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「勇斗VS信二」Revenge of the Hyenas!(R-18展開なし)

【キャラ紹介、予告】

kaminagisora.fanbox.cc
https://kaminagisora.fanbox.cc/posts/8192973

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「Revenge of the Hyenas!」


 その日。

「さあ、避けて見なあ!」

 バスゥッ!バスゥッ!バスゥゥゥゥッ!

「うおがあああああああっ!?」

 FN、第3リングでは、異様な盛り上がりを見せていた。そこでは『獅子』の二つ名を持つもとイケメン俳優である獅童勇斗が、天祥市にある不良グループ「チーム・ブラックブラッド」のヘッド、小川信二を一方的に押す展開が続いていた。勇斗は俳優業傍らボクシングを始め、その才能を見込まれたもの。かたや信二は練習嫌い、喧嘩はするがボクシングはいまいち。そんな二人の実力は察しの通りで———

「———獅子の牙、受けてみやがれ…!」

 ドッムゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 勇斗のフィニッシュブロー、「ライオンハート」のデンプシーから続くボディーアッパー、それが信二の腹へと綺麗に喰い込むと———

「ご…はっ…!?」

 信二はごぽっとマウスピースを吐き出し、それがコロコロとリングマットの上を転がっていく。そして、

「う…ぐぅ…!」

 ドタァァァァァァァァァッ!

 …信二は、大した有効打の一発も与えられないままリングマットに伸びてしまうと———勇斗はそんな信二をにかっとした爽やかな笑みを浮かべながら、文字通りに見下ろした。

「テメエが誰だかは知らねえが———ま、俺と当たったのが運の尽きだったな。どうせ、俳優でボクシングの演技しかしてねえから楽勝、とでも思ったんだろ?わりーが、俺は演技だけじゃなくて強いんだよ。次はハイエナらしく、獅子の喰い残した餌でも狙うんだな」

「ぐ…ッ!て…めえ…!」

「はっ!イキがるのだけはいっちょ前だな。ま、獅子のかっこいい後ろ姿にでも見とれながら、己が実力不足を恨むんだな」

 勇斗はにいっと笑みを浮かべるとガッツポーズ。

「さあ!次の相手はどいつだ!ハイエナ如きじゃ相手にもならねえぜ!」

 ———この言葉、そして出来事が信二の心に火をつけた。

「……ぐうぅぅぅ…っ!覚えて…やがれ…えええぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「はっ!テメエなんざ鼻から知らねーよ、ハイエナ野郎。———獅子に敗れたことを誇りにしながら、細々と生きるんだな」

 ハイエナ野郎。そう呼ばれた信二は拳を握った。

(獅童…勇斗…ッ!今日のことは…!絶対に忘れねえ…!絶対に…!絶対に、だ…!)




 それから、1週間が過ぎた。

「ふっ…ぐっ…!」

 人気の全く少ないトレーニングルーム。小川信二はそこで一人、バーベルを上げていた。…そんな時だった。

「お、信二、見つけたぜえ?へへっ!何やってんだよ」

「ひひひっ!筋トレ、か?…脳筋キャラは圭太で充分なんだがな」

「…ふっ……!うっせえ…よ…!」

 現れたのは、信二と同じ不良チーム『ブラックブラッド』。その筋肉担当の「吉崎圭太」と頭脳担当の「今田晃樹」だった。

「んだよ、信二。真面目にトレーニングしやがってへへっ!」

「俺達ブラックブラッドらしくない…なあんてな?ひひっ!」

「るせえ…!な…ふっ!邪魔すんなら帰れ…っつの…!

 2人のリーダーである信二は2人に一瞥もせず、ただひたすらバーベルを上げ続ける。確かに、圭太と晃樹の言う通り。こんな努力をする、だなんてのは不良の自分にはまるで似つかわしくないことだった。嫌な奴がいれば闇討ちでもしてさっさと潰して、3人で廻して金でもカツアゲしたほうが楽だし金にもなるし性欲も処理出来てよっぽど手っ取り早い。それがチームブラックブラッド、弱冠3名ながらも不良集団である本当の姿であるはずだ。そうであるはず、はずなのだが———

