pixivノベルで連載している「龍の騎士と龍を統べる王」のセルフスピンオフ作品です。
シリアス且つ物騒な状況の本編とは違った、コミカル重視な番外編です。
ジャンルは本編に出てくるキャラの魅力に焦点を絞ったキャラ小説となります。
様々なIF設定で織りなされるドタバタコメディ劇をお楽しみください。
※作品内で記号を使用しているため、今回よりテキストファイルでの提供を止めております。
愛と勇気の悲しみのメリークリスマス(前編) あらすじ
「そうそう。なんか、世界中の子供達にプレゼントを配るおじ様がいるんでしょう? 名前なんだっけ? えーと……」
「サンダー=クロースさん?」
「何それ! 稲妻出しそうで怖い!」
コウメイの発案により、急遽開催されることになったクリスマス・パーティー。
ウキウキで準備を進めながらも、システィーナ。
一方、その噂を聞きつけたリリライトといえば……
思い切り季節外れの話ですが、宜しければ読んで見て下さい!
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愛と勇気の悲しみのメリークリスマス(前編)
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「じーんぐーるべーる、じーんぐーるべーる♪ すっずがぁ、鳴るぅ♪」
王都ユールディアの城下町には、聖王教会本部がある。そのエントランスに飾られたモミの木に、鼻歌混じりにモールなどの飾りつけをしているのは、そこのシスターを務めるシスティーナ=ルズベリーだった。
「なぁに、その歌? 変なのー」
一緒に飾り付けをしている同僚がケラケラ笑いながら言うと、システィーナは変わらず上機嫌に鼻歌を交えながら答える。
「コウメイ様が教えてくれたの。なんでも、コウメイ様の故郷で、この時期に流行っていた歌なんだって」
「コウメイ様――って、元帥様のことぉ? な、なんでそんな友達みたいな感じなの?」
同僚の驚きをよそに、システィーナはマイペースに飾り付けを続けていく。
季節は冬の12月。
内地である王都ユールディアにも、本格的な冬の時期には毎年ちらちらと雪が舞い散る。積もるまでいくのは珍しいが。
システィーナはひょんなことから、国の幹部中の幹部である元帥コウメイと個人的なコネが出来たのだが、そのコウメイから提案されたことがあった。
来たる12月25日、教会で貧民や孤児達を教会に集めてパーティーをしたらどうか、と。
何で?と思ったシスティーナに、コウメイは色々と説明してくれたが、細かいことはぶっちゃけ忘れてしまった。
細かいことは忘れてしまったものの、内容をかいつまむと。
コウメイの故郷では、毎年この日に神的な存在になった人の誕生日会的なものをするのが、習わしということだった。
だから神様の誕生日会なら教会が中心になって何かイベントをしたらどうか、せっかくなら孤児とか社会的弱者な子供達とかが楽しめる感じにしたらどうかなど、コウメイの提案のままシスティーナがノリノリで司教に提案すれば、元帥が絡んでいる(という体にした)こともあって、スムーズに話は進んだ。
システィーナはその準備中というわけである。
「それで? えーと……くりすます、だっけ?」
「そうそうクリスマス。クリスマス・パーティーっていうんだって。さすが、元帥ほどの人だと、色々知ってるよねー」
「うん、まあそれはいいんだけど……例のアレってなぁに?」
「例のアレ?」
「そうそう。なんか、世界中の子供達にプレゼントを配るおじ様がいるんでしょう? 名前なんだっけ? えーと……」
「サンダー=クロースさん?」
「何それ! 稲妻出しそうで怖い!」
「え~、そんなことないよぉ。子供達に無償でプレゼントを配るなんて、素敵なおじさまじゃない」
能天気なシスティーナの言葉に、同僚のシスターはう~んと唸る。
「ていうか、どうやって1人で世界中の子供にプレゼント配るの? そのおじさまは何者なの?」
