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闘技場支配人の苦悩 9話【破壊描写有り】

「――――サルメラ選手、最近見ないですね」  支配人ダグへと資料を手渡してからノーラが言う。 「あぁ、こんなに長く休場するのは初めてだな」  前回の試合からもう三ヶ月近く。  人気選手にここまで休まれると支配人としても痛かった。 「どこかで暗殺でもされたのでは?  あちこちで怨みを買っているでしょうし」  怨みを持つひとりでもあるノーラがさらりと言い放つ。 「い、いや… 町で見かけたっていう情報はあるから…  単に骨休めしてるだけじゃないか」 「……そうですね」  残念そうな反応がどこまで本気なのか。  ノーラは表情を曇らせたまま本題へと移る。 「―――今お渡しした紙に書かれている〝リーゼル〟という  選手ですが、ご存じでしょうか?」 「あぁ、最近調子の上がってきている選手だろ。  一時期は負け続きだったが〝何かコツ〟を掴んだのか、  現在は五連勝中だったよな」  多忙な身のダグはすべての試合を見ることは出来ないが、  そんな彼の耳に入ってくるほどリーゼルは注目され始めていた。  しかし、彼女の試合記録を見たノーラはすぐに違和感を覚えた。  既視感と言ってもよい。 「そのリーゼル選手についてちょっとお話が」  淫魔(サルメラ)の試合と同じ現象がいくつも見受けられたのだ。  五連勝した全ての試合、彼女の相手は五人とも男。  そのほとんどが、試合の序盤か中盤に勃起を確認できていた。  リーゼルは剣士であり露出も少ない女性選手だが、  男たちは何故か股間を膨らませてしまう。  更には射精と思わしき〝痙攣と股間のシミ〟も確認済み。  その際、リーゼルは一度も男性器を触ってはいない。  これはもう人間の女性に出来る芸当ではなかった。  ノーラが資料を見せつつ報告する。 「――――確かに、ノーラくんの言う通り変だな」 「この目で確認するため、昨日の試合を見に行ったのですが、  男性客にも勃起が確認できました」   「客に!?」 「はい。 リーゼル選手の器量は良い方ですが、  ガチガチの剣士装備の彼女を見てペニスを充血されるのは異常  としか言いようがありません。全ての客を見渡せた訳ではありませんが、  少なくとも…… 十本以上のペニスが勃起していました」  指折り数えるノーラが結論を口にする。 「おそらく… いえ、間違いなく【淫魔化】されていると思います」  反応の薄いダグへ「知ってます?」とノーラが尋ねると、  首を横に振ったので簡単に説明する事にした。 「――――そ、そんなことが、出来るのか?」 「えぇ、滅多にないことなんですけど」  タグが渡された資料を再び手に取り、  〝試合内容の詳細〟へと目を滑らせていく。    『リーゼル対グリーズ』  ランタに快勝した日から二週間後。  リーゼルは過去に辛酸をなめさせられた相手との  リベンジ戦へと挑んだ。  グリーズは熊のように毛深い大男。  武器は持たぬが、前の試合ではリーゼルの剣を素手で弾き飛ばし、  そのまま彼女を地面へ投げつけて勝利している。  だからか、グリーズは恐れるに足らんと言った様子で  大胆に距離詰めていくのだが、リーゼルの間合い一歩手前で停止、  息を荒げて〝不自然なほどの前屈み〟となる。  直後、拳を振り上げた時に〝生殖器の位置〟が膨らんでいるのを確認。  原因は分からないが勃起したものと思われる。  グリーズの動きにいつものキレは無かったがリーゼルは  一度勝っている相手、強引に攻めても勝てると踏んだのだろう。     しかし、それが敗因となる。  回避に徹したリーゼルが大きな拳を三回避けたところで  攻めに転じ、肥大化した股間部を斬ったのだ。  その際、彼女の目は迫りくる拳を注視したままであり、  〝標的〟を見ることなく斬ったという事になる。  治療室からの報告ではペニスの〝亀頭部分のみ〟が  斬り落とされていたとのことで、まるで  〝ペニスの位置を肌で感じているかのような〟凄技だった。  試合はその一撃にて終了。  タフな選手だがペニスを斬り落とされた事により戦意喪失。  血が噴き出す股間を押さえながらあっさりと負けを認めた。  『リーゼル対ネトドン』  このネトドンもリーゼルが一度完敗した相手である。  普段は人型だが戦闘になるとスライム形態へと戻り、  うねうねと半透明の体を試合場のあちこちに分裂させて  戦う珍しいタイプの選手だ。  高威力、広範囲の魔法を扱えるものにとっては戦いやすい相手だが、  剣士のリーゼルにとっては相性が悪く、前回の試合では  斬って再生されてを繰り返したあげく、スタミナが切れたところを  触手状のスライムで弄ばれるという恥辱を受けている。  内容は完敗だが、男性客からの受けは良かったらしい。  