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韓国の大衆浴場:番外編⑦

突然ジホに名指しされた翔吾は股間だけでなく体全体が硬直したように動かなくなってしまった。ジホと愛、4つの目が扉の隙間から覗く翔吾の姿をじっと見つめている。 「あ、いや、ジホ様、くん…、まだ早いというか……」 事前の打ち合わせでは、翔吾も交えての「お楽しみ」も最後に計画はされていたのだが、それはジホが愛を完全に陥落させた後、翔吾がジホの奴隷であることに、もはや愛がなんの疑問も抱かなくなっているであろう頃に行われる種明かしの一貫のはずだった。 「何してるの?翔吾」 最初こそ、翔吾が風呂から上がった後、体を拭きつつ廊下をうろうろしているだけだと思っていた愛も、じっと見ているうちにどうやら様子が違うらしいことに気づき始めた。翔吾の手はしっかりと、その股間のペニスに添えられていたのである。いや、握っていたという方が正しいだろう。 「違うんだよ、愛。タオルが見つからなくてさ」 しかしそれが完全な言い訳であることは翔吾自身も含め、この場にいる3人の共通認識であった。 「愛さん、翔吾くんはオナニーしてたんだよ。愛さんが僕に胸を揉まれているところを見ながらね。翔吾くん、入ってきなよ」 ジホは愛がうっすら勘づいていた真実をいとも容易く白日の元に晒した。 愛は急に落ち着いた口調になったジホに驚いた。もっと驚いたのは、翔吾がジホの命令に素直に従ったことである。「はい」と力なげに言うと、股間を隠すように両手を前に持ってきてとぼとぼと部屋の中に入ってきた。 「ねえ、愛さん、情けないと思わない?翔吾くん、僕たちを見ながらオナニーしてたんだよ。翔吾くんって普段からこんな感じなの?」 「え、いや、普段はもっと男らしいっていうか……ていうか、本当に、翔吾くん、オナニーしてたの?」 翔吾としては否定したい。ジホに対する服従心と同じくらい、愛に対する男としてのプライドも残っているのだ。おかしな話に聞こえるかもしれないが、彼女をジホに差し出すと宣言した時でさえ、翔吾の愛に対する愛情はひとつも減じられることはなかった。 「うん、してた、よ……」 「なんで?」 「いや、だからその、エロいなぁと思って。この光景が」 「私がジホくんにおっぱい揉まれるのが?」 「……うん」 痴話喧嘩の様相を呈していく二人の会話をジホは黙って聞いている。 「私がジホくんにこんな風にされても何も思わなかったの?」 「別に何も思わないわけじゃないけどさ、ジホくんだってまだ子供なんだし、そんな風に男と女の関係にとらえる方がおかしいだろ」 「でも翔吾はそれを見ながらオナニーしてたんでしょ?男と女の関係だと思ってたってことでしょ?」 「っ…」 翔吾は何も言い返せなかった。論理で言えば愛に分があるのだ。これ以上の反論は無駄に思えた。 「二人ともそこまでー。愛さんも翔吾くんも喧嘩しないで楽しもうよ。せっかく韓国から僕という友達がやってきたのに、二人がそんな風に喧嘩してたんじゃ僕だって気を遣うよ」 「そ、そうだよね。ごめんね、ジホくん」と愛が謝る。 「愛さんは本当に素直で良い子だね。こんな状況でもちゃんと僕に対する思いやりを忘れずに接してくれる。愛さんのそういうところが好きだよ。翔吾さんと付き合ってなかったら僕が付き合いたいくらいだ」 歯の浮くようなセリフを並べ立てるジホに一切の恥じらいはない。年齢も国籍も関係ない。ジホの前では女性は単に一匹のメスになってしまうというだけだ。 「ジホくん、またそんなこと言って……。翔吾もなんとか言ってよ」 口ではそう言いながらも愛は嬉しそうだ。美形の韓国人に口説かれるという、日本人女性なら誰もが憧れるシチュエーションの主役に自分がなっているのだ。翔吾に助けを求めつつも、愛はこの心地よさがずっと続けば良いと思っていた。一方の翔吾は、ジホから目で「まだ何も言うな」と制され黙っている。 「本当だよ、愛さん。実は韓国で翔吾くんに愛さんの写真を見せてもらったんだ。こんなに美しい人は世界のどこにもいないと思った。愛さんみたいな綺麗な人と付き合えるんだったら死んでも良いとすら思った。だからはるばる韓国からやってきたんだ。すべては、愛さん、あなたに会うために」 聞いている翔吾も惚れ惚れするほどの美辞麗句がジホの口からは淀みなく出てくる。外国語でこれだけ流暢に女性を口説くには一体どれほどの鍛錬を必要とするのだろうか。ジホは愛の胸を揉む手を再開した。先程までの緊迫した雰囲気はなく、愛はジホが作る官能的なムードに次第に乗せられているように見えた。 「ジホくん……♡」 愛の目がハート型になっている。翔吾はジホの手腕に舌を巻き、全てが順調すぎるくらいに進んでいることを理解しつつも、心の中にひっかかるものがあった。 (愛ってこんなに簡単な女だったのか?) 翔吾の疑問も無理はない。愛がジホと会ったのは今日が初めてなのだ。翔吾が前もって韓国から友達がやってくるということを伝えていた以外は、顔も名前も性格も知らなかった。それなのに、出会って数時間で、愛はジホに完全に心を開き始めているように見えるのだ。 細かな説明は省くが、翔吾が愛と付き合い始めるには大変な紆余曲折があった。サークルの先輩と付き合っていた愛を諦めきれずに何度も何度もアタックし、その度に撃沈。結局は愛が先輩に振られる形でフリーになったのを逃さず、おこぼれ的に愛と付き合うことに成功したのだった。その時は翔吾は、愛が一途なのだと思っていた。だから、先輩と付き合っている間は自分に見向きもしなかったのだと。 だが、この状況を見ても果たしてそう言えるだろうか? 年端もいかない韓国人の男の子に、股をおっ広げて胸を揉まれている姿を見ても。 「あ……い」 絞り出すようにして出た愛への呼びかけは二人には届かずに床に落ちる。気づけばジホと愛は翔吾に目もくれていなかった。全裸で二人の傍らに佇む翔吾から、ジホと愛ははるか遠くに見えた。 「愛、本当に好きだ」 いつの間にか呼び捨てになった愛の名を呼び、ジホは愛の目を真っ直ぐに見据えて想いを伝える。愛の頬は紅潮し、この半ば異常とも言える状況を完全に受け入れている。翔吾の目からは、愛が静かに頷いたように見えた。 「愛、いいか?」 一体なんに対しての「いいか」なのかわからないうちに、ジホは愛がきているシャツのボタンを一つずつ外していく。 愛は、もう抵抗しなかった。


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