ショーダウンⅡ 『36:二人の終着点』
Added 2025-06-24 10:38:41 +0000 UTC#36 『二人の終着点』 「ゲホゲホゲホ!! ゴホッ! ハァハァハァ……も、紅葉……あんた……どうして?」 くすぐりが止まりようやく呼吸を取る事を許された綾香は、咳込と呼吸を交互に繰り返しながら自分の隣に立って憐れむように見下ろす紅葉に言葉を搾り出す。 紅葉はその消え行くような声を聞き、静かに目を閉じて深い溜息を吐く。 「どうしてかって? さぁ……どうしてでしょうね? 私にも分からないわ……」 紅葉は自分の決断に自分で呆れている風を装って手を左右に曲げてみせる。 「あんたは……ゲホゲホ! 私に……恨みが……ハァハァ……あった……でしょ?」 呼吸の合間を縫って必死に言葉を紡ごうとする綾香に、紅葉は首を横に振ってその言葉に否の意思を込める。 「えぇ……恨んでたけど……。でも、もう……どうでもよくなったわ、そんな事……」 紅葉は綾香の顔から視線を外し、拘束台の脇に腰かけて静かにそのように呟いた。その言葉を聞いて綾香は目を丸めて驚く表情を作る。 「あんたの連れから色々聞いた……。あんたが……うちの父のせいでトラウマを負った事や、その後にどういう人生を送ったのか……どういう考えで私の身代わりを引き受けたのか……とか……」 紅葉は天井に顔を向けて、煌めく店内照明を眺めながらその様に零す。その照明にはくしくも彼女がイカサマに使ったスポットライトも含まれており、紅葉はそれを懐かしむような顔で眺めながら続きを話していった 「あんた……自分が色んな人の人生を台無しにしたって考えて生きてるらしいじゃない? その中に私の人生も含めていたらしいわね?」 紅葉がそこまで零すと、綾香は少し離れた位置に立っている麗華の方を見てキッと睨む目を向けた。綾香は別に……そこまでの事を麗華に説明させるつもりはなかった。その考えは自分の中で完結させておくつもりだったし……それを聞かせて紅葉を改心させたいなどとも思ってもいなかった。 それなのに麗華は、自分が望んでもいないのにそんな余計な事を紅葉に話したと知り……余計な事をしてくれたものだと呆れてしまったのだった。 「……フン! 別に……あんたの為にやったんじゃないわよ! 私は私のケジメをつけたいと思ったから代わっただけ……」 綾香がその様に言い訳がましく反論すると、紅葉はクスリと笑みを噛んで素直でない綾香に言葉を返す。 「それ……迷惑なだけだから……。勝手に私の罪を背負わないでくれる?」 紅葉の言葉に綾香はムッとした表情を浮かべる。それを横目だけで見降ろしている紅葉は、吹っ切れたような息を吐いて静かに言葉を続ける。 「でも……ありがと。正直……あの時はホッとしたわ……。あんな地獄のような罰を受けなくて済むかもって思えたのは確かだから……」 「……じゃあ、なんでまた……私と代わるとか言い出したのよ? くすぐりを地獄だと思ったんなら……黙って見てたほうが賢明だとは思わなかったの?」 「当然思ったわよ……そんな事……」 「思ったのなら、なんで……」 「それは……あんたを見てて気が変わったからよ。あんなに無様な悶え方をされちゃあ……折角の美人が台無しじゃない? 見てらんなかったのよ……」 「なっ!? ふ、ふざけないでくれる? そんな茶化しで私が納得するとでも思ってんの?」 「あら……茶化しじゃないわよ? 私はずっとあんたの事……美人でカッコいいマジシャンだって認めていたんだもの……」 「ん、ぐっ! な、何よその手のひら返し……き、気持ち悪いわよ!」 紅葉は綾香のげんなりした顔を見てクスリと笑みを零す。そして顔を上げ遠い目をして、自分の過去を語りだす。 「フフ……。あんたは知らないでしょうけど……私は“あんたの手品”を見て、それに憧れて……マジシャンを目指したのよ……」 「……ッっ!?!?」 「昔見た……カッコいい“椿綾香”っていうマジシャンに憧れて……私は手品を覚えた……」 「昔……見た? 