「あっ、えーとね。なんか不思議な乗り物?みたいなのがあるんだって。えっと、何だったけなぁ」
うろ覚えなシスティーナは腕組みをして、懸命に記憶を手繰る。しかし思い出すのは、クリスマスの内容というよりは、それにまつわるいくつかの歌ばかりだ。歌好きな彼女らしいが。
「あっ、思い出した! 空飛ぶソリだ」
「えええええっ? そ、空を飛ぶの? しかもソリがっ?」
航空手段を有さないこの世界では、空を飛ぶ乗り物があるだけでも驚くべきことである。更にそれがソリとなると、シスターがここまで驚くのも無理はない。
「ソ、ソリってなに? 犬ソリ、とか? 空飛ぶ犬……?」
「えーと、確か……」
同僚に追及されて、更にシスティーナは記憶を探る。
すると電球がポンと点いたように、システィーナはとある歌を思い出した。
「真っ赤なお鼻の~♪ トナカイさんは~♪」
「怖い怖い! お鼻どうしたの、そのトナカイさん?」
そんなこんなで、王都ユールディアはクリスマスの日を間近に迎えようとしていた。
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どうやら『この世界』の暦は、コウメイの元いた世界と季節感は変わらないらしい。
バレンタインやクリスマスなどといったイベントは無いものの、12月の年末になれば普通に年の瀬ということで、一年の締めに皆バタバタと慌ただしくなる。
「コウメイさん、この資料はどうします?」
「あ~……それ、もういらないぁ。捨てといて」
元帥の執務室では、コウメイ、リューイ、プリシティアらの3人は大掃除をしている。
「も~、コウメイさってば。執務室に、こ~んなエッチな本なんてもったらずってぇ~! メッ、やが~!」
「持ち込んでないよ!? あらぬ噂になるから、そういうこと捏造するの止めてくんない?」
「そんなに溜まってるんなら、わーがいつでも相手するっちーのに」
「ちょっ、リューイ? そのドン引きしている目止めてくんない?」
年の瀬であろうが、相変わらずの3人組である。
ぎゃーぎゃー、わーわー喚きながら、地味に散らかっていた執務室が、徐々に掃除・整理されて綺麗になっていく。
「そういや、2人とも年末はどうすんの? 実家帰るの?」
掃除が一区切りついたところで、机を囲んで3人でお茶をすすりながら、コウメイはおもむろに話題を振ってみる。
「俺はリアラと一緒にうちに実家に行った後、母を連れて年越しはリンデブルグ家でお世話になるつもりです。一応……その、正式にリアラのお父さんとお母さんに挨拶を、と」
「いや、なんていうか……リューイは本当にテンプレというか、ベタだなぁ」
「わーも実家に戻るっちよ~! 年末は何があっても家族で集まるのがハートリング家の習わしやっちゃが。やから、コウメイさも一緒に行くっちー、準備しといてやが~!」
「まさかの家族扱い!?」
「やってぇ、コウメイさはわーの未来の旦那様っちやがー! おかあやおっとおに早めに挨拶しとっきー。おっとおは、よわっちそーで軽くていかにもバカそうな男は大嫌いやけど、わーがちゃんと守っちゃるけん、心配せんでもいいがよー!」
「何それ! どういう意味?」
一応これでも彼女はコウメイの護衛騎士の1人であって、コウメイのことを主人として仰ぐべき立場なのだが。
全く邪気の無い笑顔でそう言うのは、まあ良い意味で距離が近いのだと思っておこう。
「まあ、それはともかく……コウメイさんは年越しどうするんですか?」
リューイにそう聞かれて、コウメイはう~んと唸る。
(よくわかんないけど、さすがに現代日本には戻れないよな。何しろ最後の記憶は刺されたところで終わってるし……多分、死んだよな、アレ)
となると、『この世界』にコウメイの故郷と言える場所は存在しないこととなる。リューイ達と違って、帰る場所も待っている家族もいないコウメイは、『この世界』ては天涯孤独の身だった。
――とまあ、そんな話は今更なので、センチメンタリズムになることもないが。
