※文字数オーバーなのか、全編が一気に上げられなかったので、二部に分けて投稿させて頂きます。 「ぷっは~~~!!」 背中のチャックを開けてもらい、私は【犬】から【人】へと戻る。 ここは【アンダードッグ】の控え室。 アンダードッグと言うのは、あるカフェの名前。 このカフェは、いわゆるドッグカフェと言ったものではあるが、一風違う所がある。 それは、そこにいる【犬】は【犬】ではなく、【犬の着ぐるみ】だという事。 つまり、表現するなら【着ぐるみドッグカフェ】という事になる。 しかし、店内では、あくまでそれは犬として扱われ、中に人がいるという扱いは無い。 だから、店側からすると、いわゆる【ドッグカフェ】なのだ。 そして、私はここで犬として働く、【滝下 美由(たきした みゆ)】。 今日の仕事が終わり、着ぐるみの背中のファスナーを開けてもらい、そこから上半身を抜き出た所である。 中に篭った熱気と汗と共に、着ぐるみの外へと開放された。 すると、もう一匹の犬が控え室に入って来た。 そして、スタッフの女性が、その犬の背中を開けてあげる。 「はぁぁぁ~~~~」 その犬からも、一人の女の子が汗だくになり真っ赤な顔で、抜け出てきた。 「お疲れぇ~【絵梨香(えりか)】!」 「あっ、美由ちゃん、お疲れぇ~」 このほわっとした、可愛らしい女の子は絵梨香。私と同じ大学で、同じ演劇サークルに入っている親友である。 「今日は大変だったね」 「うん、まさか、キャストがこんなに少ないとは思わなかったよ…」 「お陰で、私たち休憩無しだからね…」 「ふぅ~~。もう汗だくだし、クタクタだよぉ…」 「ホントねぇ…」 二人とも、演劇が好きで、演じるのが好き、変身願望もある、そして、このバイトは身バレしないという特典もあり、私たちにはうってつけの仕事だったのだ。 膝を折り曲げて四足歩行をしなければならない上、全身を着ぐるみに包まれているのだから、もちろんきついし暑い。 なかなかハードは仕事ではあるが、私達は好んでこの仕事に身を投じている。 「美由ちゃん、明日の土曜日は【テラス】の方に出勤するの??」 「うん、今週はあいつが店に行くっていうから、私が出勤しないとじゃん?」 「そっか…【幸助(こうすけ)くん】、また今週も行くんだ」 「まあ…付き合ってるから、あいつの予定が丸分かりだし、都合がいいといえばいいんだけどね」 幸助というのも、私と同じ演劇サークルの一員であり、一応、私の彼氏。 「テラスのほうに出勤するのは、幸助が行く日だけ。あいつが必ず指名してくるから、いないと可哀想だしね」 「で…でも…幸助くん…その犬の中身が美由ちゃんだって事知らないんでしょ??」 「知らないよ、教えてないし、気付いてる素振りもない」 「な…なんか凄いな…。お気に入りで指名してる犬の中身が、自分の彼女なんて…」 「う~ん…。なんかそんな感じを楽しんじゃってる私もいるんだけどね」 すると、絵梨香が考え込むような表情をして言った。 「うん…でもさ…やっぱり、幸助くんは中身が女性ってことは分かってるんだよね??」 「そりゃそうだと思うけど??」 「だとすると、彼女がいるのに、中身が女性の犬の着ぐるみにはまってるって…それって浮気というか…なんか…嫉妬みたいにはならないの??」 「ないない!あいつ、そういう目で着ぐるみに接してないから!」 「そ…そうなんだ…なんか…複雑…」 私達は着ぐるみを脱ぎながら、そんなたわいもない話をしていた。 着ぐるみから出ると、私達は顔だけを露出した黒い全身タイツ姿。 一般には滑稽な格好ではあるが、お互い、もう慣れたもので、その姿を他のキャストに見られる事も、見る事も、抵抗などなくなっている。 さすがに、キャスト以外の人に見られれば、恥ずかしいのだが…。 そして、先程、絵梨香の言っていた、【テラス】というのは、アンダードッグの別館である、【アンダードッグ・テラス】という店の事。 そこは、日中から営業してるお店で、拾い敷地内に公園が併設された店なのである。 そこでは、通常のアンダードッグとは違い、公園内での散歩や、屋外での犬との戯れも出来るところなのだ。 