XaiJu
皆月ななな
皆月ななな

fanbox


女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様)

突然だが、俺は女になる薬を手に入れた。メカニズムについては企業秘密らしいが、この薬を飲めば俺は好きなタイミングで女になることができるのだ。

しかも、少し自分の面影はある美女になることができるという、至れり尽くせりの薬なのだ。


「なんて画期的な薬なんだ……!」と鼻息を荒くしながらも、俺は小瓶に詰まった怪しげな液体を見つめる。そして、決意表明のように呟いた。


「いいか、これは正義のため……いや、男のロマンのためだ!」


そう、自分に言い聞かせて俺はゴクリと一気飲み。すると、身体の奥から熱いものが湧き上がってくるような感覚が襲い、次の瞬間には――


「えっ……嘘、まじかよ……!」


高まる鼓動とともに、俺の体躯はどんどん華奢になり、手足も細くなる。腰のラインもくびれ、その感触がはっきりとわかるほどだ。髪は瞬く間に肩を覆うくらいまで伸び出して、うっすら鏡に映った自分の顔を見ると、そこには女の色気を漂わせた俺が……。


「よし、成功!」


身体を確かめるように両手を胸元に当ててみる。仰々しいほどの女性的な膨らみ……たしかに自分の手の中にある。そして下を見れば、もともとあったモノは影も形もない。背中にじんわりと汗が滲むが、興奮が止まらない。ようやく完璧な“女の身体”になったのだ。


俺が大枚はたいてこの薬を買った理由はただひとつ。俺の家の近所にある「バニーガール喫茶」。そこにアルバイトとして潜入することなのだ!


何?そんなチンケな願いのためにわざわざ……だと?何もわかってない。お前らは何もわかっていないのだ。

いいか。バニーガールとは男の夢だ。そのバニーガールの着替えを覗くなんてことは、もはやバニーガールの同僚しかなかなかできないのだ。俺が男の姿でバニーちゃんたちの着替えを覗いていたら即逮捕だが、俺も女で、しかもバニーガールとして働いているならこれはもう……不可抗力!というか、俺もバニーガールだから、俺が俺自身のバニーの生着替えを見ることも合法!!

そして何なら、「あれ?胸大きくなった~??」などと言って触り放題見放題、俺もバニーで彼女もバニー……うへへへへ。


準備万端になったところで、俺はさっそく近所の「バニーガール喫茶」に向かった。昼間は一見オシャレなカフェだが、夜は“バニー姿の美女”が注文を取るという夢と希望の楽園になる。


普段なら店の外からコソコソ眺めるだけだったけど、今日は違う。カウンターに行き、ドキドキしながら店長らしき男性に声をかける。


「すみません、アルバイトの面接をお願いしたいんですけど……」


俺自身の声も女らしくなっていて、自分でもちょっと緊張する。店長は薄い口ヒゲを生やした渋い男だった。


「面接? まあ、スタッフは常に募集してるからね。とりあえず……今からやるかい?」


拍子抜けするくらいあっさりした対応だった。妙に警戒されると思っていたけど、これは好都合だ。即答で「はい!」と返事をして、店長に案内されるまま店の奥へと進む。


いくつか簡単な質問を受けたが、店長が一番関心を示したのは「スタイル」だった。言うまでもなく、いまの俺の身体は抜群のラインだ。脚から腰回り、そして胸元まで華やかに仕上がっている。あの薬を高額で買った甲斐があったというものだ。


「うん、合格。書類とかは後でいいから、ちょっと試しに着替えてみようか」


そう店長に言われ、俺はスタッフルームの更衣室へ。そこには、いかにも“バニーガール喫茶”な衣装がずらりと並んでいた。黒を基調とした王道バニー、深紅のセクシーバニー、純白の清楚系(?)バニー……とにかくカラーバリエーションも豊富だ。


「ま、まずは定番の黒で……」


そう呟いて衣装に手を伸ばすと、既に何か先客がいたのか、シャワールームからは水音が聞こえる。ドキリとする。そうだ……ここには“同僚バニーガール”たちがいるのだ。むろん女性専用の更衣室でもある。俺は意図せずして夢にまで見た「バニーガールの着替え現場」に居合わせているわけで――


「そ、そうだよな、俺、いま女だし、バニーガール仲間だし……合法、合法だよな?」


自問自答しながら、俺は着替えを進める。正直、女の服なんて初めてつける上にいきなりバニーガールだから戸惑いしかない。しかし、ビキニのような上だけの下着と網タイツ、そこにバニースーツを重ねると、鏡に映った俺は間違いなく「バニーガール」だった。


「お、おお……これはヤバい……色々な意味で」


本当にこれ、俺……いや、あたし……?


