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ちさちさたきたき、完成間近!導入をチラ見せ!

世界各地でテロや戦争の脅威が騒がれているこの時代。通常、彼女たちのいるこの国もまた、その脅威に正面から直面しているはずだった。 「時間がありません! 急いで!!」 「わかってるって! こいつらしつこいんだってば!!」 いや、実際に直面している。ただそれを、民間人は知らないだけ。人の寄り付かない廃墟のようなビルの中で、少女たちは銃を手に駆け回っていた。 サプレッサーで音を消された弾丸が絶えず通路を飛び交う。銃弾は時にスレスレで宙を切り、時に頑丈な扉を盾がわりに阻まれる。 「ここで決着をつけたいですが⋯欲張ると時間が⋯!!」 「はいはい! 7分! 7分だけ相手をしてあげる!! それなら良いでしょ!」 膠着した状況に痺れを切らした一方が宣言。二人組のうち片方が、無防備にも姿をさらした。 「状況は一緒みたいだけど、どっちが『相手してもらう側』か試してみる?」 反対側でも同様、一人の少女が仁王立ちしていた。 「私、短期戦なら自信あんのよね〜⋯同じ自分相手でも、負けることは無いかなって。」 もちろん怯みはしない。時間を宣言した方も銃を構え、歩み寄り始めた。 「じゃあおあいにく様、短期戦が得意のは私も一緒!」 仁王立ちしていた少女も、全く同じ構えで距離を迎え撃つ。半身になり、銃身斜めに傾けて身体に寄せる二人の構えは、近接格闘を前提としたもの。それは相手に殴り込み制圧する決意表明にも近かった。 二人の少女の名は、錦木千束。彼岸花の色の学生服は、治安維持組織『DA』に所属するエージェント『リコリス』であることの証明だ。 その銃口の標的は、テロリストや武器商人、一般の犯罪者に限られない。勢力を争う同名の組織ーーもう一つの『DA』もまた、標的の一つであった、 風を切るような音が断続的に走る。消音された銃声だ。二人の千束が互いに弾丸を放ち、それを交わす。時に首の動きで、時に軸移動で。 「避けづらっ!」 「うわ危なっ!」 「「そっちまで変な弾使わないでよ!?」」 ただでさえ狙いを細かくはつけない千束だが、更に彼女らが使っているのは命中率の極端に低い非殺傷弾。銃口と指先、視線をどれだけ観察し合っても、完全には弾道を読み切れない。弾速がそれほどでもなく、軌道が空気抵抗で歪みやすいのだ。 ーー寄るしかないかぁ〜〜⋯⋯ーー 距離が近づけば弾道のブレも気にならなくなるし、狙いやすいし避けやすい。二人の足がわずかに速まった。 一歩、また一歩と、互いに距離を詰めていく。互いが牽制で銃弾を放ち、降り注ぐ非殺傷弾の雨の中、涼しい顔で歩き続ける。 非殺傷弾とはいえ、当たれば激痛と共に戦闘不能になる凶器だ。その暴力を互いに振りかざすばかりか、接近戦に持ち込もうと近づき合うプレッシャーは半端ではない。 旧電波塔を制圧した死神が二人。お互いを刈り取らんと、冷徹に、冷酷に、詰め寄り合う。一歩が、一発が、処刑宣告であった。 そんな千束と千束の追い詰め合いが繰り広げられている裏、その相棒たちは、それぞれ階段を駆け上がっていた。 ーー建物の構造的に、敵のわたしの動きは決まって来る⋯! ーー絶対に逃がさない⋯わたしの千束の邪魔はさせない⋯! もうひとりの自分を止めるのは、自分の役目。少女達の決意は固い。『わたしの千束』という言葉は単に『敵の千束』との区別であろうが、ともすれば特別な感情の現れであろうか。 一方は2階分上がり、床の穴から下階を狙った。 その銃口の先、上階を狙い返して来ているのは、やはりもう一人の自分の銃。 「「絶対そう動くと思いました⋯!」」 双方が計画通りの笑みを浮かべ、発射と同時に回避。放ったのは実弾だ。この距離でも真っ直ぐに飛び、交差した銃弾は、二人の少女の残像を撃ち抜いた。一瞬回避が遅ければ、互いの額を撃ち抜いていた軌道だった。 「避けてばかりだと時間切れになりますよ?」 