ショーダウンⅡ 『31:償いの気持ち』
Added 2025-06-01 09:31:32 +0000 UTC#31 『償いの気持ち』 「あっっぐっっ! んっっくぁっ!! はひっ!?」 3回謝罪しろ……という綾香の出した条件に、紅葉は必死に応えようと努力する。しかし、その謝罪は綾香と鈴音に“くすぐられながら”という追加の条件が課され、更にはそのくすぐりに笑ってしまうと罰まで与えられるという鬼畜なルールが付随していた。 3回の謝罪の内最初の1回はくすぐられず見逃して貰えるという特例は出して貰えたが、今まで散々くすぐりによって笑わされてきた紅葉にとって残りの2回の謝罪を笑わずに済ます事は難関以外の何ものでもない。 実際、二人のくすぐりは容赦がなかった。 本気のくすぐり……とまではいかないが、紅葉が口を開けば笑いが我慢できなくなってしまうくらいには刺激は強めに与えられており……謝りたいと思っても口を開きたくても、謝罪よりも先に笑いが溢れ出てしまう為安易に口を開く事も出来ない。 「……20ぅ~~~19ぅ~~~18ぃ~~~」 笑いたくなる衝動をどうにか鎮めてから口を開きたいが……しかし、謝罪には制限時間が設けられていて悠長にしている余裕などない。 綾香の数える30秒という短い時間の中で最低でも1回は謝罪の意思を見せなければ罰が与えられる……紅葉はそれを聞かされているのだから、限界までくすぐったさを我慢して口を開こうと試みる。 しかし……二人のくすぐりは、そんな紅葉の果敢な努力を無に帰す刺激を生み……彼女を苦しめていた。 「ほ~ら、コチョコチョコチョ~♥ どう? 直の手で足裏を撫でられる刺激は? 羽根よりもしっかりこそばくて……堪らないでしょ?」 身動きが取れないよう足指までも完全拘束された紅葉の足裏を鈴音の小さな手がコチョコチョと這い回っている。 靴も靴下も全て脱がされた裸足の足裏……その足裏に逆手に構えた鈴音の手が密着し、指先だけを蠢かせて刺激を送り込んで来る。 反り返った土踏まずの皮膚を複数の指先が優しくなぞり上げる様にくすぐってくるその刺激は、足裏全体がムズ痒くなるこそばゆさを感じてしまい紅葉の笑欲を存分に掻き立てて来る。 「くっっふふふふふ……んくく……くぅぅぅ~~~~っ!!」 絶妙な触り加減……刺激する箇所を一定にしないランダム性……そして、笑うか笑わないかギリギリのラインを見極めた巧みな刺激の仕方…… 鈴音のくすぐりは紅葉の弱い箇所を完全に把握しており、尚且つその弱い箇所を刺激しないよう焦らすように周囲をなぞろうとする。それが“手を抜いた刺激の仕方”である事は、彼女の本気のくすぐりを受けて知っているから分かり切っている事だが……しかし、紅葉にとっては笑わないで済むギリギリの刺激に留めておくのがやっとだ。 油断すれば簡単に笑わされてしまう……そういう刺激であると認識しているのだから、気を抜く事など許されないのである。 「12ぃ~~~~11ぃ~~~~~10ぅ~~~~~」 勿論、くすぐりの刺激を送り込んでいるのは鈴音だけではない。今も秒数を数えている彼女……綾香も、紅葉の無防備に晒されている腋を刺激して笑いたくなるような刺激を送り込んで来ている。 「くっっくっ……うぅぅくぅぅぅぅぅっっ、ふっっふっっ……くくく……」 綾香は両手の人差し指だけを立てて、その指先をクニクニと上下に動かしワキの肌を撫で回している。 指一本でのくすぐりである為本気の時とは比べ物にならない程刺激は落ち着いたものとなっているが、しかし万歳の格好で腋を剥き出しにした状態の今では……この“些細”なくすぐりも紅葉は耐え難いこそばゆさだと認知してしまう。 伸びきったワキの柔らかい皮膚上を綾香のくねる指先が、コショリ……コショリ……と意地悪く撫でていく感触は、その状況も相まってあまりにも可笑しく感じられてしまう。 指が触れる度に肌に寒気が湧き立つが、その寒気は一瞬にして耐え難い痒みに変化し膿むような熱を覚える事になる。その熱が外気の温度差を感じると、途端にウズウズと疼く感覚をもたらして……そして紅葉の頭に“こそばゆい”という感覚を植え付ける。 それがワキのあちらこちらで同時発生してしまうものだから、紅葉のじれったさは我慢の限度を簡単に超えて激しく笑ってしまいたいという欲を駆り立ててくる。 「くふぅぅっっふっ!! くっくっくっく……くく! んぐぅっっっっ!!」 その様な二つの刺激に同時に責められているにもかかわらず、どうにか笑いを堪えているというのは中々に根性があると評価できる点ではあるが……ただ我慢するだけを続けて紅葉がこの責めから解放される事はない。そこから更に謝罪しなくてはならないという難題が残されているのだ…… 「……6ぅ~~~~5ぉ~~~~~」 我慢している間にもカウントは無慈悲に進んでいく。どうにか笑いの衝動を鎮めようと紅葉も精一杯の努力をしているが……絶妙に加えられる二人のくすぐりに翻弄され、ただただ時間だけが過ぎる事になってしまう。 「さぁ~~~~ん……にぃ~~~~~~~~、いぃ~~~~~~~ち……」 やがて秒数も尽きかけ、時間切れになるくらいなら……と慌てて口を開いてしまうと…… 「ご、ごべんだざぁぁっふぁっ!? くひっっっはっっっ!? ぶひゃ~~~っはははははははははははははははははははははははははははははははははははは!! んあぁあぁぁぁっはははははははははははははははははははははははははは!!」 