XaiJu
けまり
けまり

fanbox


王女の罠1

こんにちは。 今回は、召喚された勇者の力を王国が危険視し、制御するために、王女の魔法によって王女の身につける下着の中でしかまともに生きられなくなってしまう勇者のお話しになります。 1万字超えたので一旦切りますが、続きも後日投稿します。 よろしくお願いします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「……今日も、魔人を倒してきました」  静まり返った玉座の間に、青年の声が響いた。  深紅の絨毯の中央、膝をついたその青年———ハヤトの身体には、まだ戦いの余韻が残っている。 人類の脅威、魔人。 身体にはその魔人との戦いの跡である無数の傷が刻まれている。 それでも彼は、まっすぐに顔を上げ、玉座に座る一人の少女を見据えていた。 リュミナール王国第一王女、エルミナ。  淡い金色の髪を結い上げ、青を基調とした礼装に身を包んだその姿は、年若いながらも王族としての威厳を十分に備えている。 だが、その端正な顔立ちに浮かぶ微笑は、どこか柔らかく、慈しむようでもあった。 「そう……」 エルミナは小さく頷き、玉座から立ち上がる。 「よくやってくれたわ、ハヤト。あなたのおかげで、今日も国は守られました」 その言葉に、周囲の家臣たちは、哀れみを込めた視線をハヤトに向ける。 王国の召喚魔法により異世界から呼び出されたハヤトは、彼ら王国の民にとって、英雄であると同時に、この世界の法に守られない存在でもあった。 「それじゃ——貴方のおうちに、帰りましょうね」 まるで幼子を労わるような、その一言。 次の瞬間、エルミナは丁寧な所作で履いていたブーツを脱ぎ、靴下の履き口に指をかけた。  「……も、もうですか?あの、久しぶりの外の世界を、あの、せめて、もう少しだけでも———」  ハヤトの懇願の言葉が発し終わるよりも早く、エルミナがハヤトに靴下の履き口を向け、整った唇を小さく動かした。  「———戻りなさい」  その後、聞き慣れない魔法語が紡がれた瞬間、世界が歪んだ。 ハヤトの身体が白く輝きだし、視界が急速に白く、世界が引き延ばされていく。 否———自分が、縮んでいるのだ。 ハヤトは、抗うことのできない力に、ただ床を見つめ、唇を噛む。 「くそぉ……っ!」  身体が宙を舞い、足元の絨毯が遥か彼方へと遠ざかっていく。抗おうと魔力を巡らせるが、まるで何かに絡め取られたかのように、力が霧散していく。 そして次の瞬間。 ———すぽっ、と。 今日一日中履いていたエルミナの黒の靴下の中へと、ハヤトの身体は吸い込まれていった。 靴下の内側。 暗く、今まで足が入っていたことによる肌の温もりと、汗の匂いに即座に包まれる。 そして見上げると、遥か上空には、靴下の外、部屋の天井が遠くに見えた。 その直後———空間が、さらに狭まった。 外側から、何かが近づいてくる気配。 布越しに伝わる、確かな圧。 靴下の入り口から、足が入ってくる。 ゆっくりと、しかし確実に。 最初に現れたのは、つま先だった。 部屋の光の照らされ、巨大で白く美しい足の指が、ゆっくりと自分の世界を覆い尽くすように降りてきた。 白く、整った形。 一見すれば、手入れの行き届いた、きれいな足先に見える。 だが、近づくにつれ、否応なく細部が目に入ってしまう。 足指の付け根や爪の中も、靴下の内側から剥がれ落ちた黒い糸くずが、ところどころに絡みついている。 乾いた垢のようなものも、皮膚の溝に残っているのも見えた。 (……朝、あれだけ舐め掃除して、綺麗にしたはずなのに……もう……) 足が、さらに奥まで差し込まれる。   「……っ、う、わ……!」 するする…… すぐに、靴下の中は足でいっぱいになる。 (せ、狭い…..潰れる…….) ハヤトはなす術もなく、靴下に生地と、吊り天井にように降りてきた巨大な足の裏にぎゅーっと挟まれてしまう。 狭い空間の中で、ハヤトは必死にもがく。 だが、エルミナはハヤトが暴れているのを意に介した様子もなく、慣れた所作で足を動かし、自然に彼を指の股へと追いやり、挟み込んだ。 そしてエルミナは何事もなかったかのように靴も履き直し、満足そうにクスっ笑う。 「ふふ♪ダメです。