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小説 女騎士永久封印晒し刑 前編

 床も壁も天井も石造りの通路を、ひとりの女が引かれていく。  ロクサーナ・アーシュ。  一騎当千と称されるほどの戦闘力を誇る、エルヴェシウス王国第1王女クローディア付き近衛騎士である。  いや、近衛騎士だったと言うべきだろう。  邪《よこしま》なる帝国の侵攻により、歴史と伝統に彩られたエルヴェシウス王国は崩壊。  王妃の生国にして同盟国たる隣国に王女を逃すため、たったひとりで敵を食い止めた末、ロクサーナは囚われの身となったのだから。  ジャラ、ジャラ……。  ロクサーナが足を運ぶたび、鋼鉄製の足枷どうしをつなぐ短い鎖が音を立てる。  ジャラ、ジャラ……。  ぶ厚い枷と太い鎖の重さは、それだけで歩行を困難にするものだが、彼女の身体に取りつけられた拘束具は、それだけではない。  両手を後手に拘束する、短い鎖でつながれた足枷と同じ素材の手枷。鎖骨の上から、顎のすぐ下に達する首枷。口に噛まされた、革巻きの轡。  騎士とはいえ、女性ひとりを捕らえるには過剰と思われるほどの拘束具を嵌められて、かつては王国に叛逆した重罪人が閉じ込められていた監獄の通路を引かれていく。  首枷につながれた鎖を握るのは、ギレット・ベルトレーデ。  数多の敵兵を倒し消耗しきったところで、自決する暇《いとま》すら与えず、ロクサーナを捕縛した帝国軍の女魔導師である。  拘束魔法で抵抗を封じられたロクサーナは、憎き敵の手で近衛騎士の甲冑を剥ぎ取られ、裸身に弱体化《デバフ》の魔法刻印を施された。 「う(く)ッ……」  奴隷の貫頭衣の胸元から覗く刻印に視線を落とし、ロクサーナが轡を噛みしめる。  形ばかりの裁判で言い渡された判決は、永久封印晒し刑。  それが具体的にどんな刑罰かはわからないが、単なる処刑より過酷な刑罰であることは間違いないだろう。  王国の美と智の象徴たる第1王女クローディアは、帝国がもっとも身柄を押さえたかった王族のひとり。  その最重要人物を隣国に逃したロクサーナは、帝国軍にとっては、どれほど憎んでも憎みきれない大罪人に違いない。  囚われの身となって10日。ロクサーナが毎朝、独房の牢を出されて監獄内を連行されるのも、その刑罰の一環なのだろう。  ジャラ、ジャラ……。  重い鎖を引きずりながら、石造りの通路の角を曲がると、そこは左右に鉄格子が嵌められた雑居房の一角だ。  ロクサーナが閉じ込められている要人用の独房と違い、王国の役人や近衛軍の兵士、侍女たちが収容される牢の前を、みじめな姿で引かれていく。  悔しい。口惜しい。  だが、ギレットが捕虜たちに見せつけるようにロクサーナを連行するのは、ロクサーナを辱めること意外にも目的があった。  美と智の象徴たる第一王女を護る一騎当千の近衛騎士ロクサーナは、エルヴェシウス王国の武の象徴。  そんなロクサーナが奴隷装束に着替えさせられ、拘束された姿で拷問室に連行されるさまを見せつけることで、かつて王宮に勤めていた捕虜たちに、王国と王家が滅亡したことを知らしめようとしているのだ。  その帝国とギレットの策は、功を奏している。  奴隷の貫頭衣を着せられ、鋼鉄の枷を嵌められて引かれていく女が近衛騎士ロクサーナだと気づいたとき、彼ら彼女らは絶望の表情を見せた。  王族と専属近衛騎士は一心同体。ロクサーナが囚われの身になっているということは、とりもなおさず第一王女も捕らわれたと見るのが、ふつうの考えだろう。 (轡を噛まされていなければ……)  王女殿下は無事隣国に逃れ、捲土重来の機会をうかがっていると、皆に伝えられるのに。  忸怩たる思いを抱きながらも、ロクサーナは胸を張り、顔を上げて牢の前を進む。  近衛騎士として、最後まで凛としているために。  加えて、下を向くと口中に溜まった唾液が、轡の端から涎となって垂れ落ち、よりみじめな状況に陥ってしまうから。 (この魔法刻印さえなければ……)  徒手空拳でも、鋼鉄の拘束具を嵌められていても、帝国兵の10人や20人はものの数ではない。ギレットの魔法は要注意だが、近接戦において魔導師は脆弱。 (弱体化されていても、拘束されていなければ……)  磨きあげた格闘技術でもって、近衛騎士たる自分に辱めを与えた女魔導師に一矢を報いたうえで、近衛騎士として華々しく散ることができる。  だが、叶わない。  魔法刻印と鋼鉄の拘束具。二重に弱体化させられた状態では、ロクサーナといえど並の女性以下の戦闘力しかない。 「う(く)ッ……」  もう一度、口惜しくうめいたところで、拷問室に連れ込まれた。  薄暗いその部屋には、使い込まれた拷問道具の数々が、所狭しと置かれている。  だがこれまで、それら残酷な道具が、ロクサーナに対して使用されることはなかった。  はじめ、第一王女の逃走計画の詳細を厳しく詰問されるのかと思ったが、そのために拷問にかけられたりはしなかった。  つまり、王女はすでに隣国に逃れたと、帝国は確認しているのだろう。  ともあれ、拷問と称して連れ込まれた場所で行なわれるのは、ギレットの性癖を満足させるための行為。  一騎当千の近衛騎士を捕らえた功績により、刑の執行までのあいだ、女魔導師はロクサーナの身を自由にする権利を与えられているのだ。 「うふふ……」  妖しく輝く目を細め、ギレットが首枷の鎖を、天井に設えられていたホイスト(手動巻き上げ式吊り上げ器)のフックにつないだ。  そして、薄く嗤ったまま、ホイストのチェーンを巻き上げ始めた。  ジャラララ……。  耳障りな音とともに、ホイストのフックに接続された、首枷の鎖が巻き上げられる。  やがて鎖がピンと張り、その場から動けなくなる。  さらに巻き上げは続き、首枷に首を軽く絞められて、つま先立ちを強いられる。  そこで、ギレットが巻き上げを止め、背後からロクサーナを抱きしめた。  王国の近衛騎士と帝国の女魔導師の身長は、もともと同程度。ギレットが踵の高い靴を履いているため、つま先立ちを強いられた裸足のロクサーナと、頭の位置はほぼ同じになっている。 「今日も、気持ちよくさせてあげるわ」  耳元でささやき、ギレットが貫頭衣の脇の隙間に手を滑り込ませ、胸の膨らみの頂でぷっくり膨れた乳首に指を這わせた。  そこには、敏感な肉を穿ち貫いて、バーベル形のピアスがあった。  それは、この拷問室で、ロクサーナに課された唯一の痛みを伴う行為である。  今日と同じように首枷を吊られて動けなくされ、ロクサーナは乳首にピアスホールを穿たれた。  とはいえ、激しい痛みを覚えたのは、バーベル形のピアスを嵌められるまで。  両の乳首に金属製の装具を取りつけられた直後、治癒魔法で傷は癒され、まばたきをするあいだにピアスホールは安定していた。  それからは拷問室に連れ込まれるたび、敏感な肉を穿ち貫く金属も利用して、乳首への玩弄を繰り返されている。 「うふふ……」  耳元でギレットが、バーベル形ピアス両端の金属球を指で弾いた。 「ふ……ッ!?」  とたんに、妖しい感覚が駆け抜ける。 「う……ッ!?」  乳首そのものではなく、ピアスを繰り返し弾かれ、妖しい感覚が大きくなる。  それは、性的快感の予兆のような感覚である。  この感覚がもっと大きくなると、性の快感へと変わるのだ。  はじめ、自分がそうなるのは、ギレットが淫なる魔法を使っているからと考えた。  だが、いやらしく乳首ピアスを弄るに際して、彼女が魔法を発動させた気配はなかった。  次に、肌に刻まれた弱体化の魔法刻印の影響を疑った。  しかし、もしそうだとしても、肉体の弱体化と淫乱化は別物。  仮に影響を受けて精神の抵抗力が衰えることがあっても、それは襲いくる快感に耐えられるか否かの問題であり、快感が生まれるかどうかは関係ない。  実のところ、乳首そのものに触れられなくても性的に昂ぶるのは、ピアスが快楽の急所たる場所の内側の肉に接しているからである。ピアスを指で弾かれることで振動が伝わり、乳首が内側から刺激されるのだ。  加えて、ギレットは魔法のみならず、淫技においても達人である。  ロクサーナのような性的な経験に乏しい娘を、淫らに翻弄するなど朝飯前。性体験がないということは、行為によって生まれる快感を抑える術《すべ》も知らないということなのだから。  とはいえ、そんな事情を、ロクサーナは知らない。  わかっているギレットは、けっして教えない。  