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葉一
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ダークノア・肉便器編Ⅱ(4)

コメント:リクエストと微妙に筋が違っちゃってごめんなんだけど、楽しく書いた。リクエスト内容からあと1話分(これの半分くらいの量で)、書けたら書いて了とするつもり(期限までに書けなかったらどこかで書いて公開します)。 〇片平  職員研修のために久しぶりにスーツを着て、まずい、と思った。体育教師の気楽なところは、ずばり服装である。ジャージの緩さを良いことに、だらけ始めた肉体がウエストを圧迫していた。ワイシャツを引き延ばし、腹が出ているのを誤魔化してなんとか体裁を整える。視界の端に、机上に重なったビール缶が見えた。  ──たるんでいるぞ!片平甚太!!  自分に喝を入れ、両頬を勢いよく叩く。中年に差し掛かった折、体力は落ちる一方でが、体育会気質で育った俺は飲み食いが止められなかった。大学ラグビー部同期の面々と会えば、俺の容姿もまだまだ崩れてはいないと思うが、いよいよメンテナンスを考えなければならない時期に差し掛かっているようだった。ふと鏡を見れば、短く刈り込んだ側頭に、きらきらと銀色のものが混じっている。一層窮屈に感じ始めたスーツを持て余しながら、家を出る。鍵を掛ける際、新聞受けにビラが挟まっているのに気が付いた。何度か見たことがある、スポーツジムのチラシだった。授業で身体を動かしているのだから、自分には必要ないと思っていたが、改めて考えれば、運動に抵抗感のない今から何か始めた方が良いのかもしれない。鞄にチラシを畳んで入れ、学校へと向かった。  ※  根が単純なのか、チラシを見れば見るほどジムに通いたくなってきた。駅近、男性のみ、ほぼ24時間利用可。そして何と言っても──安かった。教職とはいえ単なる公務員。独身だから金銭的余裕があるのであって、やたら無暗に使えるほど予算はない。体験期間のキャンペーン期限も相まって、数日後には予約の電話を入れていた。  ジムはマンションの1階、店舗部分にあった。自宅から徒歩でも通えるくらい近い。ガラス戸を押し開けると、白を基調とした清潔感のある内装が出迎える。男性専用の言葉だけでなく、ジムというイメージが大学付属のそれだったため、暑苦しく、汚らしいものだと思っていたが拍子抜けした。むしろ自分の運動着が見ずぼらしいのではないかと焦る。カウンター奥から、好青年が颯爽と現れた。白いポロシャツを厚い胸板が押し上げ、ぽつりと乳首の位置がはっきりと分かる。腕やハーフパンツから覗いた脚の太さを見るに、生半可なトレーニング量ではないのだろう。しかし、彼の表情は人懐こく、にこにこと笑顔を浮かべていた。青年の表情の幼さと肉体のアンバランスさが、妙に好ましいものとして心に残った。 「電話で片平様の受け付けを致しました、立松と申します。どうぞよろしくお願いいたします」 「こちらこそ、よろしくお願いします」  立松君がてきぱきと申し込み書類を整えてくれる。「書類はともかく、やっぱり体験していかれますよね!」。当然、そのつもりだったので、こちらの意を汲んで動いてくれるのもありがたかった。マシンの使い方は、全て何となくは分かっていたが立松君が丁寧に教えてくれた。普段触れ合う高校生よりは大分年上であるが、立松君にもどうも生徒のような可愛らしさや親しみを覚えてしまう。一生懸命に仕事をしている感じが、良いのかもしれない。  試しにマシンを使ってみた。求めていたよりもずっと本格的な仕様である。ジムで汗を流す会員たちも年齢こそ幅広かったが、俺よりはずっと肉体を鍛えている様子だった。なんだか場違いなところに来てしまったのではないか、とまた一人で勝手に焦る。それでも、来てしまったからには、動かなくては。そう思って60分、たっぷりと汗を流した。 「初回でしたのに、かなり頑張りましたね」 「はは、一応体育の先生なんだけど……ちょっと来るところ間違えちゃったかな。