今回も剣士のリーゼルには勝ち目のない相手かと思われたが、  いざ試合が始まってみると―――― まさかの完勝。  たった一撃でネトドンを気絶させたのだ。  試合開始直後、前回のように体をあちこちに分裂させていく  ネトドンだったが、リーゼルはそのうち一体に向かって剣を投擲(とうてき)  頭部へと刃が刺さると同時に全ての分裂体が苦しみ出し、  泡を吹いて気を失ってしまったのだ。  スライムならば分裂の一体がやられるくらい平気なのでは?と、  客たちも思っていただろうが、勝利後インタビューにて  リーゼル本人が明かしてくれた。  スライムにも性別があり臓器もある。  脳や心臓、そして生殖器など重要な臓器のみだが、  半透明なスライムの中にもあるというのだ。  人のそれとは違って臓器も透明なので視認することは出来ず、  かつ体内を自由に移動させているので剣で狙い打ちするのも困難。  だが、リーゼルは確かにこう言った。 「たぶん、脳も心臓も別々の分裂体へと持たせ 、常にアタシから距離を取るようにしてたんだろうけど、  あいにく、チンポと玉の位置なら分かるんだよ♪  んで、玉を頭部へ隠している分身へと剣を投げつけてやったって訳さ♪  透明で見えなかっただろうけど、ちゃーんと真っ二つになってるよ。  …あぁ、玉ふたつを真っ二つだから四分割か。 ハハっ♪」  この言葉からも〝男性器の位置を読み取る能力〟を  会得したことがうかがえる。  睾丸を切断されたネトドンはそのまま治療室送り。  これでリーゼルは三連勝となった。 『リーゼル対ドルキ』      リベンジ戦が続いているのはリーゼル本人が望んだからだろう。  ドルキも彼女に黒星を付けた相手であり、  遠距離攻撃を得意とする魔法使いだ。  前回、特に秀でた能力のない選手であるリーゼルは  近づく事も出来ず敗北していた。  それでも、ここまで彼女の連勝を見ていた者なら分かる。  リーゼルの中で何かが、確実に何かが変わっている。  この試合、彼女に勝ち目がないと思う者の方が少ないだろう   そして〝変化〟は試合開始直後のドルキにも起こった。  相手との距離を取り、魔法の詠唱を始めたドルキに対して  リーゼルはすっと剣を向けた。 それだけで……  グリーズと同じような〝不自然なほどの前屈み〟となったのだ。  その後も魔法の詠唱をするたびにリーゼルは剣の先を向け、  ドルキがびくびくと震えて詠唱を止めてしまう。  この繰り返しが四回くらい続く。  リーゼルは明らかに〝何か〟を飛ばしている。  剣技でも魔法でもない〝何か〟  判別は出来ないが、ソレによりドルキは魔法を唱えられず、  そればかりか、ローブの正面に〝テント〟を作ってしまう。  これもグリーズと同じく〝勃起〟だろうが、こうなると  リーゼルの飛ばしていた〝何か〟の性質が見えてくる。  彼女は〝男が性的に興奮する何か〟を飛ばし、  集中力を乱して魔法の詠唱を阻害していたのだ。      しかも、ソレは距離が近ければ近いほど強力になるらしく、  リーゼルが間合いを詰めてから剣を向けると、ドルキの体は  ひときわ大きく跳ね、テントの先端にはシミが広がった。  男の性的興奮の最終段階、〝射精〟が起きたのだ。  ドルキの顔が恍惚に歪むとリーゼルはそれを見て嗤い、  素早い剣撃で相手の両腕を切り落とした。  おびただしい出血と悲鳴が上がり、ドルキが地面を転げ回る。  勝負あり。だが、半死半生のドルキが動きを止めた瞬間、  リーゼルが股間を踏み抜いたのだ。  まさかの駄目押しに場内は騒然となるが、試合終了が  宣言されてないので反則ではない。  闘技場ではどんな目に会おうと弱い方が悪いのだ。  リーゼルが四連勝を上げる中、ドルキは白目を剥いて気絶した。  報告では、両腕の切断の他に海綿体が三か所ほど断裂していたそうだ。 「―――――まぁ、コレを見る限り〝淫魔になった〟って  言われた方が納得できるな」  リーゼルの四連勝まで目を通したダグが後頭部を掻くと、  〝その続き〟をノーラが語り出す。 「昨日行われた試合でも淫魔の片鱗が見えました。  先ほど申し上げた男性客の勃起もそうですが、  〝人間には不可能な剣技〟の使用もありましたので…」 「剣技? 淫技じゃなくて?」  聞き返すと、『リーゼル対バース』の試合を直接見た  ノーラが順を追って説明してゆく。 「相手のバース選手も剣士ですが… 重戦士と言うのでしょうか?  リーゼル選手の剣より遥かに長くて分厚い大剣を持っておりまして、  前回の試合ではたった一撃にてリーゼル選手を破っております」 「よく死ななかったな」 「同感です。 …運が良かったんでしょうね。  