XaiJu
Rei
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すぴろー審査員

国民的回転寿司チェーン店スピローの前に佇んでいたのは、高校生…か大学生か…それくらいの年の女の子であった。だがファッションは地雷系のツインテールにロングブーツというなんともケバいファッションであり、髪もピンク色に染めていたりと周りから一際目立つ存在であった。 「ここね…パパもめんどくさい事言い出すなあ…ただお金浮かせたいだけだし…」 女の子は入店して、一人用のカウンター席に案内されそうになったが、 「あー…後で合流する人がいるので、ファミリー席でお願いします」 店内にそうお客は多くない平日のお昼時。女の子はお冷を持ってくると、注文を行うタッチパネルと長い事向き合っていた。タッチパネルを置くと、黒マスクを外し、シャツの袖を捲ってズボンのチャックも外した。 一方厨房は大騒ぎだった。料理長と数人のアルバイトで厨房を切り盛りしていたが、尋常では無い伝票の数を見て驚愕していた。 「え…料理長、これマジですかね…?女の子一人なんですよ?」 「う、う〜ん…たまーにそういうお客さんはいらっしゃるけども…にしても…寿司50貫にラーメン5つにサイドメニュー殆ど全部って…」 「黙って作るしかないだろ!」 女の子はそんな様の事はお構いなしに、出てくるメニューを食べ続けていた。頼んだメニューが全部出てくるのを待たずに、自分の机の上が空になるたびにタッチパネルをいじって追加注文をしていた。 厨房もホールも大忙しで、女の子の注文するメニューや食べ終わった皿を下げて洗ってと、一人でゴールデンタイムに引けを取らないレベルの忙しさだったようだ。 女の子が頼んだメニューが、寿司200貫、ラーメン各種3杯ずつ、ポテトや唐揚げといったサイドメニューを全種2つずつは平らげたあたりで、店長が女の子に確認を取った。 「あの…当店ではこれ以上はお客様の身を保証できませんので…どうか退店願いないでしょうか?」 女の子は寿司を一口で5貫まとめて頬張りながら、店長の話を聞いていた。ごくんと飲み込むと、カバンから社員証を店長に見せた。 「私、このお店がきちんと在庫を確保して、いかなる不測の事態でもお店を営業する能力があるかの審査をしに来た本社の者です。」 「え!し、失礼致しました…」 「良いのよ?一般のお客さんがこんなに食べたりしたら真っ先に止めなさい?他のお客さんの分が無くなってしまうし…ゲエエエップ!」 「……ごめんなさい。…えっと、それから、厨房の繁忙時の提供速度や処理能力の訓練も兼ねています…普通は、私と似たような能力の人間にお願いする事が多いんですけど、前の人間が逃げてしまって、私が直にやってるんですよ」 「さ、作用でございましたか…大変お疲れ様でございます…」 「このお店、悪くないわね。問題なく提供もできているし。」 「ありがとうございます!」 「あ、ちなみに私、まだお腹4分目くらいだからよろしくね?お店のものが無くなっちゃったら言ってね?」 店長がお皿を下げると、再び食事を再開した。今現時点で食べた量は8キロくらいだろうか?下ろしたズボンのチャックに満遍なくお腹の膨らみが張り詰めてきた。 「もうちょっと意地悪しちゃおうかな…味変も兼ねて…」 寿司100貫とデザートのパフェ全種を注文。 ふふふ…そろそろ仕込み分が無くなって買い出しに走る頃合いね…追加で米も炊いてるだろうし…そこに甘いのも注文していじめちゃお… お客様が殆どいないお昼時で良かったとも言える…それにこの店は比較的駅から離れているし、近くに魚市場もあってそこで魚の仕入れを行っている。 ついでに茶碗蒸しだの唐揚げだの、厨房の人間を拘束しなければならないサイドメニューも追加注文した。 厨房の人達の努力の結晶は、一人の女の子の口に無惨にも吸い込まれていった。