午後のオフィス。
書類の山を片づけ、ようやく一息ついた頃。
真帆が隣のデスクから小声で囁いた。
「ねぇ、瑠衣さん。昨日のレンくん、思い出しちゃって……ふふっ」
その笑い声だけで、私の胸にも甘い熱が蘇る。
思わず、口元が緩んだ。
「ああ、もう最高だったよね」
あの子を買い物に連れ出すきっかけを作ったのは、私。
営業の千尋ちゃんをそっと焚きつけて、買い物に付き合わせた。
私たちは偶然を装って、そこに現れた。
想定通り、レンくんは戸惑いながらも流れに逆らえず、私たちと買い物することになった。
店内のガラスに映る、少し緊張した横顔。
私はその表情を眺めながら、どんな服を着せたら一番可愛くなるかを考えていた。
そして――見つけた。
淡いピンクのフリルワンピース。
胸元に小さなリボン、裾にはレース。
“女の子の可愛い”をそのまま形にしたような一着。
「レンくんには、これが似合うと思う」
そう言うと、千尋ちゃんもすぐに頷いた。
「ぜったい可愛いです!試着してみませんか?」
案の定、レンくんは真っ赤になって視線を泳がせた。
でも、断れない。
レンくんが試着室からおそるおそる出てきた瞬間のことを、今でもはっきり覚えている。
ふりふりのフリル、リボン付きの裾。
彼の頬は真っ赤で、膝をすり合わせるようにして立っていた。
「似合ってたよねぇ。あんなに照れてるのに、ちゃんとスカートの裾を気にして……」
「はい。もう、完全に女の子でしたね」
私たちが顔を見合わせて笑っていると、向かいの席から茜が顔を出した。
「いいなぁ……私、昨日行けなかったから……」
「残念だったね」
「うん、ほんとに悔しいです。次は、どんなことをするんですか?」
その問いに、私はゆっくりと指先を頬に当てた。
「次はね……レンくんの乳首を開発しようと思っているの」
「……え?」
茜が瞬きを繰り返す。
その素直な反応が、なんだか愛しく思えた。
「開発?どういう……意味ですか?」
「そのままの意味よ」
私が微笑むと、真帆がくすっと笑った。
彼女はもちろん、何をするか知っている。
「ふふ……何年か前の話なんだけどね……」
◆
あれは、茜が入社する少し前のこと。
当時、真帆はまだ新入社員だったの。
仕事はおぼつかなかったけど、妙に観察眼が鋭くて、どこか“私と似た匂い”がした。
ある日、私の一つ上の経理部の男性社員がミスしたのを見て、目の奥で笑っていたの。
――あ、これは素質があるなって思った。
私は真帆をランチに誘い、軽く探ってみた。
すると案の定、「男性が慌てる顔を見るのが好き」って言ったの。
そこから先は、早かった。
「ちょっと一緒に実験してみようか」
「なにを、ですか?」
「男の人をメス堕ちさせる方法」
その時の真帆の笑顔、今でも忘れない。
可愛らしい顔で、残酷な興味を隠しもしなかった。
◆
ターゲットは例の経理部の先輩。真面目なんだけど、少し鈍いタイプ。
最初は飲み会の帰り、私は偶然を装って腕を組んだ。
「先輩って、意外と筋肉あるんですね」
そんな軽い一言で、彼はもう顔を真っ赤にしていた。
それから週に一度、仕事帰りに彼をカフェに誘った。
愚痴を聞いて、優しく笑って、軽く触れる。
そうやって、少しずつ距離を詰めていった。
そしてある夜、彼を自宅に呼んだ。
「相談があるの」って。
彼は迷いながらも来た。
真帆が待っていることも知らずに。
案の定、彼は2人きりじゃない事に、少し残念そうだったな。
それ以上の快楽が待ってるのにね。
3人で少し談笑した後、部屋の中で、彼に目隠しをさせた。
「変な事はしないから大丈夫ですよ、先輩」
私は彼の胸元に指を這わせる。
そして――乳首を軽く摘まんだ。
その瞬間、彼の身体がびくんと跳ねた。
「ん……な、なにするの……?」
「気持ちいい?」
「や……ちょ、ちょっと……」
「ふふ。嘘つかないの」
次第に、彼の呼吸が荒くなっていった。
私たちは交互に彼の乳首を責めながら、反応を観察した。
押す、ひねる、爪を立てる、舐める。
そのたびに彼の腰が浮き、甘い声が漏れた。
最初は戸惑っていたのに、次第に自分から求めるようになっていた。
「だめ……もう……」
「どうして?気持ちいいでしょ?」
「……そこ、だけ……で……」
――その夜、彼は初めて乳首だけで果てた。
そこから、彼はもう戻れなかった。
翌日以降も、私や真帆の姿を見るたびに落ち着きを失い、
出社しても毎日シャツ越しに乳首を押さえていた。
そして数ヶ月後、会社を辞めた。
◆
「結局、自分でどんどん乳首をいじっちゃって、男の人なのに乳首がシャツからぷくぅっと浮いちゃって……なんか最後はニップレスして出社してたみたいなの」
「真帆、あれはニップレスじゃないよ。内側に小さい針がついてるの。あれをつけてると日常生活で、どんどん乳首の感度が上がってくの」
「そうだったんですね。どこまでも堕ちていっちゃった訳ですね」
真帆が楽しそうに笑う。
茜は唇を押さえ、顔を赤らめたまま動かない。
「……そんなことが、本当に……?」
「あるのよ。男の人の乳首ってメス堕ちする為にあるの」
私は紅茶を一口含み、ゆっくりと笑った。
「だからね、レンくんにも、次の段階を踏ませるの」
「ち、乳首……を、ですか……?」
「ええ。身体の“中心”を、女の快感で書き換えるの」
その言葉を口にした瞬間、背筋をぞくりとした。
自分で仕掛けた罠なのに、なぜか昂ぶってしまう。
真帆の視線も、どこか熱を帯びていた。
「瑠衣さん、レンくん……もう、逃げられませんね」
「心も身体も、女の子色に染まるよ……」
【5章へつづく…】
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