そこに、私の彼氏である幸助は、はまっている。 「ところで絵梨香、【孝(たかし)】とはうまくいってるみたいじゃん」 「え…あ…うん…。うまくいってるよ」 この孝というのも、同じ演劇サークルに所属しているメンバーで、絵梨香と付き合っている。 「しかも、アンダードッグの事も明かして、プライベートで犬としても会ってるんでしょ??そっちの方が凄いと思うけど」 「そ…そんな…凄くなんかないよ…孝くんが、私も…犬としての私【アキレ】も好きだって言ってくれるから…」 「あ~あ!!分かった分かった、ご馳走様!!そんなおのろけ、お腹いっぱいだわ!」 「のろけてる訳じゃ…」 「はいはい、絵梨香が幸せならよし!」 そうして、私達は着替えを終え、犬から再び人間へと戻って行くのだった。 そして、週末になり、土曜日を迎えた。 私は予定通り、テラスの方に犬になるために出勤していた。 「さて…着替えるか…」 私は身に着けていた衣服を全て脱ぎ、生まれたままの姿となる。 そして、次は黒い全身タイツ。 顔の部分だけを露出した、その全身タイツに身を包んで行く。 このタイツ、恐ろしく肌触りがよく、着用するとなんだかうっとりとした気分になる。 手足を通し、頭部のマスクのようなものを被る。 すると私の全身は黒いタイツに包まれ、後は背中のファスナーを閉めるだけとなった。 比較的体の柔らかい私は、背中のタイツを上下逆に引っ張る事により、自らファスナーを閉める事が出来る。 背中に手を伸ばした私は、器用に背中のファスナーを上げた。 【ジーーーーー】 (ん…ぅ…) これで私の全身…顔以外は黒いタイツに包まれたのだ。 体を包み込む、黒いタイツが私の肌に擦りつき、絶妙な気持ちよさを醸し出す。 しかし、このタイツがこの感覚を保っているのは今だけ…。 何故なら、着ぐるみを着た後は汗だくになり、濡れた生地として私に張り付くからだ。 だから、なんとなくこのタイツを着た瞬間、そして、着て暫らくの間、このタイツの感触を楽しむのだった。 「さてと…お楽しみはこれくらいにして、次…次…」 次は正座するように座り込む。 そして、幅広のゴムベルトのようなもので、自らの足首と太腿を繋いで固定する。 このベルトが優れもので、足を曲げた状態で固定するのだが、その際に負担を軽くするように出来ているのだ。 私は自らの両足を、折り曲げた状態で拘束した。 これにより、私はもう普通に二足で立つ事は出来ない。 移動するにも、両手を着き、その両手と膝で立つしかなくなった。 それが、アンダードックにおける犬の中身の基本スタイルである。 「よし、じゃあ着るか!」 私は、私専用に作られた犬の着ぐるみを着用する。 まずは足を入れ込む。 折り曲げられた両足を、着ぐるみの中へと滑り込ませる。 すると、膝が奥まで入った所で止まる。 この膝が当たった部分が、犬の後ろ足の先となるのだ。 そして、その部分はかなりクッション性が良くできており、四足歩行を行っても、膝が痛くならないように出来ている。 そして、次は頭部。 頭から体、手足まで一体で出来ている着ぐるみ。 頭部の固定がやっかいなため、足をいれたら、先に頭を滑り込ませて、固定しないといけない。 (よし…) 一旦、軽く気合を入れた私は、マスクに自らの頭部を滑り込ませる。 このマスク、かなり小さく出来ており、マスク内のスペースなどほぼ無い。 そして、このテラスに用意された犬のマスクには特殊な構造がある。 それは口である。 マスクの中で顎の部分から伸びるベルトを後頭部でしっかりと固定する。 すると、この着ぐるみのマスクは、私が口を開けるのに連動して、着ぐるみ口も開くようになっているのだ。 これにより、物を加えたりする事が出来る。 外遊びが出来る、テラスならではの仕組みである。 私が口を開けば、着ぐるみの口も開く…つまり、開けた状態で、よくよく着ぐるみの口を覗き込んでみれば、私自身…つまり生身の人間の口内が見えるのだ。 とはいえ、敢えてそれを見ようとする客もいないし、仮に見えたとしても、ここの犬は着ぐるみではなく犬として扱われるのだから、見えているのは犬の口内という事になるだろう。 (うん…よし…問題ないかな…) マスクを固定した私は、両手を着ぐるみの腕に通していく。 (よいしょっと…) 体全体に着ぐるみが包み込むように着込み、これで後は背中を閉めれば完了である。 そして、私は直ぐ傍にある、丸いボタンを着ぐるみの前足で押した。 【ピロロロロロン】 電子音が鳴るとスタッフの女性が入って来た。 「終わりましたか??背中を閉めますね」 「はい、お願いします」 今、発した言葉が私の最後の言葉。 これにて背中のファスナーを閉め、着ぐるみに完全に包まれた所からは、私は【犬】。 決して喋ってはいけないのである。 【ジーーーーー】 そして、背中のファスナーが閉められ、私は完全に犬となった。 犬となった私は四足で歩行してみる。 (うん…手も足も問題ないかな??) テラスの場合、お散歩などもあるので、手足の違和感は致命傷になったりする。 なので、この時点でしっかり問題ないかチェックしておかなければならない。 (口も……うん…問題なし!) 口を開いてみると、問題なく着ぐるみの口が開いた。 着ぐるみの口は連動しているため、私が口を閉じれば、着ぐるみの口も閉じる。 形状的に勝手に閉じる形になっているので、開けるには結構な顎の力が必要だが、動作に問題は無かった。 これにて、着ぐるみの着用は完了。 私は【犬】になったのだ。 そう…【犬】に…。 私はご主人様に忠実な犬になったのだ。 人ではなく、動物のペットとして扱われる存在に…。 完全に犬になると、私の中で芽生える感情。 その感情は私を高揚させる。 部屋にある鏡を見つめる。 そこには一匹の着ぐるみの犬が四足で床に立っている。 (そう…私は犬…) それを実感するだけで、陰部が濡れてきてしまう。 (ぁ…だめ…私…もう…) 自分でも変態な事は理解している。 人ではなく犬に成り果て、そして、ご主人様に犬として扱われる事に快楽を感じているのだ。 つまりこの仕事は、私にとって天職みたいなもの。 この着ぐるみに包まれ、自らがその存在だと感じるだけで、スイッチが入ってしまう。 そして、そんな感覚に包まれていると、スタッフからお呼びが掛かった。 「準備できたなら、【マリー】、店の方によろしくね」 (!?あ…そうだ…行かなきゃ…) 少し悦に入っていた私は、現実に戻り、店の方へと出て行く。 ちなみにマリーというのは、私の犬の時の名前である。 幸助が来るのは昼過ぎ。 出勤しているのだから、幸助だけの相手をすればいいと言うわけではない。 午前中は、一般客の相手をするのだった。 一般のお客といっても、私を犬として扱ってくれる。 それは男女の恋愛感情とかではなく、私が犬として扱われる事への喜び。 人ではなく、犬として扱われる自分に満たされているのだ。 ただ、一人、その一般の客と違う空気を持っている客が一人いる。 それが…幸助なのだ…。 午前中が終わり、昼の休憩に入った。 午前中だけとはいえ、このテラスは既に屋外の庭を持つ施設。 太陽光の当たる中、散歩などをしている訳だから、中身の私は当然汗だくになっていた。 (はぁ…はぁ…暑いなぁ…相変わらず…) 昼の休憩や、指名が入らない場合はエアコンの完備された涼しい部屋で待機となる。 しかし、一度着た着ぐるみは、一日が終わるまで脱がないのがルール。 命に関わるような問題でも無い限りは、脱ぐ事はない。 水分補給をし、涼しい部屋でゴロンと横になり待機するのだ。 部屋には、他の犬たちも一緒に待機している。 しかし、待機部屋で、客目に付くところではないのにも関わらず、お互いに喋ったりする事は無い。 何故なら、私達は着ぐるみに包まれた時点で【犬】なのだから。 犬でいる間は、人間の言葉は喋らないのだ。 もちろん、着ぐるみから開放されれば、お互い仲良くおしゃべりをする。 しかし、今は犬。 待機部屋には、何匹かの犬がただゴロンと横になっているのだ。 他の犬の中身の女の子達が、なんでこんなきつい仕事をしているのかは分からない。 もしかしたら私と同様の考えの子もいるのかもしれない。 そこの詮索はお互いしないので、なんともいえないが…。 