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けまり
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魔法少女の足元で

こんにちは。今回は異世界に飛ばされた男が、元の世界に戻るために必死に腕を磨きスキルを覚えたものの、魔法少女との試合で小人にされてしまい、スキルで足裏にある魔力増大のツボを押すペットとして靴下の中で飼われてしまう話になります。 1ヶ月後の後日談も追って書く予定です。 いつも応援ありがとうございます。 今年から取り敢えず見切り発車で始めてみた投稿ですが、皆様のおかげで何とか続けることが出来ました。 本当にありがとうございます! 試行錯誤しつつも段々と慣れてまいりましたので、来年はもう少し投稿頻度を上げたり、今までの話の続編等も色々と投稿していきたいと思います。 引き続きご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします。 ーーーーーーーーーーーーーー 気がついたとき、俺、ユウトは草原に立っていた。 見上げると、太陽が2つある。 「………は?」 「ここは……どこだ……?」 高校の教室で、少しだけ眠気を感じて、目を閉じていただけだったはずなのに。 ———気づけば、剣と魔法の世界に立っていたのだ。 地球では見たことのない動物……いや、モンスター。 言葉も通じず、水の確保すらままならない。 荒野を彷徨い、盗賊に追われ……..そんな中、偶然辿り着いたのが、とある町の冒険者ギルドだった。 冒険者ギルド。 才能、経験があれば、就職できる職業が表示され、その職業を登録することで、冒険者として働くことができる。 しかし、身ひとつで異世界に投げ込まれ、手に職もなければ魔法も使えない俺が登録できた職業は——— 「武闘家……?」 子供の頃から格闘技が趣味だった俺にとって、唯一登録できた職業が、武闘家だった。 ———武器も持てず、魔法も使えない、いわゆるハズレ職業。 そのため、冒険者ギルドでの生活は、決して楽ではなかった。 いつ死ぬか分からない日々の中、その日食べていくのにギリギリ程度の報酬を得て、何とか食い繋いでいた。 しかし俺は決して心折れず、いつか元の世界に帰ることを夢見て、少しずつ、少しずつ、武闘家としてのスキルを磨いていった。 気づけば、5年の歳月が経過していた。 毎日欠かさず鍛錬を行い、俺はついに、武闘家の頂点と言われる発勁──拳を当てた表面ではなく、その奥の内側に衝撃を通すスキルを会得した。 そして、日々欠かさず努力をし、身体を痛めつけ続けてきたおかげか、武闘家と相性の良い、防御力アップのスキルも手に入れることが出来た。 ———全ては、元の世界に帰るため。 俺は5年の間、その手がかりも並行して探していた。 そして仲の良い情報屋から、元の世界に帰るためには、転界の鍵というアイテムが必要であること、そして、王都で近日開かれる剣あり魔法ありの何でもありの闘技大会で、それが優勝商品として出てくることを知った。 「ついに…….ついに、元の世界に帰れる手がかりを見つけたぞ……」 早速俺は残っていた依頼を片付け、王都に赴き、その大会の登録をすませるのだった。 —————— 大会当日。 空は晴れ渡り、王都の中心部、石造りの広い闘技場は、朝から熱気に包まれていた。 「さあさあ、集え、戦士たちよ!!英雄の名を刻む者は誰だッ!!」 「優勝者には、王から直々に賞金と———伝説のアイテム、転界の鍵が与えられるぞーッ!!」 娯楽が少ないこの世界で、こうしたイベントは極上のエンタメであり、司会の盛り上げに場内は割れんばかりの歓声が響きわたる。 そんな中、俺は参加者の控え室で、自分の番をじっと待ちながら深呼吸をしていた。 (転界の鍵……..これを逃したら、次はいつチャンスが訪れるか分からない……..いや、大丈夫、あれだけ鍛えてきたじゃないか。