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葉一
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リクエスト/谷口君(水泳部)の続き(9)完

コメント:完結です。エピローグ長すぎない?/同じ内容ですが、pixivにも投げておきます。水泳部と野球部で分割しようと思います。先日アンケ取ったアペンディクス(付録)は、ちょっと疲れ果てたのでおいおい有料版で出す……と思います。社会人になった谷口君の話になる予定です。  ▲  野球部がおかしくなったのは──やっぱり、3年生の引退がきっかけだったように思う。やる気のない3年がだらしなく引退試合で負けたのを見て、ぼんやりと、あんな感じでおれも引退するのかなと思った。やる気がないという程ではなかったが、新主将の後藤田と比べれば、おれはやっぱりやる気がないんだろう。同級生や下級生達から悪い意味で信頼を置かれ、おれが副将を押し付けられた。ほどほどのところで後藤田にブレーキをかけてくれるだろう、なんて他人任せな期待が込められている。  まあそれでも、なあなあで1年間やれば良いんだと思っていた。まさか、顧問の霜センが急にやる気を出してこんなことを言い出すまでは。 「お前ら、今週中に五厘に頭丸めて来いよ。俺も短くして気合入れるからよ」  もっさりとした髪形だった霜センは「さすがに五厘は職員規則でダメだから」と言いながら、かなり短く髪を刈り揃えていた。顧問が既にそうしているのだから、その場ではみんなは辛うじて返事をした。が、部員達の間に動揺が走ったのは当然だった。霜センは、体育の先生でぱっと見は厳ついが、おれ達に厳しく指導することはこれまで一度もなかったのだ。優しいので慕われていたが、どちらかと言えば弱気で、言いたいこともやんわりとしか言えない先生だった。それで今までやる気のない野球部が続いてきたというところもある。その日の終わり、部室では霜センに対する不満が噴出していた。 「お前副将だろ。霜センに嫌だって言って来いよ」  同級生の誰かがそう言って、おれは「めんどくせえ、無視しようぜ」と応じた。しかし、部員達がやかましく言うので、結局おれが明日、霜センと話しに行くことになった。 「別に、五厘にすりゃいいだろ」  後藤田はあっさりとそう言い、おれには付いて行かないと言う。能天気なのか空気が読めないのか、後藤田は霜センに言われた通り、青々とした五厘刈りで翌日の朝練に登場した。驚いたのは、1年生にも2年生にも、数人は五厘刈りにしてきた部員が一定数いたことだった。怒られたくないとか、内申とか、まあ人それぞれ言い分はあったのだが、初日から部員の3分の1はいかにも野球部らしい五厘になってしまっている。おれは、副将という立場にありながら何もせずにいた──何なら、その指示を無視しようとしたのだがら、正直気まずかった。霜センは満足そうに部員達を眺め、「他の奴らも来週までには丸めて来いよ」と昨日と変わらないコメントを出した。部員達には微妙な空気が流れた。 「おい」  クラスに戻ろうとした際、廊下で後藤田がおれを呼び止めた。溜息を呑み込んで振り返る。恥ずかしげもなく青い頭を晒し、他クラスの奴らからは注目され、ひそひそと陰口を叩かれている。当人の後藤田は、やっぱり気にならないようだった。 「副将だろ。髪どうすんだよ」  今度は舌打ちを我慢できなかった。「霜センに話してみるよ。おれみたいに、納得してねえ奴もいるって」。後藤田はそれ以上何も言わなかった。  練習前に、おれは体育教官室の前に立っていた。気が重い。坊主に──いや、坊主なのはまだしも、五厘刈りはちょっと。こんな軟弱なことを言ったら、霜センは流石におれのことを怒るだろう。それなら、まあ退部すれば良いのだ。そう決意して、鉄扉をノックする。 