XaiJu
赤キギリ
赤キギリ

fanbox


ラミアの穴の、小さな子として、着て入る

ダンジョン壁の取っ掛かりをコツンと押すと、 人為的、作為的を感じさせる非人道トラップが煙を吹いた。 ぷしゅーっと… 色素が吹き散るその様子を、壁端から見て一秒二秒。 即効性のある毒だからか、 その分、気化も変性もしやすいはずだ。 空間に舞った毒素は空気に触れて無毒化し、 固まった粒子として残っても床に沈殿して…砂や埃と一緒になる。 つまりは…これで、トラップ解除という事だ! 後はトラップに組み込まれた素材を解体して、 金になりそうなものを外して売る、なんて楽な商売だ。 ダンジョン3階層、浸緑湖のほとり階層。 自分も含め男を性的に喰らう魔物娘にも慣れたところで…。 深淵に近付き搦め手が増えて来て対策を講じ始める冒険者を あざ笑うようにブービートラップで確実に消耗させて強い魔物で狩るのがこの階層だった。 そして自分はこの階層に目を付けた。 ブービートラップといっても使えば補充しなければいけない消耗品。 当然のようにこの階層のトラップはこの階層自体の人員で補わなければいけなくなり…。 その補充は魔物娘自体が補っている という情報を得て、ある『金策』がひらめいた。 そして、 トラップを解除してみると…。 出るわ出るわ…魔物娘の希少素材。 今しがたの毒トラップであれば、 袋はスライムの皮膜が使われていて、 管はアウラウネの触手のような植物管、 毒は流石に収集に向かないけれど…おそらくこれも魔物娘の自前の物だろう。 どれをとっても素材そのままで、 商品として売り出せるほどの一級品。 いやぁ… 良い金策を考えたものだ。 近くに出来たダンジョンだからと 散歩がてらに階層を廻ってみたものの、思わぬ収穫だった。 これで2つほどのトラップを解除した事だし…。 あと1つくらい収集して帰りたいなと探していると…。 拠点にしている湖畔のその奥、滝つぼ横、 行ったところで行き止まりにしかないその通路が気になった。 ああいう場所には決まって『隠し部屋』があるものだ。 まだ3階層しか挑んではいないが… 冒険者の勘がそう告げている。 とすれば、手短に拠点にも近いことだし、 重荷になりそうなものは置いて…その行き止まりへと探索に向かった。 滝つぼ横だからか、水が跳ねて鎧にかかってひどく冷たい。 ここら辺は水棲系の魔物娘が住む為か、水分が多く煩わしい。 けれども、そんな人間の冒険者が 立ち寄り辛い場所こそ宝が眠っているものだ。 そして行き止まりへと歩を進めると…怪しい場所に目星がついた。 緑の苔で覆い尽くされた壁を触り落とし、 タイルを少しずつ注意深く見えていると…拳ほどの穴がひとつ。 壁と地面の間に横穴のように出来ていた。 「どうしようかなこれ…」 恐らく壁が劣化して崩れたものだろう。 本当の正解は… 行き止まり斜め横の、ツタが絡まり、花が生い茂った茨の道だろうが…。 今は植物を切り倒すナタも無ければ、万一毒を喰らった時の回復薬も無い。 一旦帰って…商品を待って用意でもした方が良いか…?とは思いつつも、 突発的なダンジョンのため、いつ転移するかと思うと帰る気にはあまりなれない。 どうしようかな~と、ふらふらふらふら。 なにか手はないものかと…少し拠点を戻ると…。 おや…? 今まで滝つぼに打たれ、隠されていたのだろう。 湖畔の片隅、半透明の晶石群の周りにそれはあった。 爬虫類の成長の際に生じるあの物体。 原型を残し、それでも中身はありはしない。 無機物にも有機物ともとれる、判断のつかないような…。 『ラミア娘の皮』があった。 けれどもそれは極小で…。 手にしてみて触って分かる、道具袋にも入れられる手の平程度。 「このくらいだったら魔物娘も可愛いのになぁ…」 見たところこの脱皮皮は…幼年期のものだろう。 卵から産まれて数か月、 母親からの庇護を受けて生活するくらいの…。 まだ男という精の味を知らないそんな可愛い子供くらい。 このくらいの時に捕まえて人間の様式を教えれば、 魔物娘とはいえ、言葉の通じ合う者同士、通じ合えると思った学者が居たそうだが…。 