資料には〝ガードしたが場外まで飛ばされて気絶〟と書いてあります」 「へ、へぇ」 「―――で、今回も剣士と剣士、剣と剣の戦いとなったのですが、  何故かドルキ戦で見せた〝遠距離攻撃〟の使用は見られませんでした」  リーゼルは遠距離から魔法使いを完封するほどの能力を持っている。  それは重戦士のようなタイプにも非常に効果的な能力であり、  使わない理由が見当たらない。と、ダグも疑問符を浮かべていた。 「今回は使えなかったのか、あえて使わなかったのか、  同じ剣士として〝剣のみ〟で倒すことにこだわった、という  可能性もあります。 ……そして、彼女はやり遂げました」  少しもったいぶった言い回しを挟み、  リーゼルとバースの攻防内容を述べ始めた。 「リーゼル選手は避ける事に徹していました。  防御不能の大剣を振り回されているのですから当然でしょうけど、  序盤はバース選手が一方的に攻め続けていましたね」 「でも躱したんだろ?」 「はい、リーゼル選手は素早いほうでありませんが、  それでも相手の剣をよく見極めて躱し続けていました。  そして、よく見極めたからこそ反撃のタイミングを掴めたのです」  ノーラが剣を振るジェスチャーを交える。 「こう… バース選手の大剣を掻い潜り、相手の胸や腕へと  剣を突き立てたのですが、これも妙な行動でした」 「ん?」 「だって鎧の隙間を縫って攻撃するならまだしも、  胸や腕はバース選手もがちがちに守っているところですよ。  鎧を打ち砕くほどの腕力が無いため、逆に剣の方が弾かれてしまいます。  それでも懲りずに鎧のある部分のみを打ち続けたのです」 「……それは妙だな」 「ですが、妙なのはバース選手も同じ」    「え」 「鎧を剣で叩かれているうちに他の男たちのように  〝不自然な前屈み〟になったんです」  資料で何回か出てきた〝前屈み状態〟    それはもう〝勃起〟と同義だった。 「こうして隙が出来たバース選手の足へとリーゼル選手が斬りかかります!」  ノーラが段々と芝居がかった口調になっていく。 「足に鎧は無く、とうとうリーゼル選手の剣が直撃!  しかし、何故か足は少しも斬れておりません。  その代わり、バース選手の股間が大きく盛り上がったのです。  前屈みでも隠し切れないくらいドーンと」 「ドーンって…」 (フル勃起したってことか… でも斬られて勃起って、   いや、斬られてはないのか…? んん?)  少し混乱してきたダグをよそに話はクライマックスへと突入する。 「足に剣が当たっても出血せず、逆にペニスが充血。  バース選手も訳が分からなかったでしょうね。  ますます隙が広がり、追撃を許すこととなりました。  リーゼル選手は剣を両手で握り、及び腰となっている相手の  肥大化したペニスへと……  三連撃を喰らわせたのです!」 「ッ!」  ダグの股間がひゅっと縮み上がった。 「――が、またしても斬れることはありませんでした。  テントが揺れ動くほど激しく当たっているにもかかわらず」 「…もしかして刃引きしてたんじゃないか?」 「それはありえません」  なぜなら、という視線を送り、決着の瞬間を述べた。 「三連撃がを喰らったバース選手は〝どこか気持ちよさそうな表情〟  を浮かべて硬直、さらに続く四つ目の斬撃が…  テントを根元から刈り取りました」 「!?」  ギシッと椅子が軋んだのはダグが更に腰を引いたから。 「刃引きによるものではありません。  リーゼル選手は〝斬れる斬撃〟と〝斬れない斬撃〟を使い分けていたのです」 「な、なんために…!」    勘の良いものならこれまでの説明で気付けるだろうが、  下半身に寒気がまとわりついて上手く頭が回らなかったのだろう。 「相手を〝辱めるため〟でしょうね。  〝斬れない斬撃〟は痛みではなく快楽を与える剣だったのです」 「!」 「鎧を叩いている時から仕掛けていたのでしょう。  斬るための剣でないのだから鎧の上からでも効果があった  筈ですし、実際勃起していました。 そして足への直撃。  これでさらにペニスが膨張したところへ三連撃。  バース選手の〝あの硬直〟は射精した合図だったようです。  すぐに切断されたので分かりづらかったですが、回収した治療班によると  斬り落とされたテントの内部には大量の精子が付着していたとのこと」 「そ、それが… キミの言っていた〝人間には不可能な剣技〟か」  ノーラがうなずく。  股間を丸ごと斬り落とされたバースは立ち上がる事も出来ず、  リーゼルの五連勝が決まった。 「……だけど…まぁ、【淫魔化】していたとして…  何か問題でもあるのか?」  この闘技場の支配人として、〝エロい選手〟が増える事は  決して悪い話ではなかったし、個人的にも嬉しいこと。  というダグの心境を見透かしたのか、ノーラの声色が少しキツくなった。   「放っておくと大問題になりますよ」


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