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瓢箪から駒

会社を首になった。いや厳密には潰れたのだが……。同じことだ。転職先は決まっていない。憂鬱に苛まれながら、私は行きつけの飲み屋に足を運んだ。週末は会社帰りにここで飲むのがささやかな楽しみだったのだけど、それももう終わりだ。 マスターは私より数歳下の温和な顔つきの青年で、話すだけでもちょっとだけ気分が晴れたものだった。まあ話すと言っても...

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ある人魚の話・アフター

山岡さんが一週間の出張に行かなければならなくなったので、その間私は彼の知り合いの家に預けられることになった。自分で自分の面倒を見られないとは情けないけど、しょうがない。今の私は体長30センチ程しかないし、水の中でしか生きられない人魚になっているのだから。 昔勤めていた水族館で、私は客引きのため人魚に改造された。最初は期限付きだったはず...

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オタサーの人形姫②

金髪フィギュアになってしまい、しばらくは恥ずかしくてまた顔を上げられない日々が続いたものの、次第にふっきれつつあった。別に金髪にしてる人なんていくらでもいるし。でも私が金髪にしてるとなんか違うんだよね……。上手く説明できないけど。 部長だけでなく、花咲さんも漫研に顔を見せなくなった。噂によると部長の家に通ってアシをしているらしいけど...

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オタサーの人形姫①

「えへへ~、こんばんは~」 男共は色めき立ち、我先に花咲さんに近づいていく。いい年して全身どピンクの女の何がいいんだか、私には皆目わからない。言わないけど。 彼女が近づいてきたので、挨拶を交わした。相も変わらずキンキンのアニメボイスで、無理して出してる感がすごい。 男の一人が椅子を引くと、花咲さんはさも当然かのような顔でそこに座った。...

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人形の花嫁 イラスト添付バージョン

「人形の花嫁」の挿絵付きバージョンです。 内容は他サイトで販売しているものと同一なので、支援者の方は購入の必要はありません。

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逆転人形②

解放されたのはなんと翌日。私は魔法少女のフィギュアになったまま眠らなければならなかった。身動きのとれない苦しみがここまで辛いなんて。ひょっとしてルナは私に仕返しするために……いや。ルナはただのAIだし、ポーズ中は止まってるから苦しみなんか味わわないはず。ルナはきっと、人間は固まっても意識が途切れないということが、動けないと苦しいという...

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逆転人形①

「ただいま~!」 誰もいない1LDKの城に、私の声が響き渡った。テーブルの上に転がっているプラスチック製の安っぽい懐中電灯のようなライトを手に取り、本棚の一番下の棚にむけてスイッチを入れた。18センチ前後のフィギュアが数体並ぶ中、一際大きな30センチ大のフィギュアがゆっくりと歩き出した。 「おかえりなさい、マスター」 私のAIフィギュア、ルナだ。黒...

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カノジョツクール

「うわおっかけボール早!」 「やっとまともになったよなー、マジ超加速ゲーだったし」 「いや今も超加速ゲーだろ」 「それなー」 「は? いや今のおかしくね?」 「あーそれ正面向いてねーと横いくから」 「いやいやおかしいだろ、今すぐ目の前にお前いたのに壁ツッコんでったじゃん」 「あーそれ多分コース形状無視でさ、直線距離で一番近い敵判定してる気ぃ...

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退魔師の喫茶店

私は同期の二人と一緒に開業することになった。退魔師として修行を積んでいる間、塾の中で最も成績が良かった三人が春香、里奈、そして私だ。ビッグ3などと呼ばれて称えられていたけど、私は三人で一纏めに褒められる度、内心悔しかった。上位二人と私の間には、かなりの実力差があったからだ。春香と里奈は天才というやつで、私がどんなに勉強しても、術の練...

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いじめ防止用フィギュア③

流石の三人も根負けしたのか呆れたのかは知らないが、あれ以後科学部にちょっかいをかけに来ることはなくなった。石田さんの話によると、特に目立ったいじめもなくなったらしい。唯一の救いだと言っていい。ここまでやって無意味だったなら、私本当に馬鹿みたいだし。 石田さんも日に日に明るくなってきて、初めは距離感のあった科学部員たちとも少しずつ打ち...