その話のどれもが成長するにつれて制御できなくなり、 ダンジョンに連れ帰られたり、 街全体がダンジョンになったりする話でどうしようもない。 …でも、これは使えるかもしれないぞ? 聞けば、魔物娘の皮というアイテムは『着れる』のだという。 ただ中に入る、というわけではない。 魔力が籠もるものだからか、変わるのだそうだ。 体格が、骨格が、種族が。 着れば着るだけその皮に納まり、 大の大人と言えど、娘の中に入ってしまう。 そんな皮が、手中にある。 ………魔物娘から隠れる為に使う人もいるそうだ。 他にも、毒沼を抜ける為に使ったり…。 茨の道を抜ける為に植物を操る魔物娘になったり…。 曰く、最初は恥ずかしいが…使えば分かるらしい。 試しに腕を通してみる。 最初はゴム手袋のようなものだろうと思っていた。 見た目極小、質量に対してあまりに狭い、変哲もない物体だから半信半疑だったけど…。 右腕を通すと確かに皮に包まれたそれが動いた。 ラミアの小さな、しっとりとした女性の腕が…自分の意思で動いて行く。 感触としては… 右手があるにも関わらず、 視覚的に見えないもんだからまるで無いような気分になる変な感覚。 いっとき…目を閉じて右腕に集中すると、確かに『ある』 最初は何らかの生物の体内に手を突っ込んでいるような感覚だった。 ラミアという蛇…爬虫類の皮のせいなのだろう。 その生物の肉体は、 恒温動物の人間とは違い、 変温動物であるからか、手を突っ込めば突っ込むほど、 外気との温度の境界が無くなって…温くじめったい階層だというのに慣れて染まる。 けれども、それだけではない。 自分の体温が、その皮に吸われているようだ。 今も生きているかのように、 体内のような皮の肉壁は凸凹を埋める様に、自分の右腕を包んで行く。 するとどうだろう、ぎゅうっ…ぎゅうっ…と、 押され圧迫され収縮し続けた末に…。 ふらふらと腕を振ると…。 手の指、隙間から風の通り道を感じ…空を切った。 まるで自分のもののようなその感触。 これは、すごいものだ。 試しも終わったので、腕を引き抜く。 なにかあったら嫌だな…と思っていたけど、特に問題なし。 自分の右腕は、右腕のままで、損傷も変化もしていないので大丈夫。 と、すれば…。 あとはこれを『着て』あの行き止まりの 小さい穴から抜け道のように隠し部屋へ行くだけだった。 不安な気持ちは、若干ある。 人智を超えた反則アイテムにかかる代償はいかほどか。 こういう美味い話には絶対にオチが付くとは世の常だが…。 魔物娘のトラップを解除して得て成功体験を積んだ身だ、 欲望がにゅっと出て来ても、リスクから得られる快感には堪え難く…。 ドキドキとしながら、 服を脱いで、たたんで…。 ラミアの幼体の皮に足を通した。 あくまで、安全に。 床に足を付け、尻もちをつき、前屈するように足を通す。 脚が無い生物はどんな気分なんだろう、と考えながら…。 狭く、小さい穴に無理矢理にと両足を通して行く。 そして…足のつま先、指がヘビの尾になった。 地を踏み、「体重のバランスを均す部位」が変わって行く。 地を感じ、「危険を察知するための部位」に変わって行く。 多分だけど…。 ここが一番ラミアと人間の感覚の差異を感じるポイントだろう。 上半身が人間で、下半身は蛇という種族だから… ここさえ通り抜ければ、後はトントンに人間の部分を着るだけで済むわけだ。 まぁ…手の平ほどの人間の部分なので想像し難いけれど…。 けれども『蛇になった部分』には慣れて来た。 肌が硬質の鱗に包まれた感覚はひと際違和感を覚えたが…。 皮が肌に吸い付き、収縮し、 ぎゅっと足が蛇の腹部に納まる頃には…自分のもののように動かせた。 聞けば、蛇は鱗を足のように使って動くらしい。 鱗の取っ掛かりをニョロニョロ動かし、凹凸の地面を蹴り、進むように。 だから、鱗が手のようにも、足のようにも感じられた。 カチカチ、チカチカと地面に当たる鱗が 『立っている』という感覚をより一層引き出して気持ち良い。 凹凸の地面で、取っ掛かり部分が多く感じられるほど、 自分の足場だと感じられるくらいの安心感。これがラミアの感覚か。 すると…下半身。 