いかんいかん、心まであっさりメスになるところだった。


***


着替えが終わったタイミングで、シャワールームから誰かが出てきた。

艶やかな黒髪をふわりと揺らす美少女だった。ぱっと見は儚げな印象だが、どこか視線の動きや口元の表情に、妙に“大人びた”ものを感じる。しかもバニースーツ姿で露わになった肌はすべすべとしていて、男だった頃ならアレが……その、ナニするところだろう。

彼女が身に着けているのは、しっとりとした光沢のある黒いバニースーツ。胸元は大きくカットされていて、白い襟風の飾りと蝶ネクタイがワンポイントになっている。すらりと伸びた脚は、生脚。彼女の白い脚にはタイツなど履かないほうが映えるという店長の判断かもしれない。ヒールのあるパンプスが足元をきゅっと締めている。腰のあたりには真っ白なウサギのしっぽがちょこんと付いていて、バックスタイルも愛らしく、かつセクシーに映える。



「あ、新人さん? 今日から入るって子だよね」


彼女は何気なく俺の全身を上から下までチェックする。穏やかそうな口調ながら、その目つきは妙にネットリとしている気もする。本能的にぞわっとした寒気を感じながら、俺はあわてて声を振り絞った。


「え、えっと、はい。今日からお世話になります。よ、よろしくお願いします」


ニヤニヤ、ジロジロという感じで俺の身体をねっとりとした目で眺めながら、彼女はにこりと微笑んだ。俺は自然と背筋を伸ばす。初対面のはずなのに、リサと名乗った彼女の視線は、まるで身体の輪郭を一通り眺めているようで、初対面にはやや不釣り合いな馴れ馴れしさだ。


「ふふ、私はリサだよ。あんまり緊張しなくていいから。お客さんに笑顔を見せるのが大事って、うちの店長も言ってたでしょ?」


そう言いながら、彼女は自分のバニースーツの肩ヒモを軽く直す。すると、ちらりと覗く鎖骨からふわりと漂う女の香り――それはまさしく、男だったら思わずドキッとする要素だろう。が、今の俺も“女”の身体なのだ。相手に気づかれないよう必死で平静を装う。


「……あ、うん。が、がんばります」


そう答えて一瞬目をそらした次の瞬間、リサさんの手がするりと俺の腰、そして――


ぺろん。


「っ……!?」


小さな悲鳴を飲み込んで、身体がびくりと跳ねる。まさか、こんな初対面のタイミングで、同僚(しかも女の子)にお尻をなでられるとは……! 一見すると気さくなスキンシップかもしれないが、その手つきはどこか狡猾で、もはや“オジサン”のような余裕さえ感じさせる。


「へへ、初々しくてええのう……おっと、なんでもないわ♪ ついクセで……。やっぱりあなた、スタイルいいわねぇ」


かわいらしい笑顔を見せられ、俺はただ頷くだけしかできなかった。

彼女は涼しい顔で手を離し、再びしっとりとした笑みを浮かべる。どこか底知れない雰囲気を残したまま、彼女は軽やかに更衣エリアを後にした。俺は呆然としたまま、彼女の後ろ姿――黒いバニースーツの上にちょこんと揺れる白いしっぽ――を見送りながら、胸の鼓動を落ち着かせようとする。


「な、なんだ今の……。女同士なら当たり前なのか……? いや、わからん……」


なんか、和風のかわいらしい黒髪ぱっつんの女の子だと思ったのに、妙に雰囲気がエロオヤジみたいな……。うん、でも可愛いからいいか。


***


ホールの照明は少し落とされており、大人っぽいムードが流れている。各テーブルでは男性客の笑い声が上がり、席についているバニーガールたちが華やかに接客していた。


「いらっしゃいませ~」


俺も練習したわけじゃないが、店長に見よう見まねで教わった通り、自然な笑顔を作っておしぼりを差し出す。すると、客の男どもは俺の露わな太ももや胸元をじろじろ眺めている。


(……な、なんだこれ! 男たちの視線がこんなにも丸わかりだなんて!)


