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「ちょっと強引な人が好き」とエロ漫画を考える①

 「ちょっと強引な人が好き」という言い草がある。

 みなさんも一度くらいは耳にしたことがあるんじゃないだろうか。でも口にしたことはない人が多そう。それくらいの距離感にあるフレーズな気がする。

 そういえば、ジジェクという哲学者(?)が、「象徴界とは、自分が信じているものではなく、他の誰かが信じていると自分が信じているものだ」みたいなことを言っていたのを今思い出した。

 「象徴界」というのは「常識、ルール」みたいな感じのもので、確かに「常識」って自分で強く信じているわけではなくって、みんなが信じていると自分が信じているものだよな~、と思う。

 それで言えば、「ちょっと強引な人が好き」というのも、ある意味での「常識」みたいなものかもしれない。「人はちょっと強引な人が好きらしいよ、オレは知らんけど…。」というカンジ…。


 とはいえ、人類みなが「ちょっと強引な人」が好きだとも、これまた信じられないだろう。なんなら、たぶんインターネットとかにどっぷり浸かっている我々は、「ちょっと強引な人が好き」と言うようなひとたちのことを、正直、基本的にはぼんやりとバカにしていたりするんじゃないだろうか…?

 「ちょっと強引な人が好き」と言いそうな人を思い描いてみると、まあまず基本的には女性になるだろうが、それも、あまりインターネットにどっぷりとかではなく、ましてやフェミニズム活動などいっさいしないタイプに限られるだろう。一昔前の少女漫画を読んだり、一昔前のTVドラマの恋愛を楽しんだり…。これまた一昔前のネットの言い方になるが、「スイーツ脳」みたいな人たちが思い描かれるんじゃないだろうか。


 一昔前のインターネット、といえば、「mixi」という、どちらかと言えばリア充寄り向けのSNSが流行っていた。

 chocobeamのオタク仲間の女性に、「~~姐」と呼ばれるタイプの女の子がいた。低いドスの効いた声で喋り、群れず、むしろ後ろを人がついてくるタイプの頼りになる女子だった。

 そんな彼女が、「あ~…わたしも昔mixiで「『ちょっと強引な人が好き』コミュ」に入ってたわ」となにかの会話の流れで口にした。彼女としてはサラッと流れていくはずの一言だったのだろうが、聞いていた我々は爆笑した。そのこと自体が、「~~姐」と呼ばれるタイプの人は「ちょっと強引な人が好き」コミュには普通入らないだろう…という人物類型の期待を示しているといえるかもしれない。

 

 そしてある日、それまでは普通に恋愛などをしていたのに、ある日オタクになってしまった後輩の、頭脳明晰な女の子をイベント会場で「~~姐」に紹介することになった。

 急なおたく世界も怖いだろう、ましてや「~~姐」などいっそう怖いかもしれない、と思った我々は、場を和ませようとして、

「この~~姐さんは…、昔mixiで『ちょっと強引な人が好き』コミュに入っていた人です」

ちょっと強引ってどれくらい強引なんですか?」

「腕を掴んでオラこっち来いよ、とか言うんですか?」

「その声ってどんくらいデカいんです?」

「腕を掴むときの握力って何kg~何kgくらいですか?」

などと駄弁っていた。

 すると、頭脳明晰な女の子は「違いますよ! 「ちょっと強引」ってのは、そういう定量的なものじゃなくって、「こっちが思っているよりちょっと強引」ってことなんですよ!」と言ったのだった。

 

この答えにchocobeamはぶったまげた。もちろんみんな「ちょっと強引」が定量的なものでないことくらいはわかっていたから、あえて何kgとか定量的に訊くことがギャグになっていたわけで、ある意味ではマジレスが来たことにもぶったまげた。

 しかし何よりぶったまげたのは、その瞬間サラっと啓示されたその「こっちが思っているよりちょっと強引」な人間がモテる、というテーゼは、これは「壁ドン」を好む「スイーツ脳」な人々の間だけではなく、人類共通で受け入れられる真理なのではないか?!という思いが、稲妻のようにひらめいてしまったからである。

 そしてそこに、オラついたレイパーまがいの体育会系のようにぼんやりイメージされていた「ちょっと強引な人」像を大幅に更新する、あまりに繊細な技術を持った「ちょっと強引な人」像が見えてくるのである。

 

(続く)

「ちょっと強引な人が好き」とエロ漫画を考える①

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