「ふっ…!ぐっ…!」

 信二はそれでも、バーベルを上げ続ける。…あの日、あの時。ハイエナと揶揄されたあの時。小川信二のプライドは獅童勇斗に大きく傷つけていた。

「ま、そんだけ、あの獅子野郎が気に喰わねえってことだろ?わかるぜ?…へへっ!」

 圭太はそう言うと、汗まみれになりながらバーベルを下げる信二に手を添え———

「ひひっ!困ったときはお互い様———なんてな?」

 晃樹はカチャカチャと、いつも持っているノートPCを起動させると…あの日の試合の動画を再生する。

「…圭太…晃樹…」

「オラ、休んでねーでとっとと筋肉鍛えろっての。それ終わったらオレがスパーリング付き合ってやる———言っとくけど、負けたら晃樹と容赦なく馬鹿にしてやっからな?へへっ」

「ひひっ…圭太。これ、獅童勇斗の行動パターン…」

「…あー?何だこの動き?オレ、こんなの真似できねえぞ?」

「ひひっ…やってやれよ、ダチの為、だろ?」

「あー…なら、ちょっと良く見せろ…ってか!晃樹、テメエがやればいいじゃねえか!」

「ひひひっ…俺は頭脳労働…圭太は筋肉担当。その無駄な筋肉、ダチのためにイかせっての、ばーか」

「んだと、この野郎!」

 圭太と晃樹、2人のやり取りを見ながら。

「…わりぃ」

 信二はそうつぶやきながら、そっとバーベルを降ろした。

 ———小川信二。北村一輝に憧れFNに在籍。ランクは低いものの、そこそこの試合をこなし、時にはその二つ名の通り、大物相手への『下剋上』を成し遂げた男。———そんな自分が入ってきたばかりの成り上がりのあの獅子野郎にボコられ、犯され、「ハイエナ」と馬鹿にされる。…許されるか?許されるのか?

「…許される分けが…ねえよなあ!だからこそ、圭太!スパーリング付き合え!———次こそ、あの獅子野郎をぶっ潰してやる!」

 信二はグッと拳を握りしめると、改めて再戦を決意。…圭太、晃樹とブラブラ団の3人で練習を重ねるのだった…。




 それから、幾日が立った。

「よ、ハイエナ。この獅子たる俺様にリベンジマッチたあ、良い度胸だな?」

「はっ!うっせえよ―――男には負けられねえときがあんだよ、ダボが!」

 小川信二はFNの第3リング、その上———あの日、あの時と同じ場所で、獅童勇斗へのリベンジマッチに挑んでいた。

「へえ?どことも知らねーハイエナ風情が…勢いだけで獅子の牙をかいくぐられる、と思ってんじゃねえだろうなあ?」

 勇斗の自信満面の笑みに、信二はちっと舌打ちをする。———以前の試合。信二は勇斗に一発も当てられずにボコられた。正直、勇斗の腕前は確かだ。元俳優のボクサー役、ということ見かけ倒しだろうと言った思い込みの油断もあった。———獅童勇斗。こいつは間違いなくボクサーとしての実力があり、その腕前は確か、だ。…だが!

(あいつはオレのことを知らねえ———オレが下剋上の二つ名を持つ『小川信二』だっつーことを、な。見てろよ、くくくく…!)

 信二はニヤリ、と笑みを浮かべる。———その不敵な笑みに恐怖や恐れ、といったものは微塵も感じられなかった。

(今に見てやがれ。この勝負———テメエの勝ち筋、だなんてものは存在しねえってことを嫌というほど、叩き込んでやるぜ、獅子野郎!)




 カーンッ!

 幾度と聞いたゴングが鳴り、グローブタッチをすると———試合が始まる。

「テメエとは2回目だからな、ハイエナ野郎…今日はとっとと終わらさせてもらうぜ!」

 勇斗その言葉と共にダンッ!と力強くステップを踏んだ。———正直、こんな雑魚に再戦を挑まれるとは、勇斗としては思っても見なかった。

(前回、結構派手ににボコってパコってやったのに、懲りねーのな)

 勇斗としては、別に信二のことなんてどうでもよかった。正直、ボクシングも強くねえし燃え上がるようなほどの覇気も感じねえ。ただの雑魚その1であり、さっさと終わらせて次のステップへと進みたい———そう思いながら、信二へと肉薄すると———

「シッ!」

 バスゥッ!

 距離を確かめるように、信二のグローブへとジャブを当てると———ぐっと、その体を屈めた!そして!