必ず優勝して、元の世界に帰ってみせる!) 武闘家として、ここまで懸命に技を磨いてきた。 こちらの世界に来て手に入れたスキル、防御力強化、発勁を駆使して、なんとしても優勝するぞ、と気合を入れる。 初戦の相手は抽選で、ルナ、という魔法少女に決まった。 (….魔法使いが相手か……….) この世界、魔法があるものの使える人は少なく、また仮に使えたとしても、水を出す、とか、直接戦闘に使えるようなレベルの魔法はあまり知られていない。 一般的に魔法使いは研究職として、知識を秘匿する傾向も強いのだ。 そのため、魔法使い、しかも年端もいかない少女がこの大会に参加していることに、嫌な予感を覚える。 何か強力な魔法が使えるのかも知れず、油断はできない相手だった。 しかし、ここで怖気付くわけにはいかない。 「……行くぞ」 ギィィィィィ……。 ゆっくりと開かれる鉄の扉の向こうから、 眩いほどの陽光と、観客たちの熱狂が押し寄せてきた。 石造りの、円形コロシアムの中心に、俺は一歩、また一歩と、足を踏みしめて進む。 「出場者、東側、ユウト選手!」 すると観客の間から、一部ざわつく声が聞こえた。 「確か……異世界から来たっていう……」 「あぁ、武闘家だっけか。低ランク職業で魔法も剣もなしに、拳ひとつでギルドのランクを上げてきたらしいぜ……」 (…….意外と、名前知られているんだな。) 5年間、ひたすら腕を磨くこと、元の世界に帰ることだけを考えて生きてきた。 しかし気づけば、観客に噂される程度には、俺のランクは上がっていた。 「出場者、西側、ルナ選手!」 その瞬間、観客席がひときわ大きく沸き立つ。 「ルナちゃーん!」 「可愛いー!!」 「今回も面白い魔法見せてくれー!」 するとリングの反対側から、少女が姿を現す。 そこにいたのは、まるで戦闘などと縁がないような、華奢な身体の少女だった。 ふわり、と桃色のツインテールが風に舞う。 贔屓目に見ても、可愛いと言える容姿だった。 (元の世界なら、間違いなくアイドルか何かになってそうだな……) ルナは笑顔で軽く観客に手を振りながら、石畳のリングにあがる。 (…..?なんだ、この圧は……) 体感温度が数度下がったような、冷たい魔力の気配を、近づいてくるルナから感じた。 可憐な見た目に反して、彼女の内側には膨大な魔力が渦巻いているのが、魔法の才能がない俺にも分かった。 「ユウトくん、だっけ?」 人懐っこい笑顔を浮かべながら、リングに上がったルナが話しかける。 「私、自分の作った魔法の実験をしたくて、この大会によく出るんだ。よろしくね。君も優勝商品狙いかな?」 「……ああ。よろしく、頼む」 俺は腰を低くし、警戒を一層強める。 「それでは、はじめ!」 審判の声が、場に響いた。 その瞬間、俺は走り出していた。 先手必勝。 一気にルナとの間合いを詰める。 距離を詰めれば、魔法を撃つ暇はない———その算段だった。 しかし。 「えいっ」 少女の小さな手が、すっと俺を指差す。 「スモールプリズン!」 その瞬間、世界が歪んだ。 (発動が早い!でも、もう少しで距離を詰められる!) まるで空間そのものが大きく歪んでいる感覚に陥るが、俺は気にせず走り続けた。 (あれ……?) だが、間合いを詰めるため走っているはずなのに、いつまでも、ルナに辿り着かない。 それに、足元の地面が……近づいてくる? いや———違う。 地面が近づいているのではなく、俺自身が縮んでいる!? 「な……なにが、起きて……ッ!?」 ぐぐ……ッ、ぐっ……! 追って、骨が引き攣れるような痛みに襲われ、服がだぶつき始める。 「う……あああッ……ッ!!」 彼女の胸……太もも……膝…… 俺の彼女を見る視点がどんどん下に下がっていき、ついには、目の前の彼女のブーツが、まるで建物のように巨大化していく。 そして、変化が止まる頃には——— 俺は、ルナのブーツを見上げる位置にまで、縮んでしまっていた。 目測で、3センチくらいだろうか。 