彼女らに注入したウイルスは、人間を遺伝子のレールから逸脱させ、独自の進化をさせるために作られた。
例えば、ただの人間は腕が切断されたら致命傷になりうる。しかし、このウイルスを投与された者は、生命維持の本能によりウイルスが暴走し、切断面から新たな肉体が生成される。
また、不完全な人間の体は更新が必要と判断され、不便な器官は次々と生まれ変わり、どの生物よりも強靭な肉体を手に入れる。
しかし、残念ながら、どの被検体にウイルスを投与してもうまく適合せず、いびつな変異をして死亡するばかりだった。
そう、あの女子高生が治験に訪れるまでは。
異常な適性を見せた女子高生──書類には名前は奈央とあった──は、発達した筋力で鋼鉄の拘束具をねじ曲げ、同じく治験に来ていた、友人であると思われる隣の少女の頭を食い破った。途中までは、変異していく自分の体を嫌がっていたようだったが、頭部の変異が完了した途端、本能が理性を上回り、脳内で捕食のゴーサインが出たようである。変異には体力を消耗するから、過度の空腹に蝕まれたことだろう。かつての友人の顔もわからぬまま、彼女を捕食したのである。自然界で生き抜くためには、理性など邪魔なものなので致し方なし。
一方、研究員は目を見張った。奈央が今までにない反応を見せたからである。彼女の身体能力を調べるべく、被検体ルームに立ち入り、3人がかりで奈央を拘束、両腕を切断した。
すると、みるみるうちに両腕の代わりに触手が伸びてきた。実験は成功だ、と思ったのもつかの間である。我々はウイルスを侮っていた。立ち入った研究員3人は立て続けに奈央に捕食されてしまったのである。
(研究員が見た最期の光景)
エネルギーを摂取した奈央は1時間後にはご覧の有様になっていた。あれから、奈央を鎮めようと何発か弾丸を打ち込んだりしたが逆効果で、撃たれるたびに肉体が生命維持のために暴走し、成長。やがて銃弾も弾くほどの厚い皮膚が背中など広範囲に育った。
かつて奈央だった変異体をサンスクリット語で「人生のゴール」「逸脱した存在」という意味のある単語にあやかって《カイヴァリヤ》と名付けた。
《カイヴァリヤ》の生態については以下の通りである。
研究員も《カイヴァリヤ》には最新の注意を払って接していたが、彼女の進化は想像を超えていた。人間を遥かに凌ぐ運動能力で、まさか30mほども跳躍するとは誰も思わないだろう。安全地帯だと思っていた高所から観察していた研究員が5人、《カイヴァリヤ》の餌食になった。そのうち3人はジャンプした《カイヴァリヤ》に直接襲われたが、ほか2人は、30m下に居た《カイヴァリヤ》のしっぽから乱射されたトゲに狙撃され、30m下の被検体ルームに落下した。
その研究員らは食われたわけではなく、彼女のしっぽに飲み込まれた。程なくして、《カイヴァリヤ》のタマゴが5つ産まれた。
《カイヴァリヤ》はただ生物として優秀なだけではなく、すべての新人類の母となる素質を持っているということがわかる。また、急に捕食をしなくなったのは、一旦肉体が完成して、エネルギーを過剰に欲しがらなくなったからだろうか。
彼女の肉体が消耗するようなことが再びあればそのたびに捕食をし、肉体を増強させていくことだろう。いずれ、寿命さえ超越した存在になることを祈る。
今、奈央こと《カイヴァリヤ》は、あまりに危険に育ち過ぎたゆえ、研究室の奥深くに収容されている。
・・・
これまでの被検体は国から譲り受けた死刑囚などが大半で、若い女が素体になったことが無かったのだ。
そうして我々は若い女性こそが、このウイルスに適合しやすいという結論に至った。あの女子高にウイルスを散布したのもそういった理由である。

人類を一つ先に進めるために、国で管理している地区にある女子高にてウイルスを散布。 女子高に散布した理由は、XX染色体を持つ人間でないと上手く変異しないからである。 XY染色体を持つ男性が感染すると、体がいびつに変異して身体不全になりただ死ぬだけだが、女性だと綺麗に新しい生物へと生まれ変われる。 ここでは...
しかし、結果として、第2の《カイヴァリヤ》は生まれなかった。《スティンガー》も《ダブルキャスター》も、素晴らしい進化ではあるのだが、今一つ未完成である。
これは、空気感染と血液感染の違いなのか、霧状に散布したことによる濃度の問題なのか、《スティンガー》か《ダブルキャスター》に派生するように、奈央の適性が引き起こした特別な進化だったのかは、いまいち特定できていない。
もしかしたら最初に捕食された奈央の友人も、食われなければいずれその究極の肉体を手に入れられていたかもしれない。
また、その経験を元に作られた別種のウイルスを女子大生をターゲットに散布した。

人類を一歩先へ進めるために開発された新人類ウイルス 女子高での実験が終了したので、次は女子大生をターゲットにして新しく開発したウイルスを散布。 夜の間に学生寮にウイルスを充満させ、出入り口を締め切る。その後の被検体の変異する過程を観察した。 程なくして全員が変異した。 新たに開発したウイルスは、変異...
yutom
2023-04-09 16:09:55 +0000 UTCtomoya19941966
2022-07-14 11:51:21 +0000 UTCレオナ
2022-07-14 00:16:23 +0000 UTC