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いじめ防止用フィギュア②

部活が終わり、部屋の明かりが落ち、私は真っ暗な部室の中で泣いていた。泣くと言っても心の中でだ。涙も流せないのだから。 突然、部室に光が戻った。 (んっ……誰?) 誰か戻ってきたらしい。 「あ、先生……」 (石田さん?) すると急に私の体が元通りになった。 「ひゃっ!?」 私はバランスを崩して転倒した。体が……動く!? 元に戻った! 「あ、あの...

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いじめ防止用フィギュア①

退院してしばらく。教え子から連絡が届いた。会って相談がしたい、話を聞いてほしい……と。ちょうど人手が必要だったので、私は彼女を自宅に招いた。 当日、玄関先に現れた彼女は以前よりずっとやつれて見えた。 「先生……こんばんは」 「こんばんは。会えてうれしいわ。さ、上がって上がって」 靴を脱いだ彼女が床を踏んだ瞬間、ちょっとした振動を感じた。...

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マイライフカード

ダークネットから得られた情報によると、マイライフカードは既に割られているらしい。これが本当だとしたらスクープだ。私は早速、この件を探ってみることに決めた。 二十年前から導入されたマイライフカードは、全ての個人情報が集積された身分証だ。生年月日に学歴、勤務先、賞罰、各種手続き用の個人番号がこれ一枚に記載されている。親世代ではこのおかげ...

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バーサスドール イラスト添付バージョン

「バーサスドール」の挿絵付きバージョンです。 内容は他サイトで販売しているものと同一なので、支援者の方は購入の必要はありません。

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メイド喫茶のアルバイト②

次のシフト日。整備室で着替え終わると、出入り口にロボ店長が仁王立ちしていた。 「……あの、どいてくれませんか? 通れないんで……」 「AIのアップデートを行ってください」 「え? いやその」 「AIのアップデートを行ってください」 「それって……」 振り返ると、円形の充電器の上に立っているメイドロボたちが瞳に映った。ロボットのことだよね? 多分...

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メイド喫茶のアルバイト①

バイトに受かった。探した中では一番時給の高いバイトだったので、私は安堵した。これで生活なんとかなりそう。 初日に店に着くと、改めて圧倒される。パステルカラーの店内に、フリル満載の制服。そう、ここはメイド喫茶だ。正直かなり恥ずかしいけど、ここを選んだのには理由がある。まずは時給。そして大学から程よく離れていること。知り合いが来たら死ね...

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人形ランク

「花咲クルミです。よろしくお願いします」 私が頭を下げると、正座した巨人がクスクスと笑った。 「もー、そんな固くなんなくていいのにー。やー、でも可愛いー」 落葉さんは前かがみになって、冷蔵庫ほどもある大きな顔を私に近づけた。肌の汚れ、目ヤニ、全てが鮮明にくっきりと見えてしまう。気持ち悪くていやだな。逆に向こうからは、私の細かい箇所は全...

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立場が決める②

よくよく調べてみると、私たちの変化は肌だけじゃなかった。安っぽいペラペラのコスプレ衣装が、いつの間にか厚くてしっかりとした硬度のある服になっていたのだ。触るとゴムみたいにブニブニした感触がある。形が固定されていて変えられない。普通に考えれば、動くとつっぱるはずなのに、何故か手足や腰の動きに柔軟にフィットした。だから気がつかなかった...

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立場が決める①

私たちは朧邸の門前からにべもなく追い返された。こらえて下手に出ても、正面切って抗議しても、取り付く島もなかった。こんな横暴が許されていいのだろうか。かといって、私たちの業界は訴訟とかはできないし……。私と春香は肩を落とし、しょげ返ってお屋敷から離れた。 私たち二人は、県北の小さな町で退魔師を営んでいた。田舎なのでまだ妖怪なんかがそこ...