また魔人が現れたら、外の世界に出してあげますからね♪」 そう呟くと、彼女は立ち上がり、王女としての威厳を取り戻した表情で玉座の間を後にした。 一方その頃———。 ハヤトは靴下の中で、魔人との戦いで疲労し切った身体に鞭を打ちながら、必死に舌を出し、また汚れ始めていた王女の足を、舌を使って舐めとり、飲み込んで綺麗にしていた。 ぺろ…..ぺろ…… 熱く、狭く、空気は重い。 そして、歩くたびに伝わる衝撃は、まるで地震のようだった。 (……なんで…..こんなことに……) ここでしか、生きられなくなってしまった自分。 元の世界に帰るために、必死に王国に尽くしてきた自分。 しかし、このような扱いを受け、だんだんと、抵抗する意思すら覚束なくなってきていた。 元の世界に戻るどころか、もはやこの世界での人としての居場所すら失った現実に、ハヤトは涙をこぼす。 ———すべての始まりは、2週間前に遡る。 __________________________ 王と王女一行の命を救い、魔人を討ち、リュミナール王国の危機を幾度となく救ってきたハヤト。 しかしその強さは、国にとって希望であると同時に、恐怖でもあった。 誰にも縛れぬ、異世界の力。 王国の騎士団が束になっても、数秒持つかどうか、と、あで言われるほどの実力。 もし、彼が唆されたら。 もし、他国に利用されたら。 もし、元の世界へ帰りたいと暴れ出したら。 今は従順に命令を聞いてくれている。 だが、それは彼の善意によるものだ。 ———善意など、いつまで続く? ひとたび牙を剥けば、王国に、彼を止める手段はない。 それは、王家にとっていつ爆発するか分からない爆弾を抱えているに等しかった。 リュミナール王国第一王女、エルミナは、国の発展を第一に考える王女だった。   だからこそ、彼女は結論を出した。 ———この力を、自由にさせてはいけない。 ———英雄ではなく、資産として管理するべきだ。 そうして王家は、ひとつの決断を下す。 ハヤトに気づかれぬよう、細心の注意を払いながら、王族のみが知り得る秘匿魔法を使用することにしたのだ。 術者が指定した「場所」に対象を閉じ込め、条件付けを行うことで、服従を課す魔法。  本来は、死刑に値する罪を犯した者の中でも、なお国に価値があると判断された存在にのみ、王族が極秘裏に使う、禁忌の術。 人道から外れた魔法だが、それゆえに秘匿とされている魔法だった。 そんなものが存在するとは夢にも思わないハヤトは、エルミナの魔法の実験のお手伝いの誘いを、疑うことなく受け入れた。 彼にとってエルミナは、 自分を信じ、認め、ねぎらってくれる王女だったのだ。 そして、その日の夜。 何の警戒心もなく、ハヤトは王女の私室に訪れる。 「———エルミナさま、ハヤトです」 扉の前で名乗ると、間を置かず、内側から澄んだ声が返ってきた。 「お待ちしておりました、ハヤト様。どうぞ、お入りください」 扉を開けた瞬間、湯気と、石鹸の甘い香りが鼻腔をくすぐった。 昼間の玉座の間とはまるで別世界のような、私的な空間だった。 可愛らしい部屋の中央には椅子が一つ置いてあり、 そこにラフな部屋着に身を包んだエルミナが腰掛けていた。 布地の隙間から、惜しげもなく生足が伸びて露わになっている。 白く、なめらかな肌には、入浴直後特有のほのかな赤みが残り、柔らかな光を帯びていた。 (…………いつ見ても、綺麗な人だな…….) 思わず、息を呑む。 普段の王女としての威厳に満ちた姿とは違う、年相応の、いや、それ以上に無防備な佇まい。 その美しさに、ハヤトは一瞬、言葉を失ってしまった。 視線を逸らそうとしても、どうしても目が離れない。 その様子を見て取ったのだろう、エルミナは小さく首を傾げ、困ったように微笑んだ。 「お風呂上がりで、このような格好ですみません……」 柔らかな、聞き心地の良い音が部屋に響く。 「……どうしました? ぼうっとなさって。私の顔に、何かついていますか?」 はっと我に返り、ハヤトは慌てて首を振った。 「い、いえ……その……」 一瞬、言葉に詰まる。 だが、こうした経験の浅いハヤトには、変に誤魔化したりもできなかった。 「……美しかったので。つい、見とれてしまいました」 もう何度も会話をしているとはいえ、未だに慣れず、口に出してから思わず恥ずかしくなり、少し床に視線を落とす。 (…..キモく、なかっただろうか….) 異世界に召喚されるまでは典型的なオタクで、モテたことなど一度もなかった自分には、彼女の格好は刺激が強かった。 だが、エルミナは唇に手を当てて、くすりと笑った。 「ふふっ……お世辞でも、そう言って貰えるとうれしいですわ」 その反応に、ハヤトは胸の奥が少し温かくなるのを感じた。 自分の今の力のおかげかもしれないが、変な反応すらも親しみをもって受け取られたことに、安心する。 「ハヤト様、それではもう夜も遅いですし……」 エルミナは椅子から立ち上がり、近くの机へと歩み寄る。 「早速ですが、魔法の実験を始めさせていただいてもよろしいですか?」 その声色は凛としていて、この少女がただの人ではなく、王女であることを思い出させる。 ハヤトは深く頷いた。 「……はい。お願いします」 エルミナは満足そうに微笑み、机の上に置かれていた小さな装飾品と薬を手に取る。 「…….下準備はすでに済んでおります。ハヤト様には、このネックレスを身につけていただき、この薬を飲んでください。」  差し出されたそれは、銀色の細いヒモに、淡く光る宝石が嵌め込まれたものと、小瓶に入った緑色の液体だった。 王女のことを信じ切っているハヤトは、その妙な組み合わせを特に疑いもせず、早速ネックレスを身につけて、薬を喉に流し込む。 (味は…..ポーションに似てるな…..……) 「次に、私の話す言葉の後で、『我は望んで受け入れる』と言ってもらえれば、それで結構ですわ」 (……何の、魔法だろうか) このような下準備が必要な魔法は、あまり多くない。 流石に、一瞬不安が頭をよぎる。 だが、それはすぐに消えた。 今まで沢山世話になった王女自らが、わざわざ頼んできた実験。 多くの危機を救ってきた自分に、今更害をなすはずがない。 ———恩を、仇で返すようなことは、しない。 そう、どこかで信じ切ってしまっていた。 ハヤトは何も尋ねず、頷く。 「…….分かりました。」 「では、いきますね」 エルミナは静かに魔力を整え、はっきりとした声で唱える。 「———『我、王族なり。ネックレスに刻んだ場所へ、身につけし者を永久に封印せよ』」 一瞬、胸がざわつく。 「我は望んで受け入れる」 だが、言葉はすでに放たれていた。 (……ん? 今の、ちょっと……) 唱え終えた直後、ハヤトは遅れて、言いようのない不安を覚えた。 (……今の、冷静に考えると、かなりまずい言葉だったんじゃ……) その瞬間だった。 ぶわり、と。 彼の身体が、内側から白く輝き始めた。 「……なっ……!」 ハヤトの視界が眩白に染まり、床も壁も、輪郭を失っていく。 「な、何が……何が起きているんだ……!」 慌てて顔を上げ、エルミナの方を見る。 すると———。 彼女は、微笑みを浮かべたまま、靴下を片手に持ち、その履き口を、こちらに向けていた。  「……ふふっ」 見たこともない、エルミナのニヤッとした表情に、ハヤトはぞくりと背筋が冷やす。 「上手く、いったようですね」 「……っ、こ、これは……なんの魔法なのですか、エルミナ様……!」 問いかける声は、震えていた。 だが、返ってくる言葉はない。 王女はただ、答えの代わりに微笑み続け、靴下の履き口を向けたまま、動かない。 ここにきて、ハヤトはようやく理解した。 ———騙された。 明確な危機感を覚えたハヤトが、空間転移等、自身の持つあらゆる魔法を使って逃げようとするが、魔法は全て、発動しない。  (———発動しない!まずい……!) 自身から放たれる白い光はさらに強まり、輪郭すら、曖昧になっていく。 音が歪み、視界が完全に塗り潰されていく。 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ………!!!」 やがて———何も、見えなくなった。 するとその光は、少しずつ、確実に縮んでいく。 十センチ。 五センチ。 そして———一センチほどまで小さくなったその光は。 ———すう、と。 エルミナの手にした靴下の中へと、ゆっくり吸い込まれていった。 その光がつま先部分まで届き、完全に消えたのを確認すると、エルミナは小さく息を吐き、靴下を掴んでくすくすと笑う。 