XaiJu
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付き添い

あけましておめでとうございます〜〜!


年が明けてしまいましたね。2023年ですって。ええ……もうそんなに……。本年も変わらずどうぞ、よろしくお願いします。


実家に帰省して、初詣行きまくって、酒を飲んで、堕落した生活を送っています。すまぬ……。執筆もニ、三日お休み予定です。ええんやろかこんなんで。今月ファンボの投稿間に合う……?


それはさておき、新年一発目は狼おっさんのお話でもどうぞ食べていってください。文量は1万5000字ほどでございます。干支に全く関係ないですね。いいですこれで。今まで死ぬほど自由なスタイルでやってきてるんですから……今更何を……😇


というわけでお年玉代わりではありますが、今月もどうぞ楽しんでいってください。新刊のサンプルやら、その他色々投稿予定です🐼新春けもケットもありますし、イベント盛りだくさん〜〜〜!今年もたくさんシコっていきましょうね!




※以下、本編。

****


 ……うーん、なんかいつもより布団の中が寒いような……。そう思って腕を右へ左へ動かすと、いつもの感触がまるで伝わってこない。あのモフッとしている毛の感触、冬では味わえない温かみのある毛皮はどこにもいなかった。時計を見れば時刻は短い針が五の辺りに差し掛かっているところ。朝日が室内へと入ってくるように開けっぴろげにされたカーテンの向こう側には、まだ漆黒の空が広がっていた。


 リビングの方では既に活動時間を迎えている人が、いや獣人が一匹。僕は温かさを求めて何とか布団からの脱出を図る。うぅっ……今日は特に冷え込むな。僕は寝ぼけながらも迷わず椅子に座っている彼の元へゆっくりと歩き出し、ガタイが良くて乗せやすそうな肩へと顎を乗せた。


「……ん」


 僕の方には目もくれず、彼は新聞にお熱のようだった。同棲しても尚、彼はこういうのに興味はあるらしい。……もちろんただの新聞ではなく、競馬新聞なのだが。


 最初狼獣人の彼と出会った頃は重度のギャンブル中毒、喫煙中毒、オンナ中毒という酷い有様だった。そんな彼は誰にも見向きもされずに何十年という歳月を生き続け、このまま独り身で一生を終える――かと思いきや僕なんかとお付き合いすることになって。今でこそまだマシな方であるが、今日も競馬場を走る馬に鼻息をフンスフンスと荒くしている。賭けられるのは一日に一回、しかも最低金額のみ。その約束を破ったら僕らは別れるという条件付き。そうでもしないと彼は有り金を全て馬に突っ込むなんてザラだし、何なら僕に金を貸してくれと言うまでになってしまうから。そうならないように制御し、更生させるのが僕の役目だった。


「……お前はどの馬がいいと思う」


「いや僕は全然競馬なんてわからんので……」


「いーから。こういうのはビギナーズラックってモンがあんだよ」


「……じゃあこのキョコンダイマックスってヤツにします」


「ふぅん」


 僕がなぜこの馬を選んだのかは……想像にお任せする。椅子の後ろ側にある隙間から飛び出たでっかい筆先のような尻尾をブンブン振りながら、彼は手のひらにちょこんと乗せられたスマホ画面を弄って投票を完了させた。結果が出るのは昼前頃だそうだ。まぁ勝ったとしても今のレートではタバコすら買えない金が入るだけなのだが。キョコンダイマックスはそこそこ人気らしいし、全然穴場でもない馬なのだから。同じ空間で何度も競馬の話をされたせいで、それぐらいの情報なら僕の頭の中にしっかりと記憶されている。一生役立つことのない知識であろうが、橙吾さんには喜んでもらえそうだ。


「朝ごはん、今から作りますね」


「ん」


 馬のチェックが終われば、彼はベランダで一服タイムに入る。賃貸契約なので、室内で吸うことは許されていない。吸うと管理人である猪のおっちゃんがニコニコしながら腕に太い血管を張らせ、グーの構えをしながらこちらへ近寄ってくるから怖いの何のって。彼が前一人で住んでいたアパートでは吸いすぎて壁が真っ黒になり、大家さんである牛のおじさんと取っ組み合いの喧嘩をしていたこともあった。だから彼にはやはり僕がついていないといけないのだ。


 もうすぐ朝日が昇る。いつもなら彼が出勤中に見るであろうその太陽を、今日はベランダからじっくり、のんびり眺められる日だ。土方の現場仕事であるから休日も変わりなく早起きなのだけれど、橙吾(だいご)さんは朝が好きなのかな。狼って夜の満月が好きなイメージがあるのだけれど。



「ご飯出来ましたよ〜橙吾さ〜ん」


 閉じられたベランダの窓に向けて、僕は大きな声で彼――橙吾さんを呼ぶ。狼の中でも珍しく体毛が変わった種族で、橙色に近い体毛と真っ白でキレイな体毛とで構成されている。最初見た時は本当に美しくて、顔付きも男らしくてカッコよくて、僕はすぐに魅了されてしまったのだけれど。現実はそう甘くはなかったんだよな。何せ性格がああだから……。雑で、趣味は人に言えるようなモンじゃないし、その趣味のせいで貯金は出来ないし、料理もできないし、性欲は絶倫だし、隙あらばキスしまくってくるし。