服の中で、何が起きたかわからず困惑している俺に、遥か頭上から声が降ってくる。 「ふふっ……この前開発した縮小魔法。ちゃんと効いたみたいね♡」 俺は服を抜け出し、上を見上げ——— そこには、イタズラに成功した悪ガキのように口元に手を当て、クスクスと笑う巨大なルナの姿があった。 「どう? 虫みたいに小さくなった感想は?」 「っ、ふざけるな……こんなの、反則だろ……も、戻せぇ……!」 思わず吠えるように叫んだ俺に、彼女はニヤッと笑みを浮かべ応える。 「ダーメ♡」 そして、ルナは右足を持ち上げた。 次の瞬間―― ズンッ……!! 巨大なブーツが、宙から落ちてくる。 空気が押し潰され、砂埃が爆発するように舞い上がった。 「ぐわぁぁぁぁっ……!!」 ただ足を下ろしただけ――たったそれだけで、そばに居た俺の身体は吹き飛ばされ、砂埃と共に、地面に叩きつけられていた。 「あはっ。足を下ろしただけだよ? ユウトくん♪」 (……こんな、バカな……) 砂埃の舞う、リングの上。 スキルを覚え、拳一つで獣を倒し、盗賊の群れを打ち倒すまでになった俺が——— 今やわずか3センチにも満たない、風に吹かれれば飛びそうな小人に、成り果てていた。 俺はそれでも立ち上がり、前を見据える。 眼前には、ルナの足。まるで巨大な建物のようなブーツが、地面を踏みしめている。 つま先の湾曲、深く刻まれた革の縫い目、革の皺……そしてその表面から漂う、履き古された独特の革の匂い——— そのあまりの大きさに、膝が震え始める。 (それでも……!) 俺は震える身体に鞭を打ち、拳を握る。 こんなところで、諦めるわけにはいかない。 元の世界に、帰るんだ。 「おぉおおおおっ!!」 声を張り上げ、ブーツのつま先に向かって跳びかかる。 そしてブーツのつま先に向けて、全力の拳を叩きつけた。 ゴスッ……! 拳がわずかに革に沈む。 (……か、固い……ッ!) だが、それだけだった。 ブーツの表面に、わずかに拳が沈むものの、反応は皆無。 革の反発が、じんわりと拳に返ってくる。 俺はそれならば数で勝負とばかりに、連撃を放つ。 「はっ!はっ!せぇいっ……!」 しかし。 (ぐ……..固い……固すぎる……っ!) まるで、岩壁でも殴っているような感覚に陥る。 それでも俺は、諦めずにひたすら殴り続けた。 「ふふっ……♡」 すると、不意に頭上から、楽しげな少女の笑い声が降ってきた。 見上げると、ルナが軽く膝を曲げ、ニヤニヤしながらこちらを見下ろしていた。 「可愛い。なんか頑張ってるみたいだけど……」 彼女は足を少し下げ、つま先を揺らす。 「これじゃ、勝負にならないね」 「っ……!」 拳を握りしめたまま、俺は言葉を失った。 確かに彼女の言う通り、彼女の分厚いブーツの前では、小人となった俺の全力など微塵のダメージにもなっていなかったのだ。 「うーん…….流石にこれじゃ、ちょっとつまらないから、ハンデあげるね。」 彼女は細い指で俺が殴っていた右足のブーツの縁をつかむと、徐に脱ぎ始めた。 ギュ……ギュギュッ……ゴソゴソッ……。 革の擦れる音とともに、まず現れたのは、ふくらはぎまでを覆った、白いソックスだった。 (……?靴なんか脱いで、どうするつもりだ?) 俺はルナの行動の意図がわからず、そのまま様子を伺う。 「んしょ、んしょっと…….」 ルナは、次にソックスも脱ぎ始める。 すると俺の目に飛び込んできたのは、白磁のような足首だった。 日差しに照らされて、透き通るような肌をしている。 (……な。試合中に何してんだ、こいつ!?) 続いて、足の甲、くびれた足裏の土踏まずのアーチ、そして、最後に五本の足指が、ゆっくりと靴下の外へ滑り出る。 指先は細く、しかし柔らかそうで、また爪は自然なピンク色をしており、わずかに光沢が差していた。 あまりにも巨大な、しかしあどけない、柔らかそうな素足に思わず、ユウトは戦いの最中であることを忘れて、魅入ってしまった。 そしてその足が、グッと目の前に突き出される。 