自分の股間付近も恥ずかしいけれど…変わり行くことを感じる。 皮に押し付けるように、絶対ぬめりそうな部位をあてがい、皮の反応を待つ。 大事な部分だから…激しく変わるとビックリするからと待っていると…。 皮が…もにゅもにゅと包み… 邪魔になるからとぺーったり皮の皺に押し込み…変わらせた。 男の部分が、女の部分に…。 いや、ラミアの部分に。 最初に感じていた陰茎の部分も今では感じられず…。 外側に出ていた内臓が内側に納まったそんな気分。 擦るといけないからと鱗のフタがそれを挟み、覆って…。 魔物娘が、人間の男を搾り取る為の器官が出来上がった。 うっわぁ…流石にこうまで変わると少し、いや結構恥ずかしい。 下腹部にかかる体重がそれを一層感じられて恥ずかしい。 もう、早々に済ましてしまおう。 気付けば、下半身がラミアになっていれど、 第三者から見たらへそから上の上半身しかない人間状態。 なんともアンバランスな生物になってしまっているので早く着よう。 そうして、ラミアの皮を伸ばして上半身を入れ込んだ。 誰も着させてくれる人も居ないから… もう、頭を屈んで…頭と一緒に腕を入れる限界状態。 皮が捕食するように包むらしかったので、 着ようとするのではなく、無理矢理入れるように入れ込むと………入った。 その時、身体全てが収縮する感覚を味わった。 腕が縮まり、筋肉が幼体に合わせてしぼんで行き、 手指は未発達の幼さが残る、指間が狭い水かきのような皮膚が残る指先に。 肩が狭まり、首の肉がふにゃっと肩の筋肉に垂れて曲線を帯び…。 その上に、丸く幼い顔がちょこんと出て来る。 湿度がある空間なのにサラッとした金髪の髪に、 黒く、切り込みのような鋭いヘビの眼球。 皮の外にまだ出ていた背中も…。 収縮する身体全てに耐えられなかったか、ずぽんと皮に納まってしまい…。 大きく、広がるダンジョン内…そこの行き止まりである地点に、 ダンジョンの隙間を縫って動けるくらいの小ささの… 元は人間である『幼体のラミア娘』が誕生した。 …。 入った瞬間凄かった…。 ラミアの頭になろうという穴に突っ込んだだけで…つるりと頭が入ってしまって…。 暗く、生物の腹のような空間に頭を突っ込んでしまったかと思ったけれど…。 ぎゅっぎゅっと…収縮しながら… 目を、口を覆い包む皮のおかげで…なんとかラミアの顔に納まった。 位置を調整する感じで…小さな穴に、大きなものを 無理矢理入れるような…チューブの中で絞られる感覚もしたが…。 なんとか、成った。 男性から女性になるのだから…少し胸の変異にも期待はしたが…。 幼体だからか、男性と同じくらいの胸の大きさ。 少しだけ、胸板がやわくほどけ、 すべすべした胸になったが…それだけで…少し残念。 だから、他の変わったところを知るために…。 「あー…」と、声を出してみる。 そうすると聞こえてくるのは、 男性のものではなく、子供のような舌ったらずの甘い声。 ちょうど近くにあった滝つぼの水面を見ると… 可愛らしいラミアの顔が自分の顔だと認知できた。 「ふっ………くくっ」 なんとなく、笑い声が出て来てしまう。 立って、歩いて、走るしかない 人間とは違った…超常現象を与えられるとこうなるか。 使いどころを間違えれば危険なアイテムだと分かりつつ、 力に呑まれた人間がどうなるかも分かりつつ、だけれど…。 初めて手に入れた…使う事の出来る魔道具を手にした喜びからは逃れられない。 幼体の手つきは華奢で、まさしく清い。 人間も知らないラミアの幼体、 そんな皮を手に入れたから…ちょっとしたレア感もある。 だからちょっと…クセになってしまうかもしれない。 けれども、本題は例の隠し部屋の穴である。 そうだ…気付けばダンジョンは広く、大きい。 サイズ差を忘れていた…。 今では足蹴にしていた苔混じりの芝生も身体の倍はある。 でも、幼体のラミアはその道に通じていた。 身体の表面、鱗で砂利を踏み付け、草を切り付けつーっと這う。 まるで…昔から知っていたようだ。 本能で人間が立って、走れるように… このラミアの身体も本能で這い進む事を知っている。 このまま人間をやめてしまっても良いかもしれない…。 