 それがいつしか僕にとっては惚れる要素となったのだけれど、もちろん彼には直接的に伝えていない。


「スゥッ……はぁっ……おーすぐ行く」


 寒くて出る白い吐息、そして煙による白い吐息、その二つを混ぜ合わせた空気をマズルから勢いよく噴射した彼は、チラッと僕の方を振り返って目を合わせてから再び陽が昇る方向へと顔を戻す。そんなに外の景色を見たかったのかな……まぁ確かに毎日あの橙色の光はキレイだなと思ってはいるけど。初日の出でもあるまいし。


 朝食は今日も和を中心としたメニューにしてあげた。ごく稀にパンが食べたいなどと言い出すけれど、最近は和食で安定しているな。白米に大根のお味噌汁、ああ……ワカメはたっぷりめが好みらしい。塩の味付けで作った卵焼き、よく焼きのあつあつウインナー、それから野菜を少々。キャベツやレタスはイヤイヤ食べてくれるが、トマトはあまり好んでくれない。そうそう、お漬物の白菜はめちゃくちゃガツガツ食べ進めてくれるんだよな。何だろう、ちょっと手を加えて加工すればいいのかな。あと最近粒マスタードの味を覚えたので、ウインナーには必ず付けてくれと言われる。


「…………」


 なんだろう、この違和感。ベランダから戻ってきてくれた橙吾さんはいち早く白飯をウマそうに食べているのだが、それよりもテーブルの端になんか……存在感のあるモノが見えるような……。これ、突っ込んであげた方がいいのかな。さっき彼をベランダから呼び出したときには置いてなかったと思うんだけども……。


 デザートに剥いておいたリンゴの入った皿の下へ控えめに置かれたちょっと派手なチラシ。そこにはデカデカとクリームたっぷりのパンケーキ写真が載せられていて。しかも折り目があちらこちらについているし、何ならチラシの端っこはちょっとボロい。これは今朝競馬の方じゃない新聞に挟まっていた広告ではないだろう。となると犯人は……一人しかいないんだがなぁ。


「……おい」


 熟年夫婦のやりとりのように、彼は食事中に声をかけてきた。相変わらず目つきが悪くて、橙色の体毛に合わない髭がボサッと生えていて、太眉で……おっさんだなぁ。そんなことは別にいいのだけれど、橙吾さんは目線をそのチラシへ向けてから再び僕の顔へと戻してきた。見ろ……と言っているんだろうか。いや見ましたけれども。これが何なのでしょうか。僕にはさっぱりわかりません。


「はい、見ましたよ。おいしそうですね」


「…………」


 あっ、また顔が一層怖くなった。これは求めていない回答をされた時の顔だな。すぐ顔に出るから面白い。そんなやり取りじゃ絶対伝わらないんだから、もっと具体的に言ってくれればいいのに。それから沈黙の時間が数分流れたあと、彼は僕を睨みつけながらこう言ってきた。


「…………オレをココへ連れていけ」


「……はい?」


「食ったらさっさと準備しとけ。いいな」


「今日ですか⁉︎ 今日は溜めてたドラマの録画番組を全部見ようと思ってたのに……」


「んなもん明日でもいいだろうが、どうせオレが仕事してねぇ間暇してんだからよぉ」


 うっ……バレている、いや決して暇しているわけじゃないんだけども……。僕には創作活動という仕事のような遊びが待っているから、イベントに向けて本が出せるように手を動かさなきゃならないんだ。主夫とは言っても、僕にはやることが無限にありますよ。


 それよりもやはり言ってきたか、まさか今日行こうと誘われるとは。橙吾さんは人には言えない秘密が……いや別に秘密にしなくてもいいと思うんだけど、大の甘いもの好きだった。だが本人はそれをめちゃくちゃ恥ずかしいと思っているらしく、今の今まで一度もそういった店へ行ったことがなかったらしい。橙吾さんの親御さんもそういうイメージがあるようで、とにかく家では甘い菓子など出されずに酒のツマミを貪って生きていたのだとか。僕と付き合い始めてから何度か行ったことがあるのだが、それでもまだ緊張が解けないのかいつも何かに怯えながらスイーツを貪っている。こんなところを同じ現場のヤツに見られたら嫌だとか、若い女の子の目線が気になるのか、本当にうるさくて敵わない。だがそこがまた彼の可愛いところではある。


「へぇ、そんなにこの限定パンケーキが食べたいんですか。ふぅん」


「…………」


 あっ、少しイジワルしすぎたかな。ピンと立った耳がヘナヘナになってるし、いつもの強面が崩れかけている。これはいかん。僕はそのチラシを手に取り、うーん……じゃあ家事が終わったら行きましょうと伝えてやった。