「さあ———30秒でケリをつけてやる…避けて見なあッ!」

 勇斗は頭を∞の文字のように振りながら拳を握り込むと『ライオンハート』!デンプシーロールでいきなり信二を仕留めにかかった!そして!

「うおおおおおおおおおおっ!」

 獅子の雄叫びと共に勇斗の突き上げるような左フックが信二へと肉薄する!———だが、その瞬間だった!

「うお、あぶね!」

 信二はバックステップをタンッと踏むと———

「んなの、当たったら死ぬっつの!」

 信二はこともあろうに、ファイティングポーズをとらず、背を向けるとドタドタと、勇斗と対角線上の端まで逃げるように駆け出した!

「ちっ、逃げんじゃねえ!」

 勇斗はそんな信二の無様な姿に舌打ちをすると、体を屈めたまま信二へと突進し———

「大人しく———散っとけ、ハイエナ野郎ッ!」

 コーナーまで追い詰められた信二に向かい、再度、デンプシーの突き上げるようなフックを放った———が、その瞬間! 

「…っらあああああああああ!」

 逃げ回っていた信二が吼え———

「ッ?!」

 勇斗は、その変貌に一瞬だけ息を飲む。———その瞬間!

 バッシィィィィィィィッ!

「ッ!」

 勇斗はとっさに右腕を上げ———放たれていた信二の左フックをブロックし、

「…ちっ!」

 …思いのほか、ビリビリとしびれる腕を感じると思わずバックステップを踏み距離を開けた!…信二は、その様子ににっと笑みを浮かべると———

 ダンッ!

 先ほどまで逃げ回っていたのと打って変わり、信二は勇斗へと大きく踏み込む!そして!

「うおらあああああっ!」

 ブゥゥンッ!

「ちっ!」

 信二の大振りの一撃を、勇斗はギリギリで避けるも———

「オラ、ボディーが…ッ!」

 ダンッ!

「ッ!しまっ…!」

「がら空きだぜぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 ドッゴオオオオォォォォォォォォォォォッ!


「ご…はっ…!?」

 勇斗が避けること———それすらも予測したかのように信二の踏み込んだボディーアッパーが、勇斗の鍛えられた腹に深々と突き刺さった!

「…ちぃっ!」

 勇斗は直ぐにバックステップを踏み、距離を開け仕切りなおそうとするも。

「オラオラ!逃がさねーぜ!ぎゃははははははは!」

 信二の不敵な笑みを浮かべながら突進をし、拳を握りしめると———

「オラァァァァッ!」

 バキィィィィィィィィッ!

「———ぐはっ…?!」

 信二のパンチが勇斗のガードをかいくぐるかのようにその顔面を殴り飛ばす。———ハイエナ野郎からの手痛い反撃を喰らった勇斗は、まさか、という思いを抱きながら。

「オラオラオラァッ!」

 バスゥッ!バキィッ!ドムゥッ!

「ぐっ!?ご…はっ!?」

 信二の猛攻、いや、ハイエナの牙にその体を蹂躙されるのだった…。



 それから。信二の攻撃の手は休むことを知らず。

「オラオラ、どうしたあ!獅子野郎ッ!」

 バスッ!バスッ!ボスゥゥッ!

「ぐっ!」

「ぎゃはははは!大したことねえじゃねえか!———もう30秒過ぎたぜえ?ええ?!」

 ドムゥゥゥゥゥッ!

「ごはっ…!」

 信二は、ハイエナの牙で勇斗という名の獅子を蹂躙していた。勇斗である獅子は、必死にガードを上げ、そのパンチを避けようとするも———

「っらぁっ!」

 ドムゥゥゥッ!

「ぐ…お…っ!?」

「おっと、次はこっちかあ!?」

 バキィィィィィッ!

「がはっ!?」

 信二はその一つ、二つ先を行くかのようにガードの合間を潜り抜け、ステップの先を読むかのようにパンチを放ち、その度に勇斗の体に痣がつく。何度も殴られた顔は腫れ、突き上げられた腹筋はビクビクと震えだし。

「ッらぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 ドスゥゥゥゥゥゥッ!

「ぐうっ!?」

 勇斗は信二の攻撃を裁くことができず、その強打を何度も何度も鍛え上げた体に打ち込まれた。

「ちっ…テメエ…!はあ…はあ…っ!」

 その息は大きく上がり、額には冷や汗すら浮くこの状況。

(———動きを完璧に読まれてやがる…!こんな雑魚に、この俺が…!)