そして、ゆっくりと休んで午後の部に備えた。 午後の部が始まり、徐々に休んでいた犬たちが出て行く。 「マリー、指名が入ったわ。いつも常連さんよ。そしていつも通りオプション付きで…」 【ゴクッ】 そのスタッフの言葉に、幸助が来たことを確信する。 そして、いつも通りにオプションの準備をするのだ。 私はスタッフに向かって仰向けに寝そべり、犬でいう降伏のような姿勢を取った。 「それじゃ、オプションつけるわよ」 スタッフの女性はそう言うと、仰向けに寝そべる私の陰部を弄り始めた。 この状態で陰部付近を触られていると、なんだか襲われているような感覚に陥る。 (んぁ…ぁ…ぁ…) これだけで、興奮してしまう自分の変態度には感心する。 【ジーーーー】 スタッフの女性が、陰部付近にある着ぐるみのファスナーを開けた。 するとその中には、黒いタイツが現れる。 私が裸で着用しいてる全身タイツである。 そして、スタッフの女性は更に、その黒いタイツにまで手をつける。 【ジーーーー】 黒いタイツにもファスナーがついており、スタッフはそのファスナーも開口した。 裸で着用したタイツのファスナー、それを開口すれば自ずと露呈するもの…それは私自身の陰部である。 二つのファスナーを開けられた事により、着ぐるみの中身である私が唯一そこだけ表に出たのだ。 そして、スタッフはおもむろに、バイブを持って私に近付く。 「あら?やっぱりマリーは、ローションなんて必要ないわね。もう既にグショグショに濡れているもの…」 (そ…それを口にしないで…恥ずかしいから…) 事実であったとしても、それをはっきり口で言われると恥ずかしさを感じる。 着ぐるみを着て犬になっているだけで、興奮して秘所から愛液を漏らしているのだから…。 「それじゃ、入れるわよ」 スタッフの女性がそう言って、私の陰部にどの道具を差し込んだ。 「んんんぅぅぅぅっ!!」 思わず喘ぎ声が漏れてしまう。 「あら?気のせいかしら??人間の声が聞こえた気がしたけど…」 このスタッフも大概のSっ気がある。 流石に何度やっていても、陰部に道具を突っ込まれる瞬間は声が漏れてしまう。 しかし、一度入ってしまえば、壮絶な違和感があるものの、声を我慢出来なくは無い。 私はその後出てきそうになる、声をグッと堪えて我慢した。 そして、スタッフの女性は、すぐに黒タイツのファスナーを閉める。 このタイツが伸縮性に優れているために、私の中に入った道具を閉じ込め、外に出すことを許さない。 【ジーーーー】 そして、再び着ぐるみのファスナーが閉じられ、私は完全に着ぐるみに包まれた。 ただ先程までと違うのは、着ぐるみの中に、私と、加えて、道具も一緒に包まれたという事。 (んぁ…こ…これ…入ってるだけで…感じちゃう…) 着ぐるみに包まれただけで高揚しきっている私にとって、この道具はかなりの存在感であった。 「はい、オッケーよマリー。さあ、ご指名のお客さんのところによろしく!」 そう言われ、私は再び四足で床に立ち上がり、前へと進み始めた。 そう…幸助の待つ…お店へ…。 普段、私と幸助の関係は私が姉御肌で、比較的優位な関係だ。 しかし、着ぐるみに包まれ【犬】と【ご主人様】という関係になった場合、それは逆転する。 ただでさえ、ご主人様に犬として扱われる事に興奮を覚える私が、いつもと立場が逆転した彼氏に犬として扱われる。 このシチュエーションが私を更に高揚させるのだ。 といっても、幸助の方は、中身が私だという認識は無いのだが…。 そして私は、胸を躍らせながら歩みを進めた。 お店に戻ると幸助が待ち構えていた。 「やっほー!マリー!また会いに来たよ!」 軽いトーンで私に喋りかけてくる幸助。 私はそんな幸助の下へと駆け寄る。 駆け寄ると言っても、本当の犬のような機敏な動きは出来ない。 膝を折り曲げた状態での這うような四足歩行…どんなに頑張っても、それ程のスピードは出ない。 しかし、私は出来る限りの速さで、幸助の下へと進んで行った。 「お~~…いつも可愛いなぁ~マリーは」 幸助の下に辿り着くと、幸助は私の頭をワシャワシャと撫で倒した。 