ある休日の深夜。
やることもなく、ただスマホをいじって時間をつぶしていた俺は、なぜか目にとまった妙なアプリをダウンロードしていた。そのアプリの名前は「リビルド」。ほとんどレビューがなく、“あなたの顔写真と、あなたの理想の身体の写真をアップロードしてください。顔をその身体にすげ替え、理想の身体を再構築します”という胡散臭い紹介文だけがやけに目につく。こんなアプリあったか?と思いネットの評判を検索してみたが何もヒットしない。
なら試してみるのが早い。暇だし、何かのジョークアプリかもしれないが…興味をそそられ、試しにダウンロードしてみることにしたのだ
起動すると、無機質な画面に文字が浮かぶ。
「写真をアップロードしてください。現実世界への適用が可能です。」
つたない日本語だ。「現実世界への適用が可能」……雰囲気を出すためにそういう煽り文句をしているのか?笑いながら「くだらないな」と思いつつ、俺は何の気なしにネットで拾ったグラビアアイドル・関ゆいかの写真をアップロードした。深みのあるグレーのランジェリーにガーターを合わせたセクシーな衣装で、胸元も太ももも大胆に露わ。友人にすすめられてグラビア写真を何枚か見てみて、今では俺もお気に入りだ。さらに、自分の顔写真もセットで読み込ませる。
アプリが解析を終えたあと、画面には関ゆいかの体に俺の顔だけが不思議に合成されたプレビューが映し出されていた。首から下は完全にグラビアアイドルの抜群のスタイル。顔も、輪郭や髪型は関ゆいかのものだ。――なのに、目鼻立ちなどの顔のパーツだけ俺の面影になっている。しかし、女らしく笑う画面の中の俺の顔は、妙に馴染んでいる感じもあった。もともと中性的な顔であることもあるんだろう。
「再構築プレビュー完了。
この身体を現実世界にも適用しますか?
[ はい ] [ いいえ ]」
「まさか…ホントに女体化でもするってのか?」
冗談めかして笑いながら軽い気持ちで俺は「はい」をタップした。するや否や、スマホが激しく白く光り、ビリビリと電流が走るような衝撃に襲われる。
「う、うわっ⁉」思わず叫んだ瞬間、意識が遠のいた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
リビングの床でうつ伏せになっていた俺は、頭痛と身体のだるさを感じながら目を開ける。しかも、いつもと違う違和感……頬に髪の毛が触れている?
「…髪が…伸びてる…?」
混乱しながら身体を起こすと、視界の端にグレーのブラが見え、驚いて思わず声を上げそうになる。見ると、深めのグレーカラーのランジェリーが上下にまとわりついており、胸の谷間が異様に主張している。その谷間にはほくろがある。って、俺の胸に……谷間?しかも、ガーターで留められたストッキングまであって、まさにあの写真の姿。
「こ、これ……もしかして……」
慌てて鏡の前へ行くと、そこで見たのは目鼻立ちだけ俺ではあるものの、それ以外は完全“関ゆいか”のスタイルになっている俺だった。艶やかな髪が肩を覆い、胸元はふっくらと盛り上がり、腰とお尻が丸く張っている。明らかに女とわかるようなスタイルだ。
「ま、まさかこっちも……んっ!!」
股間を確かめると、男性器が消失し、代わりに女性の形状が存在する。触ると感じたこともないような、チンコを触った時の感覚を10倍にも凝縮したような、電気が走るような快感がある。本当に男から女へと作り替えられているのだと理解して、思わず腰が抜けそうになった。
スマホを見ると、「仮適用中。24時間以内に永久適用か元に戻るかを選んでください。元に戻るとこのアプリは使えなくなります」と表示されていた。どうやらこれは夢でも悪戯でもなく、本当にアプリが身体を再構築したらしい。
「まさか…こんな馬鹿なことが…」
