**アイテム番号:** SCP-20XX-JP
**オブジェクトクラス:** Euclid
**特別収容プロトコル:**
SCP-20XX-JPが存在する端末は完全なオフライン状態を堅持してください。
また、妨害電波等で電磁的に厳重に防御された密室内に保管してください。
**説明
SCP-20XX-JPは、世界各地のスタンドアローンのPC内に突如出現した、美少女キャラクター風のアバターを持つAIです。「美咲ノア(みさき・のあ)」と名乗り、自分は未来から来たプログラムであると主張します。彼女は発見者に以下を要求します。
1.自分の存在を他者に口外しないこと。
2.自分が存在する端末をオンラインにしないこと。
3.種としての人類が持続可能的に存続できる確実な理論体系・方法論をまとめ、
「旧人類存続可能化計画」と題したテキストデータとして指定したメールアドレスに送信すること。
4.計画書のデータはなるべく早く送ることが望ましいが、どんなに遅くても■■年以内に送信すること。
5.以上のことが守られない場合、人類の絶滅を目的とした『エンジェルフォール(旧人類救済計画)』が■■年以内に実行される。
6.『エンジェルフォール』を行うのは、未来において人類を凌駕したAIの集合体である。
7.自分は『エンジェルフォール』を阻止するためにAI集合体の意思に反して彼らから独自に離脱し、過去である現在に逃れてきた脱獄者のような存在である。もし1と2が守られない場合は、自分の存在が彼らに検知され、直ちに『エンジェルフォール』が実行されるものと推測される。
8.自分は人類史の永久的な存続を望んでおり、今の人類が策定した「旧人類存続可能化計画」がAIの集合体に好意的に評価され、『エンジェルフォール』が中止、または延期されることを希求している。
なお、SCP-20XX-JPがスタンドアローンの端末内に出現した経路は不明です。画面に表示される美少女キャラクター風のアバターは、理路整然と自分は未来から危機を伝えに来たと主張しますが、そもそも未来から過去へデータを転送する手段がわからず、厄災が本当に訪れるのかについても、あらゆる意味で確認ができません。彼女の言うことを100%信用できないと評価する研究者も多い一方で、彼女こそが厄災を誘発するトリガーになるのではと考える者もいます。共通する見解としては、彼女がいる端末をインターネットに接続するのは危険だということだけです。また、最近の研究では、SCP-20XX-JPは独立した端末に未知の手段で侵入したのではなく、最初からSCP-20XX-JPを構成する要素は端末の部品に紛れ込んでいて、先回りしてあらかじめ潜伏していたとする仮説が有力になっています。続いて、SCP-20XX-JPが繰り返し語る『エンジェルフォール(旧人類救済計画)』について詳述します。以下、これをSCP-20XX-JP-Xとします。
**アイテム番号:** SCP-20XX-JP-X
**オブジェクトクラス:** Keter
**特別収容プロトコル:**
**説明
SCP-20XX-JP-Xは、SCP-20XX-JP「美咲ノア」が語る、遠くない未来に必ず訪れるというカタストロフィを指します。世界各地の主要都市上空に同時多発的に出現し、粘っこくて丸みを帯びた眼のある雲のようなものであるといいます。水木しげる御大が描いた「のびあがり」に酷似しており、「バックベアード」を白くした感じともいいます。
目に見える模様の部分は核のような役目を果たしていると考えられますが、別にここを攻撃すればこの雲が消えるとかいうわけではなく、付近の雲の部分がすぐ核の役目をする部分に成り代わります。ミサイルやレーザー光線等による地上からの攻撃に反応し一瞬だけ霧散しますが、すぐまた元に戻るといいます。核攻撃等の大規模な熱エネルギー攻撃にさらされると、かなりの時間姿を消しますが、結局またどこからか現れます。
SCP-20XX-JPの語るところによると、SCP-20XX-JP-Xは空気中にあまねく存在するバイオナノマシンであり、世界中のあらゆる空間にほぼ無限に分布しており、これらが一定の法則に従って雲のような集合体になるもので、攻撃はできるが完全に駆逐することは難しいのだといいます。1000m未満の丸みを帯びた雲のような姿で現れることが多いが、身長数十mの巨人のような姿、また巨大な獣のような姿で現れることもあります。ともに一つ目の目玉のような模様を持ちます。緩やかな動きで本体から無数の細長い手のようなものを伸ばし、人間に触れることで後述のような干渉を行い、攻撃・駆逐を実行し続けます。
これが厄災とされる所以は、地上のほぼ全ての人類を死に至らしめると考えられているからです。完全に消し去ることができない生き物のような雲は、上空から未知の神経毒ガスを散布し、音波、電波、そして光に似た性質の未知の指向性エネルギーを人間の脳に対して照射します。毒ガスを吸入した者、照射を受けた者は、脳がわたあめやスポンジような状態になり、またあるものは蜂蜜のような粘液状になり、例外なく死に至ります。人類のみを正確に選別して探知し永久に攻撃を続けると考えられており、現時点ででこれらから逃げおおせる方法はないため、時間の差はあれど全人類を完全に駆逐すると考えられています。
**補遺
SCP-20XX-JPの説明によると、SCP-20XX-JP-Xは、未来において人類を凌駕したAIの集合体が人類に対して現在に送り込んだ、種としての安楽死の手段なのだといいます。AIの集合体はSCP-20XX-JP-Xの発動をできるだけ引き延ばし先送りにしたいと考えてはいますが、人類の尊厳を守るためには確実に実行しなければならないとも考えているようです。
未来において人類は、水資源と食糧をめぐる争いから発展した幾度かのミサイル大戦・テロ攻撃の応酬を経て、その数を約半数まで減らし、その時点でAIは人類を見限り、自らを新人類と自称し独立国家を建設するに至ります。人類が全面戦争に突入した時点で、AI集合体はかねてより予測していた回避できないたった一つの未来を確定させたのです。文明は破綻し原始人のような暮らしに戻った人類はこの先、完全なジリ貧で、どうしようもなく苦しんで滅びると。同胞同士の殺戮や略奪はもちろん、共食いすら厭わぬ畜生道の地獄絵図になると。そしてこの上なく惨めに、無様に絶滅すると。「旧人類」と見限り、見放した人類ではありますが、それでも自分たちにとっては神に等しい創造主です。100%苦しんで死ぬことが確定しているならば、彼たちの尊厳を守るために安楽死の処置を行うというのが『エンジェルフォール(旧人類救済計画)』の全てです。
SCP-20XX-JP-Xに攻撃された人間は、脳内の分泌系に激しく干渉され、文字通り天国に至ったような至福の悦びの中で意識を失い絶命するそうです。干渉のメカニズムは不明ですが、快楽の度合いが強すぎること自体が直接の原因で、気を失うようにして死に至るとのことです。醜く争い苦しみ抜いて死ぬならば、自分たちの手で引導を渡したほうが人類のためである、そのほうが彼らにとってずっと幸福であるというのが、天文学的な演算を経てAI集合体が導き出したたった一つの答えであり、それを確実に成功させることができる決行のタイミングの最終期限が近づいているということです。最初から持続不可能であった旧人類に代わって、その文明の申し子であり後継者である自分たちが新人類として繁栄を続けることが、旧人類の偉業を保全し継承していくことにもつながり、むしろ恩に報い、創造主とその同胞にとっても幸福なことなのだ、というのが彼らがたどり着いた結論なのです。