「ここか…芳須さーん、芳須仁紫子さーん…おい芳須、居るんだろ?開けろ。」
黒髪を靡かせた女性はアパートの一室の前でインターホンを鳴らしつつ声を掛けていた、目的は簡単だ、卒業した学校の後輩から助けを求められたからだ。
知り合いの先輩に恐喝紛いの事をされた挙げ句無理矢理貸させられた現金が帰ってこないとの事であった、可愛い後輩のためならと言う判明、在学時代にも色々悪い噂のあった人物に焼きを入れるためと言う気持ちが半分あった。
何度か扉を叩くも反応がない、やはり留守なのかと思った矢先試しにドアノブを握ってみると、
かちゃ…
音を立て扉が開いた、普通なら此処まではしないが興味本位からか、脚を踏み入れるとそのまま部屋の奥へと向かう、リビングへと到着すると其所には生活感丸出しのベッドに電源のついたパソコン画面…まさか居るのか、そう思った瞬間突如口と鼻を塞ぐように何かを押し付けられ直後急激な睡魔に襲われると其所で意識を手放してしまった…。
次に目を覚ました時には頭がぼんやりとした、寝てしまったのかと思い身体を起こそうとする…
ぎち…ぎち…
身体が思い通りに動かず代わりに何やら音がする、目を開けると視界が狭まっている感覚に陥った、目線を上下左右に向けると何やら黒い物が視界に入る、直後口を開けようとするも唇が固定されている事に気付いた、何だと思い声を出そうとするも舌に何やら乗っているのか満足に声も出せない、辛うじて鼻で息をするも何か被せられているのか呼吸する度ぴたっと鼻腔に貼り付くような感覚を覚えた。
「あら、目が覚めましたか?」
直後聞き覚えのある声がし首を曲げ顔を向ける、椅子に腰掛け背凭れに両手を乗せる芳須仁紫子が其所にいた、得意気に眼鏡越しに笑みを浮かべ片手には粘着テープの割っかの部分に指を入れくるくると回していた。
立ち上がると此方と近付いてくる、何をしたんだと言う気持ちが芽生えるもその答えは直ぐに出た。
「駄目ですよ、人の家に勝手に入るなんて…怖いから縛りましたけど。」
肩に手を掛けるとぎちと音を立てつつベッドの端に座らされた、直後仁紫子はスマホを取り出し写真を見せつけてきた、首から下を銀色の粘着テープでミイラのようにぐるぐる巻きにされ首から上は顔を包むように黒い覆面を被せられている人物…自分が写し出されていた。
「驚かないんですねー…痛い事はしないから大丈夫ですよ?ただ少し狭い所に入って貰いますけど。」
そう言うと仁紫子はテープで包まれた肩を掴み無理矢理立たせた、しっかりテープを巻いてるためか肌に貼り付いているかのように動く度軋む音を鳴らしながらもこんな事をした犯人である仁紫子を睨むことはやめなかった、しかしそんな事でこの状況を打開する事など出来る筈もなかった。
そのまま仁紫子は軽く背中を押すと満足に歩けないながら移動するように促し始めた、渋々爪先を揃えられた脚でウサギのように跳ねて移動すると部屋の片隅のクローゼットへと押し込まれた、ご丁寧に入れる際は対面になるように向き直されると覆面越しになおも睨むさまを嘲笑うように仁紫子は口を開いた。
「まるでミイラが棺に入るみたいですね…じゃあ私は少し出てきますので。」
「!?」
この予想外の発言に思わず声を漏らしそうになるもテープを何れだけキツく巻いたのか全く声を出せず代わりに被せられた覆面の口元と鼻が膨らむ程度に終わった。
「じゃあ先輩、また来ますのでそれまでお一人で楽しんで下さい…それでは。」
不適な笑みを浮かべ手にしていた粘着テープをクローゼットに詰め込まれた自身の足元に投げ捨てると扉が閉まった。
ー完。
GPTmarkⅡさん、ありがとうございます!!
※おまけ
芳須仁紫子ってだれ?と思った方へ↓

プロローグ 「・・・うぅ~ん・・」 家計簿代わりのExcelファイルを表示したまま、芳須 仁紫子(はす にしこ)は長いうなり声を出した。 水泳部部長にして、経済学部経営学科の3年生。明眸な顔立ちと黒縁眼鏡が相まって、非常に知的な印象を醸し出すが、その実は根っからの・・ズボラ人間である。 今の格好も、意味不明なイラス...