 橙吾さんは返事こそしなかったものの、食事を終えた時に席を立つと尻尾がまるで豪雨の時に車で使う高速ワイパーのように左右へブンブンと揺れていた。



「じゃあ僕は……このイチゴたっぷりミルフィーユセットで。ドリンクはアイスのカフェラテ、アイスはバニラにします」


「おっ……おれはっ……くっ、くまっ、く……くまさん、じるしの、とくせいぱん、けぇき、で」


「セットですか? 単品でしょうか?」


「……あ? 単……なんだって? あーっ、えと、その、オレは今日、単勝で五の二に賭けて――」


「あーーっセットで! セットドリンクはアイスミルクでお願いします!」


「……かしこまりました。パンケーキ、お時間少々いただきます」


 単品と競馬の単勝を聞き間違える辺り、相当緊張してるなこりゃ。橙吾さんは現場仕事でいつも使っている首掛けタオルで顔面を拭きまわしながらふぅ……と声を上げていた。注文一つでこの有様かい。そうやって突っ込みたくなるが、本人は必死であろうこと間違いないので僕は口をつぐんでおく。ちなみにアイスミルクという単語は聞こえこそいいものの、ただの冷たい牛乳の事を指している。橙吾さんはここにガムシロを入れて甘い牛乳にするのがお好みのようだった。


「なっ、なぁ、あそこの女子高生、こっち見て何か言ってねぇか?」


「……そりゃそうですよ、だって厳つい狼のおっさんが現場仕事の格好でこんな喫茶店来てるんですから」


 橙吾さんは私服を一切持っていない。一緒に買いに行ってあげようかと提案したことがあったが、男なんざこれで十分だと彼は胸を張って言うモンだから。確かに悪くはないし、職人っぽくてカッコいいなとは思うけれども……一般人から見たら異質な光景だろう。靴だっていつも仕事で履いてる土汚れがすごい地下足袋だし、首からタオルぶら下げてるおっちゃんがこんなキラキラした店にいるのはおかし……いやおかしくはないけれど、不思議だなとは思う人がたくさんいるはずだ。


 それから二十分ほどだっただろうか。絶やすことなく会話のキャッチボールをして戯れていた僕らのテーブルに運ばれてきたのは。


「お待たせしました、クマサンパンケーキのお客様〜」


「…………」


「あっ、えっと、こちらにお願いします」


 自分で注文したくせに手を上げないこの狼オヤジに、僕は今にも吹き出しそうになってしまった。そこまでイヤか、そこまで男が甘いスイーツなんぞに手を出したらいかんと思ってるのか。どうせ食べてる間に周りの人から見られるのは必然なんですから、潔く諦めて欲しい。


 店員のお姉さんはニコッとしてから橙吾さんの前へプレートを置いてくれた。……すげぇ、熊の頭の形そっくりのパンケーキだ。どうやって焼いたらこんな風になるのだろう。フライパンで焼いて、それから別で小さなパンケーキを焼いて……繋ぎ目がバレないようにそこへクリームなどで飾り付けしているのか。何なら顔、めっちゃ可愛い。チョコレートソースでニッコリとした顔が描かれていて、更にはあざとさ抜群と言った感じでクマが舌ペロしている。こりゃ女子に大人気スイーツになること間違いなしだろう。期間限定商品だからそのうち無くなるだろうけど、これで橙吾さんの欲も満たせるのではなかろうか。


 うん、案の定へっへっ……と待てを強要された犬のようにマズルを開けながら舌を垂らしていた。尻尾は扇風機のように高速回転しているようで、橙吾さんの背後にあるテーブルクロスがすごい勢いでなびいている。早く食べればいいのに。何をそんなに待つ必要があろうか。


「くっ、食っていいのか」


「橙吾さんが頼んだモノなんですから、どうぞどうぞ」


「オレみてぇな野郎がその、こんなモンを食って……」


「いいから冷めないうちに、ほら早く」


「…………店員のねーちゃんがこっちを見」


「早く食べて」


 何をそんなにビクビクしているのだろう。いつも仕事の現場ではああじゃないと知っているだけに、あまりのギャップで驚いてしまう。先輩らしく後輩を指導しながら作業をする職人のような彼は次期親方候補と噂されているらしく、この前ウチへ連れてきた同僚と言っていた虎のおじさんにもベタ褒めされていたからな。そんなおっさんが……今、クマサンパンケーキを前に目をキラキラと輝かせている。子供が新しいオモチャを与えられた時のようなあの目を、このようなもうすぐ五十代になりかけのオヤジが……。あんだけ歳を重ねている彼にも純粋な心というものがあるのだなぁ。


「はふっ……んっ……んおぉ……」


 焼きたての分厚いパンケーキはアッツアツだったのだろう、マズルの中でハフハフと息を荒らげながら橙吾さんは最初の一口を咀嚼し始める。バターが染みてていてより一層おいしさを感じたのか、橙吾さんは徐々に口角を上げていった。むしろ気持ち悪い笑顔とも言える。これは周りの女性たちには見せられない光景だろう。だから僕が独り占めをするようにして味わってやる。普段笑い顔を作り慣れていないおっさんが笑うとこんな感じなのか……へぇ……。


「どうですか、お味は」


「んがっ、お゛っ、おごおご!」


「……やっぱ後で聞くんで、存分に食べててくださいな」


 この世に生きる大人と呼ばれる部類の人たちは、好きで大人という存在になったわけではない。まだ少年のままであるピュアな心を宿したままで、それを押し隠すようにして表面を取り繕い生きていく。それが大人というものだ。自分の本性をありのままを全て見せつけてくる狼のおっさんを前に、僕は思わず口角を上げながらその様子を観察し続けた。最後に皿の上に残った生クリームをペロペロ舌で舐め回すマナーもへったくれもない動作は、なぜかたまらなくエッチでスケベな気持ちになった。



