強さの秘訣
Added 2024-06-09 16:57:52 +0000 UTC僕達は王城に支える騎士団。日夜鍛錬に励んでいた。 僕は騎士団の入隊試験もギリギリで合格した。親や友人にはそれそれは大層にお祝いされたが、実態はなんとか騎士団でやっていけるかいけないかのギリギリのラインを彷徨っている始末。このままでは…クビだろう。 走り込み一つでも周りと差をつけられる日々だったが、それでも仲良くしてくれる友人が騎士団にはいてくれた。今日も走り込み終わりに声をかけてくれた。 「お疲れ。…大丈夫か?凄い息上がってるけど」 「お疲れ…はあ…はあ。みんな凄いなって」 まあ、王城に支える騎士なのだから、この国でも指折りの精鋭が集まるのは必然の事だ。それは覚悟の上で入隊したはずだ。 次の訓練は組み手。二人一組になって稽古を行う。今日は人数が奇数のため一人ペアが出来ず僕が運悪く?余ってしまった。余った僕には騎士団長さんがペアになってくれた。団長さんは女性ながらこの騎士団のトップに立っている方だ。剣技と美貌もあって皆の注目の的だ。 「よ、よろしくお願いします!!」 団長さんは表情に乏しいのか、挨拶をしても顔色ひとつ変えない。表情がいつもの仏面顔から変わっているところを僕は見たことがない。 組み手が終わる頃には僕はボコボコにされていた。 「お疲れ。運悪かったなあ…団長相手は俺もそうなるわ。強いもんなあの人」 「あーお疲れ。…いたた…人を相手してるとは思えないくらい怖いんだよな…あの人。」 「なんであんな強いんだろうなー。あの人。」 「…あ、知らないんだ?」 「え?」 「そっか…まあ、そのうち分かるよ」 「???」 その時はまだこの言葉の意味が分からなかった。が、今目にしている光景を見ると、これのことなんだとすぐに理解できた。 事の始まりは月に一度の宴。僕は新入りのため宴は初めて居合わせるのだが、大広間の至る所に山のように積まれた料理…これは炒飯だろうか。全部炒飯だ。凄まじい量の。だがいくらなんでも数が多すぎないかと思っていたところに、団長が部屋に入って来たかと思えば端から端へと炒飯を頬張り始めたのである。 いつも仏面顔の団長なのだがこの時は稽古中にすら見せないような熱中ぶりを見せたため僕は大変驚いた。部屋の中央にある比較的一般的な量の料理達を囲いながら酒を酌み交わし、団長の食事の様子を眺めるというなんとも異様な光景だった。だがここではこれはそこまで珍しい状況ではないようで、ほぼ寝巻き同然の服装の団長は、あれだけあった山のような料理を少し目を離しただけですぐ平らげてしまい、団長のお腹も山のような炒飯が入っているのも納得してしまうくらい、どんどん膨らんでいっていった。 部屋の半分程、折り返し地点に到達した団長。お腹は既に両腕いっぱいに広げて本人がなんとか抱えられるかといったサイズにまで膨らんでいた。皿を持って飯をかきこんで平らげた直後、 「ゴゲェェェェェェェェェッッッッッップ!!!」 廊下にまで響き渡る大きなげっぷが鳴り響いた。 それから団長らノンストップで部屋の隅まであった炒飯の山を食い尽くした。部屋中の全ての炒飯を平らげた団長のお腹は鍛え上げられているはずの足腰でも支えきれずにその場で膝をつき、凄まじい大きさにまで膨らんだお腹を開け放つように開脚した。 前から疑問だったのだ。あれ程の足腰のトレーニングを何でおこなっているのかと。 座り込んだ団長はしばらく自分のお腹を撫でたり叩いたりして自分のお腹の具合を伺ってから大声をあげた 「おかわりいいいいい!!!」 団長の衝撃的な発言に呼応するように他の団員からも歓声が上がる。名物行事のようなものらしく、団長がこの後何皿食うかを賭け始める者や、食べている様子が勢いがあって爽快感があるからといってずっと凝視する者や、僕のように普段とのギャップで驚いてしまう者など様々だった。 「な?団長凄いだろ?」 「凄いっていうか…」 こんなの見せられるとご飯食べる気にならないや…凄まじすぎて… いつもは表情に乏しい印象を受けるが、食べている時の団長は本当に楽しそうというか、半分狂気的な形相だ。まるで獣のように、召使いが持ってくる大皿に乗った山のような炒飯を貪るように喰らい、あれほど品性の感じられない食事は久しぶりに見た。 大皿を平らげていく度に団長のお腹はギシッ…ミシミシッ…と音を立てながら重苦しくも勢いよく膨らんでいっていた。 「先月は5皿だったろ?じゃあ俺は6皿!」 「じゃあ7…いや8!」 大皿一つだけでも、我々全員が食べ切れるか怪しいようなパーティーサイズというやつだ。それを一人の人間がこんなひょいひょいと平らげていくものなのだろうか?この異常な光景に不思議と目を奪われてしまった。だがそれを収めている団長のお腹はそれ以上に異常な様で、団長は腕をめいいっぱいに広げても触れるのは腹の側面だけ。へそがある腹の頂上にはもう自身の力では触れないようだった。 団長はおかわり2皿目を完食! 