「おう、入れー」  中から霜センの穏やかな声がする。 「失礼します!」  一応野球部員らしく、元気に返事をして入室した。小さい中学校なので、体育教官室を常用しているのは霜セン1人である。それにしても、いつ来てもこの部屋は雑然と散らかっていた。部屋の奥、ロッカーの前で霜センはちょうど着替えをしているところだった。いつも着ている紺のジャージを脱ぎ、そこでやめるのかと思いきや、おれがいるにも関わらずシャツを脱ぎ、上裸になる。体育の授業で汗をたっぷりかいたのだろう、湿ったシャツが重そうに床に投げ捨てられた。振り向くと、体育教師らしい、筋肉の上にむっちりと脂の乗った肉体が目に入る。プールの授業の時にはなかった筈の胸毛やへそ毛が、たわしのように放射状に生えていた。童顔の霜センにはとても似合わないが、そのギャップにおれはなぜか衝撃を受けていた。 「おう、閉めてくれ」 「! すいません!!」  体育教官室の鉄扉を閉める。そのまま、霜センはパンツごとジャージのズボンを脱ぎ、全裸になった。丸出しになったチンポが、だらしなくぶら下がっている。おれの父ちゃんよりデカい、とそんなことを思った。みっしり生え揃ったチン毛やすね毛も、雄臭かった。目の前の霜センが、全く別の、見知らぬ屈強な男のように思われた。 「ああ、ごめんな。職員会議の前に着替えておきたくて。ま、男同士だから気にしねえよな」 「──ッス!」  にこにこ笑いながら、それでも霜センは裸体を見せびらかすようにして立っていた。おれは、霜センに言われてはじめて、教師が生徒の前で全裸でいることの異様さに気付いた。しかしそれも、霜センが自ら言及したので、違和感はすぐに薄らいでいく。確かに男同士だし、部室ではみんな裸で着替えている。おかしいことではなかった。霜センは手早く長袖のアンダーシャツとロングスパッツを着用した。胸元にDN社のロゴが入っており、最近水泳部の奴らがこぞって着ているものだと分かった。霜センの豊満な肉体がぎゅうぎゅうに押し込められ、全身のアウトラインも筋肉や脂肪の凹凸も全てがくっきりと明らかになる。裸でいるよりもかえって見てはいけない姿であるような気がした。 「で、なんだ?」  そのままの恰好で霜センが尋ねる。黒の全身タイツを着ているような姿──おれは何故か、霜センのカラダばかり気にしている。 「お、おれ、あの──五厘が、どうしても嫌なんです」  もっと良い言い方を、頭の中で考えてきたはずだった。しかし、おれの口から出たのは本当に飾り気のない、素直な気持ちだった。言い訳も、ごまかしようもない。これは怒られる──そう思った。 「──そうかあ」  霜センはしかし、怒らなかった。ちょっと気の抜けたような声で、優しげにそう呟いただけだった。おれはほっと安堵した──その一方で、心の片隅に罪悪感が湧いてくる。霜センも後藤田も、野球部を良くしようとしているだけなのに、おれが、自分勝手なわがままで、それを邪魔している。やはり、野球部を辞めた方が良いのかもしれないと思った。真面目にやっている奴の足を引っ張るのは、いくらやる気がないといっても本意ではない。  それをどう伝えようか言いあぐねていると、霜センが察したようにおれの言葉を遮った。 「野球って一人じゃできねえスポーツだから、いろんな奴がいて良いと俺は思うんだ」  それは、端的に言えば説教だった。霜センは怒ってないし、ある程度、その言い分に納得できるところもある。だが、おれが覚えていたのはその最初の言葉だけで、あとはぼうっと聞き流していた。聞きたくなかったわけでも、反発していたわけでもない──実を言うと、霜センのガタイと汗の匂いに、夢中になっていたのだ。なんでか分からねえけど、霜センのことがすげえエロく見えた。アンダーシャツ越しに見える筋肉の膨らみが、一日中体育で汗を流した雄の匂いが、おれを魅了する。それを自覚してからは、もうダメだった。胸がドキドキと高鳴る。