マリーに会い、満足そうな幸助。 その一方で私は、今、幸助までの道のりを全力ダッシュした事で、かなり息が上がっていた。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 自らの演技で、幸助の下に嬉しそうに駆け寄るマリーを演じた。 それにより、自らを大きく苦しめた。 (く…苦しい…よ…で…でも…頭を…撫で撫で…されて…) その一演技で自らを苦しめているのにも関わらず、幸助に犬として扱われ、愛情を向けられている事に満足感を感じている。 「さて、広場の方に行こうか」 そう言った幸助を私は顔をあげ見つめた。 その仕草が、幸助にとっては自分が言った事に、マリーが返事をしたかのように映っているのだろう。 満足そうな幸助は、私の首輪にリードを付け、広場に向けて足を向け始めた。 リードを付けられた事により、一層、ペットとしての主従関係がはっきりさせられる。 その行為が、私の中の感情をくすぐる。 そして、幸助が進むペースに合わせて、私も進んで行くしかなくなるのだ。 リードを私に付けた幸助は、それ程早くは無いペースで歩いていく。 そのスピードは私がギリギリ無理なく付いていけるペース。 中身の私に楽をさせるわけでもなく、きついものでもない絶妙なスピード。 そのさじ加減が分かっている幸助は、さすがの常連と言ったところだ。 (はっ…はっ…はっ…) それでも、やはり普段二足歩行の人間が、四足歩行で進むのだから、体力は恐ろしく消費する。 しかし、私はあくまでご主人様のペット。 表情の変わらない着ぐるみのマスクではあるが、どれだけきつくても、嬉しいという表情を見せなければならない。 必死についていきながらも、外から見れば、何の苦もなく嬉しそうな犬を演じ続けるのだ。 「さあ、ついたよ」 幸助の足が止まり、広場へと辿り着いた。 広場には私以外の犬とお客も何組かいる。 木陰で読書をしながら、犬を撫でているお客。 じゃれあって芝生でゴロゴロしているお客もいる。 しかし、マリーと幸助の間柄はそんな生易しいものではないのだ。 「さあ、マリー、今日も遊ぼうか」 そう言って幸助が取り出したのは、一個のボールだ。 このボールが凶器のようなものである。 「マリーの大好きなボールを今日も持ってきたからね」 そう、このボールを幸助が投げる。 それを私が必死に拾いに行って、咥えて幸助のところに戻るという遊び。 一見、平和そうに見える、その遊び…しかし、それは平和などいう生易しいものではないのだ。 「じゃあいくよ、そ~れ!!」 広場に幸助がボールを投げた。 私はそのボールに目掛けて、必死に走っていく。 (はぁっ…はぁっ…はぁっ…苦しい…息が…) ボールに辿り着くまでに、かなり呼吸が荒くなる。 通常の人間の動きにはない、四足での走り。 それほどでもない距離だと言うのに、かなり私を苦しめる。 そしてなんとか、ボールの下に辿り着いた。 (ボールを咥えないと…) ボールを目の前にした私は、可能な限り大きく口を開いた。 すると、それに連動して開く着ぐるみの口。 その口でボールを咥え込む。 私の噛む力もいるが、自然と閉じようとする口の力もあるので、それでボールを咥える。 着ぐるみの口がボールを咥え込む。 すると、中の私の口は開きっぱなしの状態となるのだ。 ボールを咥えた私は、再び幸助の下へ戻る。 戻る時も必死。 行きと同じように、四足で必死に走るしかない。 しかも、行きと違うのが、口をほぼめいいっぱい開けた状態という事。 これが、意外に呼吸がしにくく、苦しいのだ。 (はっ…はっ…はっ…) それでも犬であり続ける私は懸命に、ボールを咥え、幸助の下へと戻った。 「マリー、よくできたね。偉いぞ!」 そう言って、私の口からボールを引き抜く幸助。 (はぁうっ…) ボールが取り除かれ、開けっ放しになっていた顎が自由を取り戻す。 (はぁ…はぁ…はぁ…きつい…きついよ…) かなり呼吸が乱れ、大きく肩で息をしてしまう。 しかし、そんなきつい状況であれ、私は、ご主人様に褒められ嬉しいという表情の演技をするのだった。 