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皆月ななな
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呪われた温泉宿で奪われるカラダ(シナリオ:皆月ななな イラスト2枚:Duokumaさん)

薄暮の山道を抜けた先に佇む「古湯乃湯」は、歴史の重みと気配が染み込んだような温泉宿だった。長い年月を経た木造の建物は、訪れる者を包み込むような温かさと、どこか冷たい影を宿している。そんな古びた趣に惹かれて足を踏み入れたのは、若い女性の二人組だった。アパレル業界で働く沙織と、広告代理店勤務の真奈。二人とも20代前半、誰もが振り返るような可憐な美貌を備えている。


スマートフォンを手に写真を撮る沙織は、明るくおおらかな性格で、ショートカットが似合う快活な雰囲気の女性。人懐っこい笑顔と大きな瞳が印象的で、どこか少女のようなあどけなさが残る。小柄でありながら、均整の取れた体つきは、着る服を選ばない理想的なプロポーションだった。白のワンピースに身を包んだ姿は、まるで妖精のように愛らしい。


対する真奈は、長い黒髪を持つ知的でミステリアスな雰囲気の美女。スレンダーな体型に整った顔立ち、そして少し冷たいほどの美しい瞳が人を引きつける。モデルのような長身で豊満な胸元は、着ているシンプルなブラウスのボタンを軽く突っ張らせ、周囲の視線を集めずにはいられない。真逆の魅力を持つ二人は、大学の同期であり、気の置けない親友同士だった。


「わぁ、インスタ映えする素敵な宿だね」沙織が玄関をくぐった瞬間にスマートフォンを構えながら声を上げ、周りの景色に目を輝かせた。古い欄間からこぼれる光が、磨き込まれた廊下に美しい影を落としている。


「今度のストーリーの撮影ロケに使えるかもね」真奈も興味深げに辺りを見回し、上品な微笑を浮かべた。広告代理店のクリエイターらしい視点で、建物の趣を観察している。


二人を迎えたのは、小柄で年老いた女将だった。白髪が混じり、背中が少し丸まった小さな体が、まるでこの宿の一部のように古めかしく、しかしどこか厳かな空気をまとっていた。深い皺の刻まれた瞳で二人をじっと見つめ、その視線には、若い女性客を見る独特の憂いが漂っていた。


部屋に案内され、荷物を置いたところで女将が静かに語りかけた。その声音には、どこか警告めいた響きが含まれていた。


「この宿はね、古くから"霊が出る"と噂されてるんですよ。特に、夜の温泉には"何か"がいると…気をつけてくださいね。」


沙織は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに軽い笑みに変わった。「…え、霊とか言われても、あんまりピンと来ないんですけど」スマートフォンを操作しながら、さっきまでの写真を確認している。


「まあ、気にしませんけど、ありがとうございます」真奈も女将に向かって軽く手を振り、取り合わない様子を見せた。「こういう話って、古い宿の付加価値みたいなものですものね」


だが、女将の視線はどこか冷たく、警告を込めたようにじっと二人を見つめていた。その眼差しに一瞬の違和感を覚えたものの、二人は軽く笑って受け流し、浴衣に着替えて温泉へと向かった。


宿の奥にある温泉は薄暗い照明に包まれ、湯気が白く立ち込めている。脱衣所で浴衣を脱いだ二人の姿は、若さと美しさを湛えていた。沙織は小柄ながらバランスの取れた体つきで、愛らしい笑顔と相まって、見る者の心を和ませる。一方の真奈は、すらりとした手足のラインが印象的で、その姿は芸術品のような美しさだった。


「ねぇ、さっきの写真、チェックしてみて」沙織がロッカーに置いたスマートフォンを手に取り、画面を真奈に見せる。「この角度からの廊下の写真、なんかいい雰囲気でしょ?」


「そうね、光の入り方が絶妙」真奈も自分のスマートフォンを確認しながら答える。「私も何枚か撮っておいたわ。後で編集して…」


露天風呂に足を踏み入れると、温かな湯が優しく体を包み込む。月明かりに照らされた湯面が、かすかに揺らめいている。


「いいお湯だね」沙織が肩まで浸かり、湯気に包まれた顔をほころばせた。「女将さんの話、ちょっと怖かったけど、こんなに気持ちいいお湯に何か出るわけないよね」


「うん、こういう静かな温泉も悪くないかも」真奈が湯を手ですくい、肌に流しながら微笑んだ。「古い宿には大抵そういう話があるものよ」


その時、二人の間に小さな波紋が広がり、ひそやかに湯の中で何かが動いた。


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湯気が立ち込める温泉で、沙織と真奈は肩まで浸かり、日々の疲れを忘れるようにリラックスした表情で談笑していた。美しい黒髪がしっとりと濡れ、温泉の温もりに包まれている。