程なく、ブーツの中にこもっていた汗ばんだ足の湿気が解き放たれ、ふわっと、饐えた臭いとともに、温かく蒸れた空気が、ユウトの周りに広がった。 俺はその強烈な臭いに思わず後ずさる。 (うっ……….これが……足の、臭い……!? くせぇ….…ゴホ、ゴホ……息が、できねぇ……) たかが少女の足の匂いに、ふらついてしまう。 「ほら。直接肌にふれて攻撃できるように、素足になってあげたわよ?」 「……うぅ……っ、くそ、なめるなよ……!」 俺はふらつく身体を体幹で無理やり支え、再び拳を構える。 (俺は、負けるわけにはいかないんだ……!) 「来いよ……ルナ……ッ!」 「ふふっ生意気ねぇ……今のあんたの相手なんて、足指一本で十分なのよ?」 その言葉と同時に、目の前のルナの親指が、ゆっくりと動く。 可憐な足指が、ふに、と曲がり——— ピンッ! 「がっ……!?」 親指が、俺の身体を思い切り弾く。 そのあまりの勢いに、俺は空中をくるくると回転しながら、吹き飛んでしまう。 視界が乱れ、地面が迫る。 ドガァッ……! 背中から地面に叩きつけられ、砂が舞う。 痛みで思わず呼吸が止まった。 今までこちらの世界で生きてきた5年間の中で、一番ダメージを負った攻撃だった。 ………防御力強化のスキルがなければ、死んでいたかもしれない。 (こんな……..たった……足の、指で……!?) ユウトは愕然としながらも、必死に立ち上がる。 (……大丈夫だ、俺にはあの奥義がある!素足になったことを後悔させてやる!) 拳に集中し、再び迫り来る巨大な足指に対し、俺はスキルを発動する。 発勁———今まで魔物を一撃で倒してきた、衝撃を内部に送る奥義。 ズンっ!! (…….どうだ!!) 俺はルナの足の指、柔らかそうな皮膚を、奥義で貫いた———はずだった。 しかし——— 「……ふふ。今、何かしたの?くすぐったい♪」 「……..え?」 ……痛みすら、与えられないのか。 ユウトの心の何かが、音もなく崩れ落ちていく。 「せいっ! せいっっ!!」 ズンっ!!ズンっ! 今のは何かの間違いだ、と必死に自分に言い聞かせ、発勁を連打する。 だが、ルナの親指は、そんな俺の必死の攻撃を無視し、再びピンッ!と俺を弾き飛ばした。 「ぐわぁぁぁぁぁ!!」 ズシャァァ 再び吹き飛ばされ、今度は頭から地面に叩きつけられた。 意識が、遠のく。視界がぶれる。 (お、俺の………奥義が………たかが……足指一本にすら、敵わない……なんて……) まだ、戦いは始まったばかりのはずだった。 なのに、早くもユウトの武闘家としてのプライドは、粉々に砕かれようとしていた。 ⸻ 俺が何度、拳を振るおうが。何度、技を叩き込もうが。 彼女の足指一本に、ダメージすら与えることが出来ない。 ピンっ………..ピンっ 彼女はまるで機械のように、俺を足指で何度も弾き飛ばす。 それでも、防御力が高い俺はどれだけボロボロになろうとも、立ち上がり、向かっていく。 段々と受け身も上手く取れるようになってきた。 諦めるわけにはいかない。いかないのだ。 「……んー」 ルナが眉を顰めながら、俺に問いかける。 「しつこいなー。もう飽きたんだけど。敵わないって分からない?」 ルナはつま先を軽く揺らしながら、ほんの少し首を傾げた。 「……魔法の実験は成功したし…..もうそろそろ、終わりにしよっか」 その言葉と同時に、足裏が大きく持ち上がり、ユウトの上に影が落ちる。 視界いっぱいに広がる、肌色の天井。 (ま……まずい……!) ずん――! 息つく暇もなく、巨大な足裏が、ユウトを覆い尽くした。 柔らかい。 だが身動きが取れないほどの圧で、全身が地面に押し付けられる。 「……っ……!」 俺は足裏に密着させられ動けない状況で、新陳代謝が活発な少女の、饐えた、蒸れた足の臭いをこれでもかと嗅がせられる。 ………まるで勝負にならない。 (……..ク、クセェ…….重い…….ちくしょう…….) すると、審判の声が、遠くから響いてきた。 「1……」 地面に倒れた場合、10カウントまでに起き上がれなければ、負けが確定してしまう。 