いやいや、けれどもこれを味わった以上、他のアイテムを手に入れたい気も…。 そうして隠し部屋への小さな穴の前にやってきた。 もう今では、穴というより通路。 人間の腕ほどの穴だったわけだけど… 頭をぶつけなくてもいいほどに大きくなってしまった。 流石に、このままの大きさだと生活するのが大変そうだな…と、 今一度パッと隠し部屋に入ったらパパッと収集してパッと脱いでしまおうと心掛けた。 楽しむのは自宅でもできるしな…。と、 今一度自分にも欲望に呑まれないように言い聞かせて。 頭をぶつけないほどだけど、狭い穴を通るのは変な感じ。 当初は空間は広ければ広いほど良いと思っていたけれど…。 ラミア娘の感覚からか『もっと狭い場所だったら良いのにな』とも思えて来た。 そう…ヘビの習性からか…狭い場所が恋しいのだ。 これは今後のお楽しみのときに参考にしようと頭に残しておこう。 狭く隠れる場所に良い石…くり抜いた木…。 うーん…イマイチぴんと来ない。 今度ペットとしてヘビを飼うことになったからと、 雑貨屋で聞いてみるのも良いかもしれない。 そうこう考えているうちに出口が見えて来た。 穴の中はじっとりとしていて、 人間の頃では不快ではあったかもしれないが…。 それも今では、出たくないと身体がのけぞり…逆らった。 さながら、快適な家から寒空の下に出たくないという惰性の極み。 魔物娘の皮はそうもなるのか、と頭で律し…。 嫌がり、鳥肌が立ちつつある身体をのらりくらりと動かして…。 せめて隠し部屋の全容が見えれば… 感性も人間側に傾倒し、探索欲が湧き上がってくると思い立ち、見ると…。 複数のラミアがそこに居た。 小さくなった体では、それは大きく…鱗が壁のようである。 とぐろを巻いて…たぷたぷと実った乳を垂らして…眠っている。 サイズ的にはまちまちで…。 恐らく…それがよくみる人間サイズのラミアなのだろう。 巨大なラミアが一匹でん、と眠っていて…。 その巻いたとぐろに寄りかかるように…おそらく子供たちが這い寄り寝ている。 親のような人間大ほどのラミアから… 自分の三倍ほどのラミアまで…多種多様。 けどそれらのどれもが…似ている顔つき、髪色で…家族である事が窺えて…。 そして、その家族は…。 この皮のラミアの幼体と似ていたのだ。 もし、あのとぐろの中に自分が入っていっても 気付かれないかもしれないほど、瓜二つ。 もしかしたら… あの中にこの皮の持ち主が居るかもしれない。 なんとなくだけど…血縁者のカンというものを感じるのだ。 …。 けど、まずは宝の有無が先決だ。 ラミアの生態を垣間見るのも良いが、 襲われてはひとたまりもないのでそれが先決。 けれども、金目の物は無さそうで…。 いや、なにか… 感じないだろうか? ふと気になって、地に伏せた。 鱗がタイルにひんやり当たってくすぐったいが…ラミアの部分に集中してみる。 人とは違う人外の部位。 今まで『足』だった部分である『尾っぽ』に神経を凝らして…。 すると…。 幼体のラミア娘の尻尾が…。 金貨のコツコツとした、地に擦って煌めく振動を感じ取った。 あの巨大ラミアの下に金貨がある…! これは良い発見だ…! 見れば、巨大ラミアの鱗の下に、 きらりと光るものが見えて…引き抜いてみると… 街でたまによく見るダンジョンの硬貨だ…! これ1枚で魔物娘さんの店で牛乳を買えるぞ…! 少し盗人気分にもなるけれど…。 ダンジョン内の魔物娘の金貨なんて、 魔物娘にとっては人間を誘い出すエサでしかなく…。 『盗っても良いとされている…!』何故か魔物娘側が言っているが。 まぁそれぐらいの価値なのだ、 魔物娘にとっては金貨など…精の前では。 だからまぁ… とりあえずこの金貨を入手するために元に戻ろう。 幸いか、この隠し部屋。 中に入る事は困難かと思いきや、そうでもないらしい。 他の通路があるらしく…対面の舗装された通路が見えて… どこに繋がるか分からないがそこから脱出したら万事解決だろう。 まぁなにはともあれ…背中の切れ目に手を伸ばして… 「あら…もう起きちゃったの?」 それは、ただ尋ねるだけの声だったのだろう。 