 ギャンブル欲と食欲が収まれば、橙吾さんの中で残るものはあと一つ。……性欲、だ。お腹いっぱい甘いモノを食べた僕らは今、一般的な場所よりも利用料金が少しお高めなホテルへとやって来ていた。それもエッチなことを目的とするラブホテルというやつ。


「……最初からここでヤるつもりだったんですか?」


「違ぇよ、ホントに私服がねぇだけだ」


「やっぱ今度買いに行きましょうよ、ついていきますから」


「うるせぇ。男は作業着とか現場仕事で使う衣服の方が似合うんだよ」


 橙吾さんが鼻息を荒くして連れてきてくれたのは、シチュエーションごとに部屋が選べるラブホテル。それも今日は建設現場の中でヤっているような感覚になれる、周りが黄色いフェンスで覆われた部屋だった。厳密に言うと、壁にフェンスの絵が描かれている。正直実物よりもめちゃくちゃリアルで、何なら文字が禿げて読めなくなったフェンス絵も用意されていた。その空間に溶け込んでいる本職の狼が一匹、そして場違いな人間が一人……。僕はフェンスに模した壁へと追いやられ、壁ドンをされてしまう。


「……おら、ちゅーすっぞちゅー。口開けろ」


「やんっ……ひゃっ、あっ……」


 仕事で使う軍手を着用しながら、橙吾さんは僕の後頭部に手を置いて抱き寄せてくる。さっき死ぬほど見た甘い甘い生クリームを舐め回していたヤラしい舌が、今度は僕というスイーツを見つけてウネウネと動き出した。唇へリップクリームを塗るように唾液をたっぷりまぶされ、それからメインディッシュをいただくように僕の口の中を貪り始める。僕と出会う前はタバコを一日一箱吸っていたモンだから、このマズルの中にこびり付いたヤニ臭さはあと何十年近くも取れないだろう。その中に残る、甘い生クリームとメイプルシロップ、それからバターの香り。スイーツの甘みとおっさんの苦味が混ざり合って、僕の顔に降りかかる吐息は複雑なフレーバーを醸し出していた。


「……ふん、口ん中とろっとろだな。ケツもやわっけぇ」


「ひっ、ひぐ……」


「オレはとろっとろでふわっとした甘ぇモンが好きだからよ。お前のこと見てっと……ココがしっかり反応しちまう」


 ニッカポッカズボンを限界まで押し上げている、橙吾さんのボロニアソーセージ。中ではモワモワとした空気が篭っていそうで、僕はへっへっ……と犬のように口を開けながら今か今かと開放を待ち続けた。


「慌てんじゃねぇよ。おら、ベルト外してくれや」


 少し震えた手でベルトの金具を外し、僕は中に閉じ込められていた橙吾さんのニオイを思う存分嗅ぎ回した。今ではどちらが犬なのかわからない。鼻をスンスンと鳴らせば強烈に臭い立つ雄の香りが鼻腔内を突き抜け、肺の中までしっかりと汚染するように臭気がこびり付く。細胞一つひとつに橙吾さんの情報が書き加えられ、こうやって淫らな行為をする度に僕の体は狼によって蝕まれていくのだ。


「……う゛わっ、ん……すっご……」


「わり、昨日から下着変えてねぇや」


「……わざとなクセに」


「なんだ、よくわかってるじゃねぇか」


 ニッカポッカズボンの下には男らしい布――褌が巻きつけられており、僕は中に含まれている肉竿の大きさに思わずギョッとした。こんなにデカかったっけか、それも汁がポタポタ布から垂れ落ちていて床にまで染み込んでいる。家で汁を床に撒き散らしていたら絶対に怒っていたところだ。特に今使っている布団のシーツにはおっさんの体液が染み込みまくっており、ニオイも色も落ちなくて……。だから口で処理するか、風呂場でヤるか、こうやって金がある時はラブホに通って僕らは盛り合う。いくら汚れても大丈夫な場所の方がセックスに集中できるし、何よりアガる。ラブホを借りる時は使用料分たっぷり楽しむので、今日は昼間っから夜までずっと腰を振り続けるのだろう。そう妄想すれば肉穴がヒクヒクとわななき、腸液がぶわっと分泌された。


「……シャワー、浴びないんですか」


「男がヤる前にシャワーなんか浴びてられっかよ」


「…………」


 確か付き合い始めた時もそう言われた気がする。野郎同士、どうせ汚れるなら交尾前に湯浴みする必要なんてないだろうと。それはそうなのだが、この鼻が曲がりそうなほどに汗臭い逸物を咥えるのにはそれ相応の勇気が必要だ。風俗へ入り浸っていた時も湯浴みは一切しなかったらしく、おかげで今では肉体労働系職業の獣人お断りの紙が店に貼り出されることも珍しくなかったんだとか。


