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テープ・ブラインド -ショート・ストーリー-

新任教師である茉優(まひろ)は、4つ年上の美術教師・倉城(くらき)に恋心を抱いていた。 その憧れの人から、コンクールへの応募作品のモデルを依頼されたときは、天にも昇る気持ちで喜んだ。 金曜の夜。すっかり日も落ち、生徒はもちろん他の教師もいない。 二人は美術室で向き合っていた。 引き戸はカギがかかり、窓も厚いカーテンで隠れている。 そんな中、茉優はスーツのまま、パイプ椅子に腰かけていた。 キャンバスの後ろに、白衣を着た倉城がみえる。 熱心にデッサンを行っているのか、鉛筆を走らせる音が止まらない。 軽いパーマのかかったショートヘア、鼻筋の通った端正な顔立ち、知的なリムレスフレーム眼鏡。 その全てが見惚れるほどカッコいい。 夢見心地の茉優に、倉城が突然手を止めて声を掛けた。 「少しポーズがなぁ・・。もっとこう・・・。言葉じゃ難しい。ちょっと失礼するよ。」 そう言うと、倉城は茉優の後ろに回り、手首を優しくつかんだ。 意外な展開、肌のぬくもり、全てが合わさり、茉優の顔が赤くなる。 カチャッ ―後ろに手首が回されると同時に、何かカギがかかるような音がした。 身体を動かそうとすると、再びカチャリという音がした。腕が前に回せない。何かが―腕に嵌められた。 必死で肩越しに背中を見ようと焦る茉優をしり目に、倉城は足首にも何かを嵌めた。見るとそれは、手錠である。恐らく腕にも、同じものが付いている。 「・・・まだ足りない。」 うつむきながら、倉城はそう呟いた。その声は、どこに向けられたものか、全くわからない。 「す、え、あの、これ、は・・どういうこと、ですか!?」 動揺しながら、茉優は倉城に尋ねた。しかしそれを完全に無視し、今度は白衣から布を2つ取り出して、茉優の眼前に立った。 片方を乱暴に口へ押し込み、もう1つを噛ませ、頭の後ろで固く結ぶ。声が上手く出せない。 「・・・・・まだまだ、だな。」 再び倉城がそう呟く。茉優は恐怖で、声が出せないでいた。 続けざまに手に取ったのは、青いビニールテープであった。倉城はそれを手錠ごと、足首へと巻きつける。 そして膝の上下、太ももへと、それは巻かれていった。太ももを縛り上げたテープは椅子も巻き込んでおり、茉優は完全に逃げられなくなった。 「ふぇ・・・ふぇんはい!?」 狂気に満ちた行動に、噛ませ猿轡からくぐもった声を上げた。だがそれはまたも無視され、拘束は続く。 胸の上下、そして手首。手錠の上から巻かれたそれは、茉優の手首から先を、青い塊へと変えた。 倉城は無造作にテープを千切り、茉優の口へ押し当てた。その時茉優は、倉城が不気味に笑っているのに気が付いた。 「ふむ・・・悪くない。やはりお前はモデルの資質があったな。どこまでも妖艶だ。その若さで、大したものだ」 仰々しい言い回しで、倉城が話しかける。淡い思慕は、既に完全なる恐怖へと変わっている。 「やはり実物を見ないことには、俺の絵も何かが欠けたままなんだ。大丈夫、終わったらたっぷりお礼をするからさ」 そして倉城は、テープの一片で茉優の目を塞いだ。視界の全てが暗闇に落ち、一層恐怖が募る。 「例えば、その目のテープのシワとか光の具合も、想像では上手く補えないんだ。あと、本気で力を入れて拘束を破ろうとするときの感じとかも、みないことには始まらない」 茉優は、自分の顎先が掴まれるのを感じた。ほのかな香水のにおいがする。倉城が、目の前にいる。 焦りと恐怖から、茉優の鼻息が荒くなる。 「何も殺しはしない。それは約束するさ、安心しろ。だが、俺が見たい姿はまだまだある。例えば長く息を止められたら、演技じゃなければどういうリアクションになるのか、等な」 そう言うと倉城は軽く茉優の鼻を、指先でつまんだ。茉優が慌てて首を振ると、その指はすぐに離れた。 「ふふ、良い眺めだ・・・。さぁ、まだまだ勉強させてくれ。今は夜。明日は休み。これがどういうことか・・・わかるよな?」 ―その声に頭を殴られたかのように、茉優は周りから音が消えていくのを感じた。 闇は一層深く、校舎とその中に二人を包んでいくのであった。 ―完

テープ・ブラインド -ショート・ストーリー-

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