水泳部のエースである夏芽は、やんちゃな男の子がそのまま大きくなったような性格である。 夏はその辺の男子よりこんがりと日焼けし、また日頃の鍛錬の成果か体格もがっしりしているため、制服以外はオトコだと評されることも多い。 身長も170㎝近くあるため、女子として彼女を見る男もまずいない。 ―ハズだった。 ある日部活の朝練のため、夏芽は家を出た。 流石に水着で外出はしないが、がさつな性格故、制服の下にそれをそのまま着て出かけることにした。 そして彼女は更衣室へと入っていった。 ―その姿を確認すると、ある影がそこへと近づいていく。 更衣室の中は湿度の高い不快な空気が溜まっており、気温の高さと相まって非常に蒸し暑い。 「あっちーな、ほんと」 と男言葉で独り言を吐き、夏芽は鞄を放り投げ、さっさと着替えを始めようとした。 ―その時だった。誰かが後ろに立っている。 首筋に何か冷たいものが押し当てられている。 ごくりと唾を飲み、目だけでそれを確認した。刃物が妖しく輝いている。 そしてゆっくりと、更衣室のドアが閉まり・・・。中には二人だけとなった。 ―数十分後、そこには全身を厳しく拘束された夏芽と、しゃがみ込んでその姿を見下ろす男子生徒だけがいた。 サングラスとマスクをしているため、その顔は見えない。 男はくぐもった声で話しかけた。 「お前の魅力には・・実は皆気付いているのさ。お前以外のな。お前はいつか、誰かのモノになる。その前に、俺だけのお前という状況が欲しかったんだ。」 ―夏芽はその声に聞き覚えがある気がした。まさかと思うが・・・幼馴染の男の声にそっくりである。 その男はゆっくりと、夏芽の制服にナイフを当てた。力をこめると、服が裂ける。鮮やかな水色の水着がそこから見える。 「―さぁ、一枚ずつ、一枚ずつ。楽しみはこれからなんだ。今日の部活、実は本来休みなんだよ。俺が部員を騙って、急に練習になったとお前にメッセ―ジを入れたんだ。無邪気なだけじゃなく、物事を深く考えないアホだからな、あっさり騙されてくれて拍子抜けだよ」 ―夏芽は恐怖したが、拘束と、視界の端に見えるナイフが抵抗を封じている。 蝉時雨が降り注ぐ中、二人の時間が始まったのであった。 ―完