私を?」 「私は勝手にあんたを自分の中の憧れの存在にした。んで、勝手に期待した……。だから、裏切られたと知って逆上してしまった……」 「そ、それは……あの時の……」 「でもその裏切りは……私の勘違いだった。それを今更知った……」 「い、いや……でも、アレは本当に私が……」 「あんたは、あの時“私”から逃げたんじゃなかった……あんな事があったから、去る道しか選べなかった……そうよね?」 「……うっ! うぅ……」 「あんたはその“去った自分”に対しても罪悪感を抱いているようだけど……でも、それは筋違いよ。悪いのは私の父であり、勘違いした私の愚かさでもある……」 「ち、違っ……あの時私がもっと……頑張っていれば……」 綾香の反論に紅葉は首を横に振って応える。そして少し声のトーンを落として呟くように話を続ける。 「私はあんたに……憧れを抱き過ぎていたのかもしれないわ……」 「……ぇ?」 「マジシャンの姿しか見ていなかったから……その像を現実のあんたに重ね過ぎていたのかもしれない……」 「……………………」 「何をしても完璧で……どんな困難にも動じない……クールでカッコ良くて……私の理想そのもの……」 「うっ……そ、そんな事は……ない……」 「分かってる。本当はそういう部分だけじゃないって……分かってた。でも、手品をしているあんたは……いつも私の理想の姿をしてくれてた……」 「…………それは……そういう風に振舞うものだから……」 「本当は……復讐なんて建前だった。恨んでも結局憧れの像が消えてくれなかったから……せめて自分の中から綾香への憧れを消したいって思った……。だから“くすぐり”を選んだのよ……」 「………………」 「あんたが二年前に受けたっていう制裁……それが“くすぐり”だと聞いたから、私はそれは良い復讐方法だって思ったわ……」 「……くすぐり……が?」 「そう。私の憧れを消す為には……あんたがくすぐりによって無様に笑い悶えさられるのを見るのが手っ取り早いと思った……」 「……うぅ……それはさぞかし……幻滅してくれた事でしょうね? こんな醜い顔になって笑い狂ったんだから……」 「まぁ……ぶっちゃけると、私の中から憧れの綾香の像は消し飛んでいったわ。特にあの二人に責められている時のあんたの姿を見たら……これが本当にあの時私が憧れた女の姿か? って疑ってしまうくらい……」 「それはそれは……。良かったじゃない……勘違いした幻影を取っ払えて……」 「でもさ……完璧だと思ってたあんたの姿は消え去ったけど、でも……私のあんたへの想いは違う形で再構築された……」 「……再構築?」 「誰も好き好んで自分の無様な姿なんて晒したいとは思わない……そんな恥ずかしい事、望んでヤれるものじゃない……」 「…………」 「でも、あんたは……無様な姿を晒すと事になると分かっていて、私と入れ替わってくれた……」 「………………」 「苦しいって分かってる癖に……感情がグチャグチャにされるって分かっている癖に……それでも、私の身代わりにあんたはなってくれた……」 「……だから、それは私の清算の為であって……」 「理由なんてどうでも良い。でも、その行動を実際に起こしたって所に……私は驚いたし、あんたっていう人間が私の想像通りの人間ではなかったんだって……理解した」 「…………」 「本当のあんたは……人間臭くて不器用で泥臭い……でも、心の芯は素直で、自分の筋を通したがる頑固者……」 「……うっ! 褒めてないわよね? それ……」 「えぇ、褒めてないわ。でも……私はあんたの中にそれを見ちゃったから……罪悪感が湧いたんだと思う……」 「……………………」 「私の人生を滅茶苦茶にしたって思い込んで私と入れ替わって罰を受けたんなら……それは勘違いだしお門違いだって思うけど、あんたはそれを正しいと思って愚直に罰を受けようと身を差し出している……」 「…………うぅ……」 「そんなあんたの姿を見たから……私は自分の愚かさを知って罪悪感が芽生えたのよ……」 「…………………………」 「今言った通り……あんたが私の代わりに罰を受けるなんてお門違いもいいトコよ。