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眼鏡2号
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MOTD 2話

「つまり、人類は生物的にゾンビに勝てないから、様々なテクノロジーと知恵でこのシェルターを建設したという訳なの。最初はシェルターはあちこちに作られたんだけど、飢餓状態になったゾンビ達に壁を壊されて侵入されたり下水から侵入されたりなことがあったから上手くはいかなかった。そこで人類は新しい対策を立てのです! それがーー」


「はいは〜い! 私知ってる!」


 前席に座っている子が元気よく手をピンと立てた。まだ生まれて10年くらいだろうから知的好奇心が旺盛。その無邪気さを妹のパイナに別けて欲しいくらいだ。


「お、じゃあ答えて貰おうかな。えっと、名前だけじゃなくて、その人達がどうしているのかもセットで喋ってみましょう」


 えー! と甲高い声を上げ後悔する子。手をあげたんだから責任は持ちなさいとミカンに諭され、渋々先頭に立ちクラスメイトの方へと顔を向ける。


「えっと…人類が新しく作った個体の名前はエディです。エディは私達の為に贄としてゾンビ達の餌として生活しています。そのお陰で私達はこうしてのんびりと日常を過ごす事ができる……ですか?」


 辿々しいが及第点だ。学校の初等教育の基本はばっちりだが、それだけでは最近の子達は興味を持たないだろう。ここからどうすれば興味を抱いてくれるか、これこそ教育の醍醐味であり勝負所である。


「うん正解。もう席に戻っていいよ」


 まるで何かから逃げるように席に戻る。

 人工製造で生み出された私達だが、一人一人性格も趣味も嗜好も異なるのは非常に興味深い。前任となった脳の思考が反映されるのだろうか。確かゾンビが発生する前の世界はきちんと子が親に似るという概念があり、それを見てその親は感極まって子を溺愛したという。私がパイナを溺愛するのと同じ感覚なのだろうか? 真実は定かではないが、今はそれを考える前に目の前の事に集中しよう。


「はい! ではここで一つ疑問が出ませんか? 何故私達人類はシェルターを作り、エディを作ってまでゾンビを遠ざけるのか」


 スクリーンを消し、照明を元に戻す。

 講義の趣旨を変えた事を悟ったミカンがやれやれと言わんばかりに両手を上げ、また携帯をいじり始めた。まぁ彼女も同じ研究をしていたから聞き慣れているのだろう。


「ここで、ゾンビに話を戻します。奴らは地球外のウイルスが元になって出来た”元は人間の新種の生物”です。そしてそれは、”私達も同じ”だということです」


 どういう事だと教室内がざわめき始め出した。もうそろそろ自分の身の回りに疑問を持ち始める年頃だからか、自分達の存在とは何なのかという問いに対して言葉が欲しいという欲求が刺激され始めたのだ。


「ゾンビが出始める前と今ではこの世界は雲泥と言って良いほどの差がありますが……今日はそこまでお話し出来ません。二つのウイルスのお話をしますね」


「二つのウイルス?」


 さっき発表してくれた子が反応する。羞恥心はすぐに収まる程興味を持ってくれたみたいで安心だ。素直な子は良い。


「この星に突如としてやってきたウイルス。その名もBとW。このウイルスは私達の体を作り替え、人間の生活を大きく変えました。人類の半分はゾンビになり、もう半分は被食者ーーつまり私達になったの。えっと、もう皆はおっぱいからミルクは出るよね?」


 互いに顔を赤らめながら周囲を見渡し、もじもじとし始める彼女達。

 が、元気な子はもちろんと言って良いほど無邪気に両手を上げ叫ぶのだ、昨日出始めましたと。どうしてかね。君はさっき人前に出てもじもじしていたのではないかね。そんな大きな声で言うのじゃないのだぞ。


「う、うん。偉い偉い。大人になった証拠だね」


 へへへと満面の笑顔で褒めを謳歌する姿に何も言えまい。きっと数年後両手を顔で覆ってちくしょーと叫ぶ事になるだろう。その時は暖かく迎え入れてあげるのだ。


「こほんっ! ゾンビと私達に感染したそのウイルスはいわば狩人の獣の関係。BウイルスはWウイルスを捕食する性質があったの。それが物事の始まりとなって、今の世界に至る訳です。ゾンビは私達のおっぱいを狙い個体が死ぬまで吸い上げます。ま、今日はこれくらい覚えて貰えば良いでしょう。何か質問はありますか?」


 しんっと静まり返る教室内。

 すると、一番後ろの席の子がおどおどしく手をあげ始めた。


「あの、ゾンビを倒す事は出来ないのですか?」


 シンプルに良い質問だ。

 当然だ。そんな凶悪な生物を駆除できないのか。人類の命題でもある。


「今までの人類の歴史を紐解いても、ゾンビに勝った歴史というのは見られませんでしたね。ですが、だからと言って諦める必要などありません。一応私はその研究もしてるし、今の所はこれといって打つてもないかなとほほ〜って感じですかね」