「……ん゛っ、んぐ……」


「お〜〜ぬるっとしてら、あー……」


 最初からこの雄臭いニオイが好きだったわけではない。一緒に生活するにつれて、鼻が慣れたという表現が正しいだろう。汁でぬるぬるの肉竿を両手でしっかりと握りしめた後で、僕は自分の口に押し込めるようにしてグッと咥え込む。人間の口にとってこの巨根は相当辛いし、味も最悪な部類と言える。塩辛さがとにかく酷くて、ちょっと滓も溜まり始めたぐらいの汚れ雄クサちんぽ。風呂場で念入りに洗ってくれと言っても彼はあまり聞いてくれず、最近は僕の口で掃除させることが殆どだった。


「汁止まんねぇや、すっげ、お゛っ……」


 喉に絡みつくこの雄臭い粘液の味、たまらなく最悪。うがいをしても取れないイガイガ、呼吸をするたび橙吾さんのニオイをこれでもかというほどに思い出させてくる。胃袋の中をコーティングするように流し込まれる我慢汁、それも水道を閉め忘れてチョロチョロと流れるような量の汁を飲まされれば僕の体はひとたまりもなかった。


「……へへっ、発情してんのかよ。そんなにハスハス嗅いでよぉ、オレのニオイがそんなにいいのか」


「……ん゛っ、んぼっ‼︎」


「奥まで咥えろや。この一番雄クッセェとこ嗅がせてやっから」


 モジャモジャの黒い毛が生え揃った股座の中で、僕は密林地帯の空気を肺がいっぱいになるまで一気に吸い込んだ。アルコールを流し込んだ時のようにカァッと体が熱くなり、目がとろんとして焦点が合わなくなる。ズボンの下でちんちんが痛いほどに硬く膨れ上がって、今にも漏らしてしまいそうだった。最初はすぐに意思とは関係なくイキっぱなしになり、苦労したものだ。それもこれも全部、橙吾さんが躾けてくれたこと。僕は獣人の雄臭い濃厚なフェロモンを直に嗅いでも漏らさずに居られる、言わば獣人にとって都合のいい体となっていた。


「おい、もう口離せ。出ちまう」


「……ガハッ、ん……はぁっ……はぁっ……」


「口に出してもいいけどよ。顎、疲れるだろ。また今度な」


 橙吾さんはほぼ確実にイク直前で僕の口からその巨根を引きずり出してしまう。それもそのはず、狼の肉棒には根元に瘤が備わっているから。人間と同じような形をしているクセに太くて長くて、更には野生の動物のように特別な体質を持って生まれる者も大勢いた。その中の一つ、狼は射生後に膣から肉棒が抜け落ちないようにして根元の瘤を膨らませる能力があるのだ。橙吾さんはその野生の血を色濃く受け継いだせいで、子を作らせる能力に特化している。


 口で出されると少なくとも三十分はそのままになってしまう。一度口淫をやりすぎて医者に注意されたこともあった。“顎の筋肉が炎症を起こしているのですが、身に覚えはありますか?”と聞かれた時は本当に心臓が止まるかと思ったな。結局その場では嘘をついて、だけど後にバレて……かなりキツめに怒られた。しかも僕ではなく、一緒に病院へ来てくれた橙吾さんが。人間のパートナーならもっと大切にしろ、無理はさせるな、そんなような内容だったと思う。僕としてはこう……乱暴にガツガツ来てくれた方が愛を感じるし、気持ちがいいし、有難いのだけども。結局その医者の言葉通りにセックスしてくれたのは、それから数回だけ。いや、もしかしたら二回……だったか?


「……そら、ケツ向けろよ。ほぐしてやる」


「ひゃああっ、くすぐった‼︎」


 尻たぶをペロペロ、下から上へ舐め回す橙吾さん。手で揉まれてもくすぐったいし、舐められてもゾクゾクくる。橙吾さんの舌は太長くて、それを使っていつも風俗店のオンナのまんこをほじくり回していたんだとか。ちょっと嫉妬心が芽生えるけれど、その分僕の肉壺をたくさん使ってもらえれば……いいかな。もはや舐めることに抵抗のなくなった僕の尻穴、当然の如く舌を抜き挿しをしてニチャニチャと音を立てながらほぐしてくれる。僕が許されているのは行為の直前に尻穴を洗うことだけ。ほぐすことはおろか、湯浴みも一切許されていない。そのままの味が、ニオイが、好きだからと言っていたな。結局僕も橙吾さんも、似た者同士と言える。今なら……僕は橙吾さんに湯浴みしてもらいたくないかな。一応建前みたいなもので浴びてくださいと言うが、それが本心でないと彼もわかっているのだろう。当然のように浴びるわきゃねぇだろがと言い返され、そのままの塩味ちんちんをしゃぶり、ケツをほじくり回されるまでがワンセット。


「……ん、なんか前より締まってんな。最近相手してやれなかったからか」


「…………一人でヤると、いっつも怒るでしょ。だから……」


「ふぅん、オレがいねぇ間もしっかり禁欲ってか。よくやるなぁ」


「ひゃっ、あああっ‼︎」


 この狼は性欲たっぷりで、獣人の中でも特に性欲の強いとされている猪並に量も回数も多い。そんな彼の相手を務めるのは僕の役目だから。同じぐらい気持ちよくなりたいし、最後まで意識を飛ばさずにまぐわいたい。そんな事もあって、僕は私生活で一切自慰をしなくなっていた。……橙吾さんと存分に、イチャイチャするために。