だから、さっさと拘束を解いてもらってそこを離れなさい?」 「ちょ! でも、私は……あんたの人生を……」 「まだ滅茶苦茶にしたのは自分だって言い張る? 私がイカサマしたのは自分のせいだって……まだそんな事言う? だったらこの際はっきり言っておくけど、そう思われるのは逆に迷惑よ! 不正は私の意思で行った。あんたが発端となっているのは確かかもしれないけど……でも、不正をしてあんたに復讐を企てのは私の“意思”よ! あんたが罰を身代わりで被る責任なんてどこにもない!」 「だ、だって……私と出会わなければ……あんたの人生が不幸には……」 「そもそも……今の私が不幸だと、勝手に決めつけないで貰える?」 「……えっ!?」 「私は……あんたに憧れてマジシャンになった事……後悔なんてしてない! 才能とかは開花しなかったけど……でも、手品をしている時は楽しくて……夢中になれて……時間も忘れられて……そんな世界に興味を持たせてくれたのはあんたよ! その事に感謝すらしても恨みなんて持つはずがない!」 「…………!」 「これから先も……私はマジシャンで居続けたいって思ってる。いつかあんたが魅せてくれたように……私もカッコいいマジシャンになってやるって今でも思ってる!」 「……………………」 「こんな思いが出来るのは……あんたと出会ったのがキッカケなのよ? それを……勝手に不幸だと決めつけないでっ! 人生を台無しにしたとか思わないでっ!!」 「ぅっ……うぅっ……」 「こんなに夢中になれるモノを見せてくれたあんたに……私は感謝してる。恨みでそこの想いがどっかに飛んで行ってたけど……今思い出したわ。私は……いつかあんたにこの言葉を伝えたいって……思ってた」 「くっっ……うぅ……」 「だから、ね……もう良いの……。あんたは……私の代わりになんて……ならなくて……いい……」 紅葉のしんなりと見つめる瞳に綾香は言葉を返せなくなってしまった。 その目にはさっきまでの恨みの炎は映っておらず、代わりに自身の罪を完全に受け入れているかのような悟りの光が彼女の目には宿っていた。 その目を見て、綾香はようやく……自分の役目は全うされたのだと思い至る。 紅葉に自分の罪を本当の意味で認めて貰う…… それは麗華に「無理だと思う」とまで言わしめた事案だった…… 何せ……口でどんなに謝罪の言葉を言わせても、心の内までは見れないのだからそこに誠意があるかなんて見抜けるわけがない……というのが麗華の主張だった。 苦しい思いをするのが嫌だから今だけ反省しているフリをして見せるかもしれない……紅葉の性格ならそういう振る舞いをする可能性が高いと麗華は踏んでいた。だから、本当の意味での反省など促すのは無理だと彼女は言っていた。 しかし、今の紅葉の言葉を聞いて麗華は認めざるを得ないだろう…… 彼女がしっかりと罪悪感を抱え、罪の意識に目覚めてくれたと…… 「…………」 何もしなければ紅葉の罪は綾香に被せる事が出来た。辛い仕置きを避ける事も出来たし、綾香に対する妬みや恨みも同時に晴らす事さえできた筈だった。しかし……彼女はそうはしなかった。 自分が罰を受ける事になると知っていて……それでも綾香を解放する事を選んだ。 紅葉が少しでも……ズルい考えを持っていればそういう選択はしない。罪悪感など芽生えず、自分の“得”を優先して行動していただろう。 それをせずに綾香の事を優先してくれた……という結果は、彼女の良心がまだ心の中に眠っていたという事に他ならない。 素の彼女は……麗華が知り得た情報通りの彼女ではなかったのだと……そう証明してみせたのだ。 「……むぅ…………」 ふと見れば……麗華は渋い表情をして事の成り行きを見守っている。 自分の考えとは真逆の結果が出てしまい、困惑しているという態度だ。 綾香はそんな麗華の顔を見て「これで文句ないでしょ?」