そして、靴下の底にそっと顔を寄せ、優しく囁いた。 「……今日一日、履いていた靴下ですから……」 あまりにも、優しい声で。 「少し臭うかもしれませんけれど……少しずつ、慣れていきましょうね。ハヤト様♪」 ______________________ 靴下の中。 白い光が完全に消え去った後、ハヤトは今までとは違う世界に困惑していた。 ――暗い。 視界を覆うのは、黒に近い濃紺の繊維。 一面布に囲まれており、焦点が合わない。 そして息を吸い込んだ瞬間、思わず咳き込みそうになった。 「……っ……!」 鼻腔を突く、強烈な匂い。 汗。 皮脂。 一日中、歩き回って汗をかいた足に鼻をくっつけ嗅いだような、猛烈な臭いが鼻をついた。 「……ごほ、ごほ……く、くせぇ...」 先ほどまでいた王女の部屋の清潔な香りなど、微塵も感じさせない。 むしろ、湿った布に閉じ込められ、逃げ場を失った臭いが、濃縮されたように充満している。  (……くそ……なんなんだ……ここ……) 口呼吸に切り替えるも、肺に入る空気が、重い。 吸っているだけなのに、喉の奥が焼けるように不快だ。 分厚く編み込まれた黒い布の繊維に覆われ、外の気配を遮断している。 「……っ、そうか、ここは……」 光輝く中、世界が広がっていき、あの王女が向けていた靴下へ吸い込まれていく感覚があった。 生温かさと、饐えた臭いが一面に漂う場所。 信じられないが、ここは、あの靴下の中なのだろう。 状況を理解するより早く、胸の奥に焦りが広がった。 とにかくここから脱出しなければ。 ハヤトは反射的に立ち上がり、魔力を巡らせた。  「———火よ!」 詠唱とともに手を突き出す。 だが、何も起こらない。  「雷よ、奔れ!」 続けざまに別の攻撃魔法を試す。 しかし、空間は静まり返ったままだった。 「……な、なんで……?」 氷、風、空間魔法———覚えている限りの、この世界の誰よりも威力のあるだろう攻撃魔法を、次々と放つ。 それでも、布一枚、揺れ動くことすら出来なかった。 「発動しない……!?あの実験は一体なんだったんだ……あんな魔法……聞いたこともないぞ……!」 更なる焦燥に駆られ、ハヤトは靴下の側面に体当たりした。 「くそっ……!」 拳で殴り、蹴りつけ、必死に布を引き裂こうとする。 だが、靴下の糸はびくともしない。柔らかいはずの布が、まるで鋼の壁のように感じられた。 吸い込まれ、気を失う寸前、放たれたエルミナの言葉が、頭の中で反芻される。 ———少しずつ、慣れていきましょうね。ハヤト様♪ 「……慣れろ、だって?」 「……いつまで、ここにいればいいんだ……」 途方に暮れ、膝をつく。 その瞬間———空間が、わずかに揺れた。 靴下の履き口から光が差し込んだかと思った瞬間、巨大な影が差し込んでくる。 外側で、何かが動いている。 ———次の瞬間。 靴下の入り口から、ゆっくりと、巨大な素足のつま先が、降りてきた。 「……っ!」 入口から差し込む光が、一気に遮られる。 再び靴下を履き直すため、巨大な足が、ゆっくりと中へ差し込まれてくる。 つま先が近づくにつれ、靴下内部の空気が圧迫され、ハヤトは堪らずどこかに逃げ場所はないか、再び動き始めた。 しかし、閉ざされた靴下の中、逃げ場などあるはずもなく。 「……く、来るな……!」 叫んでも、声は外へ届かない。 代わりに外側から、エルミナの声が響く。 「先ほども申しましたが……」 穏やかで、どこか気遣うような声音。 「先ほどお風呂に入りましたので、足は綺麗だと思いますわ。いくらハヤト様といえど……」 ズズズ……… 足が、さらに奥へと進む。つま先はもうハヤトの目と鼻の先に迫っていた。 「いきなり使用済みの靴下の中で、汗をかいた素足に包まれるのは、酷かと思いまして……」 言葉とは裏腹に、足指が靴下の奥まで押し込まれた。 ———ぎゅっ。 巨大な足指が、靴下の底にいるハヤトを、無造作に押さえつける。 「ぐうっ……!」 全身に圧がかかり、息が詰まる。素足からはお風呂上がりで良い匂いがするものの、巨大な足指に押し込まれ、潰されそうになる。 「……っ、や、やめてくれ……!」 堪らず、自ら足指の隙間へと入り込む。 ついに靴下は最後まで履き切られ、ハヤトはエルミナの足指の隙間に挟み込まれた。 