結局は溜め込んでいた笑いが口から溢れ出てしまう事になり、折角の我慢も水の泡となってしまう。 そして、我慢できずに笑ってしまった……と判断すると、綾香は一切の情もかけずに紅葉に罰を課すことを告げる。 「はぁ~~~い、今回も失敗~~~♪ 3分間くすぐりの刑を執行で~~す♥」 その宣言が発されると、綾香と鈴音のくすぐりは“焦らす責め”から“笑いを搾る責め”に即座に切り替わる。 「ブギャ~~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、いぎゃははははははははははははははははははははははははははははは、や、やめっっへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」 綾香の責めは指1本だった責めが全ての指が腋を這い回る責めにと切り替わり、刺激の仕方も“撫で”だけでなく“揉み”“引っ掻き”“なぞり”“つっつき”と多様な刺激の仕方を取るようになる。 「ぉあっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、やべでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、死にゅぅぅふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、ぅあはははははははははははははははははははははははははは!!」 鈴音の責めは両手の指をフルに使うという点では変わらないが、その指達の動くスピードは焦らしていた時の比ではない。動きが見えないと思える程指捌きが素早く、しかも紅葉の弱点を的確に突いた触り方を繰り返す。 足裏という触れる範囲の狭い部位を担当しているが、狭いが故に手の動きは合理的に最適化され最小限の力で最大の効果を得られるよう這い回っている。 手の動きに力を割かなくて済む分、素早さと弱点を責める正確さにリソースを割けるため鈴音のくすぐりには無駄がない。 元々くすぐる事に特化した彼女の技巧だが、こと足裏を攻めさせたら彼女以上に熟達した責めを行えるものは少ないだろう……と、そう思わせる刺激を紅葉に与えていた。 「ギャ~~~~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ゆるじでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、もうゆるじでよぉほほほほほほほほほほほほほほほほほほ、ィギィィッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ、だはははははははははははははははははははははははははは!!」 くすぐりの刺激を恐れる者からしてみれば凄惨この上ない現場に見える事は間違いないが、何も知らない客達からしてみれば……子供の様な悪戯に面白可笑しそうに笑って応えているだけの微笑ましいショーであるという認識しか受け取られない。だから、誰も攻め手を非難する事もないし、下着姿の紅葉を見て目の保養程度にしか捉えていない人間も数多い…… 紅葉はその様な目で自分が見られていると理解している。だから尚更……自分の辛さを理解して貰えていないというギャップに苦しめられている。 せめて……観客が苦しんでいる自分を見て哀れんでくれていたならまだ救いがあったが……しかし、あの好色そうな目で見ている観客達に自分の苦しみなど微塵も伝わっていないのは明らかだ。 どうせ演技でもしているのだろう……大袈裟に振舞って楽しませているだけだろう……くらいにしか思われていない。それが、紅葉にとっては歯痒くもあり悔しくもある。 伝わらない悔しさ……誠意を示そうと努力しているのにその誠意すらも認めて貰えない辛さ…… 紅葉は……肉体的な辛さに加えその様な精神面での辛さにも苛まれ、苦しみを刻み込まれている。 ……これが……自分が犯した罪の代償……。 これが、不正を犯した自分の末路……。 綾香も……きっと、2年前……同じような責め苦を受けたに違いない。麗華に全てを見破られ……自分の自尊心さえ否定され……謝罪を要求された…… きっと自分と同じだったはずだ…… きっと…… 紅葉は、遠くなっていく意識を必死に繋ぎ留めながらその様に思いを馳せる。 自分の今の苦しみは……きっと綾香自身も経験した事なのだろう……と、2年前の光景を想像し……胸にチクリと針の刺す様な痛みを感知する。 きっと、今みたいな見せしめを……いや、自分以上の責め苦を味わったのではないか? 自分が味わって……心境の変化があったから、いま自分にそれを施して理解させようとしてくれているのでないか? 紅葉は笑い苦しみながらも綾香の表情を見てその様に察してしまう。 彼女はくすぐりながらも……真剣な表情を崩していない。 言動や態度は楽しそうに見えているが、責める彼女の顔は真剣そのものだった…… その顔を見た紅葉は確信してしまう。 