 当然ながら毎晩発情した狼に抱かれる事になるのだが、繁忙期になると相手をする暇もなく酒を飲んでソファで寝てしまう事も多い。ここ最近は特にそうだった。だから三日ほど、その、相手もしてなかったし……抜いてない。以前は一週間禁欲しても何も問題ないぐらいだったのに、最近は歳をとったというのに湧き上がる性欲が止まらなかった。全部橙吾さんが悪い、獣人と一緒に生活するのが悪い……のだけど。


「今日はどれにすんだ、あん?」


「…………たっ、タオルがいい、です」


「へぇ、こんなモノをねぇ」


 部屋の中央にあるキレイ目なベッドの上へ場所を移して四つん這いになりながら後ろを振り向くと、おっさんは首にかけていたタオルのニオイをスンスンと嗅ぎながら無言になる。それからひと呼吸置いて、出かける時に持ってきた鞄に手をかけ始め――。


「おーあったあった。……おぉクッセ! お前は今首にかけてるのより、こっちの方が好きなんだろ」


「そん、な゛っ、げぇっ⁉︎」


「お前が興奮するように、しばらく味染み込ませてやったからよ。へへっ、嗅いでくれや」


「――――っ、――っ‼︎」


 軍手を脱ぎ捨てた橙吾さんは尻穴に中指を突き立て、ほじくり回しながらゲヘヘとやらしく笑う。僕は身をよじらせて苦しみ続け、ずっと股間がジンジンする不思議な感覚に襲われていた。反対側の手がヌッと顔の前まで伸びてくると、そこには燻んだ色の白タオルが握られていて。目が開かないような強烈な饐えたニオイを放つ布からは、彼の現場仕事の壮絶さが目に浮かぶようだった。現場仕事の社員たちは皆同じように雄のニオイを纏わせながら土埃にまみれて業務に取り組んでいるのだろう、想像しただけで僕の股間はギンギンとなる。


「キマってんなぁ、こんな不潔なモンを嗅いでちんぽこビンビンになってら。おら、肉穴もグジュグジュになって熟れてきたぜ」


「ん゛おぉっ、お゛っ‼︎」


「はぁん、雄熊のニオイ以外じゃ反応しねぇとか言ってやがったお前が、今やオレのニオイにしっかり反応するメスになってるじゃねぇか。メス穴おっぴろげてちんぽくれ〜って叫びが聞こえるようだぜ、ゲヘヘヘ」


「言わっ、言わないっ、でっ‼︎」


「まぁだ理性が残ってんのか、おらっ鼻押し付けて嗅げっ‼︎ 心の底からオンナになっちまえ‼︎」


 顔面の下半分を橙吾さんのタオルで押し付けられるのは、僕にとって最高のご褒美。蒸しタオルを巻かれているかのように、僕の顔からは汗がたっぷりと滲み出て頬を垂れ落ちる。もちろんその汗も全て汚れタオルへと染み込むが、中に含まれた強烈に臭い立つ橙吾さんの汗のニオイには到底敵わない。


「狼フェロモン、そんなに好きか。へへっ、どのオンナも総じて嫌がる雄クセェのをお前は豚のように嗅ぎ回って恥ずかしくねぇのかよ、なぁ」


「あ゛っ、あ゛〜〜〜っ‼︎」


「ここを今からオレのカリで引っ掻き回してやっからよぉ、しっかり腰構えて肉壺用意しとけな」


 僕が切って丸くしておいた爪を携えた指をぬるぬるの穴へと何度もねじ込まれ、指の腹の部分で執拗に擦り付けられるのは僕の一番気持ちがいいメスイキポイントだ。前立腺と呼ばれるその部位を刺激されれば、どんな雄でもたまらず射精して苦しむ場所と言える。今までに何度突き上げられて意識を飛ばしかけたかわからない。それに橙吾さんも目で見なくともわかるぐらい的確にその場所を把握しているので、交尾の際には相応の精神力がないと耐えられないだろう。


「……お゛ほぉっ、入るっ、入るぞっ、ぶってぇちんぽ入るっ‼︎」


 後頭部でギュッと結ばれた橙吾さんの汗拭きタオル。そのおかげで彼の腕は自由となり、僕の両手を痛いぐらいギュッと上から掴んで離さない。シーツに大きな皺の跡ができるほど握りしめられ、当然僕の手の甲とおっさんの肉球には大量の汗が分泌され始めた。


「ん゛う゛っ、う゛うっ、うぐっ‼︎」


 大きな地震が発生したかのように上下左右に揺れまくる僕と橙吾さん。周りに描かれた関係者以外立ち入り禁止の看板を模した壁が、そしてケツを拡張されている間にベッドの上へ散らばった軍手やニッカポッカが、僕をより一層リアルな現場世界へと引き連れていってくれる。あの軍手も中は相当湿っているから雄のたまらなく饐えたキツいニオイがするんだよな、ああっ……嗅ぎたい。だけど今は橙吾さんの汗拭きタオルが……うぐ……。