けれども、自分にとっては悪戯がバレて叱られる時のような母の声。 幼体のラミア娘の皮を着ているからか、 鳥肌と共に鱗が震えて、心臓がビクンと跳ねる。 高い場所からの声だ、地を這う蛇にとって 天敵である鳥類を思い起こしてさらに危機感が跳ね跳んだ。 そう… 巨大ラミアが…起きてしまったのだ…! どうすれば弁明できる? どうすれば人間だってバレないでいられる? それとも、力技で今、この瞬間に逃げ出せば逃げ切れるか? と、ぐわんぐわん思っているうちに… シュルルッ…と他のラミア娘たちも起き出して…。 完全に走って逃げるチャンスを逃してしまった。 起き出したラミア娘たちはぞろぞろと母の身体から離れて行き、 地面に降りて…思い思いに整列する。 幸い…気付かれてはいないらしく…。 怪しまれないために、自分もその整列に加わった。 そのどれもが自分よりも大きく…きっとこの皮の子は末っ子だったのだろう。 同じくらいの身長の子なんていなくて…みんな自分より2、3倍以上はある。 人間だとバレたら一発アウトの魔物娘の整列群。 そんな中に一匹潜り込むというのは、なかなかドキドキする。 けれどもやっぱり家族なのだろうか、間に入るだけで少し安心感が湧いて来た。 2、3倍という認知されそうなラミア娘を避けつつ… 逆に10倍ほどの大きさの、姉にあたりそうなラミア娘の影に隠れて一安心。 ゆらりくらりと隠れて耐え忍び脱出の機会を待つとしよう。 「おはよう~」「おはよう!」 「おはよう~みんなよく寝られたかしら?」 ラミア娘の大所帯、1人1人の子を確認していないのだろう。 それに大きさもまちまちで…少しの変化には気付かなさそうだ。 でも…ちょっとこれは興味深いぞ? ダンジョンに魔物娘が出て来るのは当然と思っていたけれど…。 もちろん彼女達にも生活…生態があるわけでそこはあまり知られていなかった。 だから…少し興味深い。 気付けば整列も崩れて、わらわら母に縋りつくようにラミアの子がごねっていた。 「まま~ごはん~」 「はいはい、ちょっと待ってて頂戴ね」 …ごはん? そうかごはんか…男の精が一番のご飯と聞いていたけれど、 まぁそれだけじゃないよな…と、次に出て来るごはんに興味が湧いた。 まさか…虫じゃないよな? ラミアだし…ヘビだし…カエルという線もあるけれど… それが出てきたらリスク度返しで一か八かで逃げるかもしれない。 すると母である巨大ラミアは ずんっと地面…タイルに腰を下ろし…。 前屈み、腕を組むようにその上半身を突き出して…。 自分から見たら葡萄酒の巨大樽以上の胸をぺーったり乗せて…。 むにゅむにゅと乳房を揉んで…出した、母乳を。 すると、待ってましたと言わんばかりに 姉であるラミア娘は駆け出した。 飲む順位、順番が決まっているらしい。 まずは、大きい姉ラミアが口に含んでそれを飲んだ。 ひとしきりちゅーちゅーっと飲んで…。 満足したかと思ったら、次に大きいラミアにそれを飲ませる。 人間であった頃の自分から見てもそれは巨大であっただろう。 巨大ラミアの顔以上にある乳房だ。 左右両方、それぞれに飲んで飲ませて…。 身長が足りない子にもなると飲めないからと、姉が持って飲ませている。 そして、自分はその順番へと並ばされた。 目の前で魑魅魍魎にも等しい数のラミア達が乳を飲んでいる。 巨大ラミアはそれを微笑ましく慈愛のような顔で見つめ… あっ…と、嬌声を出せども、ピクリと動くだけで邪魔しないように態勢を保つ。 それを、自分は今から飲まされる。 少し、罪悪感が湧いて来た。 成り行きだったとはいえ、自分はラミア娘のテリトリーを犯し、 家族になりすまし、母の寵愛を受けるべきラミア娘の順番に末端だけど割って入っている。 魔物娘とはいえ、この行いは許されるのだろうか? でも、この幼体のラミア娘の身体は成長の発展途上。 クン…と、嗅げば湧き上がって来る母乳欲! 甘く、香しい、自分達専用に作られた育つための必須要素だ。 舌がぬめって、喉の奥が渇いて来る。 あれを飲めばどんなに幸せになれるか、多幸感に包まれるか。 言われるままに4倍くらいの姉のラミア娘の腕にぎゅっと抱かれ…その母の乳首へと口を付けた。 