この責めは……きっと……自分の為にやってくれているものなのだ……と。 「っあははははははははははははははははははははは、こ、こ、今度こそっっほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ、謝って見せるっっふふふふふふふふふふふ!! 絶対っっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、謝って見せるっっぅぅぅぅぅっふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、ぁははははははははははははははははははははは!!」 それを確信した時……紅葉は叫んでいた。次こそは必ず与えられた条件をクリアして見せる……と。 そして、自分の今できる誠意を見せてやるのだと…… その宣言を聞き、綾香は攻め手を緩めながらクスリと笑みを浮かべる。その笑みは、今までのワザとらしく浮かべた欺瞞の笑みではなく……苦しんだ末に思い至った紅葉を慈しむような笑みに見えた。 「……よし。じゃあ……あんたの誠意を見せてみなさい? 私が責任をもって見届けてあげるから……だから、精一杯の誠意を……私に見せなさい」 綾香の静かな言葉に紅葉は意志の宿った顔を縦に振る。そして、彼女が出し得る最大の声で最初の謝罪を綾香に発した。 「わ、わだじはっっ!! イカサマをしてしまいまじだっっ!! ごめんなざいぃィっッっ!!」 涙を弾かせて、鼻が詰まったような声だったが……その謝罪は綾香の耳にしっかりと届けられた。しかし、綾香はそれを聞いても尚……紅葉に試練を課す手を緩めない。 「うん……良いわ。後2回よ……ほら、続けて?」 綾香はその様に紅葉の2回目の謝罪を促すが、その手は彼女の腋に触れ指先をコチョコチョと動かし始める。 「ぷひっ!? くっっっひっっ!!」 鈴音も同様に、紅葉の抵抗できない足裏を無慈悲にくすぐり始める。 今度はさっきまでの“優しい刺激”ではなく……より本気に近い触り方で……紅葉の謝罪を妨害するように責め立て始める。 「くっっっふっっっ!! んぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐっっ!!!」 腋からも足裏からも耐え難いこそばゆさが湧き上がってくる。紅葉はそのこそばゆさを必死に口内で押し殺して、震える唇を僅かに開こうとする。 謝りたい……謝罪したい……懺悔したい…… そういう思いが脳内を駆け巡らせ、くすぐったいと知覚している脳を麻痺させようとする。 しかし……二人のくすぐりは、素直に謝りたいと思い始めた紅葉に必要以上の試練を課してくる。 コチョコチョ……コチョコチョ…… 我慢しても我慢しても、こそばゆさが消える事無く紅葉を笑わせようと喉元を圧迫する。それは異常とさえ思えた。普通はこの様な刺激を連続で受ければいくら何でも慣れが生じるものだが、二人のくすぐりにはそれがない。触った後に記憶を瞬時に初期化しているかのように刺激の感覚がリセットされ、一向に慣れが生じる気配を見せない。 その感覚はまさしく異常だが、紅葉はそれに意識を向ける余裕を持てない。 謝罪しなきゃという一心に意識を集めている。 「うぐくふっっくくくく……くぅぅ!」 口を開けば即大笑いしてしまう……それは分かっているが、それでも紅葉は少しずつ口を開こうと試みる。 顎は小刻みに震え、目からは我慢の涙が溢れ出して来る。でも、彼女の瞳だけは光を欠く事無く鋭く綾香を捉えている。 「くっ、ぐぅぅぅっぅ、んくっ!」 絶対にやり遂げてみせる……という意志を宿らせた瞳が綾香の真剣な視線と交差する。 紅葉は、真剣に謝罪したいと意思を固めた…… しかし、その意志は……くすぐりという圧倒的な強制力を持った刺激によって体現を拒否される。 「ぷっっっ! ふぐっっっ! くっっっくっくっくっくっくっく……」 まるで自分の体ではないかのように、口は意志とは無関係の笑いを吐き出そうと息を漏らす。口を開けばその笑いが一気に放出されてしまうのは考えずとも分かっているが、それでも紅葉はゆっくりと口を開いていく。そして、震えた声で言葉を紡ごうとする。 「ご、ご、ごべん……だ、じゃい……。イカシャマじで……ごべんだ……っひゃ!?」 しかし、2人のくすぐりは紅葉のそんな努力を踏みにじるかのように威力を強める。 絶対に最後まで言わせないとする意識がありありと伝わってくるくすぐりを施してくる。 「いはひゃっっぇっっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへっへ、ぅぐきっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぶはっっ!! むひゃ~~~~~っはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、無理っひひひひひひひひひひひひひひひひひ、やっぱ無理ぃィぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 あまりのくすぐったさに紅葉はまたも笑わされてしまう。