ラブホテルの一室。
モダンな雰囲気のありふれた内装だ。
しかし普通の設備ではないことが一目で分かる。部屋の中央に置かれたこの場にそぐわない異質なもの。
それはボクシングリングだ。
一辺3メートル弱の小さなものであり、マットはそのままベッドとして利用できるほど柔らかい。しかしそれはリングの役目を果たすのに充分なものであった。
つまり、雌雄を決する闘いの場所である。
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「お待たせ。待たせてごめんなさいね。」
シャワールームから湯気を立てて全裸の女性が現れる。
年齢は30代前後だろうか。赤ん坊の一人がいてもおかしくない人妻の雰囲気が漂う。見事な鍛え上がった身体がなければそう思うだろう。
「凄い身体ですね。引退5年、現役時代と全く変わらない。」
そう応えたのは部屋のリングに立つ一人の短髪の青年だ。
女性に負けず劣らず仕上がった体に下着一枚という格好で軽く体を動かしていたようだ。
「準備はできています。どうしますか?」
「ありがとう。じゃあ、早速始めましょう。」
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『ボクシング経験者の男性。会える方はいますか?』
二人は人の少ない裏掲示板の片隅で出会った。
メールでやり取りするにつれ、お互いが同じ欲望を共有していることはすぐにわかる。話は都内にあるボクシングリングが備え付けのラブホテルの話題になった。
そして約束の日。青年は驚く。まさか相手が元女子プロボクサーだとは。
二人はお互いにグローブを装着しあう。二人だけでテープをまくのは骨が折れたようだ。赤黒いグローブの感触を確かめる女性。
「このグローブをつけるのは初めてね。今まで国内のグローブしか使ってなかったから。
本当にこのグローブでいいのね?」
「日本製と違い、スポンジが薄いですからね。ケガをしやすいです。あなたはヘッドギアをつけるので大丈夫だとは思いますが。」
「いいえ、私はいらない。それはあなたがつけるべきね。
私は元プロよ。引退後毎日欠かさずジムで体も作ってる。アマチュアの男性ボクサーなら今でも倒せるわ。」
先ほどまでの柔和な雰囲気とは違う。試合前の相手に対する敵意が感じられる。
全力で相手を叩き潰す、プロボクサーの気迫であった。
「……いえ、俺はつけませんよ。それならお互いヘッドギアはいらないようですね。」
女性は青年を推し量るように睨んでいたが、ふっと口元に残酷な笑みを浮かべる。
「かっこいいわね。もしあなたが勝ったら、私の身体を好きにしていいわよ。」
マウスピースを器用に口にはめ込むと軽々とロープを飛び越えリングに上がった。
一糸纏わぬ身体。肩幅はがっちりと発達し、三角筋がメロンのように盛り上がっている。胸は大きくたわわになっており、フットワークに合わせて大きく揺れた。
青年も反対のコーナーからリングインする。顔は戦闘前の緊張を帯びていた。
一糸纏わぬ年頃の青年の裸体。
目の前の雌に対する欲情か、闘いの前の興奮か。その両方か。若く逞しく勃起した青年の下半身を眺め、女性は嬉しそうに頬をほころばせる。
「あらあら。そんなに
でも、私も倒せない弱い男に身体なんて許さないわ。」
互いに赤黒いグローブを強く突き合わせる。柔らかいスポンジが軽くつぶれた。それが合図となり二人はファイティングポーズをとる。
リングもタイマーもない。心ゆくまで、どちらかが立てなくなるまで。
暗黙の了解の上、二匹の獣は雌雄を決すべく向かい合った。
natsulucy
2023-06-18 04:42:01 +0000 UTCtarupo789
2022-03-13 17:04:33 +0000 UTCGlow
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