随分本格的なジムみたいだし」  帰り際にぽつりと立松君に漏らしてみる。立松君は両手を振ってオーバーに応じた。 「全ッ然!最初は一番軽いのだって動かせない方もいらっしゃいますよ!スタッフが手厚くサポートして、じっくり身体を完成させていきましょう」  そう言われると、悪い気はしない。専属というわけではないが、しばらくは立松君が俺のサポートスタッフとして付いてくれることになるようだ。時間を指定して、また次回の予約を取る。 「あっ、そうだそうだ」  立松君がごそごそとカウンターから物を取り出す。パッケージに「試供品」と書かれたそれは、サプリメントとスポーツウェアだった。 「キャンペーン中なのでどうぞ。このシャツとパンツはDN社製でして、あまりなじみがないかもしれませんが当ジムと提携しているメーカーのものなんです。ほら、僕も」  ポロシャツをぺろりと捲り上げ、黒いアンダーシャツを見せる。胸元に目立たない配色でロゴがデザインされていた。 「宣伝で申し訳ないんですけど。でも結構いい素材なんですよ。こうやって配布したものをトレーニングで着用してくださる方も多くって」  そう言われれば、他の会員達もほとんどが黒いスパッツやアンダーシャツを着用していたように思う。全部が全部これと同じものではないだろうが、確かに気になっていた。 「サプリはタンパク質だけじゃなくて脂肪燃焼効果もあるので、お試しに。そういうの嫌いな方もいらっしゃいますから、不要であれば……」 「いえいえ、折角なので全部もらいます」  立松君が声を出して笑った。ジムを出るときには、すっかり彼に夢中になってしまっていた。 ※  一週間に3回くらいの頻度で、俺はジムに通い始めた。やればやるほど、筋肉の使い方が理解でき、少しずつウエイトを増やすことができた。毎回、立松君がいるわけではなかったが、彼のアドバイスは的確で分かりやすく、頼りになった。当然、運動量が増えれば脂肪が落ち、筋肉が身に付いていく。サプリメントだけでなく、ジム契約のプロテインも購入するようになっていた。「太っていると感じた時、それは筋肉を付けるチャンスっす!」と、ガッツポーズで力説する立松君の話を真に受けたわけではないが、言われたとおりにしてどこまで俺の肉体が変わるのか興味があった。まあ、中年に片足を突っ込んでいるわけなので、大きな成果や変化があるとは思えないが……。  今日は立松君が付いてくれたので、ベンチプレスに挑戦した。もう100キロは上げられないだろうと諦めていたが、力を籠めるとバーベルが存外、簡単に上がった。立松君が「すごい!」と喜んでくれる。ゆっくりとバーベルを戻し、汗を拭う。タオルも勿論持っていたが、試供品のアンダーシャツの袖で額をぞんざいに拭った。立松君の言った通り、DN社のスポーツウェアは使い心地が良かった。着ると肌に張り付くようにきつい締め付けがあるが、それが筋肉の動きを補助してくれるようである。汗をかけばさらりと吸い取り、不快感はなく、締め付けもいつの間にか肌になじむかのように消えている。正式にジムの会員になった際、モニターとしてアンケートやモデルの協力を申し出れば、欲しい製品を欲しいだけ貰えるという。 「すごいですね!まだジムに入って2か月くらいですか?もう100キロ上げれちゃいますか」 「いやいや、昔はこれくらい平気で上げてたから。感覚が残ってたのかなあ」  と言いつつ内心は有頂天になっていた。身体は脂肪だけでなく筋肉が混じったような硬さが入り混じり、いわゆる「ガチムチ」と言っても過言ではない体型になってきた。こうまで早く変われるなら、もっと早くからこのジムを利用すれば良かった──そう思った。そろそろ帰り支度をするかとストレッチを始めた際、立松君がジムの入り口を見遣って客に声を掛ける。 「ああ、いらっしゃいませ!この時間は珍しいですね、若狭さん」  俺は聞き覚えのある名を耳にして、顔をそちらへ向ける。プロップの見本のような、山の如き恵体。トレードマークの綺麗な剃髪に、そばかすだらけの頬。高校の時より全体的にサイズが一回り大きくなり野性味を増した印象を受ける。 