しかし、いつも通りではあるが、幸助のボール遊びはこれでは終わらない。 「さあ、マリー、もう一回いくぞ!そ~れ!!」 そして、私は再びそのボールの下へと走っていくのだった。 その遊びを何回か繰り返した所で、私の体も限界を迎える。 幸助の行う遊びは着ぐるみを纏った私にとっては、恐ろしいもの。 無理のある体勢で走っている訳でもあるし、なにより太陽光の降り注ぐ広場で着ぐるみを着て動いているのだ。 当たり前のように、着ぐるみの中は、激しい暑さに見舞われる。 (はぁ…はぁ…はぁ…暑い…暑い…暑い…) 着ぐるみ内の温度はかなり上昇し、私の意識を朦朧とさせる程のものになる。 体中から汗が吹き出て、体から水分が抜けていく。 さらには動き続けているせいと、体温上昇により、呼吸が激しく乱れる。 猛烈な暑さ…脱水…軽い酸欠状態…。 (ぁ…う…く…苦しい…苦しい…よぉ…) 体が少しよろよろとし始めている。 その様子を見ていた幸助が言った。 「どうしたんだいマリー?まだやり足りないのかい?しょうがないな…もう一回いこうか…」 (うぅ…もう…もう無理…) 私はもう無理だという事を幸助に伝える為、弱々しい素振りで、幸助に体を擦りつけた。 「なんだ…そうか…マリー。やっぱり、やり足りないんだね」 そう言った幸助はすこし不敵な笑みを浮かべていた。 (違う!!そうじゃない!も…もう…無理!!) 「いくよ!そ~れ!!ほらマリー、いったよ!!」 そんな私の状況を見て、幸助は再びボールを投げた。 そう…幸助は分かっている。 マリーの中身の女性が、もう限界だという事を。 しかし、幸助はそれが分かった上で、敢えて、もう一度ボールを投げるのだ。 つまり、幸助はマリーの中身の女性を苛めている。 その上で、中身の女性が必死に頑張っている様を楽しんでいるのだ。 根っからの、どSという事。 「さあ、早くマリー!ボールを取ってきて!」 (うぅ…) 私は限界を迎えた体に鞭を打ち、必死にボールの方へと進んで行く。 しかし、最初のような早い動きはもう出来ない。 よろよろと、なんとか前に進んでいるという程度の進み方でボールに向かう。 (あぅ…きつい…きつい…苦しい…苦しいよぉ…) なんとか時間は掛かったものの、ボールまで辿りついた私は、力を振り絞りボールを咥える。 そして、再び幸助のほうへと向きなおし、また必死に歩み始めた。 (はぁ…はぁ…暑い…苦しい…はぁ…はぁ…きつい…はぁ…はぁ…) ゆっくりと進む足取り、思うように手足が出てこない。 すると、幸助が悪魔の様な言葉を発した。 「どうした?マリー、元気が無いぞ。よ~し、じゃあ俺が10数えるまでに戻ってこれなかったら、ご褒美はなしだ」 幸助の言葉に、体がビクンと反応してしまった。 「じゃあ、数えるぞ…。10…9…」 (あぁっ…そんな…いやぁぁ!!) 私は限界を迎えた体を必死に動かした。 思い通りに動かない体を、可能な限り必死に。 「5…4…」 (はぁっ!はぁっ!はぁっ!息が!息が!死ぬ!死ぬ!死んじゃう!!) そう思いながらも、私は必死に体を動かした。 なかば、歩いているのかも分からない程に、無我夢中に手足を動かした。 「2…1…」 そして、私はなんとか幸助の下へと辿り着いた。 「マリー!偉いぞ!間に合ったなぁ…」 そう言って、幸助が私の口からボールを引き抜いてくれた。 そして引き抜かれた瞬間、私は全精力を使いきり、その場に横たわった。 (はぁ!はぁ!はぁ!息が!息が!苦しい!苦しい!苦しいぃぃ!!) 横たわりながら、体を大きく揺らし必死に呼吸をする。 「よ~し、よく出来た子にはご褒美だ、よしよし」 そう言って、幸助は私の頭を撫でた。 ここまで、無理をさせられ、こんなに苦しい思いをしている。 にも関わらず、私はご主人様に従順に従う。 何故か…。 それは、私が犬として扱われたいから…。 そして、私がこの仕打ちを求めているから…。 (はぁ…はぁ…苦しい…暑い…もう無理…で…でも…もっと…もっと…私を…追い込んで…) そう、私は…どMなのだ。 苦しめられればられる程、追い込まれれば追い込まれる程、私は興奮してしまう。 拘束による不自由さ…。 