「ほんとにこの温泉、すごく効くね。なんだか体が軽くなった気がする」沙織が微笑みながらため息をつく。


「わかる!私もすごくリフレッシュできた感じ。やっぱり温泉っていいね」真奈も頷きながら、湯の心地よさに身を任せる。


二人が無邪気に談笑する中、湯の底から冷たい影が音もなく忍び寄っていた。


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それは、3年前のことだった。日々の仕事に疲れていた30代の男二人は、日常の退屈を忘れるためにこの「古湯乃湯」を訪れた。幽霊が出るという噂も、彼らには面白い「おまけ」にすぎなかった。ところが、その夜、彼らは湯の底に潜む何者かに体を奪われてしまった。意識だけが深い湯の底に閉じ込められ、自分の体が他人に支配されていく感覚を味わわされる中で、彼らは次第に、この温泉の持つ恐ろしい秘密を理解していった。


この温泉では、何者かが次々に若い客の体を奪い、次の「器」へと入れ替わっていく――それは無限に続く呪われたループだった。彼らもまた、その運命の輪に飲み込まれたのだ。だが、単に「奪われる者」で終わるつもりはなかった。奪われたのなら、今度は奪い返す側に回るしかない。


「どうせなら、若くて丈夫な体がいい…この先ずっと使える理想の器が欲しいよな」


彼らはそう考え、理想の体が来るのをじっと待つことにした。年老いた体や病気がちな体では意味がない。彼らが待ち望んだのは、若く健康で、美しい「器」だった。そして、ついに今夜、待ちわびた「理想の器」が現れた。若さと美しさにあふれた女性二人——これ以上の体は望めなかった。たとえそれが男の体でなかったとしても、若く瑞々しい体であれば性別など問題ではなかった。


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ようやく現れた若く美しい女性二人を目にし、男たちは湯の底から静かに忍び寄った。まずは沙織が肩に冷たい感覚を感じ、振り返る間もなくその体に冷たい影が入り込んだ。急に体が冷え込み、苦しそうに顔を歪めた沙織が湯の中で震え始める。必死に抵抗しようとするが、次第にその力も失われ、ゆっくりと意識が闇へと沈んでいく。そして、瞳が静かに閉じられた。


しばらくして再び目が開かれると、そこには沙織ではない冷たい光が宿っていた。新しい「支配者」はまず自分の手を湯の中で持ち上げ、しなやかな指先を一本ずつ動かし、腕を曲げたり伸ばしたりしながら新しい体の感触を確かめた。小柄で整ったプロポーション、みずみずしい肌が湯気に濡れ、艶やかに輝くのを見て、「沙織」は満足げに口元を歪めた。


「へぇ…これが女の体か。案外悪くねぇな」


その不気味な声に、隣の真奈が顔を曇らせ、心配そうに沙織を見つめる。

「もう、冗談はやめてよ。そんな声出して、怖いじゃない」真奈は笑顔を作りながらも、少し不安げに友人の様子を窺う。


沙織の体を支配する男は、ぎこちなく微笑みを作り、わざと女らしい口調で答えた。「えぇ~、何のことぉ?全然平気だしぃ。心配なんていらないわよ~」


そのわざとらしい口調に、真奈の疑念はますます深まる。普段の沙織とはどこか違う、異様な雰囲気が漂い、真奈は不信の色を隠せない。


「ほんとに…沙織なの?」


男は苛立ちを隠しきれずに目を細め、冷たい視線を真奈に向け、含み笑いを浮かべながら囁いた。「ああ、すぐに分かるさ…おい!お前も早くこいつの身体を奪えよ!」


その言葉とともに、冷たい影が真奈の体へと忍び寄り、重くのしかかるように体を覆い尽くしていく。真奈は突然の冷気に体を震わせ、湯の中で苦しそうにのたうった。まるで深い井戸に落ちていくような感覚。自分の意識が体から引き離されていく恐怖に、叫び声すら上げられず、カラカラになった喉でかすれた声をあげる。


「いや…やめて…!」


だが、彼女の意識は次第に薄れ、抵抗も弱まり、やがて体は静かに動きを止めた。そして、ゆっくりと瞳が開かれると、その目に宿っていたのは冷ややかな光。もはや真奈の意識はそこにはなく、別の存在が体を完全に支配していた。