今度こそは謝罪を伝えてみせると意気込んだ挑戦だったが前回以上に強まったくすぐりの刺激に彼女が耐えられる筈もなく……結果はまたも謝罪を言い終える前に爆笑してしてしまうという情けない終わりを迎えてしまった。 綾香と鈴音は、笑ってしまった紅葉を見るや否や手の動きをしっかりとしたくすぐり責めの動きに変え、再び彼女に罰を与え始める。 「だひゃ~~~~っははははははははははははははははははははははははは、イギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、こんなの無理ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、我慢なんて出来ないぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ぃひゃははははははははははははははははははははははははは!!」 褐色だった足裏は鈴音のくすぐりによって土踏まずを中心に赤い引っ掻き跡が多数のラインを引く様に描かれている。ワキの肌も同じように、綾香のくすぐりがいかに激しいかを示すように引っ掻き跡や揉み跡が随所に見られている。 肌が褐色であるから近くに居ないとその跡は視認できないが、肌には確実にくすぐりが容赦ない事を示すように残されている。 そしてその跡は今も増え続けていく……紅葉が謝罪出来ない時間が長引けば長引く程……。 「あんたの“謝りたい気持ち”なんてその程度? くすぐったい刺激に負けちゃうくらい弱い決意なの?」 笑いを止められず首を左右に振って悶える紅葉を見て、綾香は残念そうな顔を作ってその様に語りかける。 「ギャ~~~ッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ、こんなの誰がやっても無理よっほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ、耐えられる訳ないっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 甲高い笑い声を吐きながらも必死に謝罪は無理だと主張する紅葉……その姿を見て今度は鈴音の方が大きな溜息を吐いて綾香に進言する。 「ほ〜ら、言った通りだったでしょ? こんな事しても無駄よ無駄! どうせこいつに謝る気なんてないんだからさ……余計な時間は省いてさっさとくすぐり処刑に移行しましょ?」 そもそも……この3回謝罪をさせるという下りの罰は当初の予定には組み込まれていなかった。ショーとしての見世物は“にらめっこ勝負”からの負けた罰としてのくすぐり責めを時間一杯まで行う……で完結させる手筈だった。 しかし、そのシナリオに待ったをかけたのが綾香だった。 彼女は麗華や鈴音に頭を下げてこの“謝罪するチャンス”を入れて欲しいと懇願したのだ。 淡々と罪を罰だけで裁くのでは紅葉は更生しない……と綾香は主張し無理やりこのチャンスを捻じ込んで貰った経緯があったのだが、綾香にも綾香なりの焦りはあった。 紅葉がちゃんと反省し更生する態度を取るかどうか、それを麗華自身が見て判断する……と、そういう約束を告げられていたのだ……だから“それ”を見せられる機会が必要だと綾香は思った。 それ故に多少の強引さは承知の上で頼み込んで入れて貰ったのだが…… 「だひゃ~~~~っははははははははははははははははははは、イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、くるひっっひひひひひひひひひひひひひひひひひ!! 笑い過ぎてぇへへへへへへへへへへへへへへお腹痛ぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ひぁ~っははははははははははははははははははは!!」 最低限の反省の意思は見せても……肝心の謝罪は行えていない。 くすぐりが無ければ素直に謝るが、いざくすぐりが始まれば……それを我慢して謝ろうとする態度が見られない。 綾香としては意地でも我慢して謝罪に全力を搾って欲しい……くすぐりに負けずに謝罪に意識を向けて欲しい……という思いだったが、それを伝えても当の本人の芯の部分には響いていない様子。我慢する体勢を取っているのは分かるが……それを維持できていない。“謝罪したい”という意思が“笑いたい”という欲に負け無様に笑い出してしまっているのが現状だ。 鈴音がそれに業を煮やすのは分かっている。なにせ……これは元々予定に入っていなかった、綾香の我儘で入れた特別枠だったのだから……さっさと終わって罰だけ与えてやろうと思ってる鈴音の気持ちも理解出来る。 しかし……この機を逃せば……きっと紅葉は麗華の目に“更生の余地なし”と映ってしまって……捨てられてしまうだろう。 それだけは……避けたかった。 綾香はどうにかして……紅葉を助けてあげたかった…… 「わ、分かった……じゃあ……後一回だけ……チャンスを与えてあげましょう。それで無理なら……この謝罪ショーは諦めるわ……」 助けてあげたいという気持ちはあるが……しかし、自分の我儘でシナリオを捻じ曲げて同じことを何度も繰り返す訳にはいかない。 だから、最後の一回に賭ける事にした。 