リクエスト/谷口君(水泳部)の続き(5)
Added 2023-05-06 16:24:31 +0000 UTCコメント:次回更新で最終回としたい(願望) △ その夜、奇妙な夢を見た。 大学野球部の部室で、一人の大柄な男が自慰に耽っている。それを、カメラが舐めるような視点で見ている夢だった。俺が動こうと思えが視点は動くが、男の方は一切俺を感知しないらしい。だからといって、俺自身にそういう趣味はない。野郎のセンズリを見ても嬉しくも何ともない。そう思って、目を逸らそうとする。 「……んお゛ッ♡」 悶えるような野太い喘ぎ声が、男から漏れる。それで、ふと俺は視線を戻してしまう。男は試合用のユニフォーム一式に身を包んで、ただひたすらにいきり立ったイチモツをパンツからにゅっと突き出し、両手で上下に扱いていた。ごつごつとした無骨な手でも持て余すほどの巨根に、思わず目が留まる。本当に気持ちが良いのか疑問に思う程乱雑に、激しくイチモツを扱いていたが、やはり快感はあるのだろう。男は時折、獣が唸るように切ない声を出した。日によく焼けた肌を強調するように、うなじから汗がきらきらと流れていく。練習後なのだろう、泥と汗で全身汚れ、むっと蒸れ上がった雄のきつい匂いを全身から漂わせている。男は、そんなことは意に介さない様子だった。そもそも、オカズになるようなものも何もない。頭の中の、淫猥な想像だけでこんなにも感じているのだろうか。疑問に思うと、そこでようやく俺は、男が野球帽を目深に被っていて、一度も顔を認識していなかったことに気が付く。荒い吐息を吐く口元だけが、快感で歪むのが見えるばかりだった。 「お゛ッ♡イグッ♡んっ、すげぇっ♡イクッ、イクッ、イクッ!!」 びゅっ、と勢い良く精液が飛び出す。余程溜め込んでいたのか、そもそもが絶倫なのか、チンポが脈打つ度に衰えることなく何度も何度もボンドのような濃い精子が放たれ、足元のコンクリや自らのユニフォームをドロドロに汚していく。 「ん゛っ♡おお゛ッ♡……すっっっげぇ出た♡…………ユニでオナるの最ッ高♡……」 男が一度、快感を切り上げるかのように、動物的に身震いした。紛うことなく、変態だと思った。しかし、その余りに野放図な、滾る性欲に身を任せた自慰が気持ち良さそうで羨ましいと感じる自分もいる。俺はもう、目の前のオナニー男が誰なのかはっきりと気が付いていた。見知ったユニフォームの着方で、馴染みの背番号で、脱ぎ散らかしたキャッチャー用の防具で。男は精液にまみれた手を厭わずに、野球帽の鍔を持って脱ぎ、アンダーシャツでたっぷりとかいた額の汗を拭った。その仕草さえ、身に覚えがある。 ──部則で4年間頭を丸めていた、当時の俺だった。しかし、違うところもある。ガタイはこんなに良くなかったし、顎髭も生やしてなどいなかった。それに何より、この巨根に目を奪われる。記憶にまだ新しい伊藤さんのあのふてぶてしいイチモツに引けを取らない大きさだった。 はっ、と正気に戻る。そもそも、こんな変態的なオナニーをしたことなど一度もない。したいと思ったこともない。これはやはり、夢なのだ──。 「夢じゃねぇよ」 『俺』が俺に話し掛ける。それまで一切俺のことを顧みなかった『俺』が、今、俺をはっきりと見ていた。その目は黒く、淫欲で濁っている。大学生のあの頃の俺とは、やはり到底思えなかった。 「お前は『俺』みてぇな雄臭ぇガタイに改造されて、変態になるんだよ、これからな。よぉく覚えとけよ♡」 にい、と『俺』が邪悪な笑みを浮かべて、俺に手を伸ばす。精液と汗の匂いで、鼻が曲がりそうだった。びくん、と俺の腹の中が鈍く、熱くなる。『俺』とは比べ物にならないが、俺も勃起していた。いや、勃起させられたというのが正しいような気がする。俺も、動物のように発情しているようだった。 