一口含んで、すぐに飲む。 瞬時に感じるのは、この身体にはこれさえあれば 他にはなにもいらないという絶対価値観が植え付けられるひとつの感情。 母の感情いっぱいの、 赤ちゃんのためのミルク。 今まで飲んだどんなものよりも身体が潤い、 ふつふつと身体が熱くなる。 おそらくきっと、人間に戻って飲んでも、 きっとこの母乳には魅了されていた事だろう。 そんな飲み物で、しかも自分は順番の最後。 だから姉のラミア娘が「腕がつかれた―」と言われても、夢中になって…。 ラミアの腕力そのままに、乳首を持ってしゃぶりつき…。 母の巨大ラミアが、あらあら…とがっつく自分に慈しみの視線を向けようとも、 ぷらんぷらんと乳首から離れられず…ついには母の手に添えられ、 母の手の内で…自分と乳首しかない閉鎖空間。 母の母乳と、母の汗の湿気が満ちるそんな空間に…自分から閉じ込められてしまった。 夢のような場所だと思った、 乳が目の前にあって、ラミアといえど人間の部分だ。 体温が漏れ出て…それ全部が、自分の中に満ちて来る。 けれども、他のラミア娘は違ったようだ。 「お母さん~ちょっと魔力少なくない?」 「ごめんね~…  最近、冒険者が罠にかからなくなってきててねー…  この階層全体に魔力が足りなくなってきてるみたいなの」 と、自分からは分からないが…この母乳には魔力が足りないらしい。 うっ…。 これちょっと…自分の話題かもしれない。 トラップを解除し回っているもんだからこの階層の難易度が格段に下がっているんだ。 自分だけならいいけど…。 他の冒険者にまで影響を出して…。 いわゆる食物連鎖が乱れて生態系のバランスが崩れているそんな状態。 人間からしたら誇らしいけれど…。皮を使って魔物娘になった今… すこし、協力してもいいんじゃないか?という人間に弓引く行為に加担しそうになって来る。 しかし…元はこれより魔力が大きいのか…。 それを飲んだら…と、思うとよだれが湧いてまた乳首にしゃぶりついてしまった。 「まぁまぁ…  人間ひとり捕まえればなんとかなるわけだし…みんなで協力して乗り越えようよ!」 …良い子たちだ。 だからこそ、騙している事実に気が引ける。 お腹いっぱいになってしまった。 ぺしぺしと、母の手に合図を送って…優しくおろしてもらう。 どーしよかーどーしよーか。 もしかしたら、今ここで 正体を明かして交渉したら全て丸く収まるかもしれない。 精を与える代わりに、母乳なりなんなり貰って…。 けれども、 ダンジョンの魔物娘と交渉して成功した話など少なくて…。 それに…。 母乳を飲んだ手前、バレると尋常じゃないほど恥ずかしい。 自分はその時、にやけ顔をしないで済むのかどうか。 だから… 優柔不断な気持ちだから…見逃した。脱出のチャンスを。 「は~い、それじゃあっぬぎぬぎしましょ~ね~」 「は~~い!」 ぬぎぬぎ…? 母である巨大ラミアが合図を出す。 すると…各々のラミアの子が…背中をまさぐり…。 ベリリッ…ベリリッ…と、脱皮をし始めた。 ラミア娘にとってはただのルーティーンだったのだろう。 爬虫類であるヘビが脱皮するのは当然、だから、ラミアも脱皮するのが当然。 思い思いに皮を脱ぎ捨て、 脱皮に手間取っている子は大きな姉がマッサージをしてぬるぬる脱がす。 だけれど自分にとってはあまりの超常現象に恐怖する。 一人、一人、脱皮をするたびに…巨大になっているのだ。 脱皮したら、一回り大きな存在が出て来るのは至極当然。 けれども、末っ子である自分にとっては… 周りがどんどん巨大になって…力の差が歴然と見え始める。 認知され辛いと隠れていた10倍の姉も、 いつの間にか人間の子供くらいのサイズになってきた。 もし今、持たれてしまったらそれこそ子供の手の平に乗っている形になるであろう。 「ぬげないのー?あたしが手伝ってあげよっか?」 そんな時にかけられる、 姉の言葉にしばし判断がつかなかった。 おそらく、脱げないと、 私よりも小さい子供だから脱げ辛いのだろうと、親切心で言った言葉のだろう。 けど、自分の場合、 入っているのはラミア娘ではなく…! 「えっ…!そういうんじゃなくて…!」 