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スノードームの妖精 イラスト添付バージョン

「スノードームの妖精」の挿絵付きバージョンです。 内容は他サイトで販売しているものと同一なので、支援者の方は購入の必要はありません。

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化石剤

私はリンゴの経過をまとめ終わった。コーティングから一年、中のリンゴはその状態を寸分変えることなく保存されている。あらゆる成分が一年前そのままだ。取り出せば食べることができるだろう。全く不思議な感じだった。透視検査用の装置から出てきたリンゴは灰色一色で、その質感は石そのものだというのに。指先で触れてみても、ツルツルした石材の肌触りし...

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嘘つき人形②

「なんで嘘ついたの~? 嘘ついちゃいけないんじゃなかったの~?」 雄太くんは執拗に私を問いただした。心底腹が立つ。 「わ、私は別に、やりたくてやったわけじゃ……。あの子が可哀想だったから……だ、大体、君たちが月夜ちゃんを仲間外れにするなんていうから!」 「へ~? 持ってないと遊べないじゃ~ん」 「あのね~」 「嘘つき~。嘘つきおばさ~ん」...

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嘘つき人形①

「こら! なんで嘘ついたの!」 私は目の前の男の子を叱りつけた。少し前まで溝の側で泣いていたこの子は、ニヤニヤと笑うだけで、悪びれもせず、誠意がこもっていない謝罪を繰り返すばかりだった。挙句の果てには、 「別にいーじゃん、みんなやってるし」 と開き直った。 「やりません」 「おねーさんだって嘘ついたことあるでしょ」 「君みたいな嘘はついた...

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人形市場②

1.独身男性 私は独身男性の申し出を受けることにした。プロフィールだと一番年収が高い。生活には困らなさそう。 数日後、私は施設を去った。結局、髪は金髪のまま元に戻せなかったけど、後で何とかしてもらおう。 「わあ……」 彼の家には、既に万全の受け入れ態勢が整っていた。私と同じスケールの、大きなドールハウス。外装は中世ヨーロッパ風で、ちょっと...

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人形市場①

「では、プロフィール記入が終わりましたら、お呼びください」 担当の女性は地響きと共に歩き去った。パッと見同年代だけど、その背丈は私の十倍はある。十六センチの私には、彼女の産毛、肌の染み荒れ、血管、全てがハッキリ目視出来てしまう。他人の汚れなんて見たくはないけど、どうしようもない。私はベッドほどもあるタブレットの上に座り込みながら、た...

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自己同一性アイドル

またマネージャーに呼び出された。内容はいつもの小言。耳にタコができちゃう。レッスンなんて面倒くさくてやる気になれない。あんなもの真面目にやってる連中の気が知れない。芸能界に入れば楽して大儲けできると思ったのに、歌やダンスの練習だの敬語がどうのと七面倒くさく煩わしいもんばっか。アテハズレだ。ちょっと芸能歴が長いからってなんで一々顔色...

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マスコットガール イラスト添付バージョン

マスコットガールの挿絵付きバージョンです。 内容は他サイトで販売しているものと同一なので、支援者の方は購入の必要はありません。

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幼稚園の赤ちゃん先生

椅子に座ると、床に全然足が届かない。座る時にも、落葉先生に持ち上げてもらわなければならず、内心結構恥ずかしかった。体が縮む奇病、人形病を患った私の体は、今や身長六十センチほど。幸い無事に寛解したので、今日職場に顔を出してみたのだけど、みんな復帰に難色を示した。何しろ幼稚園というのは幼い子供たちを相手にする体力勝負の場だ。分別や遠慮...

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人形は女の子

仕事が早く終わった日には、自転車を飛ばして病院へ駆けつける。残業や飲みがある日を除いてほぼ毎日……いや、毎日見舞いに行っている。病室の妹は一昨日と大して変わっていないように見えたが、先生の言うところによると、まだ縮小しているらしい。十六歳の妹が人形病に罹ってから二か月近く。百六十以上あった妹の体は、既に百センチを割り込んでしまった...

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人形の花嫁

今月もカツカツだった。とてもじゃないけど趣味や贅沢に回す余分はない。これから三十半ばまで奨学金を返し続けなければならないのかと思うと気が滅入る。調子に乗って院進などするんじゃなかった。既に食費も相当切り詰めているのに、ちょっと油断すると足が出そうになる。辛い。親が学費を出してくれた友人たちは社会人になってもライブにいったりしている...

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