(前編 → https://teopi.fanbox.cc/posts/4670299 )
「さっっむっ!」
孤島の海風が容赦なく地肌に吹きつける。撮影への緊張と相まって、普段は標準サイズで剥けている俺のチンコは極限まで縮こまって皮がずっぽりと被ってしまっている。金玉も皮膚が引き締まって高い位置に引っ張られ、まるで子供のちんちんだ。
死ぬほど恥ずかしいが、きっとこういうのは堂々としてる方が羞恥心がまぎれるはずだ。俺は中途半端に隠そうとはせず、普段となんら変わりないそぶりでヘッドセットを首にかけた。
「おぉ、いい脱ぎっぷりだねぇ、音声君」
否、堂々としててもめっちゃ恥ずかしいんだが?!俺は全部脱いだのに、ポンさんは上裸姿で俺のことをじろじろ見ている。
「えー、なに?最近の若いのはチン毛まで整えてるのか?」
「いや、これは元カノが陰毛のもじゃもじゃが苦手で、その頃トリムしてたのが習慣づいただけで――っつうか、そんな見ないでくれます?」
「あぁ、すまんすまん!ほらっ、俺のも見せてやるから!」
「いやいや、見せなくていいっすから」
ポンさんははしゃぎ気味にバタバタとズボンと白ブリーフを脱ぎ捨てた。
「ほらほら、好きなだけ見ていいぞ!」
「あー、はいはい、どうもありがとうございます」
腰を振ってチンコを見せてくるおっさんはまさにたぬきの置物そのものだった。腹はポッコリと出てるし、陰毛に半分隠れてるチンコは短小包茎だし、対照的に立派な金玉は重くぶら下がっている。これは俺をリラックスさせようとしているのか、それとも楽しんでいるだけなのか……
「いいっすから、早くマイクチェックやりましょう」
「へぇへぇ」
「マイク位置オッケー……設定オッケー…と、お願いします」
「テスト―マイクテスト、アイウエオ―アカサタナ、アイウエオ―アカサタナ」
「オッケーっすね」
「よし、いつでもスタンバイできるな」
淡々といつものようにマイクテストを済ませるが、それをしている二人はやはりフルチン姿だ。裸で機材を使うことなど普段はあるわけもなく、動作がいちいちぎこちなくなってしまう。動くたびにミニチンがぷるぷると揺れるし、マイクのコードが背中や腰に触れる度に冷たくてビクッとしてしまう。なにより、付き合いの長い仕事仲間と裸を見せ合っているという感覚がどうしようもなくこそばゆい。
ポンさんは気にしていないようだが、俺は最悪紺野さんにだけは見られまいと海に体を向けて森林の準備を待った。外気に晒された肌を少しでも温めようと、腕と太ももをさすった。
~
「ではスタンバイです!森林さん、よろしくお願いします!3-2-1、どうぞ!」
ケツ丸出しで仁王立ちする男の後ろ姿から撮影は始まった。
「このような格好で大変失礼いたします!これからみそぎを行うのですが、ご覧の通りみそぎは裸で行うのが島のシキタリとなっており、私もそれにならい、生まれたままの姿で挑みたいと思います!では早速、行ってきます!」
オフではチャラいくせに、いざ撮影が始まると森林は台本のセリフを忠実かつ流暢に読み上げた。さすがプロというところか。さりげに背筋を見せびらかしているのはやはり鼻につくが。
ポンさんは真剣な表情でカメラのワイプを確認している(だが全裸だ)。俺は森林の声が入るようにマイクを頭上に持ち上げる。マイクポールは両腕を上げて持つため、前はまったく隠すことができない。むしろ背すじを伸ばして腰を前に突き出しているので、股間を見せびらかすような体勢だ。
森林が肩まで水に浸かったのを合図に、俺とポンさんも海に踏み込んだ。海水は肌が麻痺するほど冷たく、俺は小刻みに震えてしまう。かなり浅瀬なので立つとちょうど尻が水面から出ている格好で、局部を水面下に隠すこともできない。
祈りの言葉を唱える森林を近距離で撮影する。ポンさんはゆっくりと移動し色んなアングルからマッスルボディーをカメラに収める。動くたびにポンさんの濃く生い茂ったチン毛が水面をふよふよと浮遊する。俺より背の低いポンさんのとんがりコーンはちょうど水の中に隠れている。
他のスタッフたちはこの滑稽な撮影風景をどんな顔で見ているのだろう。ふと陸側に目をやると、なんとプロデューサーが予備のカメラでこちらを撮影している。ギョッとした俺に気付いたのか、ヤマザキは指をさして「向こう向こう」とジェスチャーした。撮影に集中しろということだろうか。いやいや、何勝手に撮ってンだよ――俺たちはケツ丸出しなんだが……
「森林さん、みそぎを終えてみてどんな気持ちですか」
祈りは終わったようで、最後のコメントが始まる。
「そうですね、こんな気持ちが引き締まることって普段の生活ではないですよね。すごく寒いはずなんですが、それを感じないというか、意識が感覚を超越しているというか、言葉にするのが大変難しいですね」
ンなわけあるか!こちとら、とばっちりくらって全裸でガクブルなんだが!