っという勝ち誇った表情を浮かべて口元をニヤつかせて見せる。それを見た麗華は増々眉間に皺を寄せムムッとした表情を浮かべてしまう。 あの時……身代わりになった綾香に麗華は……こう提案した。 「この身代わりによって紅葉さんの心が少しでも動いたとわたくしが感じたなら……彼女の処遇を綾香さんに預けると約束しましょう。しかし、もし何の変化も無ければ……綾香さんにも責任を取って貰う事になりますよ? それでも良いですか?」と。 それに対し綾香は何の躊躇いもなく了承の意を伝え、そして身代わりのくすぐりが執行された。 心が動かなければ……自分も責任を負う……。その条件に、綾香はどっちに転んでも問題ない……と考えていた。 どのみち……紅葉に対する負い目があったのだから、この際……彼女の罪を被ろうとも仕方がないとも思っていた。 そうする事でしか自分の罪悪感は消えない……と、さえ……思っていた。 そう思っていたが……その罪悪感を消してくれたのは、結局紅葉の言葉だった。 自分と出会いさえしなければ紅葉の人生は悪くならなかった筈だ……と、罪の意識を持っていた綾香に対し……紅葉は怒りを露にした。 出会った事で満たされた事だってあった! と、綾香の考えを真っ向から否定してくれた。 そして……“勝手に自分の人生を不幸だと決めつけるな!”と怒鳴ってもくれた。その言葉を聞いて綾香は目から鱗が落ちる思いだった。 確かに……紅葉に対する罪悪感は綾香の主観でしかなかった。紅葉がどう思っているかなど知ってさえいなかったのだから、それに詫びを入れたいと思ったのは自分の勝手な主観でしかなかったのだと認めざるを得ない。 紅葉の歩んだ道が不幸に見えたから……それに関与した自分はきっと悪い影響を与えてしまったのだ……と、そう思い込んだ。 そもそも不幸かどうかの尺度すらも自分の物差しで測ってしまったのだから……そこに認識の違いが生まれる事など当然の結果だった。 『そうか……紅葉は、私と出会った事を……恨んでいた訳じゃ……なかったんだ……』 綾香は紅葉の言葉に救われる思いだった。 自分の主観が勝手な思い込みだったのだと気付かされて、重荷が軽くなるような心地を味わった。 そして……その重荷を軽くしてくれた紅葉が、同時に自分の罪の意識を受け入れて綾香を助けてくれたという事実が……嬉しくて、つい顔を綻ばせてしまう。 責めが終わった事の安堵ではなく、紅葉がその行動を取ってくれた事自体に……安堵の感情が湧き上がってきた。 この事実を見て、麗華がこれ以上紅葉に対して疑念を抱く事など無いだろう。 悔しそうな顔をして何事か考え事をしている様子が見て取れるのだから、彼女の予想を裏切る結果を生み出せたと安堵して良い事だろう。 「ほら、さっさと綾香の拘束を解きなさいよ! 罰なら私が受ける! だから、私の事を拘束なさい! 腋でも足裏でも勝手に無防備にさせて勝手にくすぐれば良いわ! 私はもう……抵抗しないから!」 麗華と同じく渋い顔を浮かべていた鈴音と智恵理に紅葉はそう言い放つ。その顔はもう……くすぐりを恐れておらず、清々しい程に堂々とした表情を浮かべていた。 その紅葉の宣言を聞き……鈴音はチッ! っと舌打ちをして見せながら綾香の拘束を外さんと歩み寄ろうとするが…… そこに別方向から待ったがかかり鈴音は足を止める事となる。 「ちょっとお待ちくださいまし。綾香さんの拘束……まだ外すには早いのではありませんか?」 その様に待ったの言葉をかけたのは麗華だった。 ツカツカとヒールの音を響かせながら歩み寄る麗華……彼女の顔は先程までの渋い表情ではなく、何かを企むような悪い笑みを浮かべている。 綾香はその顔を見て……嫌な予感が脳裏に過った。 この顔は……先程勝ち誇った顔を見せた自分に対する報復を考えている顔だ……と、すぐに悟った。 「お嬢? でも、紅葉が綾香を解放しろって……言ってますよ?」 不満げに麗華の方を振り返ってそう返す鈴音だが、麗華の悪い笑みを見て何か考えがあるのだろうと察し彼女もハッとなり僅かに口元に笑みを浮かべる。 