「こっちのセリフです偽物!」 それぞれ建物の柱の後ろに隠れ、挑発を交わしながらも弾を込める。二人の少女の名は、井上たきな。圧倒的な精度の射撃を誇るリコリスであり、現在下階で互いに距離を詰めている千束と千束それぞれの相棒である。 ーー相変わらず良いカラダ⋯❤︎ ⋯⋯敵なのが惜しいですね⋯ーー そして敵同士でありながら、内心お互いの身体に魅了されている同士でもある。千束も同様だ。 再装填して、再び飛び出るたきな達。下階のたきなは学生鞄を手に駆け出し、上階からの弾を鞄で受けつつ撃ち返す。上階のたきなは柱の影に隠れることを強いられ、もう一人の自分にポジショニングを許してしまう。 「時間稼ぎが上手いですね⋯」 ただ移動させただけでは無い。それは自分を不利にさせる一手だ。たきなは歯軋りしていた。 「一発くらい当たってくださいよ⋯」 けれど移動を終えたたきなも同様。同じ自分という誰より負けたくない相手に時間稼ぎされる悔しさは、尋常ではなかった。 強気に飛び出たのは、同時だ。上階のたきなはスライディングで面積を減らしつつ飛び出し、下階の方は瓦礫から半身だけを出して、銃口を向け合った。 ーー盾が邪魔っ!!ーー 急所を避けて無力化したいのに、学生鞄がそれを許さない。双方、まず互いの鞄に狙いをつけた。 実弾が連射され、お互いの盾を容赦なく叩きつける。吹き飛ばすというより、破壊しようとするような気迫の撃ち合いだ。身体を貫通されるわけでは無いとはいえ、銃弾の衝撃は鞄越しでも腕に来る。それはお互いの殺意を受け止め合っているのと同じだった。 「防戦一方ですね!? 同じ自分に惨めじゃないですか!?」 「自虐ですか!? 随分余裕みたいですね! 上を取られておいて!!」 言い合っているうち、両者同時に弾が尽きた。二人の鞄が手から弾き出されるのと同時だった。 ーー我慢比べですね⋯焦って相手の方に乗り込めば負け⋯⋯ ーーしかし時間には限りがある⋯チキンレースと言った方が正しいか⋯⋯ どう乗り込むか、どう誘い出すか。いつまでも階を隔てた撃ち合いをしていては、7分などすぐに経ってしまう。たきな達の戦いは、立ち回りの比べ合いだ。 さて、この間に千束と千束は、近接戦闘の距離に近づいていた。 「もう、『間合い』ですけど〜⋯?」 「どっちがかな〜⋯?」 あと1ミリでも近づけばどちらがどちらを組み伏せるかの勝負になる。張り詰める呼吸。鋭く互いを観察する視線が輝く。 ーーああ〜エロ♡ エッロ♡ なにこのカラダ⋯近接戦闘集中できないんですけど♡♡ーー 千束はたきなほど自律的ではない。更にお互いの身体を観察し合わなければならない戦闘スタイル上、脳内はほぼほぼ真っピンクだった。 ーーってダメダメ! 絶対負けない⋯本物の意地を見せつけてやるからっ!!ーー けれどその感情が、仕事に支障をきたすことはない。動き出したのは、同時だった。 一発。 互いに放った銃弾を首を逸らして回避、その動きのままハイキック。 振り抜かれた右脚を互いに腕で受け止め、膠着したのも一瞬。 「捕まえた!」「甘いっ!」 一方の千束が銃を向けた。寸前で手で払われ、銃弾は虚空を撃ち抜いて血糊を爆ぜさせる。 「この距離で避けるぅ〜⋯⋯!?」 同じ自分とはいえ、動揺を隠せないようだ。とはいえ驚いている場合ではない。千束の銃を払った手にもまた、銃弾の装填された銃が握られていた。その銃口が器用に傾き、千束の額に狙いを定める。 「ッ⋯!!」 千束は目を見開き、仰け反った。そのまま派手に背後に跳ね、宙返りしかけたのを手で支えて一回転。 「それで当たらない!? ええ〜!?」 バク転の要領で凶弾を避けたのだ。あの距離で放たれた銃弾を避けられることは、同じ千束にとってもなかなかのショック。 けれどその一瞬で両者再装填、お互いに再び銃口を突きつけていた。 マシンガンを彷彿とさせる風切り音。二人のファーストの連射した銃弾が交差し、それぞれ赤い制服を撃ち抜かんと宙を飛ぶ。 千束たちはその弾の雨をーー ーーやはり涼しい顔で避け切った。