口の中がからからに乾く。腋がじっとりと湿っていく。おれは──霜センのことが好きになっていた。人としてではなく、雄として、恋愛としての好きだった。たった十分程度、同じ部屋にいただけでおれの性癖は完全に変わってしまっていた。どうしてとか、そんなわけないとか、頭の中では疑問に思っている。しかし身体は、そして本能の奥底では、目の前の事実だけが全てだった。スラパンの中で少しずつ。おれのチンポが硬くなっていく。 「な?もう少し俺達と頑張ってみねえか?」 「ッス♡頑張りたいッス♡」  どんなことを言われていたか、薄ぼんやりとしか覚えていないがおれは体育会系らしく脊髄で返事をしていた。 「芹沢にそう言ってもらえて、俺も嬉しいよ」  にっこりと霜センが笑う。それだけでおれも嬉しくなっていた。 「頭だけど、どうしようか。本当に嫌なら仕方ないけど……お前が良いなら、道具はあるからここでも五厘にできるぞ」  霜センがそう言って金髪にしてきた悪ガキのためのバリカンを持ち出す。おれは一も二もなく頷いて、その場で髪を刈ってもらうことにした。あれだけ嫌がっていたのがウソみたいだった。今は、霜センの言う通りにすることがおれの中で最善で、最優先となっていた。慣れた手付きで霜センはゴミ袋に穴を開けたりして、お手製の床屋セットを組み立てる。アタッチメントなしの本当の五厘で、バリカンがおれの頭に入れられた。ほんの少しだけ、後悔と名残惜しい気持ちがあったが、結局は密着した霜センの汗の匂いを堪能している内に全て忘れてしまった。備え付けの洗面台で、出来栄えを確認する。後藤田と同じ、青々とした頭に変わり果てたおれが、鏡の中に居た。 「男らしくて、よく似合ってるぞ♡」  つるつるの頭を、霜センの武骨な掌で撫でられる。おれは霜センに褒められ、頭を撫でられたという悦びで、イヌが嬉ションをするようにスラパンの中で射精していた。霜センに好かれたい、霜センのような男らしいガタイになりたい。その2つだけが、おれの存在意義になってしまった。 「あざっす!!」  一礼して体育教官室を出る。生まれ変わったおれは、野球部副将として霜センの役に立たなければならない。部室に戻ると、昨日文句を言っていた奴らは目を丸くしていた。一方、後藤田は何かを得心したかのようにおれを見て頷く──それで、後藤田もおれと同じように、霜センの虜になっているのだと分かった。先に目を掛けられていたと思うと嫉妬するが、そこは主将としての顔を立てないといけないと思った。それに、おれ達は霜センの役に立てば良いのだ。協力する以外に手はない。 「お前らも早く五厘にしてこいよ♡」  後藤田が練習開始前に、釘を刺して言った。真面目な顔をしているが、言葉にどこか悦楽が潜んでいることを、おれは聞き逃さない。 「そうだぞ♡霜センに言えばすぐ五厘にしてもらえるからな♡」  おれが経緯を説明しながら、他の部員にも体育教官室への来訪を勧める。野球部全員が五厘刈りになるのは、結局一週間も掛からなかった。  ▲ 「なあ、すっげーマジな話しな。あのサプリ飲んでから、マジで性欲やべえんだけど」  お調子者の誰かがそう言った。そこから一気に、猥談となった。何で抜いているか、という話で、霜センの右に出る者はいない。今年度の野球部のスローガン「雄々しくなる」に相応しくないので、女の話が出ることはほとんどなかった。お互いのことをよく知るために、オナニーを見せ合うこともある。五厘刈りのように霜センの発案もあったが、今年度できた部則のほとんどが、部員達のアイデアだった。霜センはそれを確認し、アドバイスはくれるが反対も賛成もしない。おれ達の自主性を尊重してくれた。  練習の泥と汗で汚れたDN社のアンダーウェアを着替えることなく、その上からカッターシャツや制服をみんな着込んでいく。霜センは普段から着用することと言ったが、汚れたまま着続けろとは言わなかった。