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狛斑
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Skeb進捗報告


『どしたん、また分からないとこあった?何でもアンちゃんに聞きな〜?答えられることならなんでも答えてあげるからさ』


『んー、こことここ、あとは…あっ、そうだ。先生彼氏できた?』


『うるせぇ!まだだわ!!今はうちのプライベート聞き出すより先に分からなかった問題聞けって言ってるよなぁ!?』


そんな会話をしたのが、もう随分と前のことのように感じる。昼食をそそくさと食べ終えてカトリーナ先生に質問をしに行く…そんな建前を周りの友達も分かってて、きっと先生も分かってるんだろう。


このささやかで幸せな時間を誰かに邪魔されることは無かったし、化学室に足繁く通っていることに対して深く聞かれたこともなかった。いつだって先生は僕の質問に答えてくれて、先生といる時間が何よりの幸せだった。


「ねぇアンジュ…シてよっ…んんっ♡」


「はっ、はぁっ……リゼ…学校ではダメって決めてたのに…んむっ♡んっ…ちゅっ……」


扉越し、微かに聞こえてくる声は間違いなくカトリーナ先生のもので。いつも以上に高く脈打つ胸を抑え、スマホ越しに覗き込む。汚れ一つない白衣によって引き立てられた見惚れるほどに美しい真紅のロングヘア、そこに混ざり込んだ気品を感じさせる長い長い銀髪。


きっとあれはリゼさんのもので、いつだって暇さえあれば愛おしそうな目を向けていた彼女とカトリーナ先生がそういう関係であると気付くのに、そう時間は掛からなかった。


それでも、日頃から彼氏が欲しいと嘆いてはネタにしている先生がリゼさんと"そういう関係"なのだと信じたくない自分が居て、どこか諦めている自分も居て。もし"そう"だったとしても、二度と自分が見ることのないだろう先生の横顔を記録してしまいたいと…そう、思った。


「ふふっ…やっぱりアンジュも我慢出来なくなっちゃった?ここ、すごいことになってるけど…」


「んんっ♡♡り、ぜぇっ……待っ、他の子っ…来ちゃう、からぁっ♡」


「まだみんなお昼食べてるって。それに…こんなに可愛くおねだりされたらさぁ…我慢できないに決まってるじゃん♡」


愛しの彼女と深い深いキスを交わすことへの幸せで紅潮した先生の顔は見たことがないくらい雌のそれで、いつだって男子たちの視線が釘付けになるスカートへリゼさんの右手が滑り込んでいく光景に奥歯を噛み締める。


ところどころは白衣で隠れて見れないが、明らかに生徒と教師が超えてはならない一線を超えている映像が目の前に広がっている。リゼさんの右手がほんの僅かに動くたびにくちゅくちゅと淫らな水音が響いてくるし、現にキスをしたままだ。


(先生の、あんな表情……初めて見た…なんで、なんであの場所に僕が居ないんだ………なんでリゼさんは先生と…なんで……どうして……………)


僕の指が録画ボタンに伸びたのは言うまでもなく、そこに恨みも憎しみも無かった。少なくとも、一番最初の段階では。


ただ先生の悦楽に満ちた表情を、呼吸すら忘れるほどに激しいキスを味わうその顔を、僕だって見たかった。きっと僕が見ることのないだろうその景色を、この場所から離れた後も…家に帰ってからも、繰り返し見る権利が欲しかった。それくらい、許されて欲しかっただけなのに。


「ふっ…ん♡はぁっ……やっぱりここじゃ狭いね。帰ったらちゃんとシよっか?」


「はーっ♡はぁーっ♡♡じぶ、からっ…シてきた、癖に……分かったよ…また後で、ね?」


「はーいせんせ♡またね〜」


「はぁ…またねリゼ…じゃなかったヘルエスタさん。ちょっ、ちゃんとドア閉めてから行きなってぇ!」


二人にとっては、当たり前のやりとり。きっと僕が来る前も、僕が来た後も…誰にもバレないように二人でこっそりとこんなことを続けていたんだろう。そう思ったら、ふつふつと怒りが湧いて来る。


僕の恋心は全部無駄だったんだと分かってしまったから。僕の心を分かっていながら知らないふりをしてくれていた先生は、他でもない自分のために知らないふりを続けていたんだと知ってしまったから。


「僕にだって…何か見返り、あってもいいよな…?おかしくないよな……?」


短くも濃密な行為を終えた二人が笑い合う声を聞きながら、ノートを握り締めて化学室を後にする。揺れる視界、痛む頭。ぶつぶつと呟きながら人っ子一人見当たらない廊下を足早に歩く僕の姿は、それはそれは異質なものとして映ったかもしれない。


その日から、僕の計画は…………始まった。


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