森林はつらつらとわざとらしいコメントを続け、すぐにポンさんは満足そうな表情を見せた。
「これだけ撮れば大丈夫でしょう。お疲れさまでした、戻りましょう」
「お疲れっした!」
すぐに軽い調子に戻った森林は股間が水の中に隠れるよう少し腰を落としたまま陸へと漕ぎ出した。俺はというと、機材を濡らさないためにやはり体勢を下ろすことも前を隠すこともできず、堂々とチンコを晒して海岸へと歩いた。そしてヤマザキは浜から相変わらずこちらを撮影している。
「森林さん!そこら辺で止まって、そうそう!カメラと音声もそのまま!」
海岸に近づくとヤマザキが俺たちを止める。
「最後に一言、お願いします!」
だぁあもう、早くしてくれ!森林はいいが、俺は同僚全員にみっともないフルチン姿を披露してるんだぞ!紺野さんがよそを向いてくれているのがせめてもの救いだが。
「えーと、やっぱり寒いです!でもみそぎ、無事完了いたしました!生まれ変わった気分です!」
「みんな手振って!撮影の二人も!」
半分やけくそでプロデューサーの指示通りに片手を振った。このカット、本当に必要か?まったく意図が理解できない。
「よっし、オッケーです!皆さんお疲れさまでした!紺野さん、皆にタオル渡してあげて」
「えっ?!あっ、はいっ!」
よりにもよってなぜ中野さんを指名した、この糞プロデューサー!!
紺野さんは小走りで森林とポンさんにタオルを手渡し、最後に俺の方に来た。
「マイク、お預かりします!」
「…あ……」
やばい、顔が見れない。恋人でもない女性に近距離でこんな姿をみられるなんて……
「タオルどうぞ!」
「…あぁ……」
すぐにタオルで前を隠したが、すでに紺野さんは走り去っていた。体は冷え切っているのに顔だけが一瞬で燃え上がるように熱くなった。色んな感情が同時に爆発し、体を拭きながら胸のドキドキが止まらなかった。ようやく着衣しても動悸は収まらず、ヒリヒリと落ち着かないままの状態でとりあえず機材の片づけをした。周りも俺の普段とは違う空気を感じ取ったのか、寄ってきたり茶化したりしてこず、しばらく俺は一人で黙々と作業を続けた。
~
ヤマザキが初めに言っていたように、その後の撮影は手の込んだものはなく、言葉通りおまけ程度のものだった。元々ニュース番組内の特集映像なので、尺はそれほど必要ではないらしい。
「いやぁ、終わった終わった!皆よく頑張った、お疲れさんだよ」
最後の撮影場所の神社で俺たちはついでにお参りをしていた。俺以外はもう済んだらしく、一人で拝殿の鈴を鳴らす。目を閉じて手を合わせていると、後ろから声をかけられた。
「今日は大変でしたね」
「紺野さん……いやぁ!マジで寒くてやばかったよ!」
気持ちが大分落ち着いてちゃんと明るく振舞えている、と思う……でもやはり顔を見るのは無理そうだ。
「やっぱり私、初めにちゃんと言った方がよかったですかね。音声さん嫌がってたし」
「いやいや、俺男だから、気にしてないない!」
大げさに否定したが、余計にカラ元気があからさまになってしまう。
「この業界、女ばっか損するって思ってたんですけど、男の人も大変ですね。なにかと無茶させられるし、男だったらなんでもアリな雰囲気、私はちょっと苦手です」
「おーい、紺野ちゃーん、片づけ手伝ってー!」
「はーい、ただいまー!」
ヤマザキに呼ばれて歩き出す紺野さんの後に俺も続く。
「でも、真剣に仕事をする音声さんの姿、結構格好良かったですよ」
「えっ」
「紺野ちゃん、早くぅー!」
「はいはーい!」
そうして俺たちはようやく仕事を終え、畔島を後にした。心身ともに疲れ切っていた俺は帰りの車で爆睡してしまった。
