く。しかしその前方、闇の中を疾駆する白い影――ヘッドライトも点けず、滑るように峠を駆け抜けていくRX-7の姿は、まるで幻のようだった。

蓮華「どうなってるんだ、あの車は!?」

追いつこうと必死に喰らいつくが、RX-7は一切の乱れもなく、まるで人間の限界を超えた存在のように道を滑っていく。その挙動に、蓮華は焦りと恐怖を感じながらも、走り続けた。

——この相手に勝たなければならない。なぜなら、蓮華にはどうしても果たしたい理由があった。

蓮華「……あいつに勝たなきゃ……兄貴が目を覚まさない気がする…だから今度こそ!」

それは、かつてこの峠で同じRX-7とバトルを繰り広げた兄のこと。兄はレースの直後、原因不明の意識不明に陥り、今も病院のベッドから目を覚まさない。誰もその理由を説明できなかったが、蓮華だけは確信していた。このRX-7と、兄の昏睡には何か因縁があると。

そして、ついにレースは終わる。

峠を一周しGT-Rが頂上に差し掛かった時、すでにRX-7の姿は消えていた。

蓮華は車を停め、静かに車外に出る。そして、悔しげに呻いた。

蓮華「……また、負けた……」

そのとき、背後から声が響いた。

「ほほう……あれは、ただの幽霊ではないのう。」

およそ深夜の峠道に似つかわしくない、幼い少女のような声が聞こえた。

蓮華が顔を上げると、そこには三人の学生が立っていた。

一人は銀色の髪を揺らし、理知的な眼差しを向ける少女――白銀 杏。

隣には、元気な雰囲気を纏ったギャル少女・大場 樹里と、手に資料を持った大柄な少年、島田 徹が立っている。

白銀「私たちは割原学園のオカルト研究部。あなたが今、戦っていた相手……あれは、私たちが追っている“幽霊走り屋”よ。」

蓮華「オカ研……? 何のつもり?」

心霊スポットには必ず興味本位でやってくる連中がいる。
蓮華は警戒を隠さず問い返すが、白銀は落ち着いた表情のまま続けた。

白銀「最近、この峠で“選ばれた走り屋”だけが遭遇するという白い亡霊の噂がある。挑んだ者は皆敗れ、時には事故に巻き込まれる。それも……調べた限りでは、『青い閃光』――あなたの“兄”が最初の被害者だったようね。椋島 蓮華さん。」

蓮華「……やけに詳しいのね」

最初の被害者、『椋島光(ムクシマ ヒカル)』の写真を差し出す白銀先輩の言葉に、蓮華の瞳が鋭く光る。

過去の出来事を持ち出され、心の奥に封じ込めた痛みが揺さぶられる。

その白銀先輩の言葉に、隣にいた島田が驚いたように目を丸くする。

島田「初耳なんだけど……」

樹里「怖ッ……」

突然明かされた衝撃の情報に、島田と樹里は思わず身を強張らせた。白銀先輩の口から語られる、自分たちの知らなかった真実に、どこか畏怖のような感情すら覚えていた。

彼女は、二人が想像しているよりもずっと深く、この事件を追っていたのだ。

白銀「ごめんなさい。でも、確証がなければ言えなかった。」

その静かな言葉に、島田くんと樹里ちゃんも納得したように小さく頷いた。

蓮華は三人の様子から、これはただの好奇心ではないと察した。むしろ、彼女と同じように、この峠に潜む何かを暴こうとしているのだと。

そして、風が吹いた。

???「おぬしの走り……悪くなかったぞ。」

その声は幼い響きながらも、不思議な重みを帯びていた。

振り向いた蓮華の目の前に現れたのは、小さな女の子の姿をした精霊的存在――お玉様。

「お玉様……!」

オカ研の三人が同時に声を上げる。

彼女は学園に古くから伝わる霊的守護者であり、学園の霊の異常を正す役目を負う存在だった。

白銀と島田にとっては、すでに何度も共に事件を解決してきた“特別な存在”であり、樹里にとってもその存在は“本物の守護霊”として認識されていた。

だが、今――そのお玉様の姿が、なぜか樹里や蓮華にもはっきりと見えている。

お玉様は蓮華の前に立ち、まっすぐにその瞳を見つめた。

お玉様「おぬし……本気で“あれ”に挑む覚悟はあるか?」

お玉様の不思議な威圧感、そしてオカ研の三人の真剣な表情に、蓮華は一瞬たじろいだ。

だがすぐに顔を上げ、毅然とした声で答える。

蓮華「……あるよ。兄貴のためにも、私自身のためにも、絶対に負けられない。」

その言葉に、お玉様は静かに頷いた。

その小さな体から放たれる重厚な気配に、蓮華は思わず息を呑む。

お玉様「ならば次の走りは、“勝ち負け”ではない。“魂を救う”ための戦いとなる。」

その瞬間、風が一陣吹き抜け、蓮華の髪が揺れた。

お玉様の視線が蓮華の瞳の奥底まで貫くように射抜く――その瞳には、蓮華の覚悟がしっかりと映し出されていた。

蓮華「私の兄さん、数年前にこの峠で事故に遭って、それっきり意識が戻らないの。

……誰も原因がわからなくて、警察もただの単独事故だって言ったけど、私は信じられなかった。

兄は、そんな簡単にミスする人じゃなかったから……しかも得意のホームコースでよ?