女の身体でバニー姿になった俺は、正直その視線がむずむずして落ち着かない。しかし「これこそがバニーガールの醍醐味」という気もしてしまい、妙な高揚感もある。怪しげな薬を飲んだ甲斐があったというものだ。


「お客さん、初めて来てくれたんですか? うちのバニー喫茶って、意外とメニューも美味しいんですよ~」


……みたいな文句を口にしながら、俺は必死で“接客業”をする。男だったころはカフェのバイトすらやったことないのに、どうにかこうにかやれているのが不思議だ。(さっきお尻をなでられた)リサさんのフォローのおかげも大きい。っていうか今もお客さんから見えないところでリサさんにお尻やふとももをちょいちょい撫でられている。手つきが本当にいやらしい。まるで“エロいおじさん”じみた手つきに、女の身体である俺のほうがドギマギさせられている。


(いくら同僚同士とはいえ……こ、これはちょっとやりすぎじゃないか?)


そんなことを考えていると、ふと隣にクール系のバニーがスッと近寄ってきた――長い脚でスタイリッシュにバニースーツを着こなしている姿が映える。その端正な顔立ちに、男性客だけでなく女性の俺でもつい見惚れてしまうほどだ。



「……大丈夫か? なんか困ってるなら言えよ」


先輩のように落ち着いた口調で囁かれる。彼女はいつから俺の様子を見ていたのだろうか、やや心配そうに眉をひそめている。まるで何があったか察しているかのようだ。


「あ……す、すいません。なんでもないです、大丈夫です」


本当は「ちょっとリサさんに触られすぎてヤバいです」と叫びたいところだが、初日から大事にしたくないし、騒ぐのも気が引ける。俺がそう返すと、クール系バニーは苦笑交じりにため息をついた。


「……そっか。でも、何かあったら遠慮なく言えよ? 店長にも報告できるし、オレ……私も止めるからさ」


そう耳打ちする彼女の声は低く落ち着いていて頼りがいがある。クールな見た目とは裏腹に優しさを感じるし、彼女が何気なく俺とリサさんの間に立ってくれることで、リサさんの“ちょっかい”も若干おさまったような気がする。


「ありがとうございます。先輩の名前……まだちゃんとお伺いしてませんでしたよね?」


俺が勇気を出して尋ねると、彼女はほんのり口元を和らげる。微かに見える笑みは、まるで滅多に見せないレア感のあるものだ。


「篠原。ここではそう呼ばれてる……ま、気楽に先輩って呼んでいい」


「篠原さん、ですね……。あ、よろしくお願いします!」


俺がそう言うと、篠原さんは小さくうなずき、再びクールな表情に戻りながら客席へと向かっていく。

彼女が着ているのは、漆黒のバニースーツ。胸元は深めにカットされていて、シャープなラインが際立つデザインだ。さらに背中が大胆に開いた背面からは、しなやかな肩甲骨と引き締まったウエストがちらりとのぞき、動くたびに光沢のある生地がさりげなく輝く。

その姿はまるで無駄のない戦士のようにスマートで、背面の小さなうさぎのしっぽですらきちんと整然と付いているように見える。スラリとした脚には繊細な網タイツがフィットしていて、さらにヒールの高いパンプスが脚線美を強調していた。


俺はそんな篠原さんの背中を見送りながら、思わず心の奥がぽっと温かくなる。彼女の後ろ姿には“仲間を守ってくれそうな頼もしさ”が滲んでいて、自然と不安が和らいでいくのを感じるのだ。


(……いい人だなぁ)


心の中で小さくつぶやきながら、俺も篠原さんに負けないよう、笑顔を作って接客に戻る。店内は相変わらずバニー姿の美女たちによって華やかなムードに包まれていたが、俺の気持ちはさっきまでの落ち着かなさが少し和らいでいた。


おそらく、今は単なる“バイト仲間”だけど、篠原さんがいてくれれば、この先もなんとかやっていける――そんな予感を胸に秘めながら、俺は次のお客さんのテーブルへと歩き出したのだった。


***


「ビールおひとつ、はいりまーす!」

ひときわ大きい声で元気よくオーダーを取り持っているのはミサキだ。



彼女はぱっちりとした瞳が印象的な金髪ギャルで、ショートカットの髪が元気な雰囲気を醸し出している。それだけでなく、ほんのり小麦色に日焼けした肌と、バニースーツ越しにもわかる健康的で引き締まったボディラインが目を引く。程よく鍛えられた太ももやウエストのくびれはまさに“肉体美”と呼ぶにふさわしく、明るく活発な空気感を全身から放っていた。


バニースーツも、胸元がざっくりと開いたタイプをチョイス。外見だけ見ればいかにも“パリピ系”にも思えるが、ミサキの天真爛漫な笑顔とノリのいい口調はどんなお客さんにも分け隔てなく飛び込んでいく魅力があるらしく、店内でも大人気の存在だ。


「ありがと~! メニューどれにするか迷ったら、ミサキに聞いてくれたらマジ速攻でおすすめするからさ!」


そんな軽妙な口上を挟みつつ、ミサキはオタク風の男性客のテーブルでも自然に盛り上がっている。アニメやゲームの話題にも食いつきがよく、専門用語のツッコミにすかさず「それわかる~!」などと楽しげに乗っかっているのだ。男の視線を集めるいかにもギャルなルックスなのに、オタク文化にも詳しそうなトークを繰り出すギャップが絶妙らしく、テーブル席からは笑い声が耐えない。


(……ミサキさんって、ああ見えて実はけっこう“オタク寄り”な趣味もあるのかな?)