「まーまー、お姉ちゃんに任せて!やさしーくむいてあげるから!」 子供っぽい、湿度が残る柔い手に、 むんず!と持たれて体重全てが宙ぶらりん。 4倍ほどの体格差のラミアの姉だ。 その巨体から逃れることは困難で…! ぺしぺしと、尾で攻撃しても、可愛いものだとくすぐられる気分だろう! そのまま背中の裂け目へと、指が這い、 ぐいいっ…と、広げられて…正体がバレた。 「え…?なんか…違う…?」 ラミア娘とは違った、筋肉質の男の背中。 きっと、それは異物が出て来た気持ちなのだろう。 心配そうに、なにかあったと思ったのだろう…。 見たものをなかったことにするように…閉じる。 そして持って行く…母親の元へ。 一連のやり取りで、 自分はもう裁判所へと連行される罪人の気分。 ラミアの皮を着て、なりすまし… 金貨を盗もうとしたばかりか、ラミアの母乳を飲もうとした。 この罪状に宣告されるのは、どんな罰か。 ついに、母親の手の平まで乗せられてしまった。 「お、お母さん…!」 姉ラミアの心配が、母にも伝わってしまったらしい。 心配そうに、背中をさすって…ゆびを入れ込み…。 変わった…目付きが。 今までの慈愛に満ちた母の顔ではなく、 薄く、黒い切れ込みのある眼をしたラミアの顔。 脱皮する子の手伝いをしているそれではない、 まるで硬い皮の果実の中に目当てのひとふさを見付けたようなそんな顔。 ごくん、とよだれを呑み込むような大きな音が喉から鳴って…。 体格差を、分からされるように地面に置かれた。 そして、分からされた。ここから見えるのは、 さっきまで見ていた母にも錯覚したラミアの母の姿でもなく…。 神話にも出て来るヨルムンガンドのような、鱗ひとつが家を容易く押し潰すような巨大な蛇。 周りの子供はどうしたの?と心配する目をしているが…。 目の前の巨大ラミアは見下すというより、威圧感を与えるように目線を淡々と投げている。 「あら?人間さん…どうしたのですか?こんなところに」 え!?人間!? と、姉のラミアは色めきだつ。 久々の、初めての人間だ、 味は知らずとも本能でその味は遺伝子に刻み付けられているようで…。 今までぶつくさ不満を垂れていたラミアも、 よだれが垂れて、ぴろぴろちろちろと先の別れた舌が伸び出て、それを舐める。 でも…?どこに人間が居るの?と、母に視線を通すラミア達。 「この子よ、この子。  私達…ラミアの皮を着て潜り込んだみたい」 「あーっ!本当だ!これ…私の脱皮皮だ!」 「もう…だめじゃない、ちゃんと脱皮皮は処理しないと…。  人間に利用されちゃうんだし…でも、今回はそれが良い方に転んだ…のかな?」 ねぇ、そうでしょ?との視線の問い掛けに、 ただただうつむいて、母に怒られる子供のようになるしかない。 けどもう、魔物娘という本能は若干薄れて…。 人間の部分が出てきたようだ、恐怖心が湧いて来る。 「あなた…それで相当楽しんでいたようね…。  さっきだって私の胸をちゅうちゅう吸ってたし…。  もしかしたら知らないだけで…今まで紛れて吸ってた事もあったのかしら?」 「こ、今回が初めてです…!」 「へー…そうなんだ…美味しかった?」 その確認する声にピクッと、なる。 美味しかった…本当に。 今思い出しても、よだれが出て来るくらい。 とは言っても、クスクス笑われているこの状況、 言ってしまったらそれこそ弱みを握られそうで…。 でも、もう既に時遅し、夢中になって乳を吸っていたわけで… 確信しているようだ、ラミアの母は。 自分が、母乳を美味しく飲んでいたという事に。 「まぁ…私からしたら…いつ飲ませてあげてもいいんだけど…」 えっ…!?  こんな事しても…飲ませてくれるの!? と、思えども思えども、魔物娘からしたらここからの話がある。 「でね…ほら、代わりのものが欲しいと思わない?」 そう、魔物娘が欲する。 男の精、それが今、求められている。 ………もう、腹をくくろう。 きっと、自分は負けてしまった。 魔物娘に、ダンジョンに。 失敗してしまった手前、ここでただ精を求められるというだけなのは正しく幸運だ。 だから…男の自分を見せようと…。 幼体ラミアの皮の背中に手を伸ばして、脱いで…。 