「大学の練習早く終わったんすよ──今から個人やってもらっても……えっ、片平先生?!」  大きな声で驚く彼──若狭満は、俺の教え子だった。ちょうど3年前のラグビー部員で、その実力は高く、スポーツ推薦で大学に進学した。インターハイや大学対抗戦でしばしば名前を目にすることもある。 「おう、久しぶり。活躍見てるよ」  そういえば自宅が近所だったと思い出す。こんなところで出会うのは気恥ずかしかったが、嬉しい気持ちの方が大きかった。テンションが上がったのか、あれこれと矢継ぎ早に話す若狭を見て、昔を思い出すと同時に微笑ましい気持ちになる。そうだそうだ、こいつは立松君ほど優秀ではないし気も利かないが、人懐こい雰囲気がよく似ていた。 「お知り合いなんですか?」 「いやあ、俺の高校時代の顧問の先生っす。先生も立松さんに教わってるんすか?分かりやすいし、めっちゃ勉強になりますよね!」 「俺は最近始めたばっかりなんだけど、それは本当に思うよ」  照れ臭そうに頬を掻き、立松君は「やめてほしいっす」と言った。話を聞くと、若狭は1年ほど前からこのジムに通ってトレーニングをしているらしい。立松君は専属で、会員特典の個人指導──パーソナルトレーニングを受けていると言う。今日は飛び込みだが、立松君の身体が空いているときはいつでも可能なのだそうだ。 「じゃあ、いつもの部屋で。着替えて待ってます」  若狭は片手を挙げて去って行った。別室というか、個室で指導をすると聞いてやはり本格的なジムなのだなあと今更ながらのことを思った。若狭もプロが視野に入る選手、トレーニングに気を遣うのは道理だろう。そんなことをぼんやりと考えていると、立松君が「あの……」と控えめに声を掛けてくる。 「どうでしょう、片平さん。そろそろ会員になってみては……」  不満は何一つなかったので、二つ返事で契約書にサインをした。DN社のスポーツウェアを大量に貰い、これでしばらく普段着には困らないと思った。  ※  そろそろ3年生の引退試合も近付き、指導にも熱が入る。S高と呼ばれる強豪が常勝とはいえ、公立高校で一矢報いることができるのは我がラグビー部をおいて他は居ない。そう鼓舞して部員達を文字通り闘わせる必要がある──試合に勝てずとも、若狭のようにその才を見出されることはある。努力が、生徒の将来の可能性を広げることを示したかった。指導が苛酷になれば、当然、自身もくたびれる。例年そうだったが、ジムに通って体力が付いたのか、俺はすこぶる元気だった。週に3回だったジム通いは週5、6回へ。  生徒の肉付きが気になるようになった。食事量と筋肉量をポジションごとに考えて最適化していく。自分一人では手が足りないため、部員達もあのジムに通ってくれればいいのに、なんて無責任なことを考えている。まあでも、立松君だけなら定期的に外部指導者として呼ぶことができるのではないか。真面目に検討している自分もいる。  今日も今日とてジムに辿り着いた。DN社のアンダーシャツとスパッツは、日課の授業中から着ているのでたっぷりと汗を吸っている。マナーとして着替えようか、と一瞬逡巡するのだが、最近はもう面倒になってそのままトレーニングに移っている。というのも、大概の利用者がランニングや部活等の帰りにそのままマシンへと向かっている様子であるからだ。すれ違えば濃密な雄の匂いがするが、それはお互い様だろう。  マシンの前の姿見で、俺の肉体を確認する。半年前からは想像できない程、固く、大きくなった肉体がそこにはあった。肥大した筋肉を脂肪が覆い、若狭と同じプロップとして活躍した全盛期を思い出させるほどになった。逆にスーツが入らなくなったのはご愛敬だ。俺は俺の出来栄えに満足する。スパッツの中、密かに勃起したチンコをハーフパンツの上から撫でた。トレーニングが進むにつれて、年甲斐もなく性欲が強くなっているのを感じる。立松君は──何て言ってたか。良質なタンパク質の摂取の影響か、トレーニング後の疲労に関係する要因だったか。とにかく、不思議なことではないらしい。  ──だから、俺が男の肉体に興奮するようになっても、おかしなことではない。  俺は、ジムの会員がガチガチにチンコを勃たせてトレーニングをしたり、鏡に見入ったりしている場面を目撃した。最初は当然、嫌悪感があった。公共の場で、いかがわしいことをしているのではないか?そう思ったものだった。 「え?俺もめちゃめちゃ勃起するっすよ。今も片平さんのガタイ見て勃起してます」  立松君は平然と、そう答えた。俺が呆気に取られていると、ズボンを下ろしてスパッツに浮き出たチンコを見せてくれる。上向きに沿ったそれは、じっとりと汗や先走りで湿り、ぬらぬらとスパッツを光らせていた。仕事では見られない立松君の、雄の部分が猛烈な主張をして、鼻先まで濃い匂いが立ち込める。立松君が偶然居合わせた若狭を呼ぶ。若狭も何の躊躇いもなく、ズボンを下ろしてスパッツに浮かび上がったチンコを見せた。「雄の魅力に目覚めたら、勃起しちまうもんなんですよ先生。不可抗力っす」。憧れの肉体に興奮することは、おかしなことではない。立松君と若狭にそう言われ、そして周りの会員達が一人残らず勃起しているだろうという確信が、俺を安心させた。 「もうかなり仕上がってますね、片平さん」 「ああ、そうですね……」  背後から立松君が声を掛けてくれる。今の今まで、何を考えていたのか。思い出せなくなっていた。トレーニングの方法についてだっただろうか。 「まだまだ物足りないなら、別室でのパーソナルトレーニング、してみますか」 「いいんですか?」  パーソナルトレーニングは、会員全員ができるわけではないようだった。スタッフに限りがあるためか、パーソナルトレーニングを受ける者は実力者、という暗黙の了解があった。自分はとてもではないが、そうは思えない。 「ええ、俺でよければですけど。片平さんは素質があるから──」  立松君に促されるまま、俺は別室へと案内される。そこは四畳半もない程の手狭なスペースで、マシンが数台とベンチが窮屈に収まっていた。入り口から向かって正面の壁は全面鏡張りとなっており、後は床も壁も天井も黒一色で塗り潰されていた。換気が悪いのか、前の使用者達の汗の匂いが何重にも漂っている。立松君と2人きりになり、ここで俺はようやくこの部屋の、そして立松君の雰囲気がおかしいことに気が付いた。剣呑な気配があるにも関わらず、あくまで立松君はいつものようににこにこと笑っている。 「ここでは特別なウェアを着てもらうルールになってるんですよ。もう片平さんの体型データは取得済みなので、ちょうど良いサイズだと思います。さあ、これに着替えてください」  いつものDN社のウェアが手渡されたと思ったが、質感がこれまでとは全く異なった。肌に吸い付くような、柔らかで魅力的な手触り。伸縮性に富むが丈夫な生地。光を反射しない、黒い部屋に相応しい黒いウェア。ウェットスーツのように手首と足首の先には布がないが、それ以外はぴったりと身体を覆うユニットタイプだった。会員の中にも、数名同型のものを着ている人がいたから驚きこそしなかったが、いざ自分が着るとなると躊躇する。単なるスポーツウェアとしては、異様だった。  立松がハーフパンツとポロシャツを脱ぐと、全身タイツのようなそのウェアが露わになる。これを着て普段からトレーニングをしている、その事実に俺は『また』安心しそうになる。自分で考えているはずなのに、『また』というのがどこから来た感情なのか、分からない。とにかく警戒した方が良い──気がする。その一方で、手に持っているウェアを着てみたいという気持ちも大きくなってくる。これまでDN社のウェアに袖を通し、使用してきた快適さ──いや、それだけではない。正直に言えば、肉体的に「気持ち良かった」のだ。全身を締め付ける心地良さ。あれを味わいたい。DN社製でない衣服は自宅にもうほとんど残っていない。窮屈になって捨てたスーツ。あれが最後の一着だった。新調したのも、ジムを介して発注したDN社製のスーツだった。  チンコからだらだらと先走りが流れ落ち、床を汚す。ウェアを着るのだから、全裸になるのは当たり前だった。汗も先走りも、ウェアを着れば問題ない。