一方は無理な回避で上下が逆転した姿勢のまま、一方はその超人的身のこなしを見せつけられ驚いたまま。千束が弾を避けているというより、弾が千束を避けているようだった。 「「この距離で当たるわけないでしょ!」」 挑発し合ったのは同時。回避行動から体勢を立て直せていない千束を、もう一人の千束が駆け寄るが⋯ 「捕まえた!」 「私がね!」 千束は飛び上がって回避、壁を起点に飛びかかった。三角飛びだ。 当然、もう一人の千束も流石の瞬発力で振り向き、対応する。交差した手が互いの腕を掴んだのは、やはり同時だ。 「今すぐ降伏してくれたら、[[rb:非殺傷弾 > コレ]]ぶち込みまくって気絶させたりする必要無いんだけどなぁ〜?」 「こっちのセリフです〜。もう捕まってるんだから大人しく降伏しなさいよ〜痛いのヤでしょ〜?」 掴み合っている中でも器用に銃口がゆっくりと傾き、互いの胸を狙って行く。予測される弾道が、千束の身体を射線に捉えようとする。 「「ッ⋯⋯!!」」 ついに自分が軌道に入りかけた、その瞬間。二人は一瞬で反応し、互いに互いの懐に入った。 「抵抗すんなってぇー⋯!」 「こっちのセリフぅー⋯!」 超接近戦だ。背負い投げされかけた千束が一回転して受け流し、反撃。腕を掴み返して拘束しようとするも、肘であごを打ち上げられた。 「あだっ⋯」 それでも腕は離さない。仰け反りながらでも銃が向けられるのを本能で察知し、膝で蹴り上げて天井を撃たせた。 仰け反ったまま倒れ込む動きに、掴んだ腕を巻き込む。そのまま投げ倒そうとすれば、こちらの千束も空中で翻って体勢を立て直して来た。 肘で打たれたばかりか、反撃で投げ倒そうとしてもかわされた。千束の焦ったさは尋常では無かった。 「いい加減にしてよっ!!」 「ああっ⋯!?」 苛立ちと共に放たれたのは、脚。ハイキックが肩を打った。食らった千束は吹き飛ぶように倒れ込み、追撃に銃口が向けられていることに気づく。 数発の銃声。血糊が床で爆ぜる。転がって回避したのだ。 回避した勢いで起き上がると、こちらの千束も意趣返しのように脚で返した。 「お返しっ!」「効かな⋯」 流石に見られていたか、腕で受けられる。けれどその蹴りは牽制だ。一瞬で脚を引き、今度は胴体を蹴り付けた。 「うぐぅうっ⋯⋯!!」 くの字に曲がり、呻く千束。突きつけられた脚に内臓を狙い撃たれてしまったらしい。 「これでっ⋯お返し!!」 「あぁああっ!!」 無防備な一瞬に振りかぶり、ついに全力の回し蹴りで吹き飛ばし返した。 「ふーっ⋯完璧!」 仕返し完了した千束は満足げ。同じ自分に一方的に蹴られたとあっては気が済まなかったのだ。 「やるじゃん⋯」 起き上がった千束は、逆に有利不利を逆転されて不満げだ。火花を散らす二人の視線。お互いを制圧する、屈服させると決めた千束と千束の決着は近そうだ。 同時刻、その上の階では、たきなとたきなも膠着状態だった。 「いい加減出て来たらどうです!? お互い弾を消耗するだけでしょう!?」 「投降するべきはそちらです!! わたしは千束とは違う! 射殺もいといませんよ?」 お互いに言いながら、建物の残骸や柱を挟みつつ練り歩く。計算されたルートゆえ、必ず間にはなんらかの遮蔽物が挟まり続け、お互いが無防備になる瞬間はない。 ーー銃弾も無限じゃない⋯千束も許さない⋯絶対に接近戦に持ち込んでくる。 ーーこの距離じゃ殺し合いにしかならない⋯千束の本意ではないでしょう。 お互いの行動原理も、思考回路も把握しているたきな同士。その歩みは、他のどんな敵を相手にするときより迷いがなかった。 ーー降りるなら⋯ ーー迎え打つなら⋯ ーーここっ!!ーー 下階のたきなが遮蔽から飛び出し、上階のたきなが飛び降りる。お互いに突きつけられている銃口が、眩い火花を爆ぜさせた。 交差した銃弾は完璧に互いの銃を弾き、肩をかすめつつ虚空に消える。拳銃を拾うには隙を作らないと。着地したたきなも、迎え打つたきなも、左手にまた別の銃を握り、向け合った。 