支配者となった男は、まず自分の手を湯の中で持ち上げ、細長い指先を眺めた。スラリとした長身、そして豊かな胸元を自分のものと意識すると、男は思わず満足げに喉を鳴らして笑った。

「へぇ…」真奈の体を得た男は、自分の胸元に目を落とし、思わずニヤリと笑う。「なかなかの贅沢ボディじゃねえか。重みがすごいな…」


「おい、その体、モデルみてえな体型だな」沙織の体の男が真奈の体を見て冗談めかして言う。「つーか、こっちの体、なんか小っちゃくて可愛いぞ。お前の方がずっとセクシーだ」


「お前のも可愛い系で悪くねえぜ」真奈の体の男が笑い返す。「まさか女の体に乗り移れるとはな…ってか、この声、なんか妙だな。慣れねえ。あー、あー…これが俺の声か」


自分の声を試すように何度か声を出し、その高めの声が自分のものだと確信すると、男はさらに愉悦の表情を浮かべた。「まぁ、ずっとこの声で過ごすんだ。慣れていくしかねぇよな」


「おっ、これは…」自分の手足を確かめるように動かす。「女の体って、こんなに軽いのか。なんか、全然重心が違うな…」


さらに男は、胸元に手を当て、ゆっくりと押し上げるようにしてその豊かな感触を確かめた。「ほう…なかなか立派だな。お前のよりこっちの方がデカい、よな?」


沙織の体を奪った男も、それを見て鼻で笑いながら自分の胸元に手を当て、軽く押し上げてみせた。「いやいや、負けてねぇさ。この小柄な体も…案外悪くねぇ」


真奈の体を支配した男も胸を押し上げ、じっくりと揉むようにしてその豊かな感触を改めて楽しむと、くつくつと笑いながら呟いた。「それにしても…俺にこんなデカい胸がついてるなんてな。変な感じだけど、まぁ…悪くねぇな」


そして男は、女らしい口調をわざと誇張し、真奈の声で「あたし、女よ~ん♪ うふ~ん♡どう?素敵でしょ?」と下品に囁いた。普段の真奈では絶対に言わないような軽薄な言葉を使い、誇らしげに胸元を強調しながら不気味に笑った。


沙織の体を奪った男もそれに合わせて腰に手を当て、わざと少女のように甘ったるい声で、「あたしも可愛い体をゲットしちゃった~♪」と囁き、二人は湯の中で下品な笑いを交わした。


こうして、長い間待ち望んだ若く美しい「器」をついに手に入れた二人の男は、妖しく笑みを浮かべながら湯の中で互いの体を存分に堪能していった。




しばらく湯に浸かり、新しい体の感覚を確かめ合った後、二人は脱衣所に戻った。


「まずは確認作業だな」真奈の体の男が、ロッカーから財布を取り出す。手が震えるのを抑えながら鏡を見つめる。長い黒髪が肩に触れる感覚に思わずゾクッとする。「くっ…なんだこの感覚は。体が軽すぎて変だ」