そうした思考の綾を捉えられ、俺は片足をウェアに通した。俺の脚の形に沿って、筋肉を強調するようにぎゅっと張り付く。勃起したチンコも、きちんと収められるようにウェアにはチンコ用のポケットが付いている。便利だと思った。チンコのサイズもぴったりで、丸出しにしているような感覚。服を着ているのに服を着ていないような、奇妙な錯覚に陥る。固く、丸い腹が闇に覆われ、厚い装甲のような胸筋も余すところなく包まれた。トレーニングの成果が目覚ましい、自慢のぶっとい腕も、抵抗なく呑まれる。広背筋が邪魔をして閉まらないのではないかと心配したが、立松君が力を入れてジッパーを引き上げてくれる。何度か立ち止まりながら、胸がぎゅうと押し潰れんばかりにウェアが引き延ばされ、うなじまで俺はパッキングされる。手足が肌色なのが、最早違和感があるほど、その姿は完成されていた。黒く、闇に溶け込む──悪の組織の一員。そんな恰好だった。 「お似合いですよ。それでは、ベンチプレスからやっていきましょう」  立松君がバーベルを用意してくれる。ウエイトは180キロになっていた。 「こんなに持ち上げられないだろ」 「いいえ、片平さん。ウェアとこれまでのトレーニングを信じてください」  無茶を言う、と思って形だけでもベンチに寝転がった。いつもは意識しないが、ウェアに包まれているとはいえ、立松君の反り返ったチンコが頭上にはっきりと見える。精子がたっぷり詰まっていそうな、丸々とした陰嚢が身動ぎでぶるんと揺れる──いかん、集中しなければ。力を籠め、物を押し上げるイメージで両腕を上げようとする。自分の腕の筋肉全部が悲鳴を上げているような、痛みと熱さ。俺は顔を真っ赤にして、呼吸と共に全力を吐き出している。バーベルはもう少しで上がりそうという予感はあったが、力が持続せずに初回は諦めた。これだけで全身に汗をかき、肩で息をするほどの運動量となった。単なる無茶ではなく、ぎりぎりで越えられない壁を用意してくる立松君には脱帽だった。 「片平さん、力を腕だけじゃなく、足や腹、胸を意識して動かしてください──もっと言えば、ウェアもです。このウェアは既に片平さんの肉体の一部だと思って、全力を出してみてください」  そう言いながら立松君は俺の脚や胸板、腕を撫でた。それだけで触られるたびに、俺のチンコがびくんびくんと震え、快感でおかしくなりそうになる。 「さあ、もう一回!!」  促されるまま、バーベルを握り締めた。ウェアが俺の全身を生き物のようにぎゅっと締め付ける。ぶるぶると振るえながら、少しずつ、バーベルが持ち上がっていく。同時に全身が破裂しそうなほど熱く、心地良くなる。完全に持ち上がろうとした瞬間、チンコがびくんと震えて射精しそうになった。漏れる──そう思った瞬間、はっと我に返った。バーベルがセーフティに戻る。俺は慌てて起き上がり、立松君に「射精しそうになった事実」を隠そうとした。勃起はしていても、射精している会員は居なかった。それはさすがにまずいだろう。  立松君は目を丸くして俺を見ていた。射精しそうになった──それを言えば、それ自体が何らかの犯罪行為に当たるかもしれない。俺は用事を思い出したとかなんとか言って、とにかくその場を後にした。  ※  もうジムには通えないかもしれない、と思ったが杞憂だった。その翌日には、俺は再び立松君に会いに行くことになる。ウェアが脱げなかったからだ──というより、これは一体何なのだろうか。立松君が押し上げたはずのジッパーは背中に存在せず、引っ張っても皮膚に張り付いて剥がれようとしない。ウェアの確認をした俺が、次にしたことは自慰だった。ウェアを触れば、頭がおかしくなるほど気持ちが良いのだ。チンコだけではなく、乳首が、尻が、毎秒疼いて仕方がない。一発抜いたら収まるかと思ったが、先走りは出るが、射精できないのである──結局俺は、明け方まで床にチンコを擦り付け続ける色狂いの変態になってしまった。汗がぼたぼたと噴き上がるように流れ落ち、ウェアに吸い込まれ、むせ返るような俺の匂いの元になる。