俺はそんなふうに想像するものの、当然ながら本当のところはわからない。だが、ミサキがどんな話題にも明るく受け答えし、オタクにもギャル仲間にもわけ隔てなく絡んでいく姿は、ほかのバニー仲間たちにも良い刺激になっている。彼女からは、店の雰囲気を底上げするようなエネルギーが絶えずあふれているのだ。


「ねぇねぇ、お客さんはアレとか観るんですか? あの新作アニメ、めっちゃ作画良い感じじゃないっすか~?」


特にこだわりなく口を開いているようで、その実かなりマニアックな情報までキャッチしているのがわかる。これにはオタクのお客さんも「え? なんでそんなに詳しいんすか?」と驚きを隠せない様子。ミサキは「えー、たまたまだしー?」とおどけながら、バニーのしっぽをふりふり揺らして笑い合っている。


(見た目もノリも華やかで、しかもオタクにまで親身に寄り添えるなんて……すげぇな、ミサキさん)


そう感心する俺の横では、ミサキが再び「ビール入りま~す!」と元気に叫ぶ。彼女の声量に釣られるように、まるで店全体がバニー喫茶の賑わいをさらに増していくようだ。店内がこの活気にあふれているのは、間違いなくミサキの存在が大きい――そう思わずにはいられなかった。


***


ふと視線を巡らせた先にはバニー。あちらにもバニー。俺はつい見惚れてしまう。するとその一瞬の隙に――


「うわっ、やべっ!」


持っていたトレイが傾き、グラスの中のドリンクが派手に倒れてしまった。自分でも驚くほど盛大にこぼしてしまい、思わず焦る。テーブルに広がる水滴、そして勢いよく滴る液体……客席に大きな視線を集めてしまったのがわかって、俺の心臓はドキドキだ。


「あらあら~、大丈夫かしら? 拭きましょうね~」


そう声をかけてくれたのは、落ち着いた雰囲気の“お姉さん風”バニーさんだ。その姿は大人びた色気と包容力を同時に感じさせる。柔らかいブラウン系の髪を肩口まで伸ばし、軽く巻きが入ったスタイル。ほどよい長さが大人っぽく上品で、どこか余裕を感じさせる雰囲気だ。



さらに目を引くのは、彼女が纏っている優しい色合いのバニースーツ。黒や赤のような派手さではなく、控えめだけど上品なえんじ色のカラーで、胸元にはフリル状の飾りがあしらわれている。そのフリルの下からは、ドキッとするほど大きく豊かな胸の谷間が覗き、思わず目を逸らしたくなるほどの迫力だ。それでいてまったく嫌味がなく、むしろ“母性的な包容力”と“セクシーさ”が絶妙に混ざり合っているのが印象的。ウエスト部分はくびれているのに柔らかなラインが保たれていて、巨乳との対比も相まって、見る者に安心感を与えるようなボディラインに仕上がっている。


「こういうときは慌てると余計に汚れちゃうわ。そっとグラスを持ち上げて……そうそう、バスタオル取ってくれる?」


優しい口調とは裏腹に手際がよく、彼女は素早くキッチンペーパーを取り出してテーブルを丁寧に拭き始める。その様子を見ていると、俺の動揺も少しずつ落ち着いてくるから不思議だ。


「す、すみません……ぼーっとしてて、つい……」


バニースーツの裾が微妙に濡れた俺とは対照的に、彼女はまるで自分が汚れていることなんて気にも留めず、慣れた手つきで処理を進めてくれる。お客様から見られているのに、どこか堂々としているし、その大らかさに助けられている気がする。


「ふふ、大丈夫よ。最初は誰だって慣れないものだし、失敗はつきもの。それより、お洋服大丈夫? 後で洗い替えを用意してあげるわね。冷えたら風邪引いちゃうでしょ?」


母親か姉のような包容力ある仕草に、周りのお客さんも自然と笑顔になる。しかも、単に優しいだけじゃなく、行動が的確だから後片付けはあっという間に終了。その間、お客さんに向けて「ごめんなさいね、少しお待ちを~」なんて柔らかく声かけもしていて、何から何まで完璧だ。