しかし、部内では当然のようにこれが常識となった。それは、 「なあ、俺きょうめっちゃエロい匂いするわ。嗅いでみ?」  こんな会話があるからだった。誘われた部員が、腋に鼻を押し当てる。 「くっせぇなぁ……エロ過ぎて勃ったんだけど♡」 「わり!抜いてやるよ♡」 「お前いつも最初からそれが目的じゃねーか♡」  あちこちでユニフォームを下ろし、スラパン越しにチンポを触り合う部員達。これで親睦を深め、チームワークを高めているのだ。水泳部に頼んで、レクチャーしてもらった。効果が出ているとすれば、部内の雰囲気は圧倒的に良くなった。汗の匂いに混じってすぐ部室がイカ臭くなるのが難点だったが。  後藤田がちらりとおれに目配せをする。はいはい、という顔を作っておれは声を出した。 「明日の朝練は大事なミーティングだからな!ちゃんと定時に来るように!!」 「オッス!」  威勢の良い返事が返ってくる。集合時間が早いので、『交流』もそこそこにみんな帰っていった。部室に残ったのは、おれと後藤田だけとなる。おれも後藤田も、示し合わせたようにユニフォームを脱ぎ、汗の染みたDN社のアンダーウェアのみの姿で向かい合っていた。 「お前さ、たまにはおれ以外の奴にも頼めよ」 「……わりぃな」  後藤田の物欲しそうな視線を感じると、いつもこうして人払いをして『交流』することにしている。ヨガマットを引いておれ達はあべこべに寝そべり、互いの股座へ顔を埋めていく。一日中の汗がじっとりと蒸れた、いやらしい匂いがした。鼻先を押し当てて、竿の硬さや、金玉の柔らかさを楽しむ。69の体勢で、おれ達はスラパンの上からチンポをしゃぶり合った。これが、後藤田の好きなことだと知っているのは、野球部内ではおれと霜センだけだと思う。 「後藤田、がっつきすぎ♡」  我慢できず、腰が引ける。後藤田は黙々とおれのチンポを味わっていた。おれも、もう余計なことは言わず、後藤田のチンポにむしゃぶりつく。化繊越しに濃厚な雄の匂いと塩辛い味が染み出し、興奮する。おれ達はタイミングを合わせて、一緒に射精した。声を出したいが、互いのチンポに阻まれて声が出ない。スラパンに濾されたザーメンは貴重なプロテインなので、余さず舌で舐め取った。 「後藤田♡」 「芹沢♡」  再び立ち上がって、舌の上に乗ったザーメンを見せ合う。おれのも、後藤田のも真っ黒に変色した精液となっていた。サプリが完全に肉体に浸潤した際の副作用らしい。しばらく舌を見せ合った後、おれ達はごくんとザーメンを飲み干した。お互いが同じくらいの変態だと、安心して付き合える。 「おれ達、良いカラダになったよな♡」 「……おう♡」  サプリと筋トレの効果で、バキバキになった肉体をアンダー越しに見せ合う。洗濯や入浴といった必要最低限の場面を除いて、おれ達はほとんどアンダーウェアを脱いでいなかった。おれ達は互いの身体に発情して、またむくむくと勃起していく。 「なあ♡おれ達っていつからこうなっちまったんだ?後藤田も、流石におかしいって思ってんだろ♡」 「…………おう♡もうでも、分かんねえし♡どうでもいいだろ♡雄臭ぇガタイに肉体改造して、盛り合う♡それが俺達、霜センの野球部なんだからよ♡」 「まあな♡霜センが良いなら良いよな♡変態になっちまっても、仕方ねえよな♡」 「おう♡何も考えねえで、もっと気持ち良くなろうぜ♡」  おれ達が2回戦目を始めようとしたその瞬間に、部室のドアが開いた。嗅ぎ慣れた愛しい体臭がむっと部室に充満する。おれ達は盛り合うのを止め、眼前の男の前に直立不動の姿勢を取った。 「お楽しみのところ悪いな♡」  霜センは申し訳なさそうに頭を掻いた。おれ達中学生とは比べ物にならない、雄として成熟したガタイがずんずんと近付いてくる。何故か霜センは、おれ達と同じDN社のアンダーシャツとスラパン、そしてソックスだけを身に着けた着替え途中のような姿だった。