知らず教えられないまま、ロクサーナは乳首ピアスを女魔導師に弄られる。 「ふっ、ふっ……」  襲いくる快感に、轡を噛みしめて耐える。 「ふっ、んっ……」  漏らす吐息が少しずつ、甘みを帯びていることにも気づけずに。 「ふっ、うっ、んッ……」  ロクサーナは、憎き敵の玩弄を甘んじて受ける。 「んっ、ふっ……ンあッ!?」  ひときわ大きい快感に襲われ、思わず声を漏らしてしまった。  口中に溜まっていた唾液が轡の端からこぼれ、顎を伝って胸に落ちたことも、もはや気に留める余裕はない。 「あッ、ぅあ……ッ!?」  駆け抜けた快感の余韻に蕩けさせられながら、玩弄の標的が乳首本体に移ったのだと気づいたところで、人差し指と親指で乳首をつままれた。 「うっ……ンぁあッ!?」  つまんだ乳首をクリクリとこねられて、いっそう蕩けさせられた。  来る日も来る日も、動けない状態でいやらしく責め続けられたせいで、ロクサーナの乳首はすっかり開発されてしまった。  その事実すら教えられないまま、ロクサーナはただ、乳首を責め続けられる。  こねていた乳首を押しつぶすように、ギレットが指に力を込めた。 「んっ、ぅああッ」  外から指に、内からピアスに敏感な肉を刺激され、快感がさらに大きくなる。 「ずいぶん、気持ちよさそうね?」  ロクサーナの反応を見て、ギレットが声をかけた。 「う、ぉんああぇ(そんなわけ)……」  ないと言いかけたところで、もう一度乳首を押し潰された。 「あ、ンぁあッ!?」  不意打ちで襲いきた快感に、思わず艶めく声をあげてしまう。  いいように翻弄され、悔しい。 「うぅ(くっ)……」  くるおしくうめき、声を抑えようと気を引き締める。  とはいえ、乳首に生まれる快感までは止めようがない。 「うっ、ふッ、うッ……」  それでも、轡を噛みしめて耐える。 「うっ、うッ、んッ……」  耐えているうちにも、快感はどんどん大きくなる。 「んッ、んふ、ンぅん……」  漏らす吐息が、ますます甘みを帯びてくる。 「ぅん、あっ、ああッ!?」  大きい快感に襲われ、思わず声をあげてしまった。 「うッ……ふっ、うッ……」  ハッとして、声を抑えていられたのは、わずかなあいだ。 「うッ、うッ……あうッ!?」  いやらしい手つきで乳首を弄られて、再び艶声を抑えられなくなった。 「あっあッ、ああッ!」  乳首へのギレットの玩弄に、いっそう肉を昂ぶらされる。  押し寄せる快感に、いよいよ頭が蕩けていく。  もう、ダメだ。  昂ぶりも、高まりも、それで漏らす声も、抑えることができない。  昂ぶり蕩けるペースが、囚われてすぐの頃より速くなった気がする。 (なぜ……どうして……)  自分はそうなってしまったのか。  無垢な女騎士にはわからない。  乳首を穿ち貫くピアスが、敏感な肉を内側から刺激していることも。ギレットが卓越した淫技を身につけていることも。そのうえで、乳首の開発が日々進んでいることも。  性の経験も知識も乏しいロクサーナは、理解できていない。  そして、快感に翻弄され、考えることすら難しくなった頃。 「乳首の性感開発は成ったようね……1回、イッとく?」  蕩けていくロクサーナの耳元で、ギレットがささやき。 「うぇ(え)……?」  言葉の意味がわからず、ロクサーナが訊き返そうとしたときである。 「……ッ!?」  これまでで、一番大きい快感に襲われた。 「ッ、あッ、あっあッ!?」  乳首になにをされたのかもわからないまま、ひと息に飛ばされた。  ビクン。  縛(いまし)められた身体が跳ねる。  ガクン。  脚から力が抜け、首枷で支えられる。  首が絞まっているはずなのに苦しさを覚えないのは、なんらかの魔法的処置が施されたのか。  わからない。  わからないし、考えられない。  押し寄せる快感に飲み込まれ、押し流され、翻弄され、ロクサーナは――。 「うッ、ィ、ウぅあァあああッ!」  あられもなく嬌声をあげ、性の悦びの境地、絶頂に到達させられた。  その日から、ロクサーナは毎日、乳首だけで絶頂に追い上げられた。  憎き敵の女魔導師の手でたどり着かされた性の頂は、不思議な世界だった。  そこで恍惚に酔っているあいだだけは、囚われの身を好き勝手に玩弄される屈辱感も、狼藉を繰り返すギレットへの憎しみも、忘れていられた。  