ずっと、何かがおかしいと思ってた。だから私、自分で真相を確かめようと思った。

気がついたら、兄と同じGT-Rを買って、同じように走ってた。

馬鹿だよね……けど、それしかできなかった、最初は“ただの噂”だと思ってた。だけど、今日……あんた達の話を聞いて確信した。

あの“幽霊のRX-7”と兄の事故は、きっと繋がってる。私には……倒さなきゃいけないっていう、変な確信があるの

もしあの幽霊を倒せば、兄の魂は戻ってくるかもしれない……。

だから私、逃げられない。この峠で……あいつに、勝たなきゃいけないの」

そう言い切る蓮華の瞳には、強い決意の光が宿っていた。

そうしてひととおり落ち着いた頃、四人は改めて互いに向き合い、静かに自己紹介を交わした。

そして、それぞれの立場や事情を確認し合いながら、これからどう行動すべきかを慎重に話し合った。

蓮華「けど……どうやって勝てばいいの……」

蓮華は肩を落とし、夜の闇に溶け込むような峠道をじっと見つめていた。

悔しさと、どうしようもない無力感が胸を締めつける。

その沈黙を破るように、白銀が静かに一歩、前へと踏み出した。

風に銀の髪が揺れる。

白銀「蓮華さん、今夜……もう亡霊とは勝負できないの?」

その問いに、蓮華は小さく首を横に振る。

蓮華「ううん。あいつ、環状ルートを走ってるだけみたいで……。走ってれば、向こうから姿を現すの。一晩に三度、挑んだこともあるよ」

白銀は静かに目を細め、そして確信を持った声で言った。

白銀「……勝つ方法、ひとつだけあるわ」

島田「え?」

島田が驚きの声を漏らす。

その場にいた全員の視線が、白銀に集まった――。

島田「それって……どういう意味ですか?」

白銀先輩は風に揺れる銀髪をなびかせながら、冷静に告げた。

白銀「お玉様の力を借りるのよ。蓮華さんに“憑依”してもらえば……あの幽霊車に対抗できるかもしれない。たとえ今は勝てなくても、正体の手がかりくらいはつかめるかもしれないじゃない」

蓮華「憑依って……?」

驚愕する蓮華。その瞬間、空気がひんやりと変わった。

お玉様「のうのう、わらわがこの娘に取り憑いて走ればええんじゃな?」

いつの間にか、当たり前のように現れたお玉様が、にこりと微笑む。

蓮華「ちょ、ちょっと待って! それで勝っても、私じゃないなら意味が――!」

抗議する蓮華の身体がふっと揺れた。そのまま、意識を失ったかのように、彼女の瞳が閉じる。

そして――。

お玉様(憑依)「ふふ……生徒の没収品にあった“マリオカート”で鍛えたわらわの腕前、見せてやるわ!」

その様子を見て、島田がぽつりと呟いた。

島田「……マリオカートで鍛えたって、大丈夫かよ……」

樹里「祈るしかないわね。バナナでスリップしないことを」

樹里ちゃんが肩をすくめて、小さく笑った。

お玉様に憑依された蓮華の身体が、静かにGT-Rへと乗り込む。

エンジンが唸りを上げ、タイヤがアスファルトを焦がす音を響かせた。

島田「……え、俺も!?」

突然、背後から押されるようにして、島田はGT-Rの助手席へと押し込まれる。驚きの声が夜の静けさに跳ねた。

白銀「仕方ないでしょ」

白銀先輩は淡々と答えると、タブレット端末を島田に手渡す。

「お玉様に憑依された蓮華さんと、あなたとの霊的なつながりが切れたら危険なの。何が起こるかわからない。だから、すぐそばにいてもらうしかないのよ」

島田「いやいやいや、なんで俺が……!」

樹里「ダーシマ!ガンバッ!!」

ぼやきながらも、島田は観念してシートベルトを締め、手元の端末に目を落とした。

お玉様と自分は、霊的に強く結びついている。距離が離れすぎれば、蓮華の身体にどんな影響が出るか予測もつかない――それは、本人が一番よくわかっていた。

隣の蓮華はすでにお玉様に意識を明け渡し、妖しく光る瞳でハンドルを握っていた。

お玉様「のう……ようやく“わらわのマシン”の準備が整うたわ」

蓮華の口から発せられたその声は、完全にお玉様のものだった。

島田「……なんで俺だけ、毎回こんな目に……」

島田が小さくぼやくが、その声はエンジンの轟音にかき消される。

GT-Rは咆哮を上げ、夜の峠道へと飛び出していった。

つづく

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