「今から夕方までオレの自前のドリルでケツの掘削工事してやらあ! こりゃいい締まりのまんこしてやがる、お゛ほっ、お゛っ‼︎」


 バックで僕の体をしっかり固定しながらのセックスは、エラの張ったちんちんが必ず僕の気持ちいい部分を掻き回してくれる。乱暴に引き抜かれてもまたすぐ陰毛がケツに引っ付くまで腰を押し付けられ、激しく出し挿れされた肉棒には大量の粘液が付着しているのかグチュグチュとやらしい音を奏でていた。


「ガハハハ! もう竿が泡まみれになってやがる! こりゃ淫乱な肉穴だ、オレのちんぽ咥えて離しやしねぇ!」


 昔はローションをたっぷり注がれていた時期もあった。今では橙吾さんの我慢汁と僕の腸液の量が凄まじすぎて注ぐ必要もなくなったのだが、そのせいでおっさんのちんちんはすぐにベトベトの泡を纏わせてしまう。真っ黒いチリチリとした陰毛は今頃雪のように真っ白い泡がこびり付いているだろう、後で念入りに舐めさせられるのは目に見えている。


「そろそろ一発イクか? んん? イッちまうか、へへっ、子宮下ろしてしっかり準備、しとけよ、ぐっ、お゛おっ‼︎」


 スパートをかけると、橙吾さんはもう周りが何も見えていないかのようにただ力強く腰を振り始める。それも僕のケツタブが真っ赤に腫れ上がるぐらい激しく、小刻みに動きすぎて呼吸がゼェゼェと荒くなるほどに。


「お゛〜〜〜っ出るっ、膣ん中に出るっ、子作り汁っ、がぁっ、たまんねっ‼︎」


「…………がはぁっ⁉︎」


「わり、ちょっと締めさせてく……おほぉっ、お゛っ‼︎」


 首に毛むくじゃらの腕が回され、僕は軽く気道を押されて蛙が潰れたかのような声を上げた。危険だとはわかっていても橙吾さんはやりたがる。また近所のお医者さんに怒られるだろうな……。窒息プレイ、とまではいかないが。人のケツというものは呼吸が苦しくなるとキュッと引き締まるらしい。それも肉棒の形に合わせ、腸壁を蠢かせながら。だから獣人の中にはイク直前から執拗に首を絞めて肉壺の具合を良くしたがる者がいる。橙吾さんも例に漏れずそっちのタイプで……。多少なら許してあげているものの、最近またより一層過激になっていた。


「げぇっ、あ゛っ橙吾さっ、あ゛っ‼︎」


「お゛〜〜〜くるくるっ、お゛っ……汁やっべ、お゛〜〜……」


 ギブという意味を込めて首に回された腕へ合図を送っても、一向に離す気配がない。……これは、マズいか。酸欠が続けば視界が揺らぎ、意識が落ちそうになる。鼻をつく強烈な狼の汗のニオイすらもよくわからなくなった頃、僕はようやくおっさんの拘束から開放された。


「……あ、わり。やりすぎた」


「ゲホッゲホッ! うぅ……げぇっ……一瞬死ぬかと……」


「いやホント、すまねぇ。やっぱオレだめだな、自制できねぇダメ狼だからさ」


 そう、何度も言うがこの残念な狼は欲望に忠実で……金や酒、オンナには目がなくて……とにかくおっさん三代欲求にはめっぽい弱い獣人だ。抑えろという方が無理なのはわかっているが、このままだと僕の体がもたないかもしれないから。そして……僕がいなくなっても一人で暮らしていけるように、もっと体へ教え込んでやらないと。特に人間やオンナを扱うときの加減ってモンを、だ。


「……大丈夫か?」


「ええ、まぁ……ゲホッ」


 向かい合うようにして抱き合い、僕は橙吾さんによって背中を何度も摩られる。一発ぶっ放すと荒くなった気性が収まるのか、惚れてしまうぐらい優しくしてくれるのがまた困るのだ。すでに惚れてるけれど、その……別の意味でもっと顔が赤くなりそうで……。なんでこんなおっさんを好きになってしまったんだろう。僕は……死ぬまで橙吾さんの元を離れられない。


「あー、今日のはいつもより長くなりそうだ。わりい」


「…………うっ、わ。太……」


「へへへ、お前が涙目になってるとこ見たらよ、ちんぽビンビンになっちまって」


 すでに肉穴の中で膨らみ始めたおっさんの瘤。もう外へ出せない上、今も尚腸壁に向けてビュッ、ビュルルルッとドロドロの汁を断続的に撒き散らしている。あとでトイレの便器に出すのも大変なんだ、何せトロみがすごくて……。


「手持ち無沙汰になっちまったな。どうしてやろうかねぇこのヤラしい体」


「ん゛ああっ、ああっ‼︎」


「乳首を引っ張っただけですぐこれだ、こんなに黒くなっちまってよお。最初はきれーなピンク色してたってのに」


「あ゛ぁあああ〜〜っ‼︎」


 ピシャアッとおっさんの腹の上に出た、僕の子作り汁。一生他の雄に注ぐことのないであろう、僕の生きた証。量もトロみも全然違うその汁を、橙吾さんは指に絡め取ってうまそうにペロペロ舐め回した。とてもじゃないが苦くて飲み込むのもイヤがる者が多い白濁液を、彼は蜂蜜でも舐め回しているかのようにニヤつきながらウットリしている。そう、僕のような人間が出す薄いザーメンに酔っているようだ。


