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秘密
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婚約者の前でもお仕置きされちゃう番外編

 それから一か月ほどして、俺は婚約者が決められた。両親によるとそれまで俺の評判が悪すぎて決めようにも決められなかったが、最近はみちがえるように更生したのでようやく相手が決まったのだという。  せっかくエレーナという“主人”が出来たというのに、そのおかげで婚約者が決まるというのは皮肉なものだ。さすがのエレーナも貴族の跡継ぎに婚約者が出来るという当然の成り行きには逆らうことが出来なかった。  そしていよいよ、俺は婚約者のマリエッタと会うことになった。 「初めまして。マリエッタと申します、本日はよろしくお願いいたしますわ」  そう言って彼女は深々と頭を下げる。  俺はそんな彼女を見てつい見とれてしまう。貴族の血を引いている人は美しい者が多く、また使用人もそれなり以上の見た目の者が多いので正直多少の美人なら見慣れている。とはいえマリエッタはそこに名家の気品と、何よりも豊満な巨乳を併せ持っていた。 「ガルドです。こちらこそよろしくお願いいたします」  そう言って俺たちは雑談を始める。  婚約者の顔合わせ初日で話すことなどほぼ慣習で決まっており、俺たちはお互い用意しておいたであろう無難な会話を回すだけで時間が流れていく。  とはいえ無難な会話の中からも、マリエッタの俺と仲良くなろうという気持ち、そしてこの婚約を成功させようという気持ちは伝わってきた。 「失礼いたします。ガルドの妹、エレーナと申します。お茶をお持ちいたしました」  そんな中、途中でエレーナが部屋に入ってくる。 「まあ、マリエッタですわ。今後も付き合いが増えると思いますがよろしくお願いします」 「ええ、こちらこそよろしくお願いします」  そう言って二人は丁寧に頭を下げる。  実際マリエッタがうちに来ればエレーナと会う機会も増えるだろうが……  ふとエレーナがこちらを見る。  婚約者が出来て、エレーナと俺の主従関係は今後どうなるんだろうか?  そんなことを思いつつもこの場で口にする訳にもいかず、エレーナは去っていき、会談は続く。そして俺は途中でトイレのために部屋を出る。  その時だった。 「”ミアちゃん”」 「きゃあっ!?」  突然お嬢様に声をかけられ、私の体はみるみるうちに縮んでミアのものになってしまう。  そして有無を言わさず近くの空き部屋に連れ込まれた。 「こ、困りますお嬢様。まだマリエッタ様との顔合わせが……」  が、途中で私は口をつぐんだ。お嬢様の表情が不機嫌そうなことに気づいたからだ。  私は恐る恐る尋ねる。 「あの、いかがされましたか……?」  するとエレーナは普段はあまり見せない不機嫌な口調で答える。 「さっき、あのマリエッタとかいう女に色目を使ってたでしょ」 「け、決してそんなつもりはありません! 私はずっとお嬢様一筋です!」 「でも彼女の胸に見とれてたでしょう?」 「っ……」  痛い所を突かれて私は黙ってしまう。確かにお嬢様は魅力的な女性ではあるが、決して胸が大きい訳ではない。今の私ならともかく、ガルドの姿をとっている時は男の本能で目が行ってしまうのは仕方ないのだが、それを言っても納得してもらえるとは思わない。  それに……  こんなことを言っている場合ではないのかもしれないが、こんな風にお嬢様が私のために不機嫌になってくださるのも悪くないと思ってしまう。 「申し訳ありません!」 「着替えて」 「はい?」 「お仕置きするから着替えなさいって言ってるの」  そう言ってお嬢様は私にいつものメイド服を渡す。 「ですが顔合わせはまだ途中で……」 「お腹を壊したことにでもしたらいいでしょう? 