「最後に一回? まぁ……良いけどさぁ~~~無駄だと思うけどねぇ? アレも効いてる状態で笑わずに謝るなんて……無理ゲーもいいトコよ……」 鈴音はその様に言葉を返しつつ手の動きを緩めていく。 「無理でも……ヤってもらう! 私の意地にかけて……」 綾香もそう言いつつ手の動きを緩めて行った。そして、強制笑いから解放された満身創痍な紅葉に真剣な視線を落としながら最後の忠告を零す。 「良い? これが最後のチャンスよ。次……謝る時に笑ったら……そのチャンスは永遠に失われる事になる。だから……命がけで挑みなさい? 私達のくすぐりを必死に我慢して謝って見せなさい!」 紅葉はそれを聞いて怯える様に顔を横に振る。 そして、涙声で綾香に助けを求める。 「むりっ! 無理よっっ! わだじ……無理! 出来ない!! どうしても……笑ってしまうのっ!! ムリなのっっ!! だ、だから……もっと別の……」 「駄目よ、ルールは変えられない……。だからあんたは意地でもやり遂げなきゃいけないの! 出来ないとか……無理だとか……そんな事言ってる暇があるなら、どうやったら我慢出来るか思案なさい!」 「む、無理だって……私には……無理……身体の調子が……おかしいの……。普段はこんなじゃないのに……くすぐられる事を想像しただけで……無性に体中がくすぐったくなって……」 「それでも……我慢するの! どんな状態でも……謝る事に全力を尽くしなさい! 今のあんたには……それしか許されないんだから……精一杯それを遂行なさい!」 厳しくも一方的な綾香の物言いに、紅葉は困惑を極める。 自分は出来ないと言っているのに……綾香はそれでもヤれと熱心に言い聞かせて来る。 もはや過去の恨み言など残ってさえいない紅葉にとっては、綾香の言葉に従いたいとは思っている。自分のしでかした罪の重さも十分すぎる程に理解している……だから、それをしっかりと謝罪したいと今では思えているのに…… 綾香はくすぐられながらの謝罪にこだわっている。それが誠意を示す唯一の方法だと言わんばかりに……そのルールを押し付けて来る。 紅葉は綾香がどうしてここまで謝罪のシチュエーションにこだわっているのか……理解出来ない。 なぜこんな苦しい思いをしながら謝罪をしないと認められないのか……それが理解出来ない。 当然だ……何せ紅葉はまだちゃんとは理解していないのだから…… 彼女の生殺与奪権は……綾香や鈴音が握っているのではなく……実は麗華が握っていたという事を…… 彼女が見捨てれば……紅葉のそれ以降の人生は悲惨なモノになると綾香は理解している。自分が一歩間違えればそうなっていたと自覚しているから……いや、彼女に助けられても尚惨めで過酷な日常に身を置かされているのだから……だから分かる。このチャンスを逃せば……きっと彼女は生きていけなくなるだろうと…… 「お願いだから……ココだけで良いから……必死になって踏ん張りなさい。後は……私がどうにかしてあげるから……」 綾香のそんな経験や思いをリアルには体感できていない紅葉は……やはり、彼女との認識の乖離があり自分の事として理解が出来ない。 しかし、敵であった筈の綾香がどうして自分にそこまで言ってくれるのか……という事には疑問が浮かび……思わず聞いてしまう…… 「なんで、あんたの方が苦しそうにそんな事言うのよ? これは……私の問題……なんでしょ?」 と……。 その問い掛けに綾香は首を横に振って返す…… 「いいえ、紅葉……私はね、この顛末は自分の罪でもあるって思ってる。あんたを……イカサマに駆り立てたのは……きっと私の不手際も影響しているって思ってる……だから、あんたを……見過ごせない……見過ごしたくないのっ!」 ……と。 綾香の真剣なその物言いに圧倒される紅葉だが、それに言葉を返そうと綾香に向けて口を開こうとするとその瞬間……足元から異常なこそばゆさが湧き上がって来て開こうとした口から笑いが漏れそうになってしまう。 「はぐぐっっっ!?」 笑う寸前の所でその口はどうにか閉じられたが、しかし足裏に加えられるこそばゆさは収まってはいない。見れば鈴音が……待ちくたびれたと言わんばかりに人差し指を立てて足裏を撫で回している姿が確認できる。 「ったく……さっさと笑っちゃいなさいよ! ほらぁ! どうせ謝る気なんてないんでしょ?」 くすぐり方は本気ではないが、指先はしっかりと土踏まずの中心をほじくる様なくすぐり方をしていて明らかに笑わせようと強い刺激を加えてきている。 紅葉はその刺激に目を閉じて唇を震わせ必死に笑い出しそうな口に力を込める。 それを見た綾香も、憐れむような目で彼女を見ながらも仕方なしと言わんばかりに両手を彼女の腋へと這わせに行った。 「紅葉……頑張って! あんたなら出来る筈よ! ほら、頑張って口を開いて!」 綾香はその様に応援の言葉を伝えながらも、手はしっかりと紅葉の無防備な腋をくすぐり始める。 応援しているとは思えない程の、繊細で大胆なくすぐり…… ワキの中央を全ての指でコショコショとくすぐったかと思えば、全ての指で腕の付け根から脇の下までを往復して撫で上げたり…… 胸の横まで降ろした手でムニムニと揉む様なくすぐりを展開させたり……腋の縁を爪の先でなぞってこそばしたり…… 綾香のくすぐりは言葉とは裏腹に容赦のない刺激をワキに生ませ、紅葉を笑わせようと仕向けて来る。 