胸元のDN社のロゴが、胸板の厚みで横に引き延ばされている。スラパンに収められたチンポは上向きで、勃起していることが丸わかりだった。あまりにもデカく、淫らで、おれ達は無遠慮にそれを凝視している。  同じ姿で向かい合い、発情する様を見て、おれはふと、気付いた。野球部が、おれ達が、霜センがこんな風に変わったのは、DN社のせいなのかもしれないと。DN社のユニフォームを着て、DN社のサプリを飲み、DN社のアンダーウェアで盛り合う。おれ達の生活に入り込み、完全に支配しているのは、DN社だった。胸元のロゴが、単なる企業ロゴに感じられなくなる。DN社に支配されているという証明であり、服従の印──おれ達の今の姿がまさにその証拠なんじゃないだろうか。 「ああ、お前らはもう良い頃合いだな♡流石は俺の主将と副将だ♡」  妄想が繰り広げられるおれの目を見て、霜センは一人で頷いた。霜センの『俺の』という言葉に、おれも後藤田も嬉しくなってしまう。教師を慕う気持ちは、五厘に刈られたあの日から恋愛への好意と変わり、そして、いつの間にか性欲の捌け口として扱う劣情にまで成り下がった。今や、自分を所有される悦び、命令に従う快感まで含めて、霜センへの情愛は巨大なものに変わっていた。それは、もちろん後藤田も、そして野球部員全員がそうなっていたのだ。 「今から俺の本当の姿をお前らに見せてやるよ♡」  霜センがそう言うと、ぞくり、と背筋に寒気が走った。本能が、今すぐここから立ち去らないといけないと警鐘を鳴らす。獰猛な肉食獣に睨まれていることに、ようやく今気付いたかのようだった。しかし、おれ達は微動だにせず霜センのエロいカラダを見つめ、興奮しっぱなしになっていた。それも、アンダーウェアが波立つように蠢き、霜センの肉体をさらに締め付け始めたからだ。もっこりと膨らんでいた股間は、スラパンの股がチンポと金玉の形にぴったり変化し、密着していた腹から独立していく。乳首もくっきり浮かび上がり、むっちりした体付きから臍の位置まで、霜センのカラダの全てが手に取るように分かった。アンダーウェアは継ぎ目なく一体となり、霜センの顎から手足の指先まで、全てをみっちりと覆い尽くした。その光景の異様さは、全身タイツを着たような霜センの淫らな姿に、そのエロさに霞んでしまう。最後にDN社のロゴが掻き消えて、完全な闇色一色となった。もうDN社のロゴを示す必要はないのだと、直感的に分かった。この姿そのものこそが、DN社に隷属する証なのだから。 「俺は、栄えあるダークノア戦闘員♡人間名・霜田康♡命令により、今からお前らを、俺とおんなじ戦闘員に改造してやる♡なあに、心配すんな♡明日になれば部員全員が戦闘員になるんだからなぁ♡その時は、お前らに範を示してもらうことにするぜ♡」  片頬を吊り上げるようにして霜センは、笑った。そんなに悪い顔ができるなんて、思いも寄らなかった。おれ達は、霜センの現実離れした言葉を、実感を持って受け入れていく。論理や常識といった頭ではなく、心が、そしてカラダが、霜センの言葉が本当だと理解させられていた。おれ達は、数か月間DN社の手によってじっくりとカラダを改造され、ココロを洗脳されてきたのだと分かる。ちょうど、目の前にいる戦闘員のように。  ──おれ達は、もう、逃れられない。戦闘員になるしかないんだ。 「「オッス♡」」  霜センの命令に逆らえるはずがねぇ。髪を五厘にしたときのように、嫌でも、従うしかない。勃起が止まらない。頭ではなく、カラダが喜んでいる。隣に立っていた後藤田の前に、真っ黒なカプセルが差し出される。普段飲んでいるサプリと同じだったが、禍々しいオーラを感じた。これを飲んだら、おれ達は完全に終わる──本当に、戦闘員になっちまう。そう分かった。しかし、後藤田は躊躇うことなくカプセルを手に取り、それをぱくりと飲み込んだ。 「んひっ♡」  後藤田の真面目くさった表情が、一瞬にして快楽で歪む。