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ケィツゥーは、脱走を試みる。

 ケィツゥーは、ガルマータとデートをしていたが催眠術をかけられて誘拐されてしまった。  そして、催眠術をかけられて望まない相手と望まない性行為を進んで行うことを強いられて、その記憶を持ったまま催眠術を解かれてしまった。 「僕とセックスをしている間だけ、辛い記憶から解消される」  催眠術師はそう言って寝室に消えていった。  催眠術師はその気になればいつでもケィツゥーを抱くことができる。  ケィツゥーの記憶が消されているだけで、すでにケィツゥーと催眠術師はセックスをした後である可能性もあった。  つまり、ケィツゥーの心が折れて自分から体を差し出すのを待っているのである。 「私は、絶対に負けません……」  物音ひとつしないホテルの一室で、ケィツゥーはジャージを握りしめて静かに泣いた。  いつの間にか眠ってしまっていたケィツゥーは目が覚めた時、部屋に誰もいないことに気づいた。  そして、直感的に「逃げれる」と確信した。  ドアに鍵が掛かっていないことはなぜか知っていたし、見張りがいないこともなぜか知っていた。  ジャージでは目立つので、昨日の乱交で大量の使用済みコンドームが括り付けられたマイクロビキニを身につけた。  監禁されていたホテルから誰にも見つかることなく脱出することに成功したケィツゥーは、追っ手を警戒しながら歩き出した。  時々、ランダムに方向を変えながら歩いているとホテル街に着いた。  ホテル街と言っても、ケィツゥーが監禁されていたような宿泊用のホテルではなく男女一組で利用することを想定した休憩用のホテルである。 「あれ? ケィツゥーじゃん。どうしたの? こんなところで」  背後から声を掛けらたケィツゥーは知り合いに会えたと思い喜んで振り返った。  そして、ケィツゥーの顔は引き攣った。  そこに立っていたのは如何にもなチャラ男。ケィツゥーからしてみれば男性的な魅力を一切感じない男である。そして、昨日はイケメンであると誤認させられて性行為に及んだ男たちの一人でもあった。  男は不思議そうな顔でケィツゥーを見つめる。  ケィツゥーは決断を迫られた。このまま逃げるか、何か言い訳をして逃れるか。 「実は……」 「実は?」 「朝の日課のラブラブ中出しセックスをしようと思ったのですが、部屋に誰もいなくて。仕方なく街まで探しに来ていたのです」  ケィツゥーが選んだのは言い訳であった。  ケィツゥー渾身の言い訳を受けたチャラ男は納得顔で頷き。 「じゃあ俺と日課のラブラブ中出しセックスする? ちょうど目の前にラブホもあるし」 「え? じゃあ、お言葉に甘えて……」  そのままチャラ男の腕に腕を絡ませてラブホに入ったケィツゥーは『日課のラブラブ中出しセックス』を済ましてチャラ男と手を繋ぎながらホテルに帰ってきた。  ホテルに戻ったケィツゥーは待っていた催眠術師によって催眠を解かれて自分が無策で逃亡を企てて日課のラブラブ中出しセックスなどという存在しない日課をこなしてノコノコ監禁されているホテルに戻ってきたことを思い出した。  その日は、脱走を企てた罰として夜まで催眠無しでチャラ男たちに輪姦され続けた。  夜。チャラ男たちが帰り、ホテルにいるのはケィツゥーと催眠術師だけになった。  机に向かい、何やら作業をしている催眠術師にケィツゥーが話しかけた。 「あなたとセックスしている間は、辛いことを忘れられるんですよね?」 「厳密には辛さを感じなくなる、だよ。だが、辛くなくなることは保証する」  ケィツゥーの質問に対して、作業から目を離すことなく催眠術師は淡々と答えた。 「私のこと、抱いてもいいですよ」 「そんな上から目線で抱いてもらえる立場だと思ってる?」  嘲笑うような催眠術師の口調にケィツゥーは唇を噛み締める。 「私のことを、抱いてください……。辛いんです。寝るのが……」 「わかった、ベッドで待っててよ。あとで行くから」  催眠術師に命じられるままにケィツゥーは催眠術師の寝室のベッドで待った。  静かな寝室の中でケィツゥー自身の鼓動だけが聞こえる。  普段よりも激しく打つ鼓動を聴きながら、ケィツゥーは催眠を解かれた状態で望んでセックスをするのは初めてだと思い至った。  セックスの楽しさや快楽をケィツゥーはすでに知っている。  思い出しただけで吐きそうになる記憶であっても、セックスそのものの快楽や、楽しかったという記憶はケィツゥー自身のものなのである。  高鳴る胸の鼓動が、辛い記憶から逃れることへの期待なのか、催眠術師とのセックスへの期待なのか、ケィツゥーは分からなくなっていた。

ケィツゥーは、脱走を試みる。

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