~
島のロケの一週間後、俺は風邪をひいてしまい、少し遅めの朝を自宅のテレビの前で過ごしていた。運動不足な俺には寒水に浸かっての撮影がこたえたのだろう。
ぼーっとニュース番組を眺めていると聞き覚えのある話が流れてきた。
『では、次は世界文化遺産の登録が先月決定した島の特集です。森林さん、今回も「一肌」脱いだとお聞きしましたが』
『はいっ!皆さんおはようございます、マッスルトラベラー兼アナウンサーの森林です!今回はですねぇ――』
なんというタイミング、これは間違いなく俺たちが収録した特集が放映されるはず。すでにあの恥ずかしい撮影はただの過去の記憶となり、あんなに気にしていた自分が可笑しいとさえ思えるようになっていた。むしろ今は映像の完成形が気になり、俺はテレビのボリュームを上げた。
まず島の簡単な説明から始まり、次にシキタリの話、そしてポンさんの撮影した映像が映し出された。
『このような格好で大変失礼いたします!これからみそぎを行うのですが――』
後ろ姿の森林。そしていくつかのカットを経て近距離で森林が祈りを唱える映像。そこで音声がスタジオにいる森林の声に切り替わった。
『見ての通り、裸でみそぎをさせていただいたのですが、実は僕だけじゃなく――』
……ん?森林、なにを……?
『そう、実は撮影スタッフの方たちも同じく裸で撮影したんですね』
その瞬間、俺とポンさんの全裸の後ろ姿が画面に映し出された。俺にいたってはケツが水面から出ていて尻の割れ目までくっきりと映っている。
「おい、おいおいおい!」
あのプロデューサー、これを撮っていたのか!こんなの聞いてないぞ!スタジオで映像を見ている他のアナウンサーたちは人の気も知らないで、「大変でしたねぇ」などと笑い交じりに話している。
取り乱している俺をよそに特集は次のカットに切り替わり、森林とポンさんの質問の受け答えが流れた。
『すごく寒いはずなんですが、それを感じないというか――』
正直気が気じゃないが、俺は他に変なものが映らないか気になり画面にかじりついた。森林のコメントが一区切りつくと今度は岸に帰る森林を陸側から撮影した映像に切り替わった。これもヤマザキの撮った映像……ということは……
『えーと、やっぱり寒いです!でもみそぎ、無事完了いたしました!生まれ変わった気分です!』
手を振る森林。その後ろには同じく片手を振る俺――顔もフルチン姿も全てがぼかしなしで映っている。高画質のせいで皮の被った萎えチンコも、陰毛の質感さえもはっきりと見える。俺の裸体が全国ネットで晒されている。
「ちょ、ちょっと――まってくれよ……」
俺は驚きのあまり囁き程度の声しか出せなかった。
いまのはなんだ。なにがおこった。こんなことありえるのか。ありえていいのか。いいわけないだろ。ならなぜ、なぜこうなった。いったいどうなってるんだ。
編集ミス――それしかありえない。でもどうして?地上波で流す映像のチェックは厳しいはず。でも、確かに今、画面に俺の……――
俺はテレビを消した。森林のやかましい声が途切れ、周りは突如静まりかえる。
「これは、夢だ」
俺はもう考えることをやめた。だって、考えても仕方ない。この一週間の出来事はすべて夢に違いない。そうでなくては、やってられない。
そうだ、寝よう。もっとましな夢を見れるよう。
そうして、俺は放心状態でふて寝をした。
――その時の俺は知らなかった……チンコ丸出しの俺を画像ファイルに落とし、ピヨッターに投稿している目ざとい視聴者がいることを……そしてその投稿が広く拡散され、とある界隈ではプチバズりすることも……
〆
おまけ…
〆