私の命令とどっちが大事なの?」 「は、はい」  普段はガルドの仕事や行動に支障が出ないよう気を配ってくださるお嬢様だったが、今日はお構いなしだった。よほど私の婚約が気にくわないらしい。  とはいえ今の私にはお嬢様が絶対、ガルドが着ていた礼服を脱いでいつものメイド服に着替える。そしてメイド服に着替えると、自然にミアとしてのスイッチが入った。  ミアとしてずっと調教されていたおかげで、こういう時お嬢様が求めている台詞が自然に脳裏をよぎる。  私は床に四つん這いになると、スカートをまくってお嬢様に尻を突き出す。 「わ、私はマリエッタ様の胸に見とれてしまいました。こんなエッチなメイドにお仕置きしてください!」  粗相をしたときは何が悪かったのかを明確にしてお仕置きを求めること。  これはずっとお嬢様に教わってきたことだった。 「え、嘘……」  そう言った時だった。  ふと私は部屋のドアが開いていることに気づく。  そして、その向こうに呆然とした表情のマリエッタが立っているのが見えてしまった。 「な、何で……」 「ほ、本当にガルドさんなのですね……」  マリエッタは震える声で言い、私たちは呆然と見つめ合う。 「遅いなと思って様子を見にきたら声が聞こえて、それで……」  マリエッタはうまく言葉が出てこないのか、口をパクパクとさせる。  私もどう弁解したらいいのか分からない。  何せ女体化し、フリフリの露出が多いメイド服を着て、妹にお仕置きをせがんでいる場面を婚約者に見られてしまったのだ。  助けを求めてエレーナを見ると、こんな場面で一人だけ笑みを浮かべている。 「まあまあ、とりあえず話をするので中へどうぞ」 「は、はい……」  マリエッタは促されるままに部屋の中へ入る。  エレーナはドアを閉めると、ちゃんと鍵をかけた。  それを見て私も立ち上がろうとするが、 「動いていいって言ってないでしょう?」 「すみません……」  エレーナに言われて再び四つん這いに戻る。 「一体これはどういうことなのですか!?」  椅子に座ったマリエッタは改めてエレーナに尋ねる。 「どうもこうもありません。これがガルドの本当の姿です。おかしいと思いませんか? あれほど悪名があったガルドが一か月前から急に好青年になるなんて」 「で、でも……」  なおも戸惑うマリエッタに、エレーナは一か月前の事件をかいつまんで説明する。 「……という訳でこれが彼の本当の姿であり、私が彼の主人なのです」 「ほ、本当なのですか?」  マリエッタが蒼い顔でこちらを見る。私はそれに対して頷くしかなかった。  マリエッタはしばらく震えていたが、やがて立ち上がる。 「やっぱりこんなこと許せませんわ! 私がガルドさんをあなたから解放してみせます!」 「そ、そんなことは望んでは……」 「いえ、こんなの絶対間違っています!」 「残念だけどマリエッタ、“あなたはそこで見ていて”」  エレーナが言った瞬間、マリエッタは全身の力が抜けたように、椅子に座ったまま動けなくなってしまう。 「え、なぜ……」 「先ほどの紅茶に盛らせていただきました。ですから、あなたは今私の催眠がかかった状態になっています」 「そんな!」  しかしマリエッタがいくらもがこうとしても体はぴくりとも動かない。  それを見てエレーナは私の後ろに戻ってくる。 「お待たせミアちゃん。間が空いちゃったから、さっきのもう一回言ってくれるかしら?」  こ、こんなマリエッタに見られながらだなんて。  でもお嬢様の命令は絶対で、逆らったらもっと酷いことになってしまう。  私は泣きそうな表情で言った。 「わ、私はマリエッタ様の胸に見とれてしまいました。こんなエッチなメイドにお仕置きしてください!」  言い終えると、婚約者の前で恥ずかしい恰好で四つん這いになり、恥ずかしい台詞で大声でお仕置きをおねだりしているという状況に興奮して、全身が燃えるように熱くなってしまう。  