「ああ…大丈夫。そのままでいいから…」 すると、ぐわんっと持ち上げられてしまった。 巨大ラミアの目の前に持って来られてしまったので少し…怖い。 なにが大丈夫なのかと思いつつ、次の言葉を待っていると…。 くるりと、一回転。背中をふーっと吹きかけられて…。 ビクッと、身もだえる。 「ねぇ…あなたが戻ったところで…  この子たちに危害を加えないと思っているの?」 「し、しません…!そんなことは…!」 「うん…それは思うけど…ねぇ…。  この子達が安全に、簡単に精を吸える方法があるといいと思わない?」 「なっなにを言って………ひっ!」 おそらく、それはラミアの母による 捕食の説明を子供達にしているものだったのだろう。 足下這う、ラミア達が…。 母乳とは格段にならないほど、母にすがり、 得物の為によだれ混じりの下をチロチロ出し…。 母も負けじと舌をチロチロさせて…。 その舌を、皮の中へと突っ込んだ。 「わあぁっ!」 悲鳴とは違った、 自分でもよく出たなと勘違う、幼体ラミアの甲高い声! 子のラミアの声が漏れて、母のラミアもビクっとするが、 何の問題も無い、その舌の先に触れるのは男の味なのだから。 ラミア本人たちは皮の影響を受けないのだろう。 腹周りじゅるじゅると、 巨大ラミアの舌は巨大のまま、 背中を張って、それ自体が生き物のようにくねり、まわり…。 幼体ラミアの中に居る男の…男の部分にそれが這った。 くるりと、舐め取るようにそれを包むと、 足がピーンと伸びて、ぺりぺりと皮との境界が露(あらわ)になった! そう、自分は一度、人間に戻った。 けれども、それを許すような皮ではない。 吸着力はそのままで…咀嚼するようにもぐもぐ身体に這ってきて…。 巨大ラミアも剥離に気付いたのだろう、 背中をツツ―っと指で押されて…吸い込まれるように皮に逆戻り。 まるでラミアの尾っぽに入れ込められるよう。 狭い穴に、両足を無理矢理…指で入れ込まれ、 足先から、びくびくと、尻尾に一体化するように感覚が鋭くなってきて…! それを、ラミアにさすられた。 鱗が張って、つやつやの幼体を、撫でるようにさすられた。 感度が十分、舌先の責めも十分で…堪えられず…。 びくびくっ!と二重三重に舌で巻かれて、射精をしてしまった。 巨大ラミアも気付いたのだろう。 皮である幼体ラミアの背中をちゅーっと…精液、体液、粘液そのまま吸って…。 子供たちに、 そう、舐め取るように教え上げた。 もう…母はそれ以上に教えることなど何もない。 ぐったりとした…男の身体を這い寄る子に与える。 出さないように、漏れ出ないように。 その皮が子を育て上げるまでの牢獄と分からせるように。 先程までの母乳を与えるような慈愛に満ちた母のようでなく、 仕留めた獲物を子に与えるような、なにか勝ち誇った魔物の顔。 我先にと、掴もうとするラミアの娘にとってもう順位や順番などどこにもない。 人間の、男が入っている 幼体のラミアの皮にチロチロ垂れる舌を差し込み、 知らずとも知っている例のモノを探し当てようと躍起になる。 ひとつ、ふたつではない、大小さまざまな舌のブラシ。 頭をもろに突っ込み、舐め取ろうとする者もいるようだ。 けれども、最後は射精したであろう瞬間に、 みんなでちゅーっと吸って、また皮に押し込み。 回復するころを待って、また舌で舐め回す。 ああっ… こんなことになるなら、着なければよかった。と思っても、 快感に絶頂する身体では、後の、未来のことなど考えられず…。 この、皮に包まれながら舌で巻かれて射精させられる幸福感に耐えられず…。 『もうちょっとみんなが慣れてきたら  次はこの子の皮で試しましょうね』 との、ラミアの母が遠くに聞こえ… ラミアの子が潜り、 けれども人間大には届かない 子供以下の大きさのラミアの皮をただ見る事しかできず…。 疲れたら…母乳を飲まされて…。 「ほら…私のおちち美味しいでしょ?」 と、言われても、それは子供に向けるものか、獲物に向けるものか分からなかった。


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