着ぐるみの驚異的な暑さ…。 呼吸が出来ない苦しさ…。 その全てを与えられる事に、喜びを感じてしまっているのだ。 しかも、幸助は限界を迎えた私を感じ、その上をいく仕打ちをしてくるのだ。 私の感情は抑え切れないものになっていた。 「よく出来たマリーには、もう一つご褒美をあげよう」 【ピッ】 「うんぅぅぅぅっ!!!」 犬であるのにも関わらず、人としての声が漏れてしまう。 幸助の手に握られたリモコン。 それは私の【中】に忍ばせられた【オプション】を作動させるもの。 そのスイッチを幸助は押したのだった。 既に高ぶりきった私の陰部を、バイブの振動が襲う。 (んあぁぁぁぁぁっ!!ムリィィィ!!!) ボール遊びによって消耗しきった体…。 着ぐるみに包まれる事で襲い来る暑さ…。 もう、動く事は出来ないというのに、それを許さない陰部への責め立て…。 私の体は、体力と関係なくビクビクと反応してしまう。 立つ力もなく横たわっている状態で、その道具の攻撃に体が動いてしまうのだ。 (んあぁぁぁ!!無理ぃぃぃ!!こ…こんな…こんなの…耐え…耐えられないぃぃ!!) 床に寝そべった私は、その道具の責めにより、体がゴロゴロと動いてしまう。 その様は、突然、犬が苦しみ始めたかの如く映っているだろう。 しかし、その様子を見ている幸助は、そのスイッチを切る素振りは無い。 それを動かす事により、幸助は中身の女性が苦しむ姿を楽しんでいるのだろう。 そう思ってしまうと、私の高揚はさらに増して行く。 私は犬として扱われ、そして、ご主人様の思うがままにされているのだ。 (んふぅ…!あぁ…私…私…私は犬…んあぁっ!ご…ご主人様に…んあぅっ…忠実に使えないと…) 「さあマリー、立って」 そんな極限の状態に達しようとしていた私に、幸助は【立て】と命じた。 そう、いつもの流れ…。 この後は、バイブを作動させたまま、更にボールを運ばされるのだ。 (ぁ…あん…ぅ…な…なんとか…んあぅっ…ぁ…) 既に自由が聞かなくなりつつある体、そして、陰部への刺激を与えられ力が入らなくなっていうる私は、もがく様に体をうごかしながらも、なんとか四足で立とうとした。 もう一度投げられるボールのために。 「さてとそれじゃ…」 (え!?) すると幸助が私の予想を覆す行為に出た。 ボールを再び投げると思った幸助が、私の首にリードを取り付けたのである。 (…え!?…ボ…ボールを…なげるん…じゃ…) ボールに向かって走ると思っていた私を逆にリードで繋ぎとめたのだ。 私は困惑が隠しきれなかった。 すると、幸助がスッと立ち上がり言った。 「さあ、マリー行こうか。今日は特別にプライベートエリアを予約したんだ。そろそろそっちが開く時間だから」 (プ…プライベート…エリア…) そう、このテラスには、プライベートエリアと言うものが存在している。 そこは、お客様と犬の完全貸切エリア。 基本的には、犬が激しく嫌がらない限り、なんでも可の特別スペースだ。 私も一度も行った事が無いその場所を、幸助が予約したと言うのだ。 「さあ行こう」 そう言って、幸助は私に繋がったリードを引き始めた。 しかし、陰部へ仕込まれた道具は止めてくれない。 (あぅ…うっ…んぁ…こ…これ…止め…止めて…お…おかしく…なる…) 陰部に与え続けられる刺激。 それに耐えながら、必死に前に進もうとする。 しかし、その刺激により、足が思うように前に出ない。 すると、幸助が、クイクイっと軽くリードを引っ張る。 【進むんだ】そう言わんばかりの、その引き方。 私が陰部への刺激で、思うように進めないのが分かっての、その行為。 幸助はそんな事をしながら、朗らかな笑顔で私に目を向けていた。 (んぅぅ…お…鬼ぃぃぃ…あぅ…うぅん…いぃ…) しかし、ご主人様に逆らう事はできない。 私はとにかく必死に、幸助についていくしか他ないのだった。 ガクガクとする腰…。 一歩一歩、ゆっくりと前に進み続ける。 そして、繰り返される、幸助がリードを引っ張る行為。 必死の思いで、私は、幸助に付いて行くのであった。 (んぁ…あ…ん…ま…前に…うぐっ…前に…ぁんっ…前に…)