「お、俺の方はこれか」沙織の体の男も財布を確認する。細い指が免許証に触れ、思わず息を飲む。「なんだよ、この手…可愛すぎだろ…」


鏡の前に立った二人は、まるで初めて自分を見る人のように、新しい体を観察し始めた。


「ちょっとウエストに手を当ててみろよ」真奈の体の男が提案する。「くびれがヤベェ…ってか胸の重みで姿勢がおかしくなるな。背筋がピンと伸びねえ」


「お前はいいよな、モデル体型で。こっちは…って、待てよ」沙織の体の男が首を傾げる仕草をしてみる。「なんだこれ、自然に可愛い仕草が出てくるぞ?体が覚えてんのか?」


スマートフォンのロック解除に手間取る二人。顔認証に何度も挑戦する。


「このアングルじゃねえのか?」真奈の体の男が首を傾げながら試す。「って、この髪の毛邪魔だな。どうやって掻き上げる…って、あ、通った」


「SNS見てみろよ。写真の撮り方とかポーズとか、全部参考になるぞ」沙織の体の男が画面をスクロールする。「このポーズ…こう?」


鏡の前で、おずおずとピースサインを作ってみる。細い指が不自然に曲がる。


「服着るの、思ったより難しいな」真奈の体の男がブラジャーと格闘する。「つけ方は分かったけど、サイズが大きすぎて…ってかこれ普通か?」


「お前の方がヤバいだろ」沙織の体の男が言い返す。「こっちなんて、スカートの丈が気になって仕方ねえ。座り方も気を付けねえと…」


化粧ポーチの中身を広げ、二人は顔を寄せ合って研究を始める。


「ファンデーションってのは分かるが…」真奈の体の男が手に取る。「まさか、毎朝これだけの工程やってんのか?」


「YouTube見ながら練習すっか」沙織の体の男が動画を再生する。「おい、これ見ろよ。アイラインってのが特に重要らしいぞ。お前の体、これ完璧に入ってるな」


鏡の前での練習は続く。歩き方、座り方、髪の掻き上げ方。すべてが新鮮で、戸惑いながらも、どこか楽しんでいる様子も見える。


「なあ」真奈の体の男が、長い脚を伸ばしながら言う。「この体、すげえ美人なんだよな。モデルみてえな体型で…」


「分かるぜ」沙織の体の男も、小さな手を見つめる。「こっちは可愛い系って言うのか。なんつーか、守りたくなるような…いや、自分の体なのに変な話だな」


「おい、明日の仕事どうすんだ?」真奈の体の男が、スマートフォンの予定表を見ながら不安そうに言う。「クライアントとの打ち合わせがあるんだが…」


「とりあえず声の練習するか。これが一番ヤバそうだ」


二人は向き合って、元の持ち主の声を真似始める。


「あの、プレゼンの資料なんですけど…」真奈の体の男が挑戦する。「違うな、もっと上品な感じか?」


「私もパワーポイント作っておきますね♪」沙織の体の男が明るい声を出してみる。「こんな感じか?なんか恥ずかしいな」


「てか、お前」真奈の体の男が、ふと思いついたように言う。「トイレってどうすんだ?」


「あ…」沙織の体の男が固まる。「まさか座る…のか?」


二人は顔を見合わせ、思わず吹き出した。


「なんだよ、この状況…」


「まあでも、悪くねえだろ?」真奈の体の男が、艶のある黒髪を優雅に掻き上げる。少しずつ、仕草が様になってきている。「これから楽しめそうじゃねえか」


「ああ」沙織の体の男も、可愛らしい笑顔を作ってみせる。「って、これ地味に疲れるな。笑顔維持するの」


夜が更けていく中、二人は明日からの新生活への準備を進めた。化粧の練習、歩き方、言葉遣い、仕事の確認…。そして夜明け前、ようやく一段落がついた。


「ねぇ、真奈?」沙織の体の男が、完璧な女性の声で呼びかける。「明日から頑張っちゃいましょ♪」


「ええ、沙織」真奈の体の男も上品な微笑みを浮かべる。「私たちなら、うまくやれると思うわ」


二人は見つめ合い、一瞬女性らしい笑顔を作る。しかし次の瞬間、その表情が歪み、下品な男の笑みへと変わっていく。優雅な仕草と下品な笑みのミスマッチが、異様な雰囲気を醸し出す。


翌朝、チェックアウトの時が来た。


「昨晩、何も変なことはなかったですか?」女将の問いかけに、沙織の体の男が完璧な少女の声で応える。


「いいえ、何もなかったですよ!すっごく気持ちよかったです!」


「霊なんて、いるわけないじゃないですか」真奈の体の男も、洗練された声で笑う。


立ち去る二人の後ろ姿は、完璧な女性のものだった。けれども、その歩み去る姿を見送る女将の目には、深い悲しみが宿っていた。彼女には分かっていた。また新しい魂が奪われ、別の存在が若い体を手に入れたことを。


朝もやの中、スマートフォンで化粧を直しながら、真奈の体の男が呟く。


「ねぇ、沙織?」完璧な女性の声。


「なぁに、真奈?」愛らしい返事。


そして二人は顔を見合わせ、不気味な笑みを浮かべた。優雅な仕草の中に潜む男の笑み。これから始まる新しい人生への期待に満ちた、歪んだ笑顔。


古びた温泉宿は、また新たな"獲物"を待ち続けることになるのだった。


朝もやの立ち込める温泉宿のフロント。古びた床板が、軽やかな足音を反響させる。


「お勘定をお願いいたします」女将が伝票と共に差し出したペンに、まず真奈の体の男が手を伸ばす。


豊満な胸を揺らしながら、わざとらしく上品な仕草でペンを握る。だが、その瞬間、女将の目が鋭く光った。朝のチェックインカードに残された清楚な筆跡。そして今、目の前で躊躇いがちに書かれる男性的な文字の並び。