注文したメニューは食べ終わり、全部で12キロ程平らげてしまった。 「ふう…ちょっとお手洗いにでもいこうかな…よいしょっと…」 シャツのボタンは膨らんだお腹によって外さざるを得ず、ズボンもお腹につかまってなんとか履けているだけのような状態だったが、立ち上がりお店のトイレまで歩いた。入店前から12キロも体重が増えているため、歩く度にズシズシと普段よりも地面を踏みつける重圧が重いのはもう慣れたものだ。 トイレに入って化粧直しをした。食べるとどうにも汗をかくのでメイクが落ちてしまうためだ。シャツで隠しきれないお腹を軽く撫で回してトイレを出て、再び自分の席につき、まだタッチパネルで注文をした。 「え、えっと…お嬢様、本日はありがとうございました!」 「別に良いって。パパから言われただけだし」 「そ、その…お身体の方は…大丈夫なのですか?お嬢様に何かあっては我々は…」 「あー…そう。知らないのね。これくらいだったらいつも食べてるから大丈夫よ?」 結局退店する頃には追加で3キロほど食べてしまい、全部で15キロ近い量を平らげたことになる。 「ふう…でも結構この店良いわね。合格点よ。お給料増やしてあげるわ。今日はお店お休みにして良いわよ?もうお店の食材ないでしょ?」 「はい…ほぼ全部…お嬢様が…」 「お腹触る?」 「え、遠慮しておきますよ!気をつけてお帰りくださいませ!」 店員達に見送られながらスピローを後にした。比較的田舎道で人通りの少ない地方の店だった。そんな中お腹を抱えてバス停までの道を帰っていた途中だったが、帰り道に一軒のラーメン屋さんが見えた。 「……食費は全部パパが出してくれるし…ライバル社の視察とでも銘打っておけば怒られもしないかな…」 「それに、これは本来私みたいな大食いの人を雇ってやる仕事で、私がやってるのは人件費をケチっているからだし…帰りの車くらいは出させないと損よね…」 私は迷いなくラーメン屋に入店して、試しに1番人気のラーメンを注文した。 うん。美味しい。折角だしこのお店のメニュー全部食べちゃおっかな… 仕事ではないため気を使わずに食事ができる。必然的に食べるスピードも早くなり、汁まで全部飲み干していた。 約20種類ある全ラーメンを注文。一杯、また一杯と空皿が積み上げられていき、全部食べ終わったあと、気に入った何種類かを特盛+ご飯特盛を注文した。 「ふう…結構お腹にきたわね…」 この店だけで約20キロのラーメンを完食したことになる。 これまで寿司を筆頭に雑多なものを詰め込んできた胃袋に、ガッツリとしたラーメンの麺が流し込まれ、お腹の膨張感は倍増した。現に膨らみも倍増し、腕でお腹の山頂を撫でられなくなってしまった。お腹を叩くと鳴る和太鼓を叩いているようなドンドンとした音には、これまでの大食いとまだまだ余裕と言わんばかりの大物感が備わっていた。愚痴になるが、我が社のメニューはちまちまとした食べ物が多く、こうガッツリとしたご飯には他社じゃないとありつけないため凄く楽しい。 私のような大食いの人間にとっては、ちまちまとした飯で腹を満たすよりも、ドデカいデカ盛りを喰らった方が同じ量だとしても満足感が違うのだ。 「まだまだこれからね!よし!」 「ブブォォォォォォォォ!!!!!」 自信ありげにお腹を1発ズドンと叩くと、今日はまだしていなかった屁が出てしまった。そのまま膨れたお腹の側面から背中まで手を回す。背中の骨盤を歪ませていないという事は、まだ前方の膨らみに余裕があるという事である。私の体は今骨盤から鼠蹊部に至るまで胃袋が覆い尽くしている。開脚してお腹のスペースを確保しないとラーメンが入っていかず、今日1日の食事が収まっている胃袋の膨らみようは、人体の骨格構造を内側から跳ね除け、妊婦で比較するにしてはあまりにも常人離れした歪なものであった。 