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茶衣流
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サキュモスハンター【2】 【ギルドにて】

サキュモスハンター【2】 【ギルドにて】(2700文字) 【第1話より】  https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/8659412  ギルドの扉を開く。  自分の身長の三倍ほどある扉だが、金具への潤滑油がしっかりと流し込まれているのか、簡単に押し開ける。  身長130センメイルではなかなかに苦労する。  それでも、背は高い方だ。  この島ではどうしてか、男性の身長が低くなり、女性の身長が高くなる。  もちろん、淫気が影響していると言われている。  故に掲示板を見るのも一苦労だ。  何せ、女性ハンターも多くいるのだ。低すぎる位置に掲示してあるわけではない。  そして、掲示板には多くのハンターたちが集まっていた。 (見えない……) 「あぁ……危険個体の出現が掲示されているわね」 「まじかぁ……今日休むかな」 「さっきの“討邪神起”のクランだったわよね。あそこでも負けるとなると、ここに対応できるハンターなんているのか」  討邪神起。  合計50人からなる大型クランだ。  そのうち、先に見ただけでも20人。半分近くの人数で討伐できなかったことになる。 「主力部隊が出てなかったって話だが……」 「いや、それでも総員25名での討伐だろ、それで倒せない個体なんて今までいなかったよな」 「私、ちょっと怖くなってきた」 「とにかく、今日はどこかのクランと一緒に行動しないとね」 「そのうち、このままだと大型レイドが発表されるんじゃ」 「マジか……今までこの町ではなかったことだよな」  小耳を立てているだけである程度の情報が入ってくる。  されども、肝心のサキュモスの情報が無かった。   「あのぉ~」 「ん?ぁぁ、メグルくん、おひさ~」 「元気してた?」  一番巡るから近くにいた知り合いに声をかけた。  ハンター名、リマとユイナ。  軽い感じのノリのリマに対して、丁寧な物腰のユイナ。  彼女たちはクランに属しているわけではなく、ペアを組んで行動している熟練のハンターだ。  そんな彼女たちを最近小型の複数個体討伐戦で一緒に行動したことがあった。 「リマとユイナも、それの討伐に?」  それ、とは、例の大型個体の事だ。 「いや、ナイナイナイナイ」 「う~ん、さすがに危なそうだからね」 「オレも同じことを考えていたけど、どんなサキュモスなんだ?ここからじゃ見えなくて……」  少し赤面してしまう。 「お、メグルは初心か?もしかして?」 「いや、今まで、小型には三度ほど……」 「まぁ、誰もが通る道だよな、わーしももう何回かやられたが、負けたら負けたらで楽しむしかないんよ」 「まぁ、やられた相手には全員お礼参りしてますから……虜にもなってないですし大丈夫ですが」 「あぁ、今回のはわーしもちときけんなぁ、気がするよ」 「リマもそう思うか……サキュモスの特徴は?」 「完全特殊個体らしくて、夜限定出現らしい」 「ほうほう……」 「で、本体の姿を見たものはひとりもいないと」 「え?本体を見ていない?」 「そうなんだ。触手?みたいなのが地面からいきなり襲いかかってきて、パックンって。回避できたメンバー曰く、触手は蕾のような中で大量の泡を吐き出したって話だ。しかも、動きは速いらしい。森の中だったこと、触手の周りに花が咲いてフェロモンを撒いたってのもあって、植物型の可能性もある。だが、バブル種のスライム型とも、触手種のテンタクルとも、植物種のアルラウネとも、どうもしっくりくる個体ではないらしい」 「とにかく、奇襲が危ないと……」 「そうね。奇襲に際して兆候は見られなかったらしいの」 「ま、わかっている感じだと、こんなところだな~」  奇襲系のサキュモス。  たしかに、それなら複数人でも対応は難しい。  ソロでも、それは同じだが。  後方に遠距離武器のメンバーが必要だが、この街にはほとんどいない。  メグルの知る限りユイナだけだ。  ユイナの武器は弓。  それに対して、リマは大剣と大盾の重武装戦士スタイル。  だが、機動性を生かすために、メグルと同じ軽装備だった。 「メグルはこの後、どうするつもりだ?」 「よかったら?」 「でも、二人は、今回はもう少し大型クランに入るつもりでしょう」 「……」 「いや、オレもその方がいいと思う」  なら、答えは決まっている。  あまり大勢では動きたくない。ここも、いろいろなしがらみがある故に。 「そうか……気をつけてな」 「何かあったら言ってね」 「ああ、しばらくは近場で小型のみの相手をしておくさ」  小型と、一言で言い表したものの小型でも自分よりも圧倒的に大きな存在だ。  小柄な種族である人間が圧倒的な不利のようにも感じられるが、実際そんなことはない。夢幻の武器を使ってならば、急所と言う部分が存在せずに、どこに攻撃を当てても効果は同じなのだ。  仮に頭や心臓といって人でいうところの急所と言う部分を攻撃しても効果は上がらない。  サキュモスとの戦いは至極単純。  捕まらないこと。攻撃を受けないこと。そして、誘惑にのらないこと。  この三つを守って、ひたすらに細かくダメージを与え続けるだけなのだ。  足元を中心に攻撃する。それだけだ。 「さて、どうするか」  人数の減った掲示板の前までやってくる。 「平原地帯のバニキュモスの討伐、これくらいか……」  掲示板を見て思った。  小型の案件が異常に少ない。  すでにリスクの少ない小型案件は、先に来ていたハンターたちに取られたのだろう。  バニキュモス。  正式名称、バニーサキュモス。  名前の通り、うさ耳、うさ尻尾をつけたエッチなウサギの姿をしている。  これとは別に、ヒュージ型や特殊能力型、は基本大型に分類され、小型バニキュモスと言われない。  だが、決してリスクの低いクエストというわけでもない。  バニキュモスの独特の姿や誘惑に嵌ってしまうハンターは少なくない。   実際に、何人ものハンターがバニキュモスに敗北してしまっている。  今まさに、この掲示板に張られているのがその証拠だ。  メグルはまだバニキュモスとの戦闘経験がない。 「いくか……」  バニキュモス討伐の依頼書を引き剥がす。  それを受付まで持っていった。 「はい、メグルさんの今回のクエストは……バニキュモス?ほんとに……」 「ええ」 「ソロですよね」 「はい」  ソロ討伐。  つまりは、一人で行くのだ。 「バニキュモスは群れを成していることもありますので、おすすめできないのですが」 「大丈夫です。一対多の戦闘は慣れていますので」 「そうですか……では」  受付嬢のリアラさんは、差し出した依頼書を処理してくれた。  受付嬢さんたちの中でもリアラさんの人気は高い。背丈が高く、そのうえ胸も大きい。  それも一因だろうが、何よりもハンター思いなのだ。  ハンターたちの末路も知っている。  何故なら、彼女自身も元ハンターなのだ。  今では、引退している。その原因は誰も知らないが、想像に難くはない。 「無理だけはなさらないでくださいね」 「ええ、いってきます」  ギルドを出ると、ミリエル平原へと向かった。 *** 【第三話へ】 https://abnormal-create.fanbox.cc/posts/8660537


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