いや、正確には忘れられるわけではない。  絶頂の世界で味わえる多幸感が、負の感情を覆い隠しているだけだ。  そして、恍惚から醒めると、揺り戻しのように嫌悪感に襲われる。  憎き敵の手で、本来は愛する人と行なう行為でたどり着く場所に追い上げられたことに。そこで、幸福感を覚えてしまう自分自身に。  同時に、心のどこかで快楽を求める気持ちも生まれてきた。 (もし……)  幸せに満ちた恍惚の世界に、ずっと漂うことができたなら。  ふとそう考えてしまい、首を振って不埒な思いを頭から追い出すことが増えた。  そんな日々がさらに10日ほど続いた頃、ギレット・ベルトレーデが、帝国軍の兵士を引き連れて現われた。 「これより、永久封印晒し刑を執行するわ」  ついに、そのときが来たのだ。  とはいえ、特別な感慨はなかった。  囚われの身となったときから処刑される覚悟をしていたロクサーナのなかにあるのは、ギレットによる辱めが終わることへの安堵と、刑の中身がわからないことによる、いくばくかの不安感。  それすら表情を引き締めて包み隠し、ロクサーナは拘束されたまま、自力で立ち上がって牢を出る。 「うふふ……刑が執行されると聞いても、そんな表情ができるのね。よほど強靭な精神力を持っているのか。それとも、永久封印晒し刑の恐ろしさを知らない無知ゆえか……」  するとそう言って、ギレットが首枷に鎖をつないだ。  いつものように首枷につないだ鎖をギレットに握られて、ふだんと違って後方をふたりの帝国兵に護られて、長い通路を歩かされる。  そうして連れ出された者は、二度と監獄に戻ってこないと知っているのだろう。見送る牢内の人々が、ロクサーナに憐れむような視線を向ける。見知った者のなかには、滂沱《ぼうだ》の涙を流す者もいる。  心残りは、口に噛まされた轡のせいで、第一王女の無事を伝えられないこと。そうと知れば、無実の罪で囚われている彼ら彼女らは、希望を持って囚人暮らしに耐えることができる。  とはいえ、それは叶わない。  ならばせめて、近衛騎士として凛としていなくてはならない。  そう考えて、ロクサーナは胸を張って牢の前を進む。  拷問室の前を通過し、さらに先へ。  やがて石造りの通路が終わり、ロクサーナは屋外に引き出された。  居並ぶ帝国軍の将兵のなかを鎖を引かれて歩かされ、たどり着いた場所でロクサーナを待ち受けていたのは、逆海老反りの女性の身体を象《かたど》り、顔にあたる部分が開口した黒い金属の塊だった。 (ま、まさか……)  この金属塊に閉じ込めて、ロクサーナを晒そうというのか。 (だが……)  それは、最後の好機でもある。  構造を見るかぎり、金属塊に閉じ込めるためには、いったん拘束具を外さなければならないだろう。  その瞬間、まずはギレットを打ち倒す。続いて、警護の兵士から武器を奪い、ひとりでも多く帝国軍の将兵を道連れにする。  そう考え、反攻の機会を待つロクサーナの前に、鎖で吊られていた女性形金属塊が下ろされた。  それから、首元にぶら下げられていた、ロクサーナの身分と名前が書かれた札が外される。  数えきれないほどのボルトナットも外され、金属塊が縦にふたつに分かれる。  そこで、警護の兵が、粗末な奴隷の貫頭衣を短剣で切り裂いた。  乳首にピアスが取りつけられた胸も、お股も、女性として秘しておきたいものすべてが衆目に晒される。  近衛騎士がこれまで味わったことがない、激しい屈辱と羞恥。  だがそれにも、ロクサーナは耐える。  拘束具を外され、最後の反攻が可能となる、そのときまでは。  しかし――。 「うふふ……」  薄く嗤って、ギレットが魔法を発動させた。  ロクサーナを捕らえるときにも使われた拘束魔法だ。 「拘束具を外されたら、私と兵士を討ち倒し、それから……おまえの思惑は、とうの昔にお見通しよ」  最後の反攻すら封じられ、悔しさに唇を噛むロクサーナにいじわるく告げて、ギレットが警護の兵士に命じた。 「この女を、永久封印拘束具に閉じ込めなさい」

小説 女騎士永久封印晒し刑 前編

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