お嬢様は私の下着を下ろすとすぐにそれに気づいた。 「ほら、ミアちゃんはエッチなメイドさんだからこの状況だけでもう濡れちゃってるの」 「ひゃんっ♡」  お嬢様は私のあそこを指でなぞると、指をマリエッタに向ける。光に照らされて指についた液体はきらりと光った。  それを見てマリエッタも顔を赤くする。 「マリエッタにミアちゃんが興奮してるところ、ちゃんと見てもらおうね? 行くよ」  そう言ってエレーナがいつものように手を振り上げる。  あれから更なる調教を受けて、私はどんどんお尻で感じるようになってしまった。だからあの手が振り降ろされれば、たとえどれだけ我慢しても私は……  パシンッ! 「ああんっ♡」  叩かれたはずなのに、痛みよりも快感が襲ってきて私は喘いでしまう。  しかもどんなに我慢しようとしても、マリエッタに見られているという状況に余計に興奮してしまう。  貴族令嬢として真っ当に育ってきたマリエッタには理解出来ない世界なのだろう、顔を真っ赤にして呆然としていた。 「ふふっ、婚約するんだからミアちゃんのことちゃんと知っておかないとね?」  パシンッ! 「ああんっ♡」 「この反応で分かると思うけど、一応言葉でも自分の気持ちを言ってあげて?」 「はい、ミアはお嬢様にお仕置きされて興奮する、エッチなメイドですっ♡」  パシンッ! 「あんっ♡ もうだめ、イっちゃいますっ♡」 「いつもより早いわね」 「マリエッタ様に、見られているから……」 「見られて興奮してるんだ。じゃあちゃんとマリエッタにイくところ見せてあげなさい」  パシンッ! 「いやっ、見られてるのに、だめぇっ、ああああああああんっ♡ お尻だけでイっちゃいますっ、あああああああああんっ♡」  こうして私は婚約者の前で、お尻を叩かれただけで無様にイってしまったのだった。 ***  一週間後、私はいつものようにお嬢様の部屋で政務をしていた。  最初はメイドの仕事ばかりさせられていたけど、最近は「家を継ぐのだから」と政務をするよう命じられている。最初は全然分からなかったけど、間違っていたらその都度教えてくださる(もちろんお仕置きもセットだけど)ので私はどんどん知識が増えていった。跡継ぎとして教育を受けていた私よりも詳しいなんて、やっぱりお嬢様はすごい方だ。  そんなことを思いつつお嬢様の部屋で言われた書類を処理していると、ドアが開く。お嬢様かなと思って頭を下げると。 「ミアちゃん、今日から新しいメイドを採用したわ」 「は、はい」  そう言ってお嬢様の後ろから、一人のメイドが歩いてくる。  こちらは私と違って黒色の長袖ロングスカートというちゃんとしたメイド服を着ていたので普通のメイドかと思ったが、 「し、新人メイドのマリーと言います。よろしくお願いします」 「うそ……」  震える声でそう言って頭を下げた彼女の顔も声も、紛れもなくマリエッタのものだった。  疑問を抱くが、なぜか私はそれを口にしてはいけないと思って慌てて飲み込むと、思わずお嬢様の方を見る。 「ただの新人メイドだから気にしなくていいわ」 「は、はい」 「これでミアちゃんも先輩メイドになった訳だから、新人の前で粗相してお仕置き……なんてことにならないように気をつけてね?」  お嬢様にそう言われると嫌でもあの日の記憶が蘇り、私も、そしてマリーも顔を赤くして俯いてしまう。  そっか、私はこれからも彼女の前でお仕置きされちゃうんだ♡  あの後何があったのかは分からないけど、一つ分かることはお嬢様は婚約者が出来ても何があってもずっと私の主人でいてくださるということらしい。  目の前のありえない光景への動揺よりも、そのことに対する安心感が勝ってしまうのだった。


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