「(な、なにが我慢しろよっ!! あんただって本気でくすぐって来てんじゃないのよっッ!! こんなくすぐり方されて、笑わないなんて……無理が……)」 腋と足裏に同時に加えられる激しいじれったさと掻痒感……紅葉はその刺激に笑うまいと懸命に我慢するが、そんな彼女を絶望させるカウントを綾香は取り始める。 「29…………28…………27…………」 自分には笑わずに謝罪しろと釘を刺しておいて、結局くすぐりには参加するし時間までもキッチリ図ろうとしてくる綾香……。その態度にますます理不尽さを覚えてしまった紅葉は、瞑っていた目を大きく開き睨むよう彼女を見てムームーと呻き声を上げて抗議する。 しかしその訴えを聞いても綾香のくすぐりはテンポを緩めず、カウントダウンも止まらず紅葉に慈悲を見せようともしない。 「……13…………12…………11…………」 そうこうしている内にカウントは10秒を切ろうとし、紅葉は焦らされてしまう。 このまま口を開けば、我慢できなくなった笑いが一斉に口から吐き出されそうで……出来れば開きたくはない。 でも、口を開かないと謝罪の言葉を出せないし……時間切れにもなってしまう…… 「(だ、駄目だ……結局、口を開くしか道は無い……)」 少しの思案の末にその結論に再び行き着いた紅葉は、意を決して唇から少しずつ力を抜いていく。 そして、恐る恐る……唇を震わせながら言葉を発する為に口を開いていった。 「(言わなきゃ……今度こそ……言わなきゃ!)」 十分に口が開くと、紅葉はすぐに腹に力を込めくすぐったい刺激と戦いながら謝罪の言葉を発する。その言葉は人語として理解出来るかどうか怪しい程に崩れた言葉だったが…… 「ご、ご、ごべんだざいぃィっッ!! イガ……ザマ……じで……ごめんな……ひゃいぃ……ひっ!?」 っと、そこまで言い切るとすぐに口を閉じた。 これ以上口を開けば笑いが我慢できない事は間違いなかった……だから、すぐに口を閉じたのだが…… 綾香はそんな必死に繰り出した紅葉に休む間を与えず無慈悲な言葉をかけて来る。 「そんな半笑いじゃダメよ、やり直し! もっと真剣にハッキリ言葉を伝えなさい!」 それを聞いた紅葉は頭が真っ白になる。 必死に……懸命に……無理をしてでも頑張って謝罪の言葉を口から出したのに……それではダメだとあっさりと否定されたのだ。 綾香は半笑いになるなと言うが……それは到底無理な話だ。なにせ今のは渾身の謝罪だったのだから。これ以上笑う事を我慢して謝罪するなど出来よう筈もない。紅葉にとっては最後に振り絞ったギリギリの謝罪だったのだから……それ以上を求められても対応できるはずがない。 「29……28……27……」 既に笑いを堪える事で目一杯になるまで追い詰められた紅葉に、綾香は無情にも再びリセットした制限時間を数え始める。 くすぐりは勿論止まってはいない。足裏にはスリスリと音を立てて人差し指が這い回っているし、綾香の手も紅葉の腋を容赦なく引っ掻いてこそばゆくさせている。 もう……謝罪の言葉を紡ぐなど……無理だ。謝罪どころか……笑いを我慢する事すら限界に達そうとしているのに……口なんて開いていられる筈がない。 笑いたくない…… これ以上……笑いたくない…… 紅葉は心の底からその様に思っているが、くすぐりの刺激がそれを許してはくれない。 笑いたくないと心の中では何度も唱えているが、くすぐりが“笑え”“笑え”と誘うように囁いて来る。 その刺激には……逆らえない。どう足搔いても、逆らう事が出来ない……。 「むふぐぐっっふっっふっ! くふぅぅぅぅぅっ!」 身体は勝手に痙攣を起こし、腹筋や横隔膜は不規則に収縮を繰り返す……身体全体がくすぐりの刺激に応えて“笑え”と強要してきているようで、もはや我慢しているのは上半身の中でも顔の部分だけ…… そんな状況で……笑わないでいる方が立派だと思える。身体の全てが“笑え”と圧をかけてきているのにそれに逆らって我慢している自分は、綾香の期待に応えられていると自慢出来さえするとも思う。 しかし……綾香は許してくれない。 カウントは無情にも10秒を切り、再び紅葉に選択を迫って来る。 口を開いて果敢に謝罪の言葉を捻り出す努力をしてみるか……それとも時間切れまで笑わずに耐えて罰を受けるか…… まぁ、今口を開けば確実に笑ってしまうのは明白なのだから、どちらにしても罰を受けるのは間違いないから努力するだけ無駄な気はするが…… 「(くっっ! わ、分かったわよ! やればいいんでしょ! やればっっ!!)」 紅葉は最後の気力を振り絞って口を開ける決断を下す。 無駄だと分かっている場面でその決断は愚かしい行為だと自分でも思っているが……しかし、頭の中には先程の綾香の表情がこびりついて離れない。 敵である自分に憐みの表情を浮かべながら必死に説得しようとするあの顔……アレを思い出してしまうと……例え愚かしいと思える決断でもそれを実行したくなってしまう。 綾香はきっと……自分の為にあの顔をしてくれたのだと……分かるから……。 「6………………5………………4……………………」 綾香がほんの少し、秒数のカウントを緩めてくれている。 