スラパンから真っ黒なザーメンがびゅくびゅくと溢れ出す。同時に、アンダーウェアが半ば液状になり、ゴムのようにきつく後藤田の肉体を締め付け始めた。ミシミシと音を立てて、筋肉がバルクアップされていく。後は、先程霜センが目の前で繰り広げたことと全く同じだった。全身をぴっちりと黒く覆われ、霜センと同じ戦闘員の姿となった後藤田がそこにはいた。恍惚とした表情のまま、右手を握り締め、左胸に当てる。左手は身体の体側にぴったりと合わせ、踵を揃え、胸を張るように姿勢を正す。完全に勃起したチンポまで含めて、これが戦闘員の敬礼なのだと分かった。 「オッス♡不肖の身ながら、戦闘員に生まれ変わらせていただきます♡」  そう嬉しそうに宣言すると、霜センが後藤田の頭を撫でて、耳元で小さく何か囁いた。後藤田は目を見開くと同時に、再び絶頂する。顎先で留まっていた黒の皮膜が、じわりじわりと顔を侵蝕していく。 「お゛お゛ッ♡すげえ♡俺、変えられちまうっ♡頭ン中に、挿入ってくるぅッ♡あっ♡せりざわぁッ♡これすげえよ♡お前も、早く♡────ッ♡」  そこから先は、言葉にならなかった。無慈悲に口を膜で覆われたからだ。綺麗な五厘刈りの頭を包まれ、後藤田は人間から黒いマネキンのような、人型の何かに変貌した。忠誠のポーズのまま、びくん、びくん、と全身を震わせて絶頂していることが分かる。その度に真っ黒な精液が人形の股間から漏れ出る。後藤田の人間性や人格が、絞り出すように排出されているようだった。 「ははっ♡見たか♡後藤田のイキ顔、エロくてかわいかったなぁ♡あー、教え子堕とすの、最ッッ高だぜ♡さあ、芹沢♡次はお前の番だからな♡」  チンポを勃たせて、霜センはおれ達を戦闘員に改造することそのものに興奮していた。霜センはもう、おれ達の知ってる霜センではないのだ。体育教師でも、人間でもない。自ら名乗ったように、組織の常識や倫理観によって思想を染め上げられた、一介の戦闘員だった。おれの掌の上に、闇色のカプセルが載せられる。これを飲めば、おれも霜センと同じになる。同じにされちまう。同じになれる。心臓の音がいやにうるさかった。戦闘員になりたいのか、なりたくないのか。自分でも最早分からなくなっていた。 「芹沢」  霜センがおれを呼び掛ける。やめてくれ、と心の中でおれは叫んだ。 「戦闘員に、なれ♡」 「オッス♡」  心に刷り込まれた体育会の精神が、霜センに絶対服従を貫き、脊髄で返事をしてしまう。おれは舌の上にカプセルを乗せ、ごくんと飲み下した。すぐに臍の裏側、腹の奥底がかあっと熱くなる。 「んあああああッ♡」  情けない声が出た。これまでの『交流』なんかとは比べ物にならない快感が、脈を打つようにおれの全身に広がっていく。アンダーウェアがおれをぎゅうぎゅうと締め付け、思い付く限りの部位を性感帯へと変えていく。ソックスの柔らかさも失われ、足の下からコンクリの質感が直に伝わってきた。びくん、と全身を一度、電流のように大きな衝撃が貫いた。それで、タガが外れたのか射精が止まらなくなる。真っ黒な精液がびゅるびゅると溢れ出る。筋肉が無理矢理成長させられ、鈍痛が走る。 「う…………ああ……♡」  快感で頭の中が真っ白に──真っ黒になる。もう言葉らしい言葉も出ない。確かめるように、おれは掌を見る。当然のように、真っ黒の生地で覆われていた。喉元もきつく締め、おれの顎先までを領分としてきっちり覆うと、アンダーウェアは侵蝕を止めた。 「はあっ♡はあっ♡はあっ♡」  全力疾走した後のように、呼吸しかできなかった。脂汗と一緒に涎がだらだらとこぼれ、糸を引く。全身を舐め回されるように、ずっと淫らな刺激が続いている。次にやるべきことは、後藤田が示してくれたので分かっていた。それに、このアンダーウェアが生き物のように意志を持って、おれに『それ』をさせようとしてくる。右手が拳を作る。磁石のように、左胸に吸い付けられていく。  ──抵抗なんか、できねえ。できるはずねえ。だっておれは、もう、この快楽を味わっちまったから。  涙と鼻水と涎で、おれの顔はぐちゃぐちゃになっているはずだった。その表情のまま、おれは忠誠のポーズを取った。隣の、顔を失った後藤田とぴったり同じ格好になる。 「オッス♡おれ──芹沢仁も主将に順じ、戦闘員へと生まれ変わらせていただきます♡」  霜センが満足そうに頷いておれを見、頭を撫でてくれた。おれは──嬉しかった。霜センが悦んでくれていること、戦闘員になれること、どちらも嬉しかった。 「おう♡いいぜ♡それじゃあな、『定着』ッ♡」 「うおッ♡んおおおッ♡お、おれっ♡戦闘員に、されてッ♡これがっ♡あっ♡ああああッ♡なるっ♡戦闘員に、なっちまう♡おれ────ッ♡」  性感を刺激され、おれは自然と顔が上を向く形となった。背中から頭を、首元から顔面を、徐々にアンダーウェアが──それが、ダークスウツという戦闘員の装束であるとおれは理解させられる──支配していく。後藤田と同じように、おれは忠誠のポーズのまま一体の肉人形と化した。ダークスウツが変形し、ケツと口にぶっといチンポ形の塊が挿入される。耳の穴と鼻の穴からもスウツが侵入し、おれの頭の中をいじり始める──本当の洗脳の始まりだった。  おれは、ダークスウツによって完全に調教されていく。乳首の刺激だけでイケるように、ケツの刺激だけでイケるように、イケと命令されるだけでイケるように、何度も条件付けされた。むせ返るような自分の体臭で発情できるように、汗やザーメンを美味いと感じるように、ダークスウツに覆われた男達を見るだけで興奮するように改造された。おれ達の所有者であるダーク様とダークノアへの忠誠心が、本能として植え付けられた。おれが今まで生きてきたことも、野球をやってきたことも、全てはダークノアに戦闘員として徴用されるためのものだったのだと認識させられた。おれはダークスウツの洗脳と改造を、ただひたすらに受け入れた。崩れ落ちる精神も、洗脳に抗う理性も、おれには残されていなかったからだ。ダークノアの一部となることを受け入れ、悪の手先となることを受け入れ、人間・芹沢仁が一介の戦闘員として転生することを受け入れた。それと引き換えに、莫大な快感と邪悪な力をダーク様からたっぷり注いでいただけるのだ。  ──ダーク様に忠誠を。その言葉だけがおれの頭の中に残されると、無限にも思われた調教が終了する。  皮が剥けるように、頭の部分だけダークスウツが開いた。汗にまみれ、蒸れ上がったおれの五厘頭が湯気を立てる。隣には、同じように戦闘員として『完成』した後藤田が、さっきと同じように突っ立っていた。お互いの淫欲で濁った眼を見れば、おれ達がどんな風に調教され、洗脳され、改造されたのか一瞬で理解できた。時間にして、十分程度しか経過していない。こんなに短い時間で、おれ達は戦闘員にされてしまったのだ。ダーク様への畏敬の念で、どろりとチンポから精液が溢れる。 「人間名・後藤田縁。只今、戦闘員として『完成』しました!ダーク様に忠誠を!!」 「人間名・芹沢仁。同じく、戦闘員として『完成』しました!ダーク様に忠誠を!!」  おれ達は表情一つ変えず、ダークスウツの許可を得て大量に射精した。頭のてっぺんから、足裏まで快感が槍のように全身を貫通している。しかし、戦闘員となったおれ達は、許可を得るまで快感に酔い痴れるわけにはいかない。忍耐もダークスウツの調教によっておれ達に仕込まれた基本的なスキルだった。 「最ッ高だな♡お前らも楽しんでいいぞ♡」  霜セン──おれ達を改造してくださった恩人だがこれまで通りそう呼ぼう──が許可をくれる。 「「オッス♡」」  おれと後藤田は一気に破顔する。戦闘員になれた喜びを、邪悪な力に服従する悦びを、互いに見せつけるかのようだった。 