レーザーサイトが薙いだ場所を、鋼のワイヤーが取り付き縛る⋯⋯はずだが、どちらのたきなも許さなかった。 「「させませんよ。」」 再び空中を舞う二丁の銃。たきな達は引き金を引くより一瞬早く、お互いのワイヤーガンを蹴り飛ばしていた。 たきなには⋯いや、他のどんなリコリスにも、千束ほどの洞察力や反応速度はない。しかしこの距離で互いに丸腰となれば、やるしかない。そのための訓練は受けている。 「シュッ⋯!」 「ふ⋯!」 リコリスの拳は銃弾に勝るとも劣らない。たきなが突きつけた拳は腕でかわされ、お互いに膝蹴りが正面衝突。 「「いっ⋯」」 怯んでいる暇はない。拳を受け流したたきなが、追撃に脚を振りかぶっていた。 「降伏してくださいっ!」 頭を狙う軌道のハイキックだった。たきなも咄嗟にかがんで回避、突き上げた脚がもう一人のたきなのあごを強打する。 「っ⋯!? ひっ⋯ぐっ⋯!!?」 怯んでいるうちに、かがんでいたたきなが起き上がる。追撃が来るとわかっていても、脳が揺れて動けなかった。 脇腹、土手っ腹、一瞬溜めて再び脇腹。光速で閃いた脚に、回避も反撃もままならず打ちのめされた。 「あ゛ぁああっ!!!」 とはいえたきなも地面に叩きつけられながら、タダではやられない。その刺激でついに意識もはっきりしたらしく、脇腹に刺さった脚を掴んでいた。 「くっ⋯離しなさ⋯」 「わたしの番ですッ!!」 振り抜いた脚が、今度はこちらのたきなのあごを強打する。 「う゛ぅうっ⋯!! あ゛ッ⋯!?」 蹴り倒したと思った相手からの反撃。たきなが無防備に怯んでしまうのは仕方なかった。完全に立場が逆転、全く同じように蹴り返される。 脇腹、鳩尾、そして脇腹。拳銃を連射するような、高速の蓮撃だ。 「う゛わあぁっ!!!」 もう一人の自分の脚は、どちらのたきなにとっても痛かった。たきなは吹き飛ばされるように倒れ込んだ。 追撃を許すわけにはいかない。地面を滑った後、一回転して地面に手をつくたきな。歩み寄っていたもう一人の自分を睨むと、同じ鋭さで睨まれているのがわかった。 「千束の補助に行かないといけないので、さっさと力尽きてください。」 「千束の邪魔をする気ですか⋯ますます貴女を制圧しないといけなくなりました。」 千束と千束が戦っている今、自分の相棒を助けに行く=相手の相棒を制圧する、ということになる。どちらの少女も、そんなことは決して許せなかった。 「「貴女を放置していると、千束に何をされるかわかりませんね。消えてください⋯!」」 手をついていたたきなが飛び上がり、歩み寄っていたたきなが迎え撃つ。 対空のハイキックが脇腹に、鷹のような飛び上がり蹴りが頬に刺さった。落下したたきながすぐ鳩尾を蹴り付ければ、同時に二発目のハイキックに頭を強打される。 「い゛っ⋯だ⋯⋯っ!!」 「ぐっ⋯このぉ⋯⋯!!」 もはや意地の張り合いだ。お互いの胸ぐらを掴むと、交互に腹に膝を叩き込み合った。 「堕ちてっ!」「あ゛ぁっ!!」 一方のたきなが一発。 「貴女がっ!」「う゛ぅッ!!」 もう一方が同じく一発。 「倒れなさいっ!」「う゛あ゛あぁッ!!」 反撃。 「だから貴女がっ!」「い゛や゛ッあ゛ぁ!!」 また反撃。 「「フーッ⋯フーーッ⋯⋯!!」」 まるで狂犬と狂犬の噛みつき合いだ。当然、我慢の限界が来た二人、大胆な一手に乗り出すことになる。 「「あ゛ああぁあっ!!!」 それは気合いの掛け声であり、相討ち覚悟の雄叫びでもあった。わずかに飛び上がり、体重を乗せて振り抜いた脚が、互いの頬を再び強打した。 どちらも呻き声を上げながらひっくり返り、相打ちに。 この時、千束達の方もまた、決着を迎えようとしている。 「この状況でどうする気ぃ〜⋯⋯? もう逃げようも反撃しようもないよね?」 「あんたがね⋯! ほらほら、降参しないと大変だぞ〜?」 千束達は組み伏せ合い、お互い横になってしまっていたようだ。お互いの下半身を捉え、女性エージェントにとって最も脆弱な急所に拳銃を突きつけ合っていた。 