それは、本当に少しの間延びでしかないが……紅葉にはその心遣いが伝わって理解した。 彼女は……本当に自分を更生させたいと……そう思ってくれているのだ……と。 だから、無理だと分かっていても紅葉は堂々と口を開いて言葉を紡ごうとする…… もう、笑ってしまっても良いからこの言葉だけは自分の意志で伝えようと……決意の念を込めて…… 「ごめ……ん……な……さ、さ、さいぃぃっっ!! イカ……サマ……じでぇ……プククっ! ごめん……な……さ、びゃはっっっ!!! ぶひゃ~~~~~~っっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」 しかし紅葉は……謝っている途中で笑ってしまった。 「ギャ~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、いひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! ごべんだざいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、わだじがわるがっだぁははははははははははははははははははは!! ゆるじでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ごべんだざいぃぃぃ!!」 笑いながらも……彼女は謝罪をやめなかった。笑いによって呼吸が激しく乱されるが、それでも紅葉の謝罪は繰り返された。 「はい、アウトぉ♪ ほら、言った通りだったじゃない。こいつはちゃんと謝れないって……」 笑ってしまった紅葉を見て鈴音はすぐにくすぐり方を変化させ、強い刺激を足裏に送り込み始めた。 「ぶぎゃ~~~っははははははははははははははははははははははは、イヒャ~~~ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、ごべんだざいぃぃぃぃっっっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ、ごめんなざいぃぃぃひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!」 「笑いながら謝罪しても無効よ? ほら、苦しみたくなかったら笑う事に集中なさい? コチョコチョコチョコチョ~~♥」 「ほひゃはははははははははははははははははははは、いぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、ゆるじでぇへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、わだじがわるがっだぁあぁぁぁははははははははははははははははははははははは、反省するがらぁははははははははははははははははははははは、ゆるじでぇへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」 「綾香? 何ぼさっとしてんのよ? あんたもさっさとくすぐりなさい?」 紅葉が笑い出してしまい鈴音は速やかに罰へと移行したが、綾香は笑い狂う彼女の顔を見たまま動かなかった。まるで、自分は罰を与えたくないと言わんばかりに動きを止め、彼女のワキからも手を離してしまっていた。 そんな綾香の姿を見て彼女に話しかける人物が二人居た。 一人は言わずもがな、責めを続けろと鼓舞する鈴音だったが、もう一人は…… 「フフフ♥ もうよろしいではありませんか……綾香さん? 彼女には謝罪は無理だった……その結果が出てしまったのですから……気負う事なんて何もないでしょう?」 いつの間にやら綾香の隣までやってきていた麗華その人だった。 綾香は麗華のその言葉を聞いてピクリと身体を反応させる。 「気負ってなんか……無いわよ。でも、こいつの気持ちは……分かったつもり……。あんたにはそれが伝わらなかったの?」 「えぇ……わたくしには……何も……」 「あんなに……必死に謝ったのに?」 「それでも……ルールは守れなかった……でしょう?」 「こいつのは……もう……苦し紛れの謝罪じゃなかった。ちゃんと……最後まで謝ろうと必死になってたわ……」 「そうかもしれませんが……しかし、コチラが提示した条件を満たす事が出来なかった……。そもそも綾香さんが言い出した事でしょう? くすぐられながらでも真剣に謝らせて見せるって……」 「えぇ……そう。その通り……」 「くすぐられても真剣に謝れるくらいしないと誠意は示せないって……そう言ったのもあなただったでしょう?」 「……えぇ」 「でしたら、それが達成できなかったという事は……誠意は無かったんだって判断するより仕方がありませんわよね?」 「……………………」 「なんです? 不服ですか?」 「いいえ、不服じゃない……。そう言ったのは確かに私だから……不服ではないけど……」 「……ないけど?」 「このまま、こいつを放り出すって言うのだったら……私にも考えがある……」 「考え? まぁ……それはどういう考えですの?」 麗華は冷淡な笑みを浮かべ綾香の言葉を促す。綾香は重々しく顔を持ち上げ麗華の方を振り向きつつ言葉を続ける。 