B&Hジムに新しく入門したハーリー。…彼らはプロレスラーとしてのほかに、もう1つの顔がある。それが悪の組織、CoS軍団。蛇我総統、と呼ばれるプロレスラーを中心に作られた天祥市の犯罪組織。彼らの目的は「プロレスの新時代」と称し、プロレスラーを拉致、投薬実験によりプロレスラー自体を改造、暴走をさせ全てをめちゃくちゃにしよう、という組織であった。———ハーリーたち、B&Hジムの面々も彼らに一度捕まり、投薬実験を受けたのだが幸か不幸か、5人全員とも投薬実験に成功。彼らは自我をしっかりと持ちつつ「プロレススター」と呼ばれるヒーローへと変身することに成功する。では、失敗したものがどうなるか、というと。
「GYAOOOOOOOOOOOO!」
「っ!なんだこいつは…!?牛のマスク…!?」
「行け!ザガン!裏切り者をぶちのめせ!」
ハーリーの前に立ちふさがる牛のマスクをした屈強なプロレスラー。だが、その筋肉は常人では成し得ないほどに盛り上がり、明かな異様さを見せるまさに「悪魔」。
「GYAOOOOOOOOOOO!」
「っ!」
ガシッ!
ハーリーはザガンと手四つで組み合う!———が!
「く…なんて力…だ…!」
「GYAOOOOOOOOOOOO!」
ザガン、と呼ばれた牛マスクのプロレスラーはハーリーを軽々とねじ伏せるようにその力を入れていく。そして!
「GYAOOOOOOOOOOOOOO!」
「く…う……うあっ!?」
ハーリーはついに押し切られ、ザガンの手がハーリーをクラッチ!
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「っ!」
ザガンはハーリーの体———年相応とはいえ、しっかりと鍛え上げられたそれを軽々持ち上げると、
「GUEEEEEEEEEEEEEE!」
「うあっ!?」
ぶんっ!
ザガンはハーリーを壁へと力強く投げつけた!
(まずい!)
ハーリーは慌てて態勢を整えようとするも———その瞬間!
「おっと!」
がしっ!
誰かがハーリーを受け止める。
「っ!?っと…虎太郎先輩!?」
「遅くなっちまって悪いなあ、ハーリー」
「…ほんと、ひやひやしましたよ」
「んで?今日の相手はあの牛マスクか?」
「はい、ザガン、だそうです」
「あー、なんだっけ?モロダシ72本?」
「…ソロモン72柱です。ってそれよりも虎太郎先輩!」
「あ?」
「GYAOOOOOOOOOOOOO!」
「あ、じゃないですって!ザガンが…!」
「ああ、あいつなら大丈夫だ。ああいうパワー馬鹿は…こいつが適任ってな。兎真!」
瞬間。どこからともなくふわりと一つの影が飛び上がり———
「ひっさーつ!ヴォーパルバニー!ドローップ!」
がっしぃぃぃぃぃぃぃっ!
虚空から飛び跳ねた兎真の踵落としがザガンの脳天を捉える!———が!
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「効いてない!?兎真!」
「だーいじょうぶっすよ!確かに効いてないかもしれないっすけど…!」
瞬間、なにかドドドドと走る音が聞こえ———
「本命はこっちー!いっくぞー!獅子の…牙ー!」
ドッゴオオオオオオオォォォォッ!
ザガンが兎真に気を取られた瞬間!同じく闇より現れた獅子のタックルがザガンの腹をきれいに捉えた!そして!
「おーっし!兎真―!オレ、腕―!」
「んじゃオレ足ね!おりゃ―4の字固め―!」
「腕ひしぎ十字固めだー!観念しろ―!」
ぐぎいいいいいいいいっ!
「AGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
二人の小さなプロレスラーにいいように絞められたザガンは悲鳴を上げる。…やがて。
「A…GAYAGYA…GYA…」
「お、ギブっすか!」
「早くしないと…痛いじゃすまないぞー!おー!」
「GYAAAAAA!」
タンッタンッ!タンッ!
ザガンは二人の台風の攻撃に耐えられず、ギブアップを宣言すると———まるで、その体から魂がすうっと抜けたかのようにコトン、と動かなくなった。同時、全身を傍聴していた筋肉もすうっと引いていき———
「よし、仕留めたな!てめーら!よくやった!」
『いえーい!』
「…ほんと、兎真と獅子がいなかったら危なかったよ。ありがとう」
ハーリーはふう、と一息を突きながらお礼を言うと。
「………」
「………」
兎真と獅子、二人の目線がぴたりと止まった。
「…ん?」
「ハーリーせんぱーい」
「…いつまで虎太郎先輩にお姫様抱っこされてるんっすか?」
「へ!?あ!?え!?あ、す、すみませ…!」
ハーリーは慌てて飛び降りる。虎太郎はその姿を見ながらがっはっはと笑った。
「まあまあ、いいじゃねえか。夜の相手ならいつでもしてやるぜ、ハーリー!がっはっはっはっは!」