「ほんと助かりました……ありがとうございます」


どぎまぎしながら頭を下げる俺に、彼女はふわっと微笑んで「こちらこそ、いつでも呼んでね」とさらりと言葉を返す。腰についたしっぽの飾りが軽く揺れ、柔らかいブラウンヘアもふわりと流れる。その後ろ姿は、大きな胸から続くしなやかな曲線も相まって、まるで“癒やしと色気”を同時にまとった女神のようだ。


(……大人の余裕がすごい。やっぱりこの店、いろんなタイプのバニーがいるんだなぁ)


俺はさっき彼女がテーブルを拭いていたときにガン見えしていた、彼女の大きなお胸の谷間がまた拝めるなら、また飲み物こぼしてもいいかも……などと思うのだった。


***


「や、やっと終わった……」


慣れない女の身体でバタバタとした初日を終え、なんとか閉店作業を終わらせた俺は、他のバニーさんたちと一緒に控室へ戻る。

待ちに待った、バニーさんの生着替え……!!俺は期待でバニースーツの下の股間をふくらませ……って、今は"ない"んだった。


ホールでの眩しい照明とは打って変わって、こちらは少し落ち着いた照明で、まるで“バックステージ”のような空気が漂っている。初日の緊張もあって、正直クタクタだ。けれど、今日のバイト仲間――リサさん、篠原さん、ミサキさん、そしてあの優しいお姉さん風のバニーさん(どうやら「榊原さん」というらしい)――との接客は刺激的で面白かった。


「ふぅ~、今日もおつかれー! 新人ちゃん、頑張ったじゃないの~!」


部屋に入るなり、エロっぽい雰囲気を漂わせたリサさんが陽気に声をかけてくる。セクシーなバニースーツもすっかり着こなしていて、「さすがだなぁ」と見惚れそうになるが……実は先輩だけあって、どう接していいのかまだ距離感が掴めない。

ほかのみんなも椅子に腰を下ろしたり、鏡の前に立って身だしなみを直したりと、思い思いにリラックスしている。


***


「いや~、今日のお客さんのノリも良かったし、わりと儲けになったよなぁ。オレ、この身体になってからしみじみ思うんだけどさ、女のほうが“稼げる”のよ、絶対に」


隣でストレッチをしていたリサさんが、さらりと口を開く。いつものセクシーな声色が、ふと妙に落ち着いたダンディ感を宿したように聞こえたのは気のせいだろうか。俺が「え?」と首をかしげていると、リサさんはバニースーツの胸元をぐいっと引っ張りながら、ぽつりとつぶやく。


「ほら、この胸。オレさぁ、昔はおっさんだったんだけど、こんな色気が出せるようになるとは思いもしなかった。女体化薬さまさまだよな……って、あ、やっべ」


最後の一言で、俺の思考が一瞬止まる。い、今、なんて言った? “昔はおっさん”……?


「え、えっと、リサさん? いま“昔はおっさん”って言いました?」


「うわー! ちょ、ちょっと口すべっちゃったわ! おっとっと……悪りぃ悪りぃ!」


リサさんは“しまった”という表情を浮かべ、セクシーな女声に戻って咳払いをする。けれど、一度聞いてしまった俺としてはもう動揺が抑えきれない。


「も、もと男……って、そんなバカな……」


「ま、ま、堅いこと言いっこなしってやつよ! 実はエロおやじだったんだけど、女体化薬?ってのを買って、女の身体になったらやっぱ最高なんだよな。うんうん、だってこんな若いピチピチボディ、夢にまで見たわ!」


そう言ってリサさんは、その豊かな胸や腰を誇らしげに撫で回す。俺は何かの見間違いかと思いたいが、目の前で平然と語られると、もはや信じるしかない。リサさんは嬉しそうにため息をつくと、“本物の女”のような流し目を俺に向けた。


「おっさん時代は、若い女の子と遊ぶのも気が引けてな。でも今なら女の子たちと一緒に着替えられるし、男の客に色目を使えば小遣いも稼げる。他の女の子にセクハラしても、カワイイ今の姿ならそんなに怒られないしよぉ。正直、天国ってやつ? あ、でも、今のは他の人にはナイショね?」


若い女子がするようなしぐさで、冗談めかしてウインクされるが、俺はただただ唖然とするばかりだった。


***


「おいリサ、あまり新人をからかうな。戸惑ってるだろ」


スラリとした足取りで近づいてきたクール系の篠原さんが、リサさんをたしなめる。いつもは落ち着いた美女というイメージだったが、どうやら彼女も何か隠しているらしい……。俺は胸のざわつきを抑えきれず、恐る恐る切り出す。