「またな」 『俺』がそう告げると、俺は万年床で目を覚ます。全身汗だくで、寝間着代わりのジャージが重かった。それとは別に、トランクスがぬるついていることにすぐ気が付く。チン毛に白濁液が絡み付いて、ぐちゃぐちゃになっていた。俺は、あの淫夢で夢精していたのだ。 「うっわ、マジかよ」 焦ってトランクスを膝元まで下すと、俺は違和感を覚えてもう一度まじまじと股間を見た。俺の萎えたイチモツが、内腿にペちりと当たる。『俺』や伊藤さんとは比べるべくもないが、確かに俺のチンポは寝る前より確実に大きくなっていたのだ。驚きの連続で声も出せず、ただ呆然とするばかりだった。『俺』の変態的な自慰行為の姿や、意味深な言葉が頭の中をぐるぐると回る。心臓の拍動だけが、耳にうるさく響いていた。 △ 結局サプリは飲み続けた。チンポがでかくなる、という眉唾の話は初日に真実が証明されたからだ。普段ならば怪しいものには手を出さないのだが、どうやら伊藤さんだけでなく、水泳部もモニターとして使用しているようで安心したというところもある。一週間もすると、チンポの大きさは人並み以上になっていた。自分でも怖いくらいだったが、それよりもコンプレックスが解消された喜びの方が大きかった。 伊藤さんのように筋トレを併用して、身体をデカくすることも考え始めた。それというのも、精力が有り余っていたからだ。最近は、サプリを飲むと即勃起する犬みたいな身体になった。伊藤さんに聞くと「ああ、精力も付くんですよね。俺もギンギンになるっすよ!」と元気に返事をされ、大笑いしてしまった。初日に見た夢のことは、忘れていない。しかし、所詮は夢の中の出来事でしかない。例え──俺が『俺』の言ったように、確かに『雄臭ぇガタイ』の『変態』になっているとしても。 それと、DN社の製品にはまっているのはサプリだけではなかった。やはり、アンダーシャツやユニフォームなど着心地が抜群に良かった。普段使いのシャツや靴もあると聞いたので、伊藤さんに一声掛けるとカタログを持ってきてくれたのだが、あまりに何でも無料で貰うのは悪いし、職業的にもまずいので購入するものもあった。伊藤さんは恐縮していたが、一緒に筋トレやDN社の製品について共通の話題がある相手がいるのも嬉しかった。 ──こうして俺の生活は、DN社漬けの生活になっていった。朝はサプリを飲み、全身をDN社のスポーツウェアでコーディネートして出勤し、体育の授業をする。授業が終われば、やはりDN社のユニフォームを着て部員達と汗を流した。夢で見た現役時代を思い出して、つい最近、俺は髪を短く刈り上げた。子供に威圧的になるかと思ってこれまでは髪を伸ばしていたのだが、やはり短髪の方が性に合っているらしい。野球部員や担任クラスの生徒からも「格好いい」と言われ、好評だった。 「ただいまぁっと」 誰もいないのを承知で、アパートの玄関を開ける。散らかっているのは相変わらずだったが、その内容は大人のおもちゃ──オナホールやアナルプラグといった性具がほとんどだった。部屋に立ち込めた精液の匂いが、俺の愉しみが連日のように続いていることを示している。朝からずっと勃起していたチンポが、我慢の限界を迎えようとしていた。俺はユニフォーム姿のまま、姿見の前に立った。ユニ越しにチンポを揉み始めると、汗で湿ったDN社製のスライディングパンツと亀頭が擦れ合い、ぬるぬるになる。 「お゛ッ♡おおおおおおおお゛ッ♡」 安アパートの壁の薄さなど考えることもできず、俺は野太い嬌声をあげる。裏筋を掻くようにごりごりと刺激を与えると、そのまますぐに果ててしまった。最近は着衣射精にはまっており、おもちゃを使う前に必ず一度はユニフォーム姿で抜いているのだ。奇しくもその姿は、夢で見た『俺』とそっくりであった。