ネ◯ウヨ妻、韓堕ち①
Added 2022-01-12 11:42:30 +0000 UTCキムくんは吉村さんが言っていた通り、綺麗な顔をした韓国男児だった。テレビやYoutubeで見る韓国アイドルのようにスッと鼻筋が通った小顔はまるで人形のようだ。目は韓国人らしく細く長く見開かれている。これが生で見る韓国人……って何で私ちょっと感動してるんだろう。このくらいのイケメン、日本にだってたくさんいる!……いや、たくさんはいないかもしれないけど、少しはいる、と思う……。 それにしても、言い方は悪いが、吉村さんはキムくんみたいな韓国人をどこで捕まえてきたんだろう。今は韓国語の学習熱が日本中で高まっていて、英語よりも人気な外国語になりつつあるから、教える講師の人材不足問題が深刻化しているっていうのに。 「ね、キムくん、かっこいいでしょ?」 吉村さんが私の耳に手を当てて囁いてくる。別に、そんなつもりで韓国語の体験レッスンを頼んだわけじゃない。ただ、韓国語ってどんな言葉なのかな、って純粋に気になっただけだし、「近くて遠い国」って昔から言われるから、少しでもこっちから歩み寄ろうとしてあげただけなのに。 まったく、韓国にハマった女の人ってどうしてこうも男を外見だけでしか判断できなくなるんだろう。 「大丈夫ですか?緊張してますか?」 いけない、ぼーっとしてたのかもしれない。キムくんにこんなふうに気遣われるなんて年上として情けない。それにしても、優しい言葉をかけてくれる男らしさは韓国の人にもあるんだ……。意外に性格の良い韓国人もいるのかもしれない。 「大丈夫です」 キムくんの目は何となく見られないから、キムくんの肩あたりを見て言う。私の身長だと、まっすぐに向いた高さがちょうどキムくんの肩のあたりだからこれは全然不自然なことじゃない。 「ちゃんと顔を見て返事しなきゃ!生徒なんだから、ね」 私の心中を知ってか知らずか、吉村さんが横から呑気な茶々を入れてくる。この人、こんなに積極的に話す人だっけ?といつにも増してハイテンションな吉村さんにも少し戸惑ってしまう。 「あの、大丈夫です。ありがとう」 今度は、勇気を出してキムくんの目を見て言う。吸い込まれそうな、漆黒の瞳。まぶたは一重だけど、涙袋がぽってりと膨れているから細長い目でもぱっちりとした印象を受ける。 ああ、この目だ。 今日の「予習」のために、韓国ドラマ、KPOP、そして例の裏垢で何度も見た韓国人の目。獲物を品定めするような冷徹な目つきで以前は好きではなかったけど、今は、少し…… 「はい!じゃあ、佳奈ちゃん、レッスンがんばってね!キムくんあとはよろしくお願いします」 吉村さんはそう言うと、部屋を出ていった。そう、今日のレッスンはあくまで私とキムくんがマンツーマンで行うものだ。吉村さんは最初の顔合わせに付き合ってくれたにすぎない。 「佳奈ちゃん、またラインで感想聞かせてねー!」 吉村さんがそう呼びかける声がして、玄関の扉が閉まった。 日曜日だ。夫は大学時代の同級生と映画を観に行っている。この家には、私とキムくん二人だけ。自分から夫のいない日を選んでキムくんにきてもらったのに、家の静寂が居心地が悪くて、何だかとてもいけないことをしている気がした。 「佳奈さんは韓国語習うの初めてですか?」 沈黙を破ってキムくんが聞いてきた。 「初めて、うん、初めて、初めてです」 まだ緊張しているのが自分でもわかる。片言のロボットのような受け答えになってしまう。 「そうですか、韓国語はね、目が大事なんです」 「目?」 「『目は口ほどに物を言う』ってことわざ、日本にあるでしょ?韓国にもあれと似たようなことわざがあるんです。自分の気持ちを相手に伝えるには、まず目で心を伝えるんです」 「目で心を伝える?どうすればいいの?」 「いいですか?僕の目をじっと見てください」 「キムくんの目を?」 「そうです、そのまま目を離さないで」 子供たちが外でボール遊びをする声が聞こえる。依然、静かな時が流れる部屋の中には私とキムくんの二人だけ。こうして二人で部屋の真ん中に立って、お互いの目を見つめているのが酷く不道徳なことのように思えて…… 目を逸らしたい。でも逸らせない。そんな不思議な魅力があった。こんな感覚を昔、中学生時代に体験したことがある。初恋の男の子にバレンタインチョコを渡したくて、体育館裏で30分も見つめ合っていたあの頃。「好きです」の一言が言えなくて、じっと見つめていたら、向こうから「好きです」と言ってくれた。 どうして今あの時のことを思い出しているんだろう。でも、あまりにそっくりだ。キムくんが作り出したこの部屋の空気と、あの時の体育館裏の空気。 ああ、吸い込まれそう。あの黒目に飛び込んでいきたい。私をただの女の子に戻してくれるような、温かみのある、穏やかな深い黒。どうして韓国人の目は冷徹だなんて思っていたんだろう。キムくんの目はこんなに透き通っていて素敵なのに。私を包み込んでくれるような慈愛に満ちた眼差しがすでに病みつきになりそうだ。 こういうことなの?吉村さん。韓国人にハマる感覚って。 でも、大丈夫。今なら引き返せる。 私はやっぱり韓国人よりも日本人が…… 「좋아요」 「え?」 日本語を話す時とは違う、低い声でキムくんが言った。 「なんて言ったの?」 「サランヘヨ」 そう言うと、キムくんは私の手をそっと取って握った。 ジワァ♡という音が自分の頭の中からする。頭の中?いや、違う。これは……この音の正体は…… 股間に違和感を感じながら、催眠術にでもかけられたように私はその場に立ち尽くしていた。キムくんは私の手を取ったまま、優しく微笑みかけてくる。 この笑みは何なんだろう、私を愛おしく思っているんだろうか?それともその逆?嘲笑っているんだろうか? そんな意味を考える暇もなく、私は自分の中に巻き起こりつつある衝動に必死で耐えようとしていた。