「あーあ、腹んとこ汚れちまったな。後で舐めとけよ」


「……あっ、そっ、それ、あっ」


「そろそろ味もたっぷり染みたろ。セックスで掻いた股座んとこの汗までしっかり吸わせたからな」


 ずっと股座に居座り続けていたおっさんの褌、その封印が今解かれる。股の汗は全てこの布に集約した、そう強いメッセージを送り続けているのは……橙吾さんのお気に入りの白褌だ。これのどこが白褌なのかと聞き返したくなるほど黄色と茶色が混ざったような色をした布、そこには雄のキツい汗とアンモニアの香りが漂っている。冬場に外へ出しておけばホカホカとした湯気が立ち込めそうなほどの熱気ある布だ。


「……どうした、早く口開けろや。お前の口ん中で掃除させんだからよ」


「……おごっ、お゛っ、お゛ぇっ‼︎」


「へっ、顔ではイヤそうにしてんのに体は正直だ。こんなやべぇモン咥えてちんぽビンビンにしやがって」


 さっき汁を出したばかりのちんちんをギュッと握られ、僕は涙目になりながら首をフリフリと横へ振る。向かい合う形でおっさんの膝の上へ座らされながら、彼は僕が嘘をついていないか念入りに表情を見てチェックしてきた。ドキドキする、そんなに真横から、真っ正面から、いろんな角度で……ああ……。


「どうせ瘤はしばらく収まんねぇんだ、じっくり楽しもうぜ」


「ん゛うぅふっ、ふぅっ⁉︎」


「おらおらしっかりガムみてぇに噛んで汁吸ってくれよ、お前の口はちんぽ掃除とオレの下着を洗濯する為にあるって言っただろ。まだ次の洗濯物も控えてんだからよぉ」


 ぬちゅぬちゅと自分の手のひらをオナホに見立てて、おっさんは僕の股座で上下に激しく擦り続ける。胡座をかき、僕を軽く浮かせてから足元でモゾモゾ。するとその手のひらには丸まった黒いおにぎりのようなモノが乗せられていて、僕は鼻でほんの少しその布のニオイを嗅いだだけで何なのかを理解した。


「タオルも相当いい味してっけど、この足袋靴下も……お゛〜すっげ……鼻がツンってなりやがった。コイツはじっくりお前の舌の上で転がしてもらいてぇな。ガハハハ!」


 地下足袋の中の蒸れやすさというのは、漁師たちが使う長靴レベルに匹敵する。その中でじっくりと長時間蒸らされ、足の汗をたっぷり吸い込んだ足袋靴下は置いておけば野生の動物が逃げ出すほどの狂気物。次に口へ投げ込まれるのは間違いなくあの黒い塊だろう。そしてまだまだ、彼が腰を下ろしているベッドの周辺には僕の口に飽きという言葉を言わせない為の下着が次々に現れる。


「あ〜いつか前に洗濯へ出し忘れた軍手とか、キンタマの裏で汗を吸わせたマスクとか、まだまだ色々あるぜ。次はどれがいい? んん? お前に選ばせてやっからさ、ほれ」


「ん゛……んう゛ううううっ‼︎」


「…………おいおい、勘弁してくれや。こっちはインターバルで腰も振れねぇってのに、またイキやがって」



 おっさんのカバンの中から取り出された汚れた下着たちを視界に入れただけで、僕はまた盛大に果てた。おっさんの少し肉がついてきた腹へ思い切りぶっかけ、鼻の穴は限界まで拡がりハスハスと音を立てて……。ピンッと姿勢が良くなった僕の体をワシャワシャ撫で回すと、橙吾さんはマズルの周りをペロリと舌で舐めてから黒い鼻を引っ付けてくる。


「うわ……クッサ。いつもタバコクセェってお前は言うけどよ、どう考えてもお前の方が雄クセェっての」


 口周りをスンスン嗅いで、わざとゲェッと声を上げる橙吾さん。口の中で噛まされた黄ばみ褌の香りは当然、おっさんの汚れた汗臭いちんちんもそう、胃袋で今も頑張って消化を行っている狼のドロドロザーメンもそうだ。色んな淫臭が混ざり合ったこの口周りのニオイは、今やゴミ捨て場よりも酷い悪臭を漂わせているに違いない。


「動けるようになるまで、オレが休みなく手コキしてやるからな。気ぃ抜いて意識飛ばすなよ? 飛ばしたらすぐにまた……ゲヘヘ。こっちに呼び戻してやっけどよ」



 おっさんが僕を必要としているように、僕もおっさんが必要だ。雄臭い交尾でメロメロにして、饐えた強烈な雄のニオイを嗅いでいなければザーメンも出せず、隙あらばちゅーしまくってくる、ギャンブルとセックスに目がない……残念な狼。僕はその残念な彼の元から一生離れることはない。欠点ばかりに目がいきがちだが、欠点は裏を返せば逆に長所だとも言える。僕はおっさんのおかげで性欲を満たせて、おっさんが他の人には決して見せないような表情を間近で観察できて、おっさんが行きづらいような場所へ連れて行ってあげて……新たな経験をさせて……僕は全てが幸せだった。そしてこれからも僕は幸せ者だ。



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