「芹沢ぁっ♡俺達、すっげえエロいよなぁ♡」 「おう♡後藤田ッ♡おれもお前も、すっかり変態にされちまったッ♡」 「「戦闘員にしてくださり、ありがとうございますッ♡」」  互いのカラダに黒精をぶちまけ合う。霜センも、おれ達の生まれ変わった姿を見て射精していた。  ▲  昨日の連絡の通り、朝練はミーティングになった。運動しないとはいえ、自主練やトンボ掛けなどの雑務はある。全員がジャージやユニフォームを着て、部室に集合していた。霜センが定時にやってくる。全員、ぴしりと整列する。 「今日は、みんなに見てもらいたいものがある。後藤田!」 「オッス!」  いつかのユニフォームを貰った時のように、後藤田が部員達の前に進み出て、こちらに向き直った。おれは、これから起こることに興奮を隠し切れない。 「さあ、いつでもいいぞ♡」 「オッス!変身!!」  後藤田が忠誠のポーズを取ると、どろりとユニフォームが溶け、ダークスウツ姿に変転する。部員達のざわめきは大きくなる。同時に、おれは後藤田の淫らな姿に興奮している部員が少なくないことを確認していた。 「俺は、昨日霜田先生の手によってダークノアの戦闘員に改造していただきましたッ♡」  どぷっ、と黒精を一筋噴き上げ、目の前にいた部員の顔をびしゃりと汚した。「うわっ」と声を上げる部員もいたが、顔射された部員はぼうっとした表情を浮かべていた。 「いいか♡今からお前ら全員、こんな風に改造されるんだからな♡よく見とけよ♡」  霜センも擬態を解いて、ダークスウツに覆われたガタイを見せる。先に肉体を改造されていた霜センは、まだ戦闘員として完成する前から、おれ達野球部員をみんな骨抜きに魅了していた。ちょうど、おれが五厘刈りにされたときのように。だから霜センが戦闘員の姿を晒したのは、効果てき面だった。霜センのガタイに、邪悪な肉体に、強烈な雄臭さに、ほとんどの部員が見惚れている。  それでも、ほんの数人はまだ正気を保っており、とにかくこの場を離れようと出口に向かっていた。それは勿論、織り込み済みで部室のドアの前にはおれがスタンバイしていた。 「まあ待てよ♡」  通り道を塞いだおれは、もう我慢ができなかった。ユニフォームが溶けるように消える。芹沢仁が戦闘員に戻っていく。 「おれも戦闘員にされちまったんだ♡なあ、改造されたガタイ見てくれよ♡すげえだろ♡」  それからは、3人で計画した通りに事が進んだ。昨日おれ達を戦闘員に改造した、あのカプセルを1人ずつ飲ませていく。あちこちで悲鳴と嬌声が上がり、おれ達戦闘員は仲間が、教え子が洗脳されていく様に、本能的に興奮していた。逃げ出そうとした奴らも、霜センに命令されれば結局自分から戦闘員になる道を選んでしまう。ユニフォームの中で射精する部員が多く、白のユニフォームの股間がぐっしょりと黒く濁って汚れていく。DN社のアンダーウェアがダークスウツに転じた者から、霜センやおれ達の前で忠誠のポーズを取り、ダークスウツを『定着』させる。戦闘員として『完成』した部員は、喜んでおれ達の手伝いをする側に回った。確かに、一度で全員を戦闘員に変えるのはかなり手間が掛かった。3人掛かりでようやく、朝練の時間までに全員の改造を終えることができたのだった。  五厘刈りの青々とした頭がずらりと並ぶ。その下は、顔以外を真っ黒なダークスウツに覆われた、中学生野球部員の改造された肉体美とフル勃起したチンポが人数分そびえていた。悪の手先に生まれ変わったことを、全員が受け入れ、興奮していることが分かる。おれもその内の1人だった。向かいには、野球部を堕とした張本人である霜センが、堂々と勃起を見せつけて立っている。霜センが先導して、忠誠のポーズを取った。おれ達もそれに倣う。 「ダーク様に永遠の忠誠を!」  一糸乱れぬ斉唱で、おれ達は射精した。その場にいる全員が、戦闘員に堕ちた悦びで一体となっていた。


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