俺は必死に目の前の足裏をどかそうと、腕を伸ばす。 だが、俺を覆い尽くす足の裏は、ぴくりとも動かなかった。 「2……3……」 圧が、わずかに増す。 呼吸が苦しい。 「4……」 (まだだ……っ!まだ、終わらせない……!) 「俺は……元の世界に、帰るんだっ……!!」 拳を構える。 目の前にある、饐えた臭いを発する、少し赤みの差した少女の足裏。 やや湿った感触が残るそこへ、全力でスキルを込める。 「発勁———!!」 ドスッ!! 全力で———スキル、発勁を叩きつけた。 衝撃がしっかり奥にいくように、打ち込む。 (これで……どうだ……!?) だが——— 「んっ……」 遥か上から、ルナの声が少し聞こえた気がしたが、俺を覆う足裏には、何の反応もなかった。 むしろ、それで終わり?とばかりに、更に圧が増したのだ。 (そんなばかな……人体に使えば、内臓を破壊する威力のはずなのに!!) 「5……6……」 俺は信じられず、何度も、何度も、死ぬ思いで会得した発勁を再び使い、目の前の足裏を殴り続ける。 ドスッ……! ドスッ……! けれど、何の反応もなく、状況は全く変わらなかった。 (なんだよ……なんなんだよ、これ……っ!) (くそ……! まだ、まだ何かあるはずだ……!) 「7……」 グリグリッ……! (ぐわぁぁぁぁ、つ、つぶれる……防御力強化があって…..これ、か…….) 足裏が、更に地面にぐりぐりと沈み、俺はここから脱出どころか、潰されるのを耐えるのに必死になっていた。 「8……」 (……無理だ……ちくしょう……) 「9……」 視界が、涙でにじむ。 「10!」 「勝者———ルナ!」 歓声が響く。 俺は、汗で足裏に貼りつき、熱と湿気、匂い、無力感に包まれたまま、敗北を噛みしめていた。 重く、ぬくもりのある天井———ルナの足裏が、ようやく持ち上がる。 (...?) おかしい。 足裏が上がったはずなのに、俺はいまだに、ルナの足裏から離れられない。 「……あれ?」 ルナも、首をかしげる。 「いない?」 地面に倒れているはずの小人が、見つからない。 まさか、脱出したのだろうか? 彼女は自分の足裏を裏返し——— そこに、ピッタリと張り付いている小人を見つけた。 「……あははっ!」 ルナが思わず吹き出す。 「あー、足の裏にくっついちゃってるじゃん。汗かいてるからかな? 最近魔法の研究に夢中でお風呂ぜんぜん入ってなかったし……臭かった?…..ふふっ」 俺はルナの揶揄いに、怒りを隠しきれなかった。 (.……くせぇよ!くそっ!……もういいだろ、早くここから出せ!!) 「ほら、もう決着ついたんだから、離れなさい」 剥がれろとばかりに、足を軽く振るルナ。 だが、ぐりぐりと踏みつけられ、汗や皮脂で、皮膚に吸いつくようにしっかりとくっついてしまったユウトは、それでも剥がれなかった。 (……くそ…….汗が...纏わりついて、離れられねぇ..!) 「とれないなー……そんなに私の足、気に入っちゃった?………ま、じゃあいっか。別にこのままでも。」 彼女は愉快そうに目を細める。 その言葉に、俺は驚愕する。 (このまま?冗談じゃない!試合は終わったんだ!剥がせ!元に戻せぇ!) しかし、俺をくっつけた右足は、そのままぽっかりと開いた巨大な靴下の入り口に、つま先から、少しずつ呑み込まれていった。 するするっ そして、俺はそのまま完全に履かれてしまう。 「よいしょ…..んしょっと。」 その後すぐに、更に暗くなり、深い圧迫感が襲う。 ルナがブーツを履いたのだ。 俺は、ルナの靴と靴下の中に、完全に閉じ込められてしまった。 トン、トン。 (うわぁぁぁぁぁぁ!) つま先が下を向き、ルナがブーツのつま先を地面に叩きつける。 そこで俺はようやく、足裏の粘着から逃れることが出来た。 しかしそのまま、なす術なくつま先部分に落ちていく。 更に爆発的な臭気に襲われる。 (がぁぁぁ!!……臭い!…….暑いしネバネバする!…..こんなことしやがって、こいつ、俺をどうするつもりなんだ…….) ズシン!