「あ、あの、篠原さんは、ま、まさか……?」


「……まぁ、俺も女体化だ。昔は筋骨隆々の体育教師だった」


「た、体育教師!?」


思わず声を裏返した俺に、篠原さんは静かにうなずく。さきほどまでのクールなトーンが少し低くなり、どこか男の響きを帯びている。


「もともとは筋肉質で体格も良かったんだが、今じゃこんなにスレンダーだ。最初はスカスカした感じがして落ち着かなかったけど、慣れてみると身軽で悪くない。走りやすいし、体を反らしたときの柔軟性は以前の比じゃない」


そう言って篠原さんは、試すようにバニースーツ姿のまま軽くストレッチをしてみせる。しなやかに伸びる手足と、スラリとしたウェストのラインは、どう見ても元マッチョ男の面影なんて皆無だ。


「男の身体はパワーがあって頼もしかったけど、この身体も悪くない。むしろ、今じゃ女の身体にちょっと愛着が湧いてるんだ。……ただ、無意識に“気合い入れろ!”とか言っちまいそうになるのが難点だがな」


微かな照れを含んだ笑みを浮かべる篠原さん。先ほどホールで感じた“頼もしさ”は、教師の貫禄の名残だったのかと納得しつつも、頭が追いつかない俺だった。


***


「ちょ、ちょっと待ってください! お二人とも元男って……じゃ、じゃあミサキさんは、さすがに違いますよね?」


ギャルっぽい見た目と軽快なノリが特徴のミサキさんだけは、さすがに本物の女の子だろうと思いたかった。だが、彼女は苦笑いして視線をそらす。というか、目を合わせてくれない。


「す、すいません、実は……ボ、ボク、昔はオタク男子でしてぇ……」


「お、男なんですか……しかもオタク……」


「フヒヒ……そ、そう……ゴリゴリのキモオタっす……ひとに声かけるのも苦手で……だからこの“ギャルになった自分”は正直最初めちゃくちゃ違和感あったんすけど……。でも、女の身体になったら人が話しかけてくれるし、店でもこうやって盛り上げられるし……だんだん調子乗ってきて、こうなっちゃって。でも、意外と悪くないかもって」


そこまで言うと、ミサキさんはハッとして、肩をすくめる。ほんの一瞬、挙動不審なオタク男子の態度に戻ったが、すぐに明るいギャル口調に切り替えた。


「おっと危ねっ! いや~、すぐ地が出ちゃうのよ。でもさ、やっぱ女体化ってすごいよね。可愛い服が似合うし、推しキャラのコスプレだって今なら自信持ってできるんだよ? バニー姿なんて、男だった頃は夢のまた夢だったのに……!」


そこでミサキさんは思い出したように、ニヤリとキモめの半笑いを浮かべた。さっきまでのギャルっぽいかわいさとは別人のような、不気味なくらい嬉しそうな表情だ。


「……考えてみてよ? この可愛い身体なら、ボクの推しキャラの魔法少女コスもバッチリ似合うんだぜ……ヒヒヒ……。男のときはデブくて汗っかきだから全然無理だったのに、今ならふりっふりの衣装もいけちゃうわけよ……はは、最高じゃねぇ?」


健康的なギャルの顔がにまぁと歪んだような笑い。うわぁ……正直、背筋がぞわっとするほどの変貌ぶりに、俺は思わず後ずさりしそうになる。だが、ミサキさんははっと気づいたように「やべやべ」と言って、再びギャル調の口調に戻った。


「ご、ごめん、つい本性出ちゃった~。でも、そういう“変な欲望”も叶っちゃうのが、女体化の凄さなんだよね。なりたい姿で、なりたい自分になれるっつーか。あはは……」


照れ笑いしている彼女(彼?)を見ていると、なんだかこちらまで不思議な感覚になる。カリスマギャルだったのに、さっきの表情との落差が大きすぎる……。


***


三人が自分の“元男”という正体をさらりと打ち明けていくなか、俺はもう頭が混乱しまくりだ。とりあえず、あの“あらあら~”系のお姉さん風バニーさん――榊原さん――がいてくれて本当に助かる……そう思っていた矢先だった。


「さてと……新人ちゃん、今日は大変だったわね。ドリンク、思いっきりこぼしちゃったでしょ?」


榊原さんが、ふわりと微笑みながら俺のほうに近づいてくる。ほんのりブラウン系の髪をゆるくまとめ、巨乳が目を引くバニースーツ姿はまさに“癒し系のお姉さん”だ。だが、その瞳が一瞬だけ鋭くなり、低い声を帯びた瞬間――空気がまるで変わった。