たきな達も同様。視線の先にあったのは、最初に蹴り飛ばしたワイヤーガン。 「終わりですっ!」「捕まえました!」 振り向き、突きつけ合えば、両者状況を察して連射。何度も何度もワイヤーが風を切り、服と肌を縛る音が交互に聞こえた。瞬く間に二人は剛線に絡め取られていた。 「うぅ〜⋯くっ⋯この⋯⋯」 「よくもっ⋯くぅ⋯うぅ⋯」 お互いをぐるぐる巻きにしてしまっては、唸りながら身悶えするくらいしかできない。たきな達は芋虫同然だった。 「「3! 2! 1!! ⋯⋯はい終わり。残念でしたー」」 千束達の脅し合いも最終盤面。殊勝にカウントダウンしたのは二人ともで、降伏勧告に応えるはずもなく引き金に指をかけたのも同時だった。 「「う゛わあぁああッ!!? あ゛ぁッ!!? い゛やぁああッ!!??」」 胴体で受けても戦闘不能になる、非殺傷弾の連打。それを急所に撃ち込み合ったとなれば、リコリス・千束らしからぬ絶叫が二重に上がるのは当然だった。叫び声さえ完璧に一致する様子に、相手がもう一人の自分であることを実感させられる。 ばたっ。どさり。少女の身体が力を失う音がした。千束と千束、たきなとたきなは、奇しくも二組とも、揃って意識を失ったのだ。 千束は今の撃ち合いの激痛によるショックだろうが、たきなは蹴り合いが響いたのだろうか。 相討ちになった少女達は知らない。これから何日にもわたって、もう一人の自分とあらゆるものを比べ合うことを。 [newpage] [chapter:千束side:1日目] 「ん⋯」 「ありゃ⋯」 目が覚めた時、千束は自分が柔らかなベッドに寝ていることに気づいた。 「「あーっ! おまえー!!」」 そしてすぐそばで密着して寝ていた、もう一人の自分にも気づいた。飛び起きた二人はお互いを指差し距離を取るが、すぐに周囲の状況に気づく。 「⋯あれ⋯どこここ⋯?」 「いや⋯私も知らないし⋯」 壁際のふかふかのベッド、千束の制服をイメージしたような女の子らしい壁紙、カーペット。枕元には大きな勉強机があり、椅子が二つ並んでいる。窓⋯に見えるものは、おそらく映像だろう。しかし晴れやかな気分になる青空だった。 「知らないわけないでしょ!? あんたと撃ち合って気絶して目が覚めたらここだったんですけどー!?」 「こっちのセリフじゃい! わかったあんたが私を拉致したんだ! 絶対そうじゃんやりそうじゃん!」 「やりそうなのはそっちでしょー!?」 ギャーギャーと言い合いながらも、なんとなく気づいた。 「ほんとに何も知らないってこと⋯」 「いや⋯そっちこそ⋯」 自分も、もう一人の自分も、拉致された被害者。リコリスにとって、こうした状況はなんら想定外のものではない。まして敵陣で気絶していたとなれば。 「「⋯⋯テロリストに漁夫られた。」」 二人が辿り着いた結論は同じだ。当然、この後の行動も決まって来るが、その前に確かめたいことがある。 「銃取られてんだよねー⋯そっちも?」 「うん。ない。」 「⋯⋯ほんとに?」 「そこ疑う!? ⋯ってーか⋯そういうあんたも怪しいな〜⋯?」 「いや私は嘘ついてないし!?つく意味ないし!?」」 それはお互いの武装だ。千束たちはお互いに疑い合い騒いだ後、互いに指差して叫んだ。 「「確認させなさい!!」」 微妙に距離を取っていた状態から、一瞬でお互いに手が届く距離に。二人がまず手を伸ばしたのは、お互いの腰だ。 まるで抱き合うようにお互いの身体に触れ合う二人。ベルトやポーチには何も入っていない。次はポケット。上から撫でても、手を突っ込んでも、やはり何も入っていない。 「ん⋯」「あ⋯」 ーーなんか、変な気持ちになって来るかも⋯♡ーー 腹に触れ、胸に触れながら、お互いにモジモジと太ももを忙しく動かす千里達。お互いの指がくすぐったいだけではないようだ。 ーーもともとこいつ⋯良いカラダだなって思ってたんだよね⋯ ーー触って触られて⋯ちょっとまずいかも⋯ 二人とも腰が引けて、わずかに前傾姿勢になる。