 勇斗はギリっと歯を噛みしめた。———信二がここまでに至ったのは、一重に圭太と晃樹、2人のおかげである。晃樹の動画による分析、圭太がそれを模倣した信二とのスパーリング。そして、信二自身のトレーニングによる筋力アップ。———似合いもしないブラブラ団の努力の結晶が、勇斗をここまで追い詰めていた。…格下からのリベンジに対し、圧倒的なふり、という状況。勇斗は焦りを必死で隠そうとするも。

「っらぁぁぁぁっ!」

 バスゥゥゥゥゥゥッ!

「ぐっ…!」

(腕が…ッ!)

 信二の強打———以前とは比べ物にならないほどの威力のパンチに、その焦りを次第に隠せなくなっていく。そして!

「―――っらあっ!」

 ドッムゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

「ぐうううぅぅぅぅぅっ!」

 信二の何度目かのボディーブローが勇斗の腹へとめり込んだその時!

「へ、いい声出すようになったじゃねえか、『ネーコちゃん』?」

「ッ!テメェっ!」

 信二の言葉に勇斗は思わず、怒りに任せて打ちおろすような右フックを放つも———

「おせぇっ!」

 バッシィィィィィィィィィッ!

「が…はっ…?!」

 それよりも早く、信二のアッパーが勇斗の顎をすくい上げ———

「そのパンチも―――見えてるってなあ!」

 バッキィィィィィィィィィィィッ!

 お返し、と言わんばかりに打ちおろすような右ストレートを勇斗の顔面に打ち当てる。

「ぐはぁっ!?」

 勇斗はその強打に思わずたたらを踏み、後ろへバランスを崩すと———

「さあ!テメエばかりフィニッシュブロー見せやがって!今度は…オレの番だっつの!」

 信二の拳がぎゅっと握りこまれる!そして!

「受けやがれ!オレの!黒血(こっけつ!)!ッラァァァァァァァァァッ!」

 ドッボオオオオォォォォォッ!

「———っがああああああああっ!?」

 勇斗の腹に信二の拳が一閃!そのど真ん中をぶち抜くと———!

「まだまだぁ…!うおおおおおおおおおおっ!」

 みりみりぃっ…!みりぃっ!

「がああああああああああっ!?」

 信二はさらに!叩き込んだボディーブローを振り抜くように突き上げる!———勇斗の鍛え上げた腹筋が音を立てて悲鳴を上げる!そして、それと同時、勇斗の腹の底からじんじんと痛みがこみ上げてきた、その瞬間!

「ふんッ!」

「がはあっ!?」

 信二が黒血の一撃を振り抜いた!それと同時、勇斗の口からマウスピースが外れ、体は信二の拳に吹き飛ばされるように宙を舞い———

 ドタァァァァァァァァァッ!

「がは…あ…ぁ…!」

 大きな音を立て、勇斗はついに大の字にリングに沈むと。…そのまま、ぴくりと動くことができなかった。———格下であるはずの、ハイエナと揶揄した信二の拳に打ち倒され。大の字になるようなノックアウト。

「ば…かな…」

 勇斗は、起きている現実を受け入れることができず、その時。

 ことんっ!ころころころ…

 自分の頭の付近に落ちてきたマウスピースが勇斗の目に映る。その瞬間。

(俺…は…負けたのか…!?こんな…こんな不良野郎に…!)

「…くっ…うっ…ぐぅっ…!」

 勇斗の目から涙があふれ出る。———そして、それは。勇斗が信二に完全に屈した、その証だった。

「っしゃあああああああッ!見たかぁぁぁッ!獅子如き、敵じゃねぇぇぇんだよッ!」

 ドスッ!

「ぐあっ…!」

 信二は勇斗に勝利したことを確信すると、その腹を思いきり踏みつけ、ガッツポーズをとった。———観客達が大きく騒ぎ出す。まさかの下剋上。信二はその歓声に心を躍らせた。

「ぎゃははははははっ!獅子も大したことなかったぜ!これからはにゃんにゃん泣いて!許しを超えよ、獅子野郎!ぎゃーっははははははははーっ!」

「く…そ…!」

 勇斗の目がかすむ。それと同時、何かが零れ落ちる。———それは、ハイエナが獅子に心からの下剋上を果たした、その瞬間であった。


【完】


★イラスト

・獅童勇斗:尾張屋様

・小川信二:アマツ様


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