その狂気の中で、俺が唯一分かったことは、立松君に会って、これを脱がせてもらうことしかないということだった。そう思った途端、肉体を苛んでいた性欲は潮が引くように収まった。ウェアが俺の行動を完全に支配しているかのように。時間も状況も、何もかも差し置いて、またジムに戻る。早朝に近い時間帯だったが、立松君は居た。 「やっぱり帰ってきましたか」 「……頼む、これを脱がせてくれ…………これ以上はっ、頭がおかしくなるッ!」 「片平さん、それはできないんです」  立松君は申し訳なさそうに言った。 「片平さんは予備素体として既に改造・洗脳されているんですよ。もう元には戻れません」  混乱する俺に、見た方が早いと言って立松君がジムのトレーニングルームを開ける。そこには、俺と同じようにウェアに身を包んだ会員やスタッフ達が淫行の限りを尽くしていた。立松君が滔々と語り出す。曰く、このジムはダークノアという悪の組織が運営する、戦闘員の素体を確保し、洗脳・改造する場所であること。改造適正を見定めた後、例のウェアを着たら予備素体となること。予備素体はスタッフら戦闘員によって個別に調教〈トレーニング〉され、新たな戦闘員として完成すること。 「片平さんはちょっとまだ洗脳が甘かったというか。体育の先生だからですかね、正義感が強いというか。ウェアを着て射精したら、予備素体としての準備は完了するんですが、ぎりぎり精神力で持ち堪えましたもんね。でも、次は俺もへましませんよ」  個室を開けると、見知った教え子が腕を組んで立っていた。ウェア──本来は、ダークスウツと言うのだそうだ──に身を包んだ若狭は、無表情で虚空を睨んでいる。痛いほど勃起したチンポが、若狭の狂気と興奮を伝えていた。 「予備素体番号R1124870、報告してください」  立松君が穏やかな声で言った。 「はっ、予備素体番号R1124870、人間名・若狭満は予備素体番号R1125698、人間名・片平甚太に対してダークノアの洗脳・改造の結果を示すために指定地点で待機しております」  若狭がロボットのようにそう答えた。俺は恐怖が先立ち、後ずさりしてしまう。背後には立松君が動かぬ壁のように立っている。 「よくできました。いつものように射精して良いですよ」 「ありがとうございます!!射精開始っ♡ん゛おっ♡おおおおおおおおッ♡」  若狭の表情が一瞬で快に染まり、腕組みをしたまま、射精が始まる。一度、二度、三度と噴き上がる精液はダークスウツと同じ色をしていた。 「それでは片平先生に自分がどうやって洗脳・改造されたのか、教えてあげてください」 「はい、俺は大学進学してからラグビーで伸び悩んでて、良いトレーニングができるところを探していました。そこで、ちょうど立松さんに声掛けられて、このジムに通うことになったんす。俺は戦闘員の素養が強くって、すぐに雄狂いの淫乱に洗脳されていきました。立松さんの調教を受けたのは半年前からで、じっくり戦闘員としてのトレーニングを受けました。最初はすげえ悔しかった。俺が悪の手先になるわけなんかないと思ってたんす。でも毎日ぐちゃぐちゃになるまで犯されて、ダークスウツに脳味噌も身体も弄られたら、すぐに考えが変わりました。乳首だけでイケるようにされて、ケツだけでイケるようにされて、どんどん俺が変わっていく。そうやって洗脳されていくんです。実は、俺が戦闘員になるための、最後の調教が、先生をここに連れて来ることでした。何回かポストにチラシ入ってたっすよね。一番慕っていた人を、同じ変態に改造すること、それを喜んでできるかどうか──俺は、先生のその姿を見て、いままでで一番興奮してるんす。あの真面目で、優しい先生が、悪の手先にこれから生まれ変わる。それを、俺がやったっていうことに、どうしようもなく興奮する。先生、すみません。俺が洗脳されちまったせいで、巻き込んじまってすみませんでした。一緒に戦闘員に堕ちてほしいっす」  全部、最初から仕組まれたことだったのだと聞いて、俺は脱力した。敵うはずがない。若狭がこうなったように、俺も──。  若狭が俺に近付き、ダークスウツに覆われた股間同士を擦り付ける。