「鈴音ちゃん? 智恵理さん? 貴女方は……それで満足してますの?」 っと、智恵理も巻き込んで質問を投げかける麗華……。彼女は「何の事だ?」と首を傾げる二人にクスリと口角を上げ直し質問の言い換えを続けて零す。 「“綾香さん”への恨み……それは、お二人それぞれ深〜い恨みだったのでしょう? それを紅葉さんの言葉で中断させられた訳ですが……それでよろしかったのでしょうか?」 などと説明をし直すと二人を見渡すように目を細める。その目を見て麗華の“意図”を察した二人は同時に口角を持ち上げ、麗華にも負けない悪い笑顔を顔に作り上げてみせる。 「いいえ、お嬢。私はまだこいつの事……許してなんかいませんよ?」 「はい♥ 私だって……あの恨み……まだまだ晴らせたとは思ってません!」 二人の返答を聞き「そうでしょう、そうでしょう♥」と満足げに頷く麗華……。その顔を見て増々悪い予感を感じてしまう綾香は、表情から血の気を引かせ不安からか思わず言葉を零してしまう。 「あ、あんた達……何企んでんの? 話しはもう終わりでしょ? これ以上私に何を……」 引き攣った顔でそう問いかける綾香だが、麗華達はその問いには答えを返さない。それよりも、今後の仕置きをどうしたらいいかという話題の方を優先し、三人が円を組むように集まって相談を始める。 「しかし困りましたわねぇ~? 紅葉さんも罰を受けたいと仰ってますし~。綾香さんへの罰を続けたいですし……如何いたしましょう?」 「そうよね、二人を交代で責めるってしても……拘束し直すのが面倒だし時間もかかりますもんねぇ~」 「ですわよねぇ? なにか……“二人同時”に拘束出来る道具でもあれば良いのですがぁ……」 「あぁ……それならぁ、お嬢? 実は私……良い道具持ってますよぉ?」 「あら智恵理さん? 良い道具って……何の事ですの?」 「フフフ♥ ほらコレ……実は持ってきておりましてぇ♪」 「まぁ♥ 枷の連結具ぅ? そんなもの持ち込んでいらっしゃったんですの? 流石ぁ智恵理さんですわぁ~♥」 「いやぁ~~“きっと”使う事になるだろうなって思ってたのでぇ~♥ ちゃんと、あの枷に繋げられるよう調整も済ませておきましたよぉ? これで、綾香さんの上に紅葉さんを重ねて拘束できますからぁ……二人同時にこちょこちょして差し上げられますね♥」 「アハ♥ やるじゃない、智恵理ぃ~流石……ドSの申し子ね……♥」 「やだぁ~そんなに褒めないで下さいよぉ~♪ 照れるじゃないですかぁ鈴音さぁん♥」 何やら怪しい会話で盛り上がっている三人に、紅葉は事態が飲み込めず目を白黒させてしまう。 一方で綾香の方は、どうせそんな事だろうと諦めの息を零しジト目で三人の成り行きを見守っていた。 『あぁ……そうだったわね。あいつらって……そういう奴らだった……』 心の中でも呆れの溜息をつき、綾香はそう呟く。 もはや、こうなる事は最初から麗華の計算の内だったようで……智恵理も鈴音も困惑する演技を見せるどころか、今度こそ思いっきりくすぐりが出来ると悦んでいる風に見える。 真面目な雰囲気だった綾香と紅葉との空間に突如として流れが変わる様な風が吹き、代わりに妖しい気配が場を包み出し始めていた。 その異様な雰囲気に紅葉はたじろぐ様に足を2歩ほど下げてしまうが、口だけをニヤつかせて笑っている鈴音たちが素早く紅葉を確保し……そして、彼女に告げる。 「良かったわね、綾香と一緒に罰を受けられるわよ♪ 嬉しいでしょ? 憧れの綾香の笑い悶える姿を間近で見ながら……自分も笑い狂う事が出来るんだから……♥」 「フフフ♥ 身体を重ねて……たっぷり笑い合って親交を深めてくださいね? 私達がそのお手伝いをさせて頂きますから……。それこそ、たっぷりと……時間が許す・か・ぎ・り……ね♥」 そう言って、二人は紅葉の手を引いて綾香の寝かされている拘束台へと連れ戻していく…… 片手には枷同士を連結する為の太いネジが突き出た追加の枷を……握りしめながら……