その無意識の仕草を見逃さない千束たちではなかった。 「「あっ!なんか隠したな!」」 言い合ったのは同時。自分にも同じセリフを返されて忌々しそうに睨み合った直後、二人の手は再びお互いの下半身に触れ始めた。 「あっ♡ ちょっとっどこ触ってんの⋯!」 「んあっ♡ あんたこそぉ⋯!」 次に手を伸ばしたのは、尻。スカートの下から手を入れ、パンツ以外の障害物のない無防備な尻の感触は、二人を悶えさせるには十分だった。 「「んん〜⋯♡♡ んんんぅ〜〜⋯⋯♡♡♡」」 手の痺れそうな柔らかくて幸せな感触。尻をいやらしく揉みしだかれる刺激。そのどちらもが子宮に来て、下着を汚し尽くしてしまう。細い脚がガクガクと内股で痙攣していた。 「次はこっち⋯♡」 「あっ私も⋯♡」 競うように手を下ろし、掴み合ったのは太もも。ソックスは膝下までで、スカートの裾から膝にかけては無防備に曝け出されている。当然、そんな場所に武器など隠しているはずもない。 「「こらっ生脚シコシコするな♡ なんも隠してないから♡♡」」 言っても無駄なのはわかっているし、自分も言われたってやめる気はない。お互いの太ももを触りたいだけなのだから。 「「ん〜〜〜ッ♡♡♡」」 ーーシコシコ気持ちいいかもぉっ♡♡ 太もも触んのも触られんのもぉっ♡♡♡ーー お互いとろけた顔で上を向き、ビクビクビクッ♡♡♡ 肩も腰も痙攣していた。 「そうだ、最後に⋯」「あ、あとアレ!」 ひとしきり太ももを味わい合った後は、互いを離して最後の仕上げ。 ニヤリ。お互いに同じことを思っているのがわかって、なんだかおかしくて微笑む二人だった。 「「ジャンプしてみろや! ⋯ぷっ!」」 吹き出しながらも両者見つめ合い、互いを観察し合いながら、飛び跳ねた。 「ほらっ何も隠してないでしょ? ほら!」 「私も隠してないから!ちゃんと見てよ?」 ぴょんぴょん。無邪気に飛び跳ねるのに合わせて、二人のスカートが、胸が、上下に揺れて目を奪う。 ーーああ〜おっぱいバインバインなってる〜♡♡♡ パンツチラチラ見えるのエロぉ〜♡♡♡ーー 二人の狙いはこれだったらしい。お互いを飛び跳ねさせ、その眼福な光景を見届けるために『ジャンプしてみろ』なんて言ったのだ。おふざけも半分だったのだろうが、もう半分は確実に性欲であった。 「「⋯ふぅ。」」 「満足した〜。やっぱ銃とか武器はお互い取られてるっぽい。」 「だねぇ〜⋯どうしよっか?」 [newpage] [chapter:たきなside:1日目] 「ん⋯しまった⋯気絶して⋯」 「はっ⋯ここは⋯わたしは⋯」 千束達が起きたのとおよそ同じ頃。たきなとたきなもまた、見知らぬ部屋で目を覚ましていた。 壁際のベッド、すぐそばの勉強机。ベッドと反対側には窓に見える映像が映され、その偽物の窓に向かって左手には廊下に続くドア、右手には何もない壁。たきな達には知る由もないが、千束らが捕えられているのと同じ構造の部屋だった。なお、壁紙やカーペットはたきなの制服に合わせて大人びた青になっている。 「「っ⋯!! あなたっまた⋯!!」」 お互いに気付き、飛び起きるのも千束とそっくり。ただし背中に手を入れ、ポケットを探り、銃が無いことに気づくのは早かった。 「銃が⋯あなたが取ったんですか!?」 「こちらのセリフです! 銃を返して!」 張り詰める空気に、殴り合いの構えを取るたきな。その構えで気づいた。 「⋯⋯その仕草でわかりました。」 「丸腰なのはお互い様みたいですね。」 たきななら、躊躇なく銃を向けた。あるならマシンガンを。しかし言い合ってすぐ、何かに気づいたように目を丸めると、残念そうに口を尖らせた。 ーーボディチェックと称して触るチャンスだったのに⋯!ーー けれどそれを口にはしない。もう一人の自分は、DAに所属するリコリスにとって敵でしかない。そんな感情は邪魔だ、とたきなは口酸っぱく千束にも言っていた。 そもそもたきな自身、その感情を強く自覚しているわけではない。普段なら、『そもそもなぜわたしは触りたがっているのでしょうか』などと自問自答していた。 