短編 クリスマス 表
Added 2024-12-24 15:00:00 +0000 UTCこれは、あり得たかもしれない世界線の話…。
後にあんな写真を見ることになるとは…。 今日はクリスマス当日、ダラダラと過ごしているうちに昼になってしまった。リビングは昨日のクリスマスパーティーの飾り付けのままだ。昨日、乃亜の気合の入ったディナーを食べながら過ごした楽しい時間を思い出す。 ふと乃亜がいないことに気づく。今はどこか出かけているらしい。 (買い出しかな…?) などと考えていたとき、玄関からいつものかわいい声が聞こえた。 「ただいま〜!」 加えて、他に聞き慣れた声も混ざっていた。 「せんせー、おじゃましまーす」 少し慌ただしくリビングに近づく2つの足音。ドアが開くと、バッチリ整えられたツインテールをたなびかせた乃亜と、あと1人。近所に住んでいて、僕が家庭教師をしている芽衣ちゃんが、いつも通りフワフワした様子で入ってきた。2人とも、ミニスカサンタコスだった。 「お兄ちゃん、メリークリスマスっ♪」 「めりくりー」 手にはラッピングされた本くらいの大きさの箱が抱えられている。 「これ、乃亜と芽衣ちゃんからのプレゼントだよ!開けてみて♪」 箱を受け取り、二人の期待に満ちた笑顔に見守られながら包装紙を剥がしていく。中から現れたのは――最新型のiPadだった。 「iPad…!?どうして…!?」 「お兄ちゃん、この前パソコンで新型を調べてたでしょ?乃亜、履歴で見たんだ〜!」 得意げな乃亜。履歴を見られていたことは…まあ置いておいて、素直に嬉しいプレゼントだ。しかし、少し冷静になると別の不安が生まれる。 「でも…凄く高かっただろ…?どうやって買ったの?」 乃亜の表情が一瞬固まる。そして、小さな手で絹のような前髪を触りながら話し始める。これは、昔から乃亜が動揺したときに見せる仕草だった。 「え、えっとね!そ、それがね…商店街のくじ引き!そう!乃亜が引いて、一等がこれだったの!」 「商店街のくじ?」 少し疑問を持ちながらも、その答えに一応納得することにした。 「う、うん!すごく運が良かったんだよ!クリスマスの奇跡だな~って思っちゃった♪ だよねっ、芽衣ちゃん?」 芽衣ちゃんは全く慌てることなく、いつもの様子で答えた。 「せんせー、うれしい? 芽衣、がんばったんだ〜」 頑張った…?なんだか乃亜と芽衣ちゃんの会話はうまく噛み合っていないようだ。 「め、芽衣ちゃん…っ!そ、そうだね!くじ引きも気合い、だよね!」 くじ引きなんていう確率論の権化みたいなものに非論理的な事を言うなんて、乃亜らしくないと思った。ソワソワしたその仕草が気になりつつも、せっかくのプレゼントを素直に喜ぶことにした。 「ありがとう、乃亜。芽衣ちゃんも、こんな素敵なプレゼント。本当に嬉しいよ。大切に使うね。」 そう言って笑顔を見せると、乃亜はパッと顔を明るくして、跳ねるように喜んだ。 「えへへ!お兄ちゃんが喜んでくれるのが一番だもん♡」 「おー!せんせー、感謝してもいーよ」 2人はサプライズプレゼントがうまくいって満足げにリビングを出ていった。コスプレを着替えに行ったのだろう。小さな2人のサンタクロースの背を見送りながら、やはり可愛いなと思った。それに、プレゼントも僕が欲しかったものだ。 だから、その高価なプレゼントをくじ引きで当てたという乃亜の話を疑う気持ちはとっくに無くなっていたんだ。