岩のように硬く、汗まみれでびちょびちょな胃袋は、私が口からご飯を食べる度に、内臓や骨格すら内側から押し込みながら膨張をしているのだ。 我が社すぴろーで見せていた範囲の大食いなど比較的常識的な範疇なのだと、驚いていた社員達にいつか言い聞かせてやりたい。 カウンター席のギリギリにまで膨らんでいるお腹に確かな余裕を確信して、目の前に置かれた特盛ラーメンにかぶりついていく。もう胃袋が人体に占めている割合が多すぎて、少しでも体勢を反ったり前のめりにすると息苦しくてたまらない。下手をすると身体に激痛が走る程の極限状態である。 「あ、あの…お客様…!?流石に…これ以上は…」 「ずず!ずずずず!あぐううう…グビグビグビ」 「お、お客…さま…?」 店員から何を言われても反応をしない。というかできない。もうここまで大食いをしてしまった場合、通常の注意力で意識を保つ事ができない。胃袋から生じる内圧が身体中を締め付け、人体の骨格すら胃袋が押し込んでいる状態だ。 人間が被災などをして極限状態で救助を待っている際、歌を歌ったり、何かに集中する状況をしていると思うのだが、それと同じで、私は今意識を保つために目の前の食事を平らげ続ける事しか考えていないのである。そのせいでさらに胃袋からの内圧は増し、ギチギチとなりながら滝のように流れてくる食事を収めるために胃袋が膨らみ、胃袋自体の痛みもそうだが、引っ張られている皮膚や筋肉の痛みもある。食べている最中はアドレナリンが出て大丈夫だが、アドレナリンが冷めてきた辺りで痛覚が戻り気絶してしまう事も多々ある。大食いを続け、アドレナリン全開の私は、口に入るだけ麺を啜り、喉を大きく広げて飲み物のようにラーメンを食べていた。その様を見て店員が心配に来たのだろう。 「こ、この人…正気じゃないよ…つ、通報……ん?」 店員はポケットから落とした社員証を拾い、私の会社に電話をかけた。 通報から15分後、 「お嬢様!!何やってるんですか!!」 社員が店に入ってきて、ラーメンの器を両手で持って、麺ごと傾向摂取している私を見て大声をあげた。 「お父様に言いつけますからね!帰りますよ!?」 「うおお……し、慎重に運ぶぞ?お嬢様に何かあってはいけないし…」 ほとんど意識のないまま夢中で食べ進めていた私の腕からラーメンの器を引っ剥がし、車に乗せられた。 「地方のラーメン店は価格に対して量が多く満足度が高い。そのため根強いファンが存在していて常連客も多い。恐らく地元農園との契約で安く野菜などの食材を仕入れていることで実現している値段なのではないか。厨房の処理能力に問題はないどころか想定の30%上回っており、アルバイトの教育が徹底されていた。大食いチャレンジには挑戦客も多く、私が店に入った時には地元の高校生3人がお遊びで挑戦しているようだった。」 「全く。こんな誰でも分かるようなレポート一枚で許されると思ってるのか。」 「終わったら真っ直ぐ帰ってきなさいと言ったのに、寄り道した挙句に店の閉店までずっと大食いを続けるとは…」 「そのくせ自分で歩けなくなって迎えの車まで出させたんだぞ!」 「だって…こんなの私のやる仕事じゃないし…」 「あんまり人に見せて良いものじゃない事を自覚しなさい。店の人踏ん反り返ってたんだぞ!」 「そ、そうだけどさ…」 昨晩、私は会社の仕事として地方の店の視察を命じられてたのだが、帰りの道でラーメン屋に寄ってしまい、あまりの美味しさに23時の閉店まで店に居座り、27杯、総量28キロもの大食いを披露してしまったそうだ。…入店前にすぴろーで15キロ近い量を平らげて尚である。その後店の苦情で駆けつけた自社の車によって社宅に強制連行された…か。 「うわっ…凄…」 連行された際の私のお腹を見て驚愕したのであった。


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