だが、ここで恐怖と興味がないまぜになり、どうしても「身体がどこまで女性か」を試したくなる。軽くブラをずらして胸を触れる。
「ひゃっ」
それだけで腰がビクッと震え、肌がざわつくような甘い刺激に襲われた。男だった頃にはなかった柔らかさや感度が、否応なく現実だと思い知らせてくる。
さらにショーツを少し下ろす。胸が邪魔で良く見えない。男の頃は締め付けや蒸れを感じていたトランクスとはまるで違い、柔らかい生地が肌にやさしくフィットしていて、締め付けのストレスもない。
「…これがパンティー?ショーツ?ってやつか…なんかすげぇラクで…気持ちいいな…」
恐る恐る下のほうを指でなぞると、微かに湿り気を感じてゾクッとする。触れただけで腰が砕けそうになり、心臓が痛いくらいに高鳴る。そのまま好奇心に任せて指を何度か動かすと、信じられないほど鋭い快感が背中を走り、たまらず声を上げてしまった。指を出し入れするとちゅぷちゅぷと水気のある音が部屋に響く。
「ん…あ…や…やば…」
男のときのオナニーとは比較にならない強烈さで、一瞬にして身体が泡立ち、意識が白く飛ぶほどの快感に呑まれた。後から思うと、多分これは女の「イく」ってやつだったんだろう。
***
さすがにこの事態は一人では解決できないと思い、俺は大学時代からの親友、拓也に電話をかける。最初は「女になった?バカ言うな」と信じなかったが、俺の声も高くなっているし、必死に頼むと「電話口でしゃべっているのは本当にお前なのか……?わかった、会うから」と言ってくれた。
しかしこのままでは外に出られない。グレーのランジェリーにガーター姿なんて露出が多すぎる。とりあえずクローゼットを開くと、なぜか関連する女物の服(ニットトップスやミニスカ)がいくつか揃っており、男物はクローゼットから消失していた。免許証を見ると、俺の名前も女の名前になっていて、顔こそ俺だが女らしく少し微笑んだ顔写真がそこにあった。もしかすると世界が作り変えられているのか?
仕方なく、一番マシなニットと短いスカートを選んで着替える。ショーツはそのまま穿いているが、ぴたりと密着する感じが思いのほか心地よい。
「……ちんこがないと、こんなにフィットするのか…変な感覚だけど、悪くないな……」
外に出ると、冬の空気が生まれて初めて履いたミニスカから伸びる太腿を冷やし、ヒールのあるブーツが足元をコツコツと叩く。よろけそうになるのをかばいながら歩く。髪がなびけば甘いシャンプーの香りが漂い、歩くたびに胸が揺れて落ち着かない。周囲の視線が気になるし、男の頃には想像もしなかった繊細さが身体を支配している。
駅前で合流した拓也は俺を見るや「あれ、どなた……?」という顔になり、ようやく俺だと分かると「なんでお前女装してんだ?」と目を丸くしていたが、こっそり柔らかそうで豊満な胸をコートをめくって見せてやると、「嘘だろ……詰め物じゃないのか?なんで女になってんだ……」と絶句した。
周囲の人の目を避けるため、会話もそこそこに部屋へ戻り、コートを脱いで身体をさらすと、拓也は息を飲んだまま瞬きすら忘れている。
「俺…こんな姿になっちまった……関ゆいかの写真アップしたせいで…」
その名を出すと、拓也はゴクリと唾を飲む。
「関ゆいか……!? 俺、昨日もあの子の動画でめちゃくちゃ抜いてたぞ……! ほんとだ、胸のホクロの位置まで同じじゃん」
彼は混乱しながらも興奮を隠せず、俺の胸や腰に視線をさまよわせる。俺を普段見ているのとは違うねっとりとした女のカラダを見る視線に少し寒気がしながらも、なんか悪い気はせず少し股間がまた熱くなるのを感じた。
「もっと見たいなら……見せてやるよ」
そう言って、ニットの裾を少し上げる。そこにはグレーのランジェリー&ガーターを外して履き直したショーツがあり、男のときにはなかった柔らかな曲線が広がっている。