「おいコラ、クソアマ。客の飲みもんひっくり返すたぁ、ナメてんのか? なぁ?」


一瞬にして“男っぽいドスの利いた声”が響き、背筋がぞわっとする。さっきまで優しく微笑んでいたのはどこへやら、まるでヤクザ映画に出てくる兄貴分のような迫力だ。俺がビクリと肩を震わせると、榊原さんは「はっ!」と気づいたように目を見開く。


「ウソウソ♡ ごめんねえ、新人ちゃん。つい昔のクセが出ちゃって……。あらあら、怖がらせちゃったわね~」


途端に“あらあら~”の優しい口調に戻る榊原さん。あまりにも落差が激しすぎて、心臓の鼓動が収まらない。俺はおそるおそる口を開いた。


「い、いまの……どういう……?」


「ん? ああ、そういえばまだ言ってなかったわね。私、もともとは任侠の世界にいたのよ。要は“ヤクザ”だったの。ま、いろいろあって女の身体になったんだけど……」


微笑みながらサラリとヤバい事実を口にする榊原さん。さらにバニースーツ越しに自分の胸をゆさゆさと揺らし、まるで獲物を品定めするような目で自分の胸の谷間を見ている。


「でもまあ……こうしてみると、今まで抱いてきた女より、よっぽどいいカラダしてんだよな、これ。あははっ」


その言葉と同時に、榊原さんは両手で豊満な胸を持ち上げ、わざとらしくプルンプルンさせる。バニー姿の上からでもわかる圧倒的なボリュームに、思わず目が離せない。表情はまるでガラの悪い男が下品に笑うそれで、“元ヤクザ”という事実がリアルに迫ってくる。


「はぁ、悪いけどよ……本当は自分で抱きたいぐらい、このカラダ気に入ってんだよな。このカラダに挿れるチンポがねえのが……ちょっと残念っちゃ残念だけどよ」


ゴクリ……と生唾を飲み込む俺。榊原さんは、一瞬半笑いを浮かべたあと、「あん、やだやだ、つい本音が出ちゃったわ」と言わんばかりに口元を押さえ、“お姉さんの声”を取り戻す。


「うふふ……ごめんなさいね、新人ちゃん。こんな下品なこと、レディが言うもんじゃないわよねぇ? やだ、恥ずかしいわ~」


そう言って微妙に照れ笑いする榊原さんだが、先ほどまでの男口調と挑発的な胸の揺らし方のインパクトが強すぎて、俺の心臓はまだドキドキしっぱなし。どうやらこの“ヤクザから女になった巨乳バニー”は、優しいお姉さんモードに見せかけて、とんでもない裏の顔を持っているようだ。


(……こんな人までいるのかよ、この店……)


唖然としたまま榊原さんを見つめる俺の視界には、先ほど揺らされた“大ボリューム”が未だにちらついて離れない。肌触りまで想像してしまい、なんだか変な汗が出てきそうになる。本人が満更でもなさそうな様子なのが、また一層いろいろな意味で危険な香りを漂わせていた……。


***


こうして、一人ひとりの口から明かされる想像を絶する事実。どうやら彼女たちは全員が“元男”だったらしい。リサさんはエロおやじ、篠原さんは筋肉ムキムキの体育教師、ミサキさんはおどおど系のキモめオタク男子、そして榊原さんはヤクザ……。ほんの数時間前までは「綺麗なバニーのお姉さんたちだ」と思っていた俺の認識が180度ひっくり返った瞬間だ。



「さて、それでさ。あんたもどうせ“元男”なんだろ? 初日からなかなか飲み込み早いし、バニー姿もまんざらじゃない感じだったしさ」


リサさんが意味深に笑い、篠原さんやミサキさん、榊原さんも「そうなんじゃない?」と同調してくる。突然の問いかけにギョッとした俺は、反射的に視線をそらしてしまう。

(――図星だけど、さすがに自分から「実は男なんです」って言いづらいし……)


「え、えっと……あ、あたしはもともと女、なんですけど……」


思わず口を突いて出た言葉に、自分でも驚いた。だけど、なんかここまで一気に本音を聞かされると、急に言い出しづらくて……。すると、部屋の空気がピタリと止まった。


「え、今のは……えっ、ホントに女?」


「え? ……本当に、生まれつきの女?」

リサさんは目を見開き、篠原さんも「あ……そ、そうなのか?」と困惑の表情。ミサキさんや榊原さんに至っては「やべぇ……」「マジかよ……」と口を押さえ、明らかに焦っている。