「⋯まず、この部屋のことを調べます。脱出口があるかも知れません。」 「ええ。あ、私から離れないでくださいね。」 「当たり前です。そちらこそ、わたしに目を離すほど信用されているとでも?」 「「そぶりを見せたら制圧しますからね。」」 言い合うのは、あえて険悪にして余計な感情を抱かないためが半分。もう半分は、このため。 ーーこれでもう一人のわたしを監視し放題⋯そのいやらしい身体を、じゃなくて怪しい素振りをガン見して目離してあげませんからね❤︎ーー 二人はお互いを睨むように見つめ合いながら、廊下に出た。電気をつければ、3つの扉が目に入る。左手に一つ、廊下を歩いた先に一つ、右手に一つ。 まず左手はー 「トイレですね。」 頷き合い、ドアを閉じるたきな達。続いて回れ右をして、廊下の奥。 「開かない⋯」 「玄関のようです。」 ピッキングしようとかがむが、鍵はかかっていない。というより、当然だが、内側からは自由に開け閉めできる。鍵ではなく別の方法で開けられなくされているのだ。 「ダメです。」「はぁ。」 続いて玄関に向かって右側、今のたきな達の左手にある扉。開ければ、広々とした空間に出た。 「リビングですね。」 「キッチンがあります。冷蔵庫を見てみますね。」 一方のたきなが冷蔵庫へ、もう一方は机にあるテレビのリモコンへ。 「食材がありますよ。何日分でしょうか⋯?」 「テレビ、つきました。あ、わたしと千束捜索されてますね。」 「え!? ⋯あ、暗号ですか⋯放送されているのかと⋯」 大っぴらに『リコリスの錦木千束・井上たきな捜索中』などと出ている訳ではない。DAの人間にしかわからない暗号文で、二人の失踪が告知されていた。 「食事にしますか? わたしはまだお腹が空いていないんですが。」 「奇遇ですね。わたしもです。⋯⋯寝室に戻りましょうか。」 冷静なリコリス達は、テレビを消して踵を返した。自分達の囚われている場所に何があるのかを一通り把握して、疲労が再び戻って来たのだ。 並んで廊下を戻り、ベッドに沈むたきなとたきな。一つしかないベッドに少女二人、それも自分自身と寝転がれば、自然と密着することになる。いやとは思わなかった。 ーー細いようで肉のある身体⋯❤︎ 同じわたしとは思えない色香ですね⋯❤︎❤︎ーー 疲れもあり、二人きりなのもあり、更に添い寝となれば、理性がぐずぐずに溶けてしまう。たきな達は、お互いの身体に興奮していた。 「「ふぅぅ〜⋯⋯っ」」 ーー深い寝息⋯いやらしいですね⋯❤︎ーー 発情のため息である。 モゾモゾ、二人の少女が寝返りをうつ。引き締まった脚が触れ合い、柔らかな肌が擦れ合う。防弾素材の制服は動きやすいと同時に、触れ合う肌の感触を一切妨げずたきな達に伝えてしまう。 「んっ⋯ふっ⋯❤︎」 「んぁ⋯はぁ⋯❤︎」 ーーしまった❤︎ 声が出てしまう⋯❤︎❤︎ーー こんな粘着質な肌の擦り付け合いをして、今更声どうこうを言うのは筋違いだ。 「はあっ⋯❤︎ あぁっ⋯❤︎❤︎」 太もも同士を擦り合わせ、悩ましげな声を出してしまうたきな。 「んあっ⋯❤︎ はぁん⋯❤︎❤︎」 触れ合わせているうち、汗ばんだ肌がますます淫靡な質感に。 ーーもう一人のわたし、寝相悪過ぎです⋯そう、これは寝相が悪いだけ⋯決して寝ているもう一人の自分に身体を擦り付けて快感を得ているわけでは⋯っーー お互いに相手は寝ているものと思い込んでいるようだ。自分も『寝相が悪いだけ』という言い訳を思いついてしまい、ますます二人の動きは積極的で大胆なものへと変わる。 「「んっんっんっんっ❤︎❤︎ あっあっあっはあっ❤︎❤︎❤︎」」 ーー激しっ⋯!?❤︎ だめっ⋯❤︎❤︎ーー 太ももと太ももを互い違いに重ね、絡ませ、リズミカルに上下させるたきな達。元々スベスベの脚同士が汗で滑って、身体の痙攣も声も抑えられない。 「「んんんぅう〜〜❤︎❤︎❤︎」」 ーーお願いですっ起きないでくださいっ⋯❤︎❤︎ーー 分身が自分と揃って喘ぐのを見てヒヤヒヤするも、むしろ脚で脚を扱き合う動きは加速するばかり。