「あら~、私ったら字が雑になっちゃった♡」真奈の体の男が艶めかしく髪を掻き上げながら、明らかに作り込んだ声で誤魔化す。


「沙織さまも、こちらにサインを…」


「はーい、承知しましたわ~」沙織の体の男が、小柄な体で飛び跳ねるようにペンを取る。その仕草は可愛らしく見えるはずなのに、どこか不自然で。まるで少女アニメを真似た大げさなリアクション。


長年この呪いの湯を見守ってきた女将は、二人の様子に既視感を覚えていた。化粧の乗った表情の下に潜む、男性的な笑みの影。過剰に女らしさを演出する仕草の不自然さ。そして何より、明らかに人が変わったような雰囲気。


「お風呂は...いかがでしたか?」女将が静かに問いかける。その瞳には、諦めにも似た憂いが漂っている。


「きゃ~!最高でしたわ~♡」沙織の体の男が、両手を頬に当てながら、明らかにふざけた調子で答える。「お湯の感触が天国みたい~。ね?真奈さん?」


「うふふ~」真奈の体の男も艶っぽく微笑む。だがその笑顔の端には、明らかに下品な笑みが見え隠れする。「そうよね~。私なんてすっかりトロけちゃった♡」


二人の掛け合いは、まるで女子高生の会話の悪意ある物真似のよう。特に沙織の体の男は、可愛らしい声を振り絞りながら、時折素の下品な笑いを漏らしそうになり、慌てて取り繕う。


「なにか...変わったことは?」女将が意味深に尋ねる。


「あら~?」真奈の体の男が、モデルのような立ち姿で首を傾げる。その動きは完璧に優雅なのに、どこか意図的すぎる。「特には何も~。ね?沙織ちゃん♡」


「そうよ~。私たち、いつも通りよ~♡」


二人の声が重なる時、女将は確信めいた諦めの表情を浮かべる。また新しい魂が奪われ、若い体に宿ったのだ。それは彼女が何度も目撃してきた光景。だが今回の二人は、どこか楽しげで、まるでふざけているかのよう。


「ほら~」真奈の体の男が色っぽく髪を掻き上げながら、明らかに挑発的な視線を女将に向ける。「私たち、何にも変わってないでしょう?」


その言葉に、沙織の体の男が思わず吹き出しそうになり、急いで可愛らしい咳払いに誤魔化す。


「まったく普通ですわよね~」沙織の体の男が、小首を傾げながら愛らしい声を振り絞る。その仕草は可愛らしく決まっているのに、目の奥には男の下品な笑いが潜んでいる。


女将は二人の様子を静かに観察していた。真奈の艶めかしい体の動きは完璧なのに、どこか芝居がかっている。まるで官能映画の女優を真似ているかのよう。沙織の方は、アイドルアニメの主人公のような大げさな可愛らしさで、時折素の男言葉が漏れそうになるのを必死で抑えている。


「では、お気をつけて...」女将が深々と頭を下げる。その背中には、幾度となく見てきた魂の入れ替わりへの諦めが、重くのしかかっていた。


「ありがとうございましたわ~♡」

「また来ちゃいますわね~♡」


二人の声が重なる。過剰な女らしさを演出しながらも、その目は明らかに女将を愉しむような色を帯びている。


「くっ...」フロントを出た途端、沙織の体の男が吹き出しそうになる。「あのばばぁ、絶対気付いてやがったな」


「そりゃぁな」真奈の体の男も艶めかしい声を急に男っぽく戻す。「あんだけ演技がかった女言葉使ってりゃ、誰でも気付くっつーの」


二人は意味ありげに笑い合う。朝もやの中、その美しい姿は、まるで絵になるような光景だった。だが、その仕草の端々には、明らかな違和感が漂っていた。


呪われた温泉宿で奪われるカラダ(シナリオ:皆月ななな イラスト2枚:Duokumaさん) 呪われた温泉宿で奪われるカラダ(シナリオ:皆月ななな イラスト2枚:Duokumaさん) 呪われた温泉宿で奪われるカラダ(シナリオ:皆月ななな イラスト2枚:Duokumaさん)

Comments

ありがとうございます……!! 女の身体でその女の子の名前を書く練習したりメイクの練習したりするのいいですよね!

皆月ななな

これはまた素晴らしい小説作品をありがとうございます…!なりすます練習をするシーンが特に良いですね。グッときました!

えぴでみっく


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