四人は顔を見合わせて、次々に言い訳めいたことを口にし始めた。

「い、いや、いまのは冗談なのよ、うん! あたしらが元男ってのはさ? バニー喫茶ならではの設定遊びっていうか……コントみたいな?」

「そうそう、ただの冗談! 本気にしないでね~? あ、あはは……」


榊原さんまで「そうよ~、本気にしちゃダメよ~」などと言い出し、ミサキさんと篠原さんも微妙に困ったように笑い合っている。どう見ても気まずそうだ。

先ほどまで強烈な本音をさらけ出していた面々が、一気に「全部冗談」という路線で誤魔化し始める。そのあからさまな反応が示すように、どうやら“ガチの秘密”をうっかりしゃべりすぎたようだ。

(……なんだか申し訳ないというか、いたたまれないというか)

気まずい空気のまま、四人はどこか落ち着かない手つきで控室の片付けを再開していく。俺もバニーの衣装をどうするか迷いつつ、「あ、あたしも片付け手伝いますね……」と声をかけようとするが、彼女たちは「いや大丈夫、大丈夫……ホラ、リサ手伝って」「あ、うん、私がやるわ」と微妙によそよそしい。

こうして、元男バニーの秘密を一気に知ってしまった俺だが、最終的に「全部冗談」とされてしまい、誰もその話題に触れようとしないままお開きとなった。



***


突如として訪れた沈黙に、俺もどう対応していいかわからなくなる。結局、そのままバタバタと着替えやら片付けやらを始める四人。

もしかして、彼女たちにとっては“誰にも言えない秘密”をうっかり口走ってしまった感じなのだろう。現に、顔を赤らめて動揺しているようにも見える。


(み、みんな悪い人じゃないし、深く追及しないほうがいいか……)


気まずい空気のまま、片付けを続ける四人だが、その視線が何だか妙だ。さっきまでは“元男”として堂々としていた彼女たちが、今度は俺の身体をチラチラ見てくるのだ。

篠原さんはクールな顔で「……いや、別に。なんでもない……」とそっぽを向きつつも、ちらっと目だけこっちを見てるし、榊原さんは「あらあら~、……そうだったの、へぇ……」とやけに含みのある表情を浮かべている。

中でも変化が顕著なのはミサキさん。もとはオタク男子だったせいか、ギャル口調と挙動不審が入り混じり、上ずった声でこう呟いていた。

「ほ、本物の女の子の着替えって……あ、あたし実は、ちゃんと見たことないんだよね……ヤ、ヤバい……うわぁ……」

(……お、おいおい……)

当初の“俺の目論見”――「バニーたちの着替えを覗きたい!」という下心が、まさかここへきて真逆に転じるなんて。これじゃ俺のほうが“見られる側”になってしまう。リサさんも「えぇ~ほんとに女の子なんだ~? ひひひ、お着替えタイムを覗いちゃおうかなぁ? いや、あたし女だからね?同性同士なんだから遠慮しないでよぉ」なんて、元オヤジ丸出しの口調でチラチラとこちらを伺ってくる。

(ふざけんな……俺は見る側に回るために潜り込んだはずなのに……!)

そんな内心の叫びもむなしく、視線の的にされることの恥ずかしさを味わわされる俺。


俺はやりきれない気分で、何とかその場を切り抜けようと軽くお辞儀をして着替えを済ませるが、みんなの興味津々な視線が終始つきまとって落ち着かない。初日は俺が覗く側になるはずだったのに、まさかこんな“逆転現象”が待ち受けていようとは……。


店を出た瞬間、夜風がひんやりと身体を包む。

――あの衝撃の告白を本当に“冗談”だと思えるほど、俺は単純じゃない。彼女たちが元男であること、そして“女体化”を各々楽しんでいることは間違いないはずだ。だが、俺はこの状況をどう受け止めればいいのか……。


「はぁ……次のシフト、どうなるんだろう」


空を見上げると、月がやけに明るく輝いていた。まだまだ俺の“バニー喫茶バイト”は始まったばかり。明日からもきっと、予想外のことがたくさん起きるに違いない。なにせ、俺を「本物の女」と勘違いして興奮している元男たちが待ち受けているのだから。

けれど、何やら不思議な期待感すら湧いてくるのは――ある意味この女体化バニー喫茶の魔力なのかもしれない。


(END)

女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様) 女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様) 女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様) 女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様) 女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様) 女体化してバニー喫茶のバイトを始めたら同僚が全員元男の女体化バニーだった件(イラスト:倉塚りこ様)

More Creators