俺も、自然と応じるように腰を振っていた。大切な教え子を抱き寄せ、雄同士で舌を絡ませ合う。洗脳、というのがどういうことなのかようやく分かった。頭で理解していても、肉体が抗えない。これを繰り返していく内に、なんの問題も感じないようになるのだ。 「イったら、俺は完全に戦闘員になるんすよ。先生の方は予備素体っす。」 「俺も若狭みてえな変態になっちまうんだな」 「そうすよ。抵抗しても無駄っす。たっぷりダークノアの作法叩き込んでもらってください」  ちらりと若狭が立松君に目線をやる。イキたいが、いつまでもイけないのにはダークノアのルールがあったのだ。 「あっ、もう、イカせてくれ♡イカせてくださいッ♡」 「俺も限界っす♡射精許可願います♡」  教師と教え子の懇願を聞いて、立松君はほくそ笑む。下に「01」と番号が振ってあるのが見えた。 「いいんですか?」  立松君が最後の確認をする。人間を辞め、悪の手先になることを確認する。 「はいっ!」 「オッス!!」  俺達は躊躇なく応じた。射精できる、そのことで頭がいっぱいだった。前触れなく、栓が抜けたかのように尿道から精液がこみ上げる。俺と若狭は同時に射精し、俺はまだ白い精液を、若狭は黒い精液を互いの身体に掛け合った。 「イクイクイクイクッ♡種汁すげぇ♡壊れちまうううッ♡若狭ッ♡俺のこと選んでくれてありがとうなッ♡こんなっ、気持ち良いの味わえてっ、最ッ高だあああああッ♡」 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ♡戦闘員にしていただきありがとうございますッ♡ありがとうございますッ♡」  汗と精液でどろどろに汚れていく。俺の手足もいつの間にかダークスウツで覆われていた。教え子の戦闘員化と共に、俺の予備素体としての生活が始まった。  ※  立松君は、相変わらず俺に立松君と呼ばれるのを好んだ。「だってその方が倒錯的じゃないですか」と言う。よく分からなかった。  我がラグビー部に外部講師として練習に参加した立松君は、やはりトレーナーとしての筋がいいのか部員達から好評だった。俺はそれを複雑な心境で眺めている。部員達が掃けた後の部室で、俺と立松君の関係はあるべき姿に戻る。調教〈トレーニング〉のトレーナーとトレーニーとして。俺はいつものようにダークスウツ姿で四つん這いになり、立松君が俺のアナルを開発していく。一本、二本と指を増やされ、ねちっこく責め立てられるが、かなり慣れてきたのか快感を表情に出さずにいることができるようになってきた。最終目標は、フル勃起しながら無表情で佇んでいた、若狭と全く同じ仕上がりだった。 「片平さん、それではそろそろ次の調教に移りましょう」 「はっ」  DN社の──ダークノアお手製のアンダーシャツとスパッツが手渡される。 「素体適性の高い部員に、これを着させて洗脳・改造してください。この悦びを感じられれば、先生も戦闘員として完成に近付きますよ」  俺は、とうとうこの時が来たかと観念する。教え子を悪に堕とす罪悪感と戦闘員になれる悦び。どちらが大きいのかは、今更問うまでもなかった。はしたなく漏れ出た精液を、立松君が諫めるように指先で掬い取る。ほとんど黒く変色したそれを、俺は蕩けた表情で眺めた。

Comments

ありがとうございます〜。体育教師は生徒との関係性込みで性癖の役満を作りやすいので、書いていて「良いな……!」と思います。

葉一

ナンダッテ~!!! お次の犠牲者に期待です💕

毒薬

教え子に売られてからそれを悦んでしまう所、そして最後の描写が最高に好きです……!! 自分の出した黒精になりかけたモノを蕩けた顔で見ちゃう、この倒錯感がたまりません!!

tanzer

ありがとうございます。先生の冒険はとりあえずここで終わってしまうのですが、多分エッチなことになっていくと思います。

葉一

最高です……先生がどんどん淫乱に落ちてダークノアの手先になるのが待ち遠しい

毒薬


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