「グゴゲエエエエエエエエエエエエエッッッッッッッッッッッッッッッッップ!!!!!!!!!」 ブビビビビビビビビビイイイイイイイ!!!!ブゴオオオオオオオオオオオオ!!!!! 先程よりも大きなげっぷに、放屁まで凄まじい音量だった。お腹を叩いて空気を出そうとしているのか?ドンドンと腹を叩く音はまるで岩でも叩いているのかと思ってしまった。団長は大変偏食家のようで、中でも炒飯が大好物なそうだが、岩のようになるまで腹に詰まった炒飯の重量感と大きさに圧倒されてしまった。まるでこう…ゴリラのドラミングのような威圧感さえ感じてしまった。 団長は変わらぬ勢いのまま食事を続けた。騎士の仲間が言っていた6皿目まで完食。食べ進める度にお腹の膨らむ音は膨張感が感じられつつも重圧感や痛々しさすらも感じる音になっていった。 しゅううう…と浅い呼吸で一呼吸置きながら、変わらずお腹を叩き続ける団長。叩いた時の音や、団長の表情の感じや全身の汗から、なんとなく団長の余裕の無さを察する事ができた。こんだけ食べているのに、一応限界というものがあるのだろうか?見るとお腹の血管の青筋が浮き出て来ている。胃袋は前方だけでなく背中や肋骨の内側にまで、内臓を押し除けるだけ押し除け、押し込めるだけ押し込んだ上で、骨盤から肋骨までの人体の空間全てに胃袋が膨らんで侵食しているのだろう。 それに飽き足らず骨盤の枠組みすら超えて、背骨や肋骨を内側から押し曲げる程の胃袋の内圧が生じている。 腹部前方の膨らみなどとても形容し難い。鼠蹊部に至るまでほぼ垂直に膨らみながら、骨格という枠組みを脱した前方の胃袋は、人体正面から見て扇形に広がり初め、あんな速度で炒飯を詰め込んだため腹の表面には歪な凹凸があり、炒飯が密度99.99%パンパンに詰まっている様子は痛いほど感じ取れた。重力によって地面に垂れ下がりながらも、胃の上辺のところも胃が膨らんで鳩尾が基準にならず、このまま膨らみ続ければ肋骨を表面から覆い胸を完全に吊り上げてしまうとすら感じる。 最も、自らの人体がそんな状態になるまで炒飯を食べてしまう団長が一番おかしいのだが。 「ふん!!んん!!んっ!!」 力みながら自分の腕で触れる範囲のお腹をグッと押して、なんとかお腹の中の0.01%の空気を排出しようと試みていた。 ブ!!!ブビイイ… 絞り出したように屁が出たが、その様からやはり限界がとても近いのが分かってしまう。 「マジかー団長!あと1皿!」 「違うぞ!8皿で賭けてるからあと2皿!絶対無理だって。つか1皿多く食えるようになってるだけでも意味わかんねえって!」 召使いがそんな様子の団長を見て、ドクターストップを提案していた。 「あの……本当に、もうおやめになったらどうです?どうかお願いします。」 熱々の炒飯を大量に食べてきたため、団長は全身が汗まみれでびちょびちょだ。だが召使いが持って来たおかわりの分の炒飯を見ると迷いなく静止の腕を強く握りしめて 「たべる!!おか…わり!!」 そう聞くと呆れながらも炒飯を差し出すしかない召使い達。 「ええ!!??まじか!?すげえ!!」 「食べ切らないとカウントしないからな!食い切ったらお前の負け!」 だが凄い事に勢い自体は止まらずに6皿目を食べていた。まるで掃除機のように炒飯の山が口に吸い込まれてく。 ギチィ…ビキビキッ……グギギッ!! 凄く痛々しい音を立てながらも団長のお腹は膨らんでいった。人体部分は殆ど膨張限界のため、ひたすら前へ。身体の枠組みを完全に外れた胃袋達は前へ横へと扇形に広がろうとしている。 そんな胃袋の状態とは裏腹に7皿目も完食。 「まじ〜!?」 「あ、あと1皿食べてくれないとか勝てない…」 「で、でも…あれは流石に…」 団長のお腹の皮膚は山頂部にいくにつれて梅干しのように真っ赤に腫れあがり、血管の青筋という青筋がまるで蜘蛛の巣のようにお腹から浮き出ていた。 8皿目の炒飯を前に、視線だけはずっと炒飯を見続けている団長。 「どうされます?」 「〜〜〜!!!ッッッッッッ~~~~!!!」 ゴン!ゴン!ゴン!と今までにない強さで自分のお腹を叩きまくっている団長だったが、身体中は震えが止まらないようで、小刻みにブルブルと揺れ続け、その身体の揺れによって外側から叩いただけでは出てこなかった空気が喉元に突っかかったようだったが… 「……ふあ…ッカップ……」 「…お疲れ様でした。こちらは控えの者達で美味しく召し上がらせて頂きますので。失礼します。」 「…ぁ」 団長は苦し紛れに腕を伸ばすものの、身体の極限状態に意識がついていけず、そのまますっと気絶してしまった。 グギュルルルルルルルルルルルウウウウウウ!!!! グルルルルルルルルルル!!!!! げっぷや放屁以上に団長の消化音が聞こえてきた。 そんな食事の様を見せられた僕だったが、友人はこう言った。 「団長が食べた後のお腹を触ると、団長の強さを分けてもらえる!って噂みたいだよ?」 「……はあ。…遠慮しとくよ」 その次の週、僕は騎士団を辞めた。