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桜梅桃華@女装・TSF小説
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メンズメイク体験から始まった、僕の女装堕ち:7

女友達

朝。凜のアパートの玄関の前で、最後のチェックをしていた。

ピンクの千鳥柄のワンピース。

淡いベージュのカーディガンを羽織ると、全体がやわらかくまとまる。

今回は地雷系ではなく“甘可愛い”ファッション。

凜が通販でこっそり買っていたコーデだった。


「ね、可愛いよ。今日も」

背後から覗き込んだ凜が、僕のウィッグを指で整える。

その仕草に、胸がぎゅっとなる。


外に出ると、朝の空気が少し冷たい。

大学までの道を並んで歩く間、僕は視線を落としたままだ。

スカートがひらりと揺れるたび、誰かに見られている気がして息が詰まる。


凜はそんな僕の手を取って、軽く指を絡めた。


「大丈夫。緊張しなくていいよ」

その言葉は、慰めのようで――命令にも聞こえた。

手のひらの温かさが、支配と安心を同時に染み込ませてくる。


彼の隣で歩く“彼女”としての一日が、また始まる。



講義室に入ると、凜の友人たちがもう集まっていた。

笑い声と香水の匂いが混ざる輪の中に、僕は小さく息をのむ。


「おはよー。ちょっと紹介したい子がいるの」

凜が、当然のように僕の背に手を添える。


「啓斗。ついこの間まで彼氏だった。今は彼女に変わったの」


一瞬、時間が止まった。

けれど次の瞬間、ざわめきが弾ける。


「えっ、彼女って……啓斗くん!?」

「男の子やめちゃったの!?」

「でも似合ってるじゃん!」

「てか、可愛い〜!」


驚きと笑い、そしてほんの少しの好奇心が、波のように広がっていく。

誰も否定しない。誰も疑わない。

――それは、彼女の凜がそう言うのだから“そうなのだ”という、優しい同調の空気が浸透していくのを感じた。


僕はうまく笑うしかなかった。


「……僕がこんな格好……変だよね」

と口にしても、


「変じゃないよ」

「今どき普通だし」

「凜がいいならいいじゃん」

――まるで世界のほうが、僕の“女の子”を肯定しているみたいだった。


凜は僕の肩にそっと手を置く。

その瞬間、周囲の視線が“彼女”としての僕を固定した気がした。

演技のはずなのに、息ができないほど現実的で、

でも同時に少しだけ、安心してしまう。


凜の隣で笑うたびに、

“否定”の言葉が喉の奥で溶けていった。



昼休み。学食の奥のテーブル。

僕と凜は女子が集まる輪の中に呼ばれた。


「ねえ啓斗ちゃん、そのカーディガン可愛い!」


凜の友達、白のブラウスの赤いスカートを穿いた“真白”が目を丸くして言う。

僕は思わずスカートの裾を押さえた。


「……凜が、選んでくれて」

そう答えると、真白はにこっと笑った。


「やっぱり!凜、見る目あるもんね。ねぇ、今度三人で下着見に行かない?新作出てるし」


「えっ……」

フォークを落としかけた僕を見て、女子たちがくすくす笑う。


「いいじゃん、行ってきなよ」

「そんなに驚かなくても〜。今どき、友達同士で行くよ?」

「サイズとか測って貰えるからね。通販よりお店の方が絶対いいって」


凜は軽く笑って、僕の手を取った。


「行こうよ、啓斗。真白なら私も安心だしいいでしょ?」


彼女の指が僕の指を絡める。


「いつまでも私のお古じゃダメでしょ」

耳元で小さく囁いた。


「……う、うん。じゃあ……」


その言葉が出た瞬間、

まわりの女子は嬉しそうに「良かったね」と声を上げた。


メイク、ファッション、ネイル。

話題が次々と移るたび、僕の中の“男子”の輪郭がかすんでいく。

笑いながら相槌を打つ自分の声が、少し高く、少し柔らかく響く。


テーブル越しに見た凜の笑顔は穏やかで――

まるで僕が“彼女”であることを、みんなに誇っているみたいだった。



昼食のあと。

なんだか胸が苦しくて、僕は凜に付き添ってもらい、多目的トイレに入った。


鏡の前に立つと、息が止まる。

カーディガンの袖を伸ばし、萌え袖にする。

ワンピースの襟元から覗く鎖骨。

ロングのウィッグが頬を撫で、唇には、朝つけた淡いピンクのグロス。


――違和感が、ない。


その事実に、心臓がきゅっと縮む。

恐怖と、熱と、奇妙な安心が同時に押し寄せる。


「啓斗」


背後から、凜の声。

振り返る間もなく、背中に彼の腕が回った。

鏡越しに見える、二人の姿。

まるで“女の子同士”そのもの。


「いきなり女子の輪の中に入ったから、びっくりしちゃったかな。もう誰も、啓斗を“男”だなんて思ってないよ」


脳に直接語りかけられるような、甘く優しい声に、僕は落ちていく。

否定しようとした唇が、何も言えず震えた。


凜の手のひらの温かさが、

“彼女”としての僕を確かに形作っていく。


もう僕は、“凜と一緒にいられるなら彼女でもいい”――

そう思ってしまった。自身の女の子を肯定してしまった。

甘い崩壊の音が、胸の奥でそっと鳴った。


――第8話へ続く。

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