「まあ、適当に王都で過ごすかな。年越しくらいは、仕事から離れてゆっくり過ごした――」
「コウメイ~! コウメイ、コウメイ、コウメイ~!」
コウメイの言葉に喰い気味に、バタバタと執務室の外から慌ただしく駆けてくる声と、可愛らしく明るい声が響いてくる。コウメイは反射的に、身をぶるっと震わせた。
「あ、リリライト殿下ですね」
その声の主に気づいてリューイが彼女を出迎えようとソファを立ち上がると、バン!と勢いよく扉が開かれる。
そこから姿を現したのは勿論、聖アルマイトが誇る『純白の姫』リリライト=リ=アルマイト。
何故か興奮していて、鼻息は荒く眼はキラキラと輝いている。
「聞きましたよ、コウメイ!」
「な、何をっすか……?」
ずかずかと部屋に入って、コウメイに詰め寄るようにするリリライト。コウメイは若干引き気味に、この流れにとてつもない悪い予感を覚える。
「クリスマスです! ク・リ・ス・マ・ス! 何でもコウメイの地元に伝わる素敵な習わしみたいじゃないですか!」
「くり……すます? 何ですか、それ?」
リリライトの口から出てきた言葉に、きょとんとするリューイとプリシティア。そんな彼らにリリライトは向き直り
「クリスマスです! 今日はメリー・クリスマスですよ、リューイ! プリシティア!」
「べ、ベリー・苦しみます? 何て不吉な言葉なんだ……」
「いや、どこまでベタなの、君は」
大真面目に戦慄しているリューイに、コウメイはため息を吐きながら突っ込む。
そうしてからリリライトは、再びコウメイに詰め寄る。
「バレンタインといい、クリスマスといい、本当にコウメイの地元は素晴らしい風習がたくさんあるのですね! 私、是非一度行ってみたいです!」
「あー……そっすね。機会があれば」
「とっても素敵だったので、私すぐに王都に広めちゃいました。てへぺろ☆」
相変わらずの問答無用に王族の強権を発動するリリライトだったが、それはそれで今更なので、改めてコウメイが何を思うとかは、特になかった。
「本当は時間があれば、聖アルマイト全土で国民やら諸侯やら、なんやかんや全部巻き込んだ盛大なイベントを催そうかと思ったんですが、今回は生憎と準備する時間がありません!」
「それはさすがにちょっとどうなのかな!?」
特になかったと思ったが、想像の斜め上のリリライトの発言に、コウメイが思わず突っ込んでしまう。
「え~、でもカリオス兄様は大賛成でしたよ?」
「どうしてあの人は妹のことになると、知能が低下するんだ……」
唇を尖らせて言うリリライトに、コウメイは聞こえないようにブツブツと愚痴を言う。
「それでですね、コウメイ。リリもクリスマスを楽しんでみたいと思ったんですが、コウメイってばとても素晴らしいことを聖王教会に提案しているじゃないですか」
「聖王教会……? ああ、システィーナか」
街でひょっこり彼女と出会った時に、歌好きな彼女にクリスマスの時期だったということもあって、『元いた世界』のいくつかのクリスマスソングを教えたような記憶がある。
その際、システィーナが歌詞と一緒にクリスマスに興味を示したものだから、クリスマスについてもごく簡単に説明した。
とはいっても、コウメイもいかんせんそういった知識に深いわけではない。恋人達が一緒に過ごす日だとか、サンタクロースが世界中の子供達にプレゼントを配る日だとか、歴史の偉人の誕生日だとか、そんな浅い知識だけだ。
イエス・キリストの生誕祭ということで、教会繋がりでクリスマスパーティーを聖王教会で開催したらどうかと、適当な思い付きで提案した記憶もしっかり残っている。
年末には聖王教会の司教なりなんなりがアルマイト王家に挨拶に来る手はずとなっているはずだ。その際に、リリライトの耳に入ったのだろう。
「私達も参加しましょう! クリスマス・パーティー!」
いつもの太陽のような笑顔のリリライトの宣言と共に。
コウメイの年末最後の大仕事が始まるのだった。
後編へ続く。