「さて……」 エルミナの声が、すぐ近くから聞こえる。 「ハヤト様。あなたは、先ほどの魔法によって……」 足指がわずかに動く。 それだけで、ハヤトの身体も否応なしに一緒に動く。   「ブレスレットに刻んだ場所である、私の肌着や下着の中———具体的には、ブラジャーやパンツ、そして今いる靴下のいずれかの中でしか、生きていけなくなりました。」 淡々と、事実を告げる声が、エルミナの口から紡がれる。  「私の下着から離れると……酸素が薄くなり、精神が耐えきれなくなります。気が狂いそうになり、私の下着の中に戻りたくて、仕方がなくなるのですよ?ふふっ」 その小さな笑い声が、やけに近く感じられた。 そう。エルミナは、術者として指定する「場所」に、自身の下着を選んだのだ。 「ふ、ふざけるな……!」 英雄どころか、人としてすら扱われない対応に、ハヤトは必死に抵抗し暴れる。 だが、エルミナは足指を軽く動かすだけで、王国最強だったはずの彼の抵抗を、いとも簡単に押し潰した。  「ぐぅ…….くそ、ここから出せ……!今すぐ元に戻せぇ……!」 数分間。 エルミナは足指をしきりに蠢かし、ハヤトに今の自分の状況を自覚させようとするも、ハヤトはひたすら暴れ、抵抗し続ける。 いつまでも靴下の中が落ち着かず、エルミナは思わず眉を顰めた。 「では……」 しばし考えるような間を置いてから、彼女は言った。 「試しに、出してみましょうか」 ハヤトが閉じ込められていた靴下が、脱がれる。 光が差し込み、空気が変わる。 そしてエルミナは右足を覆っていた靴下をゆっくりと、逆さまに傾けていく。 ———ころり。 六十度ほど傾けたところで、ハヤトの身体は、靴下の中から転がり落ちた。 床に叩きつけられ、息をつく暇もなく、彼は顔を上げる。 そこには———。 しゃがみ込み、優しく微笑みながら、こちらを見下ろす巨大なエルミナの顔があった。 「……エ、エルミナ王女……!」 視界いっぱいに広がる王女の姿に、思わず声が震える。 「な、なんで……このようなことを……!」 理解が追いつかない。 恩人であるはずの相手。 この世界で数少ない、心から信頼できると思っていた王女。 その考えは、間違っていたのだろうか。 その問いに、エルミナは静かに、しかしきっぱりと答えた。 「あなたのような脅威を……野放しにしておくわけにはいきません」 声音は穏やかだ。 だが、そこに迷いはない。 「かといって、まだ魔人も完全には滅んでおらず、殺してしまうには……惜しい存在です」 一拍、間を置き。 「ハヤト様は、先ほど……私を綺麗とおっしゃっていましたね?」 そう言って、小首を傾げる。 その仕草は、誰が見ても美しい。 「でしたら……その私のペットになれるのなら。悪くない選択とは思いませんか?」 ———王女の言葉を理解する間もなく ハヤトの身体に、異変が起きた。 胸が、急激に締め付けられる。 空気を吸おうとしても、肺がうまく動かない。 「……っ、ぐ……!」 喉が詰まり、視界が揺れる。 「なんだ、これ…….く……苦しい……!」 耐えきれず、床の上でのたうち回る。 エルミナは、その様子を、躾途中のペットを見るような目で、微笑みながらじっと見下ろしている。 「……ふふ」 彼女は静かに告げた。 「誰のおかげで……あなたは生きていられるのか」 優しく、しかし王族に相応しい、厳格な声で。 「きちんと、理解しましょうね…….ハヤト。」 __________________ ハヤトには、もはや王女の声を聞き取る余裕すら残っていなかった。 耳に入る音は遠く、歪み、 視界の中心には———ただ一つ。 先ほどまで必死に離れたいと願っていた、エルミナの靴下だけが映っていた。 (……あれ、だ……) 理由は分からない。だが、あの中に入れ、と心が訴えている。 そうしなければ、意識が保てず、狂ってしまう確信があった。 はるか上空。 見上げると、巨大な存在となったエルミナが、すべてを見透かしたような微笑みを浮かべ、ハヤトを見下ろしているのが、ぼんやりと分かる。 だが、そんなことは今のハヤトにとって、どうでもいいことだった。 ――靴下。 あの中に、戻らなければならない。 足取りはおぼつかない。 ふらふらと、引き寄せられるように、靴下へと近づいていく。 