「え……弱点もないのですか?」


「足止め方法はいくつかありますよ! 簡単に言うと電気ですね。これは動きをほんの少しの時間止めると言うものなのでそこまで効果はないのですが、割と有効みたいですよ? 軍はもっと高性能なのを使ってたりするので実際の時間は定かではないですけど、作戦とかには有効という情報も出ているので覚えておいて損はないですね! と言ってもゾンビが襲撃してきた場合ですけど」


 そう話している内に授業終わりの時間が来ようとしていた。

 まだまだ教え足りないことが沢山あるが、一気にやってもしょうがないし、次もある。


「あ、あの! さっき老いるとかどうとか言ってましたけど、老いるって何ですか?」


「ん? ああ、うーん……簡単に言うとね。私達の寿命は35〜40年くらいなんだけど、さっき言ったウイルスがやってくる前の世界ではもっと長かったの。しかも、皆は今の姿から殆ど成長しない。それはWウイルスの特徴で、体が成長期を超えてないと身体中の毒素が排出出来なくなって死んでしまう。だから培養器の中で”成人”まで体を成長させてから世に誕生させるーーって、分かる?」


 ミカンが顔を横に振り、もう止めろと合図を送ってきた。

 流石に詰め込みすぎたか、皆ポカンと口を開けて授業が終わるのをただ待っているだけになっている。


「ま、まぁ今日はこれでおしまい! 帰りは気を付けるようにね!」

 


「メロ、はいこれ」


「ん、ありがとう。ってBASSのコーヒーじゃん。しかも微糖」


「これしかないから我慢しなさい。自販機ラインナップ変わったな……メロの好みが尽く消えてる」


「えー!? なんでー!? くっそー……業者さん訴えてやる〜」


 ミカンと一緒の時は毎回この公園で駄弁るのが日課になっている。日常の些細な事から将来のことまで、私はずっと彼女に話しを聞いてもらい、彼女はずっとうんうんと相槌を打ちながら耳を傾けてくれるのだ。

 進路を選ぶ時もそうだった。慌てふためいて頭の中が沸騰してる私に助言をしてくれるのはいつもミカンだった。将来の行き先が分からなくて塞ぎ込んでいた私と一緒に考えてくれたり、さっきみたいに学校側から講義の依頼が来た時や、新しい事に挑戦する時はいつも彼女の言葉に導かれていた。


「ねぇミカン、明日から本格的に社会人だね。学生の時みたいに自由な時間は取れなくなるし、その分お給金は沢山入るけど、今までみたいに一緒には居られなくなるかもしれないね。寂しいなぁ」


 ミカンと私は同じインフラン社と言う会社だが、配属先が違う。

 私はゾンビの研究を進めたり、有効な電撃の開発などを行う部署。ミカンは人間を生み出して成長させる培養液を研究、維持する部署だ。

 同じ会社だしそう擦れ違いすることはないだろうが、それでも側に居る時間が減るのは寂しいものなのだ。


「じゃあ今日は一緒に寝る? でもメロは人を抱き枕にするからなぁ」


「な! そんなこと言ってミカンだって人の胸に顔を埋めてずっと離れないくせに〜!」


「仕方ないだろ柔らかいんだから。あの感触は病みつきになるし、そもそもメロは離してくれないじゃない」


「むむむ、だってミカンは全体的に柔らかいし程よい熱感があって私を安眠に誘ってくれるってそうじゃないーい! 何だね! 少しはノスタルチックな雰囲気に身を寄せたいとは思わないのかね! ぷんぷん!」


「つってもどうせ仕事終わりに会ったりするでしょ? というか明日は早いんだから早く帰って準備しなきゃ。メロは明日代表者として挨拶もあるんだから」


 く、嫌な事を思い出させる。

 そうだ、明日は何十人と人の前で代表として挨拶がある。学生気分は抜け出してー社会の為に頑張ってー身を粉にしてルララーと言うのだ。


「はぁ……緊張してきた。文章もう一度読み直さないとなぁ」


 お堅い文章を書くのは苦手だ。

 頑張ります! まる! だけで済ませたいがその場で即解雇されかねないのでしっかりと準備をしなければならない。しかもインフラン社と言うのは歴史的に見ても老舗の会社で格式も高く、仕事内容だってこの第三シェルターの運営も兼ねてる。そこでの代表者挨拶なんて胃液が出そうなのだ。


「ほらほら、どちらにしろ明日の入社式終わったら皆でお祝いでしょ? 今日くらいは備えてゆっくりしなさいって」



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(´⌒ω⌒`)フヒヒ

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