XaiJu
kx-haiso-center
kx-haiso-center

fanbox


ネ◯ウヨ妻、韓堕ち⑥

「これ高いやつじゃない?っていうかなんで私の好きなお菓子知ってるの?」 日曜日、レッスンにやってきたキムくんに唐突に渡されたお土産は、人気すぎて午前中の早い時間で売り切れてしまうという有名洋菓子店の数量限定のマカロンだった。 「亜希…吉村さんに聞いてね。佳奈さんがマカロンが好きだって言うから、今朝早起きして買ってきたんです。佳奈さんが美味しいもの食べて笑顔になってる顔を見たいなと思って」 また歯の浮くようなセリフを真顔で言ってくるキムくん。その瞳には、やましい心など一つもないように見えた。本当に、純粋に心の綺麗な人のように私の目からは見えた。 「そう、なんだ……ありがとう。こんな高いもの。お金払うね」 「お金なんて払わなくて良い。僕に恥かかせないでください。佳奈さんに喜んでほしいから買ってきたんです」 「でも……」 「僕は佳奈さんを笑顔にするためだったら全財産だって捨てるよ」 また大袈裟な言葉。どうして韓国人はこんなふうに調子の良い言葉をポンポン言えるのだろう。でも、普通なら無責任と感じてしまうこんな言葉も、キムくんの笑顔を見ながら聞くとなんだか少し嬉しい。私自身、韓国や韓国人に対して偏見を持ちすぎていたのかもしれない。私の心の中にある冷たくて暗い氷が、キムくんという太陽に照らされて少しずつ溶けていくような感じがした。 「あ、じゃあ私紅茶入れてくるね」 「本当ですか。ありがとうございます」 階下に降りると、紅茶好きの私のために先月の誕生日に夫が買ってくれた紅茶を淹れた。私とキムくん二人だけのティーパーティーだ。知らず知らず鼻歌を唄っている自分に、上機嫌であることに気づく。ふふ、なんだか今日は楽しい。 「おまたせー!」 紅茶を淹れて戻ると、キムくんはベッドの横の写真立てを眺めていた。 「旦那さんとの写真ですか?」 「そう、新婚旅行に行った時に撮ったの。コロナのせいで国内だったんだけどね」 「どこに行ったんですか?」 「北海道だよ」 「へぇ、良いですね」 キムくんは私の話を聞いているのかいないのか、しげしげと写真に見入っていた。 「どうしたの?そんなにその写真が気になる?」 「いや、美人だなと思って。佳奈さんが」 「もう、またそんなこと言って」 キムくんのお世辞にもなれてきて、だんだんと自然にその言葉を受け入れられるようになっていた。これが韓国人の普通なんだ。女性に対し、綺麗だとか美しいとか、気負わずに嬉しい言葉を投げかけてくれる。 「旦那さんもイケメンですね」 さすがにキムくんの目から見てうちの夫がイケメンということはないだろう。夫は性格は良いし、私に尽くしてくれるが、見た目は決して評判がいいわけではない。取り立てて悪いわけでもないが、要するに普通なのだ。さすがにそのお世辞は無理があるんじゃないかとキムくんに対して思う。その気持ちが、結果的には夫を裏切るこんなセリフとして出てしまった。 「キムくんの方がイケメンでしょ」 「え?」 キムくんが聞き返してくる。 「もう一度言ってください」 予想以上に真剣な表情で聞き返してくるキムくんに戸惑ってしまう。 「だから……その、顔だけで言ったら夫よりもキムくんの方がイケメンなんじゃないの?」 「佳奈さんはそう思うってことですか?」 こんなに詰めてこられるとは思わなかった。だが、確かに私はそういう意味のことを言ったのだ。夫よりも、キムくんの方がイケメンであるとそう言ったのだ。 「まあ、その…顔だけなら、そう思う」 顔が熱い。これではまるで私からキムくんに告白したみたいだ。 「ありがとうございます!佳奈さんみたいな美人にお世辞でもそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいです!」 途端に顔を崩して満面の笑顔を見せるキムくん。あ、この子こんなに子供らしいところがあるんだ。先程までの緊張した雰囲気は一変し、また和やかな雰囲気になる。普段夫以外の男性と話していないからなのか、それともキムくんの会話の緩急の付け方が上手いからなのか、久しぶりに感情が揺れ動くのを感じる。 結局この日二人でおしゃべりしながらマカロンを食べ、楽しく韓国語のレッスンができた。 私の中でキムくん、いや韓国人に対する印象がさらに変わっていくのを感じる。 これまでは、日本人に対して嫌悪を抱き、モテるのを良いことに日本人の女の子に好き勝手し放題というイメージを持っていた。だけど、実際に会って話すキムくんは、とても優しく、気が利いて、マメで、あらゆる女性にとって理想的な完璧な男性だった。こんな人が日本人に対してどうして軽蔑的な目を持っていると思っていたのだろうか。 愛情表現が少し直接的すぎるところもあるが、それも韓国人特有のものであって、日本人に対してリスペクトを欠いているからということでもなさそうだ。むしろ、キムくんがくれるたくさんの愛に溢れる言葉を聞いていると、夫との会話が物足りなく感じる。仕事で疲れているのかもしれないが、私に対する愛情を以前ほどは感じることができなくなってしまった。 それにしても、最初のレッスンの時にはキスしてくれたのに、今日は何もしてくれなかった。 この前つれない態度を取ったからつまらない女だと思われてしまったのだろうか。 私には夫がいるし、キムくんとどうなりたいというわけではない。だけど、年頃の男の子に女として見てもらえないのは寂しい。よし、次のレッスンの時にはちょっと頑張ってみようかな。今日のマカロンのお礼もあるし、私からキムくんにもプレゼントが必要だろう。 次の予約はまた日曜日だ。ああ、1週間後が待ち遠しい。


More Creators