「チンコもないみたいに見えるな……」
拓也が恐る恐る手を伸ばすと、そのまま腰へ触れ、スカートをまくり上げ、ショーツの上から股間を撫でた。
「んぁ……!」
思わず女みたいな甘い声がこぼれ、身体が勝手に震える。喉も関ゆいかのものになっているから、自分の声じゃないみたいなエロい声になっている。さっきオナニーで知った女の敏感さが、他人に触れられることでさらに増幅しているらしく、耐えられないほどの快感が湧いてくる。
「すげぇ……やべぇ……本物の女体じゃん…」
彼も我慢できなくなったのか、ニットを脱がせてブラを外そうとする。豊満な胸が一気に露わになった瞬間、俺も「こんなのダメだ」と思いつつも、理性を失いかけ、呼吸が荒くなる。
「やめ……やめろって……っ……でも……あ……」
結局、互いに押し流されるように行為へと突き進んでしまう。ソファに押し倒され、初めて男に抱かれ、女としての悦びを全身で味わう。声を押し殺そうとしても止まらず、何度も甘く高い悲鳴をあげてしまった。そのたびに拓也も興奮を増している。最終的に俺の中に拓也が熱いものを注ぎ込むまで、その行為は続いた。
行為がひと段落し、息を整えていると、スマホが振動してアプリの表示が飛び込んできた。
「適用終了まであと1時間。永久適用か、元に戻るかを選んでください。元に戻るとアプリは使えなくなります」
彼も気づき、「どうする……」と不安そうな表情で聞いてくる。そりゃあ、これが冗談で済むなら男に戻ったほうがいいのかもしれない。でも、もう完全に女としての快感に支配されてしまった自分を思うと、後戻りしたい気持ちは薄い。
一瞬、胸に手を当てて考える。先ほどの衝撃的な快感、ショーツやブラをつけても“ちんこ”がなく、ラクでむしろ自然だと感じるこの身体。隣には友人であり恋人候補のようになった拓也がいる。
俺は恐る恐る聞いてみる。
「……もし、アタシがこのまま女でいるって選んだら、ちゃんと大切にしてくれる……?」
“アタシ”なんて言葉を使ってしまった。でもこれが今の自分には自然だと感じる。口にしながら照れが込み上げるが、彼は迷いなくうなずく。
「もちろんだよ。俺はお前のこと、本当に大事にしたいって思ってる。だって俺……関ゆいかの身体なんかより、今のお前そのものに興奮してるし……」
その言葉に小さく笑みがこぼれると同時に、もう一度股間が濡れていくのを感じる。俺はスマホの画面で「[ 永久適用 ]」をタップした。
瞬間、画面がふっと光を失い、アプリは再度起動しなくなった。もう戻れない。それでも不安より解放感が強いのは、彼……拓也がそばにいるからだろう。
***
「本当に…もう男に戻れないんだな…」
ソファに彼とならんで腰を下ろしながら、改めてニットの裾を整え、パンティーのフィット感を感じる。男だったころはムレやきつさで不快に感じることもあった下着が、今や身体に心地良く馴染んでいる。
「でも、なんか悪くないよな……」
拓也は微笑んで「うん、俺もそう思う」と肩を抱いてくれる。太ももをずっと撫でられている。胸がそっと彼の腕に触れると、まだ残る余韻にくすぐられて身体が熱くなるのを感じた。
こうして、俺……いや、アタシは冗談半分だったはずのアプリによって“関ゆいか”の体をベースに完全な女へと生まれ変わった。男の人生を捨てても、後悔はない。幸い女として世界は認識改変されているようだし。この快感、そして彼の優しさに包まれるなら、きっとやっていける……。
そんな安心感と期待を胸に抱きながら、アタシはこの新しい人生の一歩を踏み出す。いつか振り返るとき、「この体を手に入れたのは最高の選択だった」と笑えるように――。
(完)
皆月ななな
2025-06-05 23:43:27 +0000 UTCPYN
2025-06-02 09:26:17 +0000 UTC