みほしジム。
恋人同士手であるラ=ヴァンクイッシュ=リンと星崎スバルの所属する小さな小さなプロレスジム。
「うーむ…」
そんなリングの上で、リンは顎に手を置いて悩んでいた…。
「あれぇー?リン、どったのー?」
「のー?」
「…シュート、ロータ。…いや、今度、スバルと試合をする予定があるんだがな…これを見てくれ」
「おー、今度の試合のブック(※試合の計画書)じゃーん!って…」
「今度の試合、スバルとじゃーん!いいじゃん!恋人同士での試合―!見せつけるのー!?」
「あ、いや…それはまあ、いいんだが…ここだよ」
「どれどれー…あー、ビンタ合戦?」
「いいよねー、迫力あるよねー!思いっきりばちーん!ってさー!」
「…いや、スバルじゃなければ別にいいんだが…その…スバル…にやるのは…ちょっと…泣かせてしまいそうでな…」
「あー。恋人にビンタってとこかー」
「だよねー、普通に考えたらヤだよねー」
「うーむ…」
「でも、ブックはもう完成しちゃったんでしょ?」
「そーそー。スバルもプロなんだから、そこはリンが信じてあげなくっちゃ!」
「信じる…か」
「そうだよ!スバル、泣かずにきっと歯を食いしばってくれるよ!」
「だからスバル信じて!しっかりとビンタしてやれ!やるんだリン―!」
「…そうだ…な。あいつもいっぱしのプロレスラーだ。わかった、ありがとう。あいつを信じてみるよ、シュート、ロータ」
「おう!」
「当日、応援してるからねー!」
そして、当日。
「はあっ…はあっ…!や、やるな…リン…」
「まだだ…立て、スバル!…歯を食いしばれぇッ!」
パチィィィィィィンッ!
リンのビンタ!———スバルの顔が吹っ飛ぶ!
(くっ…!スバル、泣くなよ!さあ、やり返して来い!)
———瞬間!
「………」
「……スバル?」
「……わあ…」
「…え?」
「リンのビンタだあ…!」
「ス、スバル…?」
「なあ、リン!これってさ!夫婦喧嘩みたいじゃねえ!?なあ…!」
「お、おい、スバル…!うっとりすんな…!?」
「なあ、リン!もう1発!オレ、こういう夫婦みたいなの憧れてたんだ!だから、なあ、リン…あ、逃げんな、リンー!」
「いっ…お…お…?!うおおおおおおっ!?」
———ドタバタと走り回るリンとスバル。プロレス会場は一気に沸き上がり、別の意味で盛り上がる。
「…結局さー、二人ののろけ、見させられたねー」
「まーねー。…真面目なアドバイスなんかせずにからかったほうが面白かったねー」
「なー」
そんな二人を見ながら、爆笑に包まれる会場の中、シュートとロータは死んだ魚のような目で、二人を見つめるのであった…。