ズシン! 勝ったルナは、靴を履き終えると観客に小さく手を振り、そのまま試合会場を後にするのだった。 ————————— 長い移動のあと、ルナは学園の寮の自室へ戻った。 歩行で足裏に踏みつけられながら、扉が閉まる音、床の軋み、ベッドに座った際の軋み———それらが、靴下の中にいる俺にも断片的に伝わってくる。 何回かに一度、思い切り踏み潰されるが、防御力強化で必死に耐える。 「……ふう。今日はいいデータが取れたわね。」 ルナはベッドに腰を下ろすと、靴下を履いた右足のつま先を軽く動かした。 そのたびに、つま先に挟まれ、閉じ込められている俺の視界が大きく揺れる。 その後、床に足を置き、つま先がくいっと持ち上がり、とんっ、と下ろされる。 つま先が小さく、パタパタと上下する度に、俺はズシン、ズシンと足指に踏みつけられる。 (ぐぅ……!こいつ…….俺で遊んでやがる…..!!) 「……..あっ、そういえば、あなたを小さくした魔法。シュリンクプリズンっていうんだけど、元の大きさに戻す魔法は開発してないの。ごめんねー。」 (……は?) 元に、戻れない? ルナの放った言葉に現実を受け止められず、思考が止まる。 しかしルナは特段気にした様子もなく、言葉を続ける。 「他に開発したい魔法も沢山あるしさー。」 (冗談……だろ……?……) ルナの足に遊ばれながら、ユウトは絶望し、歯を食いしばった。 「……っ、ふざけるな……!」 ユウトは最後の気力を振り絞り、自分を押さえつける足指の腹に、拳を思い切り叩きつけた。 発勁———衝撃を中へ通す技を発動する。 ドスッ。 皮膚の中深く入った感触があった。 「……あ」 ルナの声が、少しだけ弾む。 「それ、何かのスキル?試合中も、足が刺激されて気持ちいいなーって思ってたの♪」 ルナが右足を持ち上げ、左足の太ももに乗せる。 足裏を覗き込むと、ユウトがいる部分だけ、少し浮き出ていた。 するとルナは靴下越しにユウトを摘み、足の親指の付け根に移動させる。 「そこ、分かる?指の付け根のところ。そこね、魔力を増幅させるって言われてるツボがあるの。」 微笑みながら、ルナは続ける。 「あなたのその技、足ツボの刺激に丁度良いわ。……だから、ユウト。あなたはこれから———」 「私の足裏のツボを押して、私の足を気持ちよくすることだけを考えて生きていきなさい。そしたら……ゴミみたいになったあなたを見捨てずに、このまま靴下の中で飼ってあげてもいいよ♡」 その言葉に、俺は拳から力が抜け、膝から崩れ落ちた。 (そんな…….俺は……俺は、今まで、なんのために……) 日々、自己研鑽の毎日だった。 全ては、元の世界に帰るためだったはずなのに。 しかし今や、その拳が向かう先は―― ドスッ。 「……んっ。そう。そこそこ。気持ちいい♪もう少し強くてもいいよ♡」 ドスッッ。 (……..ちくしょう……) 悔しさや怒り、無力感で頭が一杯になる。 ドスッ。 もう、何も考えたくなかった。 だが、ルナは追い討ちをかけるように楽しげな声でユウトに話しかける。 「あ、でも一応、意思を確認しておこうかな。私のペットとして生きていきたいなら、今押したツボの場所、親指の付け根にキスして?」 (こんなはずじゃ、なかった……っ) 気づけば、ユウトの目には涙が溢れていた。 (もう、どうでも良い…….) そっと、指の付け根に顔を近づける。 ぬくもりを帯び、うっすらと汗ばみ、足の匂いが強く残る皮膚。 そこに、震える唇を——— ちゅっ 触れさせた。 一瞬の、沈黙。 やがて、ルナの声が優しく響く。 「……うん。わかった。そこで飼ってあげる♪でも私、研究ばっかでお風呂あまり入らないから、足のお手入れも普段からお願いね♡」 俺はこの世界、この現実に絶望し、涙を流す。 その涙は、足裏を流れ、靴下の繊維に染み込み——— 何もなかったように消えていくのだった。


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