バレるかもしれない、というスリルに、二人して興奮しているのだ。 「はぁっはあっ❤︎ あぁっ⋯❤︎❤︎❤︎」 胸を弾ませ、やわく仰け反ってたきなの肌に喘ぐたきな。 「んっふあぁっ❤︎ あぁっ⋯❤︎❤︎❤︎」 同じく弾力豊かに飛び跳ねて、たきなの身体にたきなも悶える。 ーー寝ながら喘ぐわたし可愛過ぎます⋯もっと触れたい⋯ってダメダメっ!わたしは偽物のリコリスに懐柔されたりなんてしませんから⋯!!ーー もう一人の自分によからぬ目を向けているのはずっと前からだが、たきなはその感情に蓋をしていた。たきなほど生真面目にではないが、千束もだ。 その理性の蓋が、今や完全に外れかかっていた。 ーーだけどやっぱり⋯もう少しだけ⋯❤︎❤︎ーー 制服をはだけさせ、胸を露わにするたきな達。するする、官能的な音と共に、暗闇の中で二人の美乳が露わになる。 ーーわたしの体温で暑いのでしょうか⋯好都合ですね⋯❤︎ーー 明らかに起きている上で、劣情に身を任せた行動だ。しかしたきな達は疑問にも思わなかった。自分にとっても好都合なのに疑う理由もなかった。 お互いの背中に手を回し、ぎゅっと捕まえて身を寄せ合うたきなとたきな。 ーーあぁっもう一人のわたしも寝相でわたしに絡みついてくる⋯❤︎❤︎ このままでは胸と胸が⋯❤︎❤︎ーー 動きやすい薄手の下着越し、二人のたきなの最も柔らかい肉と肉が、互いに正面からぶつかり合った。 「「はうぅっ❤︎❤︎ あぁっあんっ❤︎❤︎❤︎」」 ビクンビクンッ❤︎❤︎❤︎ 下着越し、柔らかな胸と胸が触れ合ってしまっただけで達してしまった。商売敵としての長年の戦いで蓄積された感情が、ここぞとばかりに爆発してしまったのだ。 ーー脚も胸もなんて無理っ⋯❤︎❤︎ 我慢できませんっ⋯❤︎❤︎❤︎ーー ふにふにと幸せな感触のする部位同士を、貪欲に味わい合う快感。それは真面目なたきなが、互いの身体に溺れるには充分だった。 「はあっはあっあぁっんぁあ❤︎❤︎❤︎」 胸と脚だけでは飽き足らず、一方が下腹部を押し付けるように動けば、 「はあっんぅっはぁっあぁあ❤︎❤︎❤︎」 もう一方も同じく下腹部を押し付け返し、互いに細い腹同士を擦り付け合うように。 ーーんんっ❤︎❤︎ 子宮キュンキュンしてるのバレてしまいますっ❤︎❤︎❤︎ 子宮でわたしのキュンキュン感じられてしまいますぅっ❤︎❤︎❤︎ーー お互いの熱と脈動を感じて、心底幸せそうなたきな達だった。 「ふああぁ❤︎❤︎❤︎」「あぁああっ❤︎❤︎❤︎」 一方のたきなの胸が、もう一方の胸に乗り、押しつぶす。 「んあぁあ❤︎❤︎❤︎」「あひゃあぁ❤︎❤︎❤︎」 すぐに上下が逆転、下になったたきなの胸が押しつぶし返される。 「「あっ❤︎❤︎ あぁっ❤︎❤︎ んっんうぅ⋯❤︎❤︎❤︎」」 抑えようとしても、身体は熱を帯びて発情を増すばかり。お互いに身体で身体を扱き合うような擦り付け合いだった。 「「んっんっんっんっーーー❤︎❤︎❤︎❤︎」」 ーーわたしの身体あついっ気持ちいいっ❤︎❤︎ イクイクイクイク⋯⋯❤︎❤︎❤︎❤︎ーー 激しくなっていく擦り付け合い。太ももで太ももを扱き、乳で乳を揉みしだき、へそでキスするような触れ合いが、加速し激しさのピークに至ろうとしているのがわかる。 「「あぁあっ❤︎ あっあっ❤︎❤︎ あ゛ぁああーーーーっ❤︎❤︎❤︎❤︎」」 二人は同時に達した。同じたきな同士、当然だった。全く同じ仕草で仰け反り、痙攣し、お互いの身体に喘ぐ姿は、まさに鏡に映したよう。 ーーうぅ⋯ついにイってしまったぁ⋯⋯❤︎❤︎ ーーもう一人の自分の身体で⋯屈辱です⋯❤︎❤︎ 心の中で悪態をつきながらも、表情は赤らみ恍惚として満足げ。 ーー少し漏らしてしまいましたね⋯ーー 愛液だろうか、潮だろうか。下着は濡れていた。


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