今やハヤトの目には、エルミナの使用済みの靴下が、果てしない砂漠の中で、命からがら見つけたオアシスのように映っていた。 (もう少し……もう少しで……) 靴下の入り口が、すぐそこに見える。 安堵の息をつきかけた、その瞬間。 ———ひょい。 靴下が、突然はるか上へと、持ち上げられた。  「……っ!」 エルミナが、足の指先で靴下をつまみ上げたのだ。 希望が、目の前で潰える。 「そんな!どうして!エ、エルミナ様ぁぁ!」 エルミナは、そんな泣き出しそうな表情のハヤトを見下ろしながら、意地悪く、それでいて穏やかに微笑んだ。 「あら……?」 からかうような、柔らかな声がハヤトに届く。 「ハヤト、貴方この靴下から出たかったのですよね?あれだけ出せー、と暴れていたではないですか。」 エルミナはつま先で掴んだ靴下を手で掴み上げ、軽く揺らしながら、続ける。 「この靴下は履き込んで汚いですから、後でメイドに洗わせます。ほら、あいにくサイズは戻りませんが、もう、どこへでも行って構いませんよ?」 その言葉を聞いた瞬間。 ハヤトの顔から、血の気が引いた。 まるで世界が終わったかのような表情になる。 次の瞬間、彼は床に額を擦りつけ、土下座していた。 「……っ、す、すみませんでした……!」 声が震える。 「あのようなことを言って……暴れて…….本当に、申し訳ありませんでした……!」 顔を上げることもできないまま、必死に叫ぶ。 「お願いです……! エルミナ様の靴下の中に……どうか、私を、入れていただけないでしょうか……!」 胸を押さえ、必死に薄くなった空気を吸い込む。 「もう……あ、頭が、おかしくなりそうなんです……!何でもしますから!……..どうか、お慈悲を…….!!」 その様子を、エルミナはじっと見つめていた。 少しの沈黙の後、彼女は人差し指を顎に当て、わざとらしく考える仕草を見せる。  「……うーん」 そして、ふっと微笑んだ。  「仕方ありませんね」 次の瞬間、右の素足が、そっとハヤトを包み込んだ。 押さえつけるでもなく、踏みつけるでもなく。 ただ、覆うように。 「たくさん暴れて、右足の裏や指を殴ってましたね。そんな右足に、しっかり心をこめて慈悲を乞えば、許してあげるかもしれませんよ?」 目の前を覆う、足の裏。 足に包まれた瞬間、ハヤトの呼吸が、わずかに楽になる。 下着ではないが、それでも、先ほどまでの激しい息苦しさが、嘘のように和らいでいく。 (…..こんな安らぎをくれる存在に、俺は、なんてことを…….) 「本当に、すみませんでした………」 ちゅ………ちゅ……….. ふと、半ば無意識に、ハヤトは自らエルミナの素足の裏に身体をこすりつけ、キスを繰り返すのだった。 __________________ エルミナは、ハヤトがキスしたり舐めたりしているのを足裏で感じると、笑みを浮かべて、足をわずかに動かし、足の裏から足指の間へと導いた。 「……足の指にも、暴れてた反省を示しなさい。」 静かな声で、次の命令が聞こえた。 ハヤトはすぐに反応する。 「はい、すみませんでした…….私が愚かでした。お許しください…..」 ちゅ…….ちゅく…..ぺろ……れろ……. つま先や指の股に、必死に奉仕を行う。 「ふふ…….そうそう。今はお風呂上がりであまり汚れてないと思うけれど……そこは、特に汚れが残りやすい場所ですから。これから特に意識しなさい。」 懸命に足指にしがみつきながら、奉仕を続けているハヤトを見て、くすり、と笑う。 しかし程なくして、だんだんと舐める力が入らなくなっていき、フラフラとし出した。 エルミナはその様子を見下ろし、小さく息をついた。 「…….やっぱり、下着の中でないと、まだ長くは活動できないようですね……」 だが、すぐに優しく言葉を続ける。 「安心なさい、ハヤト。あなたはこれから……私の履いている靴下の中で、ずっと過ごせるのですから」 エルミナは、とうとう足指にもたれて気絶してしまった小さな存在を見下ろし、満足そうに微笑む。 「夜の奉仕にも使いたいですが…..まぁ、まだ早いですか。暫くは足のケアに使いましょう。」 そう呟き、気絶したハヤトを足指でしっかり挟み込んだ後、手にしていた靴下を履き直すのだった。


More Creators