「どうせこの後は、このショーの主旨を暴露するつもりなんでしょ? 客達に……」 「えぇ……そのつもりですが……」 「紅葉がこのカジノで本当にイカサマを続けていた……だから罰を与えている……と、そう告げるつもりよね?」 「……えぇ……」 「だったら、その暴露の中に……私の名前も入れなさい!」 「……ッっ!?」 綾香のその唐突な申し出に麗華はピクリと眉を上げ驚きの表情を浮かべる。 「それから、ここから先の罰は私が彼女の代わりとなって受けてあげるわ……。だから、裏で糸を引いていたのは私だと宣言なさい?」 その言葉を聞いてポカンと口を開いて唖然とする麗華。しかし彼女はすぐに顔を引き締め直し、自身のポケットから扇子を取り出してそれで顔を仰ぎながらしばし思案する。 そして、考えがまとまったと言わんばかりにそのセンスをパタンと閉じると、ジロッとした目で綾香を睨み見る。 「それは……自分が身代わりになると……そう言っているのですよね?」 麗華のその問い掛けに綾香はコクリと頭を頷かせて見せる。 「わたくしには……そうまでして彼女を助ける義理などないと……そう思いますが?」 「義理? いいえ、そんな感情で助けようなんて思ってないわ。これは私の為でもある……と思ってる」 「自分の……為?」 「私とこいつは確かに話もした事なかった他人同士だったけど……でも、結局私の過去の行いがこいつの人生も狂わせたと分かった……」 「過去の行い? それは……アレですの? ネット番組を辞退して降板したっていう……」 「えぇ……」 「でもあの事件は綾香さんの責任ではないでしょうに……」 「事情はどうあれ、私があの番組を降りたせいで人生が狂ったという事は間違いない。私があの時意地でも番組に出演し続けていれば……紅葉の人生は狂わなかったかもしれない」 「そんなの……無理だったでしょうに? そんな精神状態じゃなかった筈ですから……」 「あの時はそうだった……。でも今は違うわ! 今なら……あの時の罰を素直に受け入れる事が出来る……」 「それが彼女の代わりに責められるという選択ですの? 自分が身代わりになる事で……彼女の誠意の代わりにしろと?」 「勝手な言い分だって事は分かってる! でも……私はこいつの気持ちは分かってやれたつもりよ! だから……」 綾香がそこまで言うと麗華が再び思案するように顔を斜め上に傾ける。 天井を見つめ……そして何事かを巡らせるかのように額に人差し指を当てる。 そして…… 「フムフム……まぁ、そこまで言うのでしたら……こういうのを試してみるのはどうでしょう?」 何事かを思いついたような笑みを浮かべ綾香に耳打ちを返す。 それを聞いた綾香は…… 「そ、そうね……成程……まぁ、それなら……」 と、素直に返した。 麗華が耳打ちした言葉は綾香にしか伝わっていないが、綾香の顔には安堵とも不安ともつかない表情が浮かんでいる。 「フフフ……決まりですわね♪ では、鈴音ちゃん? 早速……紅葉さんの拘束を解いて頂けるかしら?」 鈴音は麗華のその言葉に思わず「んぇっ!?!?」と驚きの声を上げ目を白黒させた。 そしてすぐにくすぐりをやめ、麗華のもとへと駆け寄ってどういう事なのかと問い詰めた。麗華は鈴音にも同様の話を聞かせ、彼女からも同意を得る。 「な、成程? それで……綾香は納得したんですか?」 話を聞いた後、鈴音も綾香同様不可思議そうな表情を浮かべて麗華に問いを返す。 麗華はその問いに満面の笑みを浮かべて頷きを返してあげた。 「でも……それって結局無駄に終わると思いますよ? だって、こいつにはそんな根性あるようには……」 「えぇ、わたくしも無駄だとは思ってますわ。でも、綾香さんが自分を犠牲にすると言い出してしまいましたし……」 「もしその通りに紅葉が動かなかった場合……本当に綾香が責任を被る事になりかねませんよ?」 「そうですね。その場合は……流石にまた別のプランを考えておきます」 「……うぅぅん……そうですか……」 鈴音は紅葉に聞こえない声量で麗華と言葉を交わすが、イマイチ内容に納得はしていない。そうそう都合よく変更したシナリオ通りにことが進むとは思えず、難しい顔をしてみせるが…… 「まぁ、綾香がそれでいいなら……」 っと、結局は新しく書き換えられたシナリオの内容に頭を縦に振って応えるしかない。 かくして、紅葉の拘束は鈴音と智恵理の手によって解かれ……彼女は麗華に抱えられながらステージの端に毛布を掛けられ座らさた。 そして……紅葉が拘束されていたベッドには……すぐに綾香が横になる事となった。 なぜ自分の拘束が解かれ解放されたのか……事情が呑み込めない紅葉は渡さたタオルで汗を拭いながら困惑の表情を浮かべるばかりだが、ベッドの上の綾香が鈴音たちによって拘束され始めると彼女が自分の身代わりになってくれたのだと……察する事となる。 紅葉はその事に……深い安堵の念を浮かべてしまうが、それと同時に胸の奥がモヤモヤとした何かに覆われる感覚を味わった。 そのモヤモヤした何かは……綾香の拘束が進む程に濃くなっていく気がした…… この気持ちが何のか……それは、くすぐられなくて